夢を見た

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急に涼しくなったように感じる。もう昼間の気温が25度を超えることは無いだろう。

昨晩、急に熱が出て、日曜日だと言うのに寝込んでしまった。久しぶりのことで、予期せぬことでもあったから、ほんの少し心配した。何かが自分の体に起きたのではないだろうかと。しかし一日眠ったら熱が下がり、熱による体の痛みだけが残ると、単に疲れていたのだと分かった。
それにしても沢山の夢を見た。熱の苦痛で目を覚ましてはまた別の夢を見た。そのうちのひとつはとても印象的で、他の夢は既に記憶が蒸発してしまったと言うのに、脳裏にこびりついて離れない。
夢は、実は夢ではなくて、実際にあったことだ。アメリカに暮らして相棒と出会い、相棒との生活が始まると、人間関係の世界が広がって行った。それは私が持っていた世界とは全く違う、とても人間身溢れ、人間臭い世界だった。写真家のトーマス。同じく写真家のシャロンと一緒に居た。昔は夫婦だったらしいが、私が彼らと知り合った頃には夫婦関係は解消していて、それでいていつも彼らは一緒に居た。それからジム。イタリア人女性のアンナにぞっこんで、アンナと一緒に暮らすようになったのは、私が彼らと知り合ってから一年後のことだっただろうか。それまでのアンナはとても気まぐれで、とても惚れやすく、彼女の美しい外見の虜になった男性が次から次へと彼女の傍らに立っていた。そんな彼女を遠くから眺めていたジムが、やっとアンナを射止めたことを周囲は嬉しく思っていたが、しかし彼らがうまく行っている様子は少しもなく、ジムはいつも嘆いていた。彼女は、アンナは何を考えているのか全然わからない、と。一緒に居るけれど、自分に愛情があるのかどうかすらわからない、と。だから周囲はいつも言っていたのだ。彼女はそんな女さ。其れに我慢が出来ないようなら、別れてしまえばいいだけさ、と。そんなことを話していたのは、かれこれ22年も前のことだ。時々友人たちから貰う便りには必ずこの一件が書かれていた。ジムとアンナはそれでもまだ一緒に居る、信じられないだろう、と。夢の中で私は久しぶりにジムと会っていた。場所は私達がよく行った、カフェ・トリエステ。サンフランシスコに住んでいる人なら知らない人などひとりも居ないと言う程名の知れた店。かと言って近代化するでもなく、拡大化するでもなく。狭い道の角っこに窮屈そうに存在していた。古い椅子。古いテーブル。壁には様々な写真とメモ書きが貼られていて。久しぶりに会ったジムは困惑していた。いつもの髪型に鼻の下には立派な髭を生やして、彼は彼のトレードマーク的黒の革のジャンパーを着て、とてもリラックスしているように見えながら、表情は戸惑いの色で一杯だった。アンナは、僕が離れようとすると縋り付く。しかし僕がアンナに愛情を注ごうとすると、途端に冷たくなる。22年前にあのカフェでの会話其のままだった。どうしてそんな夢を見たのだろう。何か意味があるのだろうか。

ボローニャには、カフェ・トリエステのような店は無い。あの店は実にイタリア的な店と誰もが思い込んでいたけれど。ここ数か月のうちにボローニャにはテラス席を持つ店ばかりが急に増えた。店内は狭くてカウンターを設けるのが精いっぱい、だからテラス席、と言うことらしい。もしボローニャにカフェ・トリエステのような店が出来たらば、私は常連になるだろう。昔足繁く通ったように。陽が射しこむ一面ガラスの傍の席に座って、書き物をしながらカップチーノを頂く。多分、それが、私があの町に残してきてしまったことの、大切なことのひとつなのだ。


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micio

東京の下町、深川には古い家屋を利用した喫茶店がどんどん出来て、それなりに賑わっているのですが、最近そのひとつに入ってパニーノを食べました。
美味しいのですが、そういえばイタリアに行ったときは食べなかったなと。
ボローニャの街並みを思い出しながら、惜しいことをしたとちょっと後悔しながらパニーノにかぶり付いていました。
  • URL
  • 2015/09/21 06:08
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Yutaka Hoshino

いつもながらの素敵な写真、魅入られています。先日の男物の洋服屋さんの写真(ガラスへの映り込みをうまく使った)もよかったですね。暇があるとyspringmindさんの膨大な過去ブログの森をあちこち探索しています。今日はリスボン旅行のあたり。私も家人と数年前に行って、すっかり気に入った街ですので、尚更興味深く、なるほど、こういう感じ方もあるんだ、と感心しています。サンロケ教会・リベイラ市場、市電2番、プラゼレス墓地、ケーブルカー(グロリア線)などなど。古いものが大事に使われていて、人情も篤い、そしてなによりも食べ物が美味しい。ボローニャによく似ています。違いは海があるかないかくらい。こちらも再訪希望の上位ランク。

つばめおいしい緑茶。いいですね。 ほうじ茶も。 今日は、牛乳パック紙パックに入いるってうられ

こんにちは、yspringmindさん。
写真を見るかぎりでは、やかましい広告も電線もない路地に静かに日に当たりながら食事できるレストランかなと思ったのですがね。そうですか、こういう店が増えてるのですね。イタリア的だと思ったのですが、このような景色はパリでよく見る景色かな。行ったことないパリ。あまりなかったのですね。きっと、家で食べる人が多かったのでしょうね。よく聞くバールでは、ちょっとコーヒーやワインや軽い食事をすませる場所で。

楽しい夢はしあわせ。ふと、思い出したりして何か自分が望んでいることのあらわれか、虫の知らせか。
きっと、また、サンフランシスコにおいでという知らせならいいですね。
突然、忘れていたことを夢で見ると確かに驚きますね。
アンナさんは、意思の強そうな女性ですね。いまでこそ、日本にもそんな女性がいるかもしれませんが、ほんと、世界を見れば、どれをとっても同じ女性はいませんね。
男性相手にそのようなことは私からしたら、ちょっと面倒ですが、一個性として我を出せてるのは、その出せるという点においてだけうらやましいです。
わたしは、若い頃はよくよく夢を見て、あー、自分はこうしたいのかなと整理整頓していたと思いますが、近頃はまったくもって夢を見なくなりました。夢をみたいです。
  • URL
  • 2015/09/21 16:05

高兄

yspringmindさん、こんにちは

何だか、今日のお話は

どこか切なく

そして、愛おしい・・・・


私の心の中にある、いくつかの思い出(とても青臭い^^;)

その扉も、ノックしてくださった様で・・・ありがとうございます^^

kimilon

あらあら 大変 夏の疲れが今頃出ましたか。 ゆっくりして治ったようですね。カフェ トリニステ 空気の中にいろいろな言葉や思いが漂っているような 場所だったのでしょうか?
フランスのカフェは 確かに テラスが大事ですね。だって もうすぐ 太陽があまりいない季節になるのですもの。太陽が出ている間に 寒くても 浴びておかないと。。。
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  • 2015/09/23 13:38
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yspringmind

micioさん、こんにちは。深川には古い家屋を利用した喫茶店がどんどん出来ているんですか。とても興味があります。日本に帰省した際に訪れてみたいと思います。
え、イタリアに来た時にパニーノを食べなかった? いいじゃないですか。パニーノを食べなかったと言うことは、もう少し手の込んだものを食べたと言うことですよ。私がフィレンツェで仕事をしていた5年間は、それはもうパニーノばかりでいい加減嫌になりましたよ。ところでパニーノも、注文してから目の前で作ってくれるパニーノは美味しいです。フィレンツェのサンロレンツォ界隈に、そういう店がありまして、思い出したついでに急に食べたくなりました。こういう店のを、それなりに賑わっているのですが、最近そのひとつに入ってパニーノを食べました。micio さんに食べていただきたいですね。
  • URL
  • 2015/09/23 20:27

yspringmind

Hoshinoさん、こんにちは。写真を気に入って頂いたようで嬉しいです。確かに過去の記事、沢山ありますね。今は丁度リスボン旅行あたりとのことですが、そしてHoshinoさんも数年前に行かれて気に入った街だそうですが、あの街は全く居心地が良いですね。私は旅先でもあまり歴史的建築物や観光ポイント的なものをめぐることが無く、とても感覚的で、街を散策することに夢中ですから、次にその街に行かれる人達への参考になるような記事はかけないのが難点ですね。だけど思うのですよ。旅先の情報は今や溢れかえっている時代ですから、参考にもならない記事が世の中にひとつやふたつくらいあっても良いかな、と。それで、私もボローニャとリスボンを似ていると感じました。見掛けは全然違うけれど。・・・意見が合いましたね。
  • URL
  • 2015/09/23 20:39

yspringmind

つばめさん、こんにちは。ここは街の中心に在るサンペトロニオ教会の横の道を更に入った、俗に言う路地。まさかこんなところにテラス席が出現するなんて夢にも思っていませんでした。ボローニャにはバールやカフェ、食前酒を楽しむ店、食事を楽しむ店が驚くほど沢山あり、外での飲食を楽しむ人が多いのですが、店の中に席を設けることもできないような店なんて、今までほとんどありませんでした。どの店も、店内にも席があり、外にも席があると言ったパターン。この店に関しては外にしか席がありません。
古い友人たちの夢を見ると、目を覚ました時にどうしようもないなつかしさで胸が一杯になります。特にサンフランシスコは私にとって特別な街ですから、こんな夢を見た日の朝は心がキュンキュンするわけです。アンナは姿が美しくて魅力的だけど、大変自己中心な女性なんです。意志が強いと言うか、何というか。其れよりもジムの方が素晴らしい男性で、どうしてアンナでなければいけないのだ、と何時も周囲が言っていました。恋は盲目。と言う言葉がありますが、まさにそれです。でも、盲目になれるような恋をしているジムがちょっとうらやましかったりするのです。
  • URL
  • 2015/09/23 20:53

yspringmind

高兄さん、こんにちは。22年も前の話ですが、こうして文字にしてみるとつい最近の事のようにも思えます。懐かしいと言うよりは愛おしいと言うべき、私と仲間たちの記憶です。こんなに年月が経っているのに、まだ仲間でいられると言うのは素晴らしいことだとも思います。
誰にでもある、良い記憶。思い出。そういうものは小箱に大切に保管しておいて、時々開けてみるのも良いですね。
  • URL
  • 2015/09/23 20:59

yspringmind

kimilonさん、こんにちは。夏の疲れだったのか、それとも毎日の疲れだったのか。でも、一日眠ったら治りました。直ぐに体を休めるのが良いみたいですね。
カフェ・トリエステに初めて行ったのはサンフランシスコに暮らし始めて2,3か月経ってからでした。10代の若者たちには似合わない店で、特に美術や音楽、文学に没頭している人達に好まれていたようです。店の隅っこにいつも陣取っている年齢不明の男性は、多分小説を書いていたんだと思います。毎日同じ時間帯に、同じ席に座って、紙に文章を書きつけていました。そういう客が似合う店だったと言うと良いでしょうか。
テラス席。夏のテラス席は気持ちが良いですが、秋のテラス席も良いものです。特に気に入りの友人とのお喋りにはうってつけ。道行く人たちを眺めながら。
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  • 2015/09/23 21:07

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