憧れ

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明るい季節の夕方は、寄り道せずに帰るのが難しい。こんな素敵な夕方を堪能しないなんて勿体無い。と言うのが私の論で、長年私を知る相棒も慣れたものである。真っ直ぐ帰ろうものならば、へええ、寄り道しなかったのかい? などと言うほどだから。
この時期の旧市街はまだ初夏のような賑わいは無く、しかし冬を終えて春を迎えたのが嬉しくてたまらないと言った雰囲気がある。人々の装いは、冬と春が混乱しているけれど、何が良いって、人は皆それぞれであること、同じでなくて良いことを誰もが認めていることだ。だから誰が厚着をしていたって薄着をしていたって良いのだ。ただ寒がりの私は、この時期に半袖姿の若者を見ては、気をつけて、身体を冷やさないように気を付けてと心の中で呼びかけてしまうけど。

七つの教会群の前の広場に面した場所に、藤の花が咲いているのを見つけた。此処に毎年藤の花が咲くのを知っている私は、春にこの場所に来るのが恒例。藤の花が好きなのだ。此の藤色、此のヨーロッパを感じさせる枝葉や花が堪らなく好きなのだ。藤の花は私を芸術の世界に誘う。憧れにも似た気持ちだ。兎に角、藤の花を好きな気持ちが高じて、庭のある家を持つ夢を抱いたことがある。庭に藤棚を作りたくて。そんな藤棚を眺めながら昼食や午後のカッフェを頂きたくて。街中から外れたところに広い庭のある家を探すのは楽しかった。修復が必要な古い建物、1800年代辺りのものが理想的で、壁が分厚い典型的なこの辺りの建物で、壁は薄い橙色なら尚更良かった。相棒と週末や仕事帰りに車を飛ばしてみて回ったのは、もう随分前のことだ。それがある日、急に庭のある古い家への情熱が冷めた。いや、冷めたのではなく、目が覚めたのかもしれない。あまり現実的な話ではないね、そんな生活は素敵だけど仕事に行くのに1時間も掛るのは困るね、と言うことで。その代わりに私は其処此処の藤の花を見て歩くようになった。せめて私の脳裏に納めようと思って。他所のうちの藤の花を見せて貰おうと思って。

話によれば来週は急激に気温が上がるらしい。25度。此れは私にとって理想の気温で、今からとても楽しみだ。何時だか私の理想気温は23度から27度と知人に話したことがある。知人が笑ったのは、それがボローニャでは実に短い期間だからだ。確かにそうだ、ボローニャでは、ああ、良い季節になったなあ、気持ちの良い気候だなあと思った途端、一気に夏に向かうからだ。さあ、今年はどうだろう。少しでも長く気持ちの良い気候を堪能出来ればいいと思う。




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