この冬何度目かの雪

雪が降った。この冬何度目かの雪だった。と言ってもこれまでのような大きな雪片がぼさぼさと降り落ちてきた訳ではなく、まるで小麦粉のような乾いた細かいものがふわりふわりと落ちてきたのだ。こんな雪なら大丈夫。金曜日の晩にそう思いながら眠りについた。何しろ明日は土曜日で、既に習慣の一部となったボローニャ散策を週の半ばから楽しみにしていたからだった。塵も積もれば・・・という言葉を私はすっかり忘れていた。朝起きると窓の外は一面雪だった。夜中に根気良く降り続けた雪が作り上げた雪景色。私が起きたときには雪は止んでいて、元気よく顔を出した冬の太陽が雪を更に美しく見せていた。さて、出掛けようか、止めようか。何しろ私は無類の寒がりなのだ。窓からそっと手をさしだしてみると外気は恐ろしく冷たかった。氷点下に違いなかった。しかし私はえいっと立ち上がって出掛ける準備を始めた。相棒が丁度ボローニャ旧市街へ行くというし、雪景色の旧市街を見てみたいと思ったし、そして私は今まで自分が作り上げてきたつまらない殻を抜け出したいと思ったからだ。寒いからとか雨だからとか、何だとか、今まで続けてきた行動しない理由を、これから減らしていこうと思ったからだ。私がそう思うようになったのはこの夏の一人旅からだ。一人旅というほどのものではなかったにしろ、私はひとり電車に乗りながら、長距離バスに乗りながら、街を歩きながらそんなことを自然と考えるようになったのだ。さて、ボローニャの街は私が暮らす丘の町ピアノーロほど雪は降らなかったらしく、雪は日陰に、又は道の端っこに残っているだけだった。Piazza Maggiore 辺りに行くと小さな子供達が雪合戦をしていたり、飼い犬たちが雪の広場を駆け回っているのだろうと俄かに楽しみにしていたのだが、実際は広場の路面が濡れて光っているだけであった。それだからなのか、それとももし雪が沢山積もっていても関係なくなのか、街にはクリスマス前の買い物を楽しむ人々で溢れかえっていた。一番繁盛していた店はボローニャの中でもかなり古いパン屋のATTI だった。パネトーネなどのイタリアのクリスマスには不可欠な菓子を買い求める人達だけではなく、24日に引き取りできるようにトルテッリーニを予約する人々も居るようだった。昔はどの家でもトルテッリーニを作ったものだがだんだんそれが出来る人が少なくなってきたらしく、店に注文する人の比率の方が多くなってきたように感じる。私の家だってそうだ。昔、姑が元気だった頃は彼女を中心にして家族みんなでトルテッリーニを作ったものだ。その作業は根気が要って案外大変なのだけど、それでいて楽しかったのを覚えている。今ではすっかり店に注文する派になってしまったのを少し残念に思っている。それにしても後4日と半分働くと冬休み。そうしてクリスマスがやって来る。そう思ったら急にわくわくして、私はまた力強く歩きだした。

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リック

トルテッリーニ、きっと日本のお正月のお餅と一緒ですね。
最近は、スーパー等で買う人が多いみたいです。

私が子供の頃は、母親とおばあちゃん、妹とみんなで餅つき機でついた、つきたてのお餅を丸めるのが年末の恒例行事でした。
両親だけとなった実家では、私達が帰省する年以外は買っているようです。

時代は変わりますね。
  • URL
  • 2010/12/20 02:35
  • Edit

yspringmind

リックさん、こんにちは。返事が遅くなってごめんなさい。日本のお正月のお餅。そう言われてみればそうかもしれませんね。トルテッリーニは手作りの店で美味しいのを買うことが出来ますが、何しろ高いです。でも仕方がないといえば仕方がないのです。何しろ大変な手間暇かけて作るのですから。小さければ小さいほど良いというのがトルテッリーニでして、手先の器用な日本人の私は上手だと褒めて貰ったものです。それで調子に乗って手伝った訳なんですけどね。
たった13,4年前のことなのに遠い昔のことのように思えます。

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