ロングウィークエンド

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アメリカのラジオ風に言えば、今週末はロングウィークエンドである。アメリカに居た頃はラジオを沢山聞いたものだ。家でも職場でも行く先々でも。アメリカと言うよりは、あの時代はラジオを聞く人が多かったのではなかろうか。少なくとも私は、様々な記憶にラジオから流れていた音楽や、DJの言葉や口調が重なる。ロングウィークエンドもそのひとつで、それを聞くと何とも言えぬ、軽やかな気分になったものだ。

他の街からボローニャに移り住んだ人達の多くが、復活祭の休暇を利用して故郷に帰る。復活祭はやはり家族と一緒がいい、と言うことなのだろう。そういうことを私は案外良く思っている。イタリア人の家族愛と言うか、何というか。此処に暮らし始めたばかりの頃は、あまりに家族の絆が強くて多少ながらうんざりしたけれど、それもイタリア文化だと分かるようになると、それほど気にならなくなった。ま、そう思えるようになるまで結構な時間が掛ったけれど。それで今週末は街から人混みが消えるのかと思っていたが、旧市街に行ってそれが大きな間違えであることが分かった。寧ろいつもの週末よりも人が多い。まずは外国人が多かった。ローマやフィレンツェならまだしも、ボローニャに関心を持ってやってくる外国人たちが多いことに驚きを隠せなかった。もう私が此処に来た時代とは違うのだ。ボローニャも魅力的なイタリアの街のひとつに位置づいたと知り、悪い気はしなかった。それからイタリア人達。北や南の方言を耳にして、此の街に暮らす娘や息子を訪ねてきたのか、それとも単にボローニャに小旅行できたのか知らないけれど、何にしろ、ボローニャが多くの人の関心の的になっていることは嬉しくない筈がなかった。私が生まれ育った街ではないけれど、私は生粋の日本人だけど、長く暮らしていく中で、多少ながら街への愛情は生まれているのである。
街を歩いていて目立ったのは、ジェラート屋さんの長い列。それから食料品市場界隈のワインを愉しむカジュアルな店の賑わい。どの人の顔も明るくて、週末が愉しくて仕方が無いと言った感じだった。こういうのを見たかった。私は明るい様子の人達を見たかった。
数日前に可愛がっていた白猫が空の星になったと知って、私は其れから気持ちのやり場がなかったのである。私の猫ではなかったし、歳も少なくとも20歳と言う老猫であったにしても、いつかはこんな日が来るだろうとは誰もが思っていたにしても、毎日背中を撫でて美味しいものを少し与えるのが習慣だったから、うちの猫同様、大変愛情を注いでいたのである。ここ数日見かけないのは雨のせいだと思っていたのに。もう一度会いたかった。もう会えないかと思ったら、悲しくて涙が沢山零れた。おかげで身体が冷えて昨晩熱がでた。目を覚ました時、また白猫のことを思い出して涙が零れそうになった時、ひゅっと目の前を白いものが通って消えた。あ、白猫さん。もう一度会いたかったと言って泣いていた私のために一瞬姿を見せてくれたのかもしれない。敏感なうちの猫は、昨晩からめそめそしている私の傍らから離れない。ごめんごめん。もう大丈夫。白猫さん、愉しい時間をありがとう、そしてさようなら。またひとつ、空に大切な星が増えたよ。

明るい人々の表情が私の癒し。そして俄かに春めいたボローニャの樹々が癒し。ロングウィークエンドが必要だった。元気を蓄積したいと思う。




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Firenzemii

動物の死は本当に辛いし悲しいです。
たとえよその子でも、会ったことがなくてもそんな話を聞くと涙が浮かぶのは、年を取ったからかもしれない。
私はイタリアに来て初めて猫が20歳までも長生きする事ができると知って本当に驚きました。
実家の猫も、自分で初めて飼った猫も、放し飼いにしていたのでみんな交通事故で若いうちに死んでしまった。
東京ならまだ仕方ないかもしれないけど、こんな田舎なのにと悔しかった。
今はもう怖くて外には出せません。
家の子たちも白猫さんのように20歳まで長生きしてほしいです。
  • URL
  • 2024/03/30 19:50
  • Edit

yspringmind

Firenzemiiさん、こんにちは。動物の詩は悲しいんです。特にこの白猫さん、何年も交流がありましたから。野良猫さんでしたが近所に人達が皆で可愛がって、寒い日や悪天候の日は室内に招き入れて、そして獣医さんにも連れて行っての皆の人気者でした。老猫だったし目も見えなくなっていたから、何時か別れの日が来るとは知っていたけど春と夏くらいは超えることが出来るって勝手に思い込んでいた分、突然の別れが悲しかったです。
Firenzemiiさんの家にも猫がいるんですね。ほんと、白猫さんのように20歳まで長生きしてほしいと私も願います。
  • URL
  • 2024/04/01 14:14

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