水色の似合う女性

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猫がテラスの端っこに佇んで何かを見ていた。何が居るのだろうと彼女の横にしゃがみ込んで菩提樹の辺りを眺めてみたが、尾長鳥が居るでもない、栗鼠が居るでもなかった。見えるのは風に揺れる菩提樹の枝葉。そうか、風を見ているのね、と訊ねてみたら、にゃーっと鳴いた。それがどういう意味なのかは私には分からない。しかし私とよく似た猫だから、多分、風を見ていたのだろう。月が美しい。明日は満月だと言うが、雨は降りやしないだろうかと、やきもきしている。月ごときでと人は笑うかもしれないけれど、私にとって満月はとても大切な存在だ。満月を眺めながら会えない友を想う。満月を眺めながら父や舅を想う。満月を眺めていると心が落ち着いて、日常の小さなことに翻弄された心がリセットされる。私にとって満月は、そんな具合で、心待ちにしている存在なのだ。

昨日のこと。姑のところの昼食会に参加して、後片付けをして帰って来たところ、丁度隣の奥さんが家から出てきた。美人の奥さんは私よりずいぶん若い。みずみずしくて色白の金髪で、顔かたちも姿も美しい。女の私から見ても文句なしに美しくて、だから世間の人達が彼女をちやほやするのも無理はないと私は思っている。彼女はロシア人。イタリア人と結婚したロシア人女性だ。ロシア人特有のイタリア語を話すが、本当によく喋る。仕事帰りに家の前などで会うと長いお喋りに捕まって、話を打ち切るのが大変だ。彼女は日本のことが大変気になるらしく、一度是非行ってみたいと考えているらしい。特に日本の美容関係が気になるそうだ。日本人女性の美しい肌の秘密を知るには、日本へ行かなくては、ということらしかった。それならば私は知っている。水だ。日本の水は柔らかくて、美容液ほど効果があると私は思って疑わぬ。この夏も日本の水道水で洗顔すると肌がすべすべになって驚いたばかりだ。日本人の私が驚くのだから、外国人の彼女はもっと驚くに違いない。不思議なことに日本に住んでいる人の多くはnそのことに気付いていないようだ。水が良いと言うのは幸せなことだ、と私は日本に帰るたびに思って熱弁するが、母や姉にはあまりピンと来ないらしい。恐らく国外の硬水で生活してから分かることなのだろう。さて、隣の奥さんだけど、素晴らしく美しかった。夏の悪あがきで30度にも上がった日曜日の午後だったから、肩のでる丈の長い薄手のドレスを着ていた。深いスリットが入っていて、さりげなく見える長い足が美しかった。何よりも美しかったのは色合いで、彼女の肌や金髪が良く映えるように計算されたかのような白地に描かれた水色の模様。流れるような水色の柄が彼女を引きたてていた。それに同じ水色の鞄。こんな色の鞄は一生縁がないと思っている私は、驚くしかなかった。経済的に豊かな人だから、こういう色もありなのかもしれない。年に数回しか使わない色の鞄。私なら勿体無くて購入することすら考えないだろう。兎に角、今日はまた飛び切り美しい、その美しい色が美しさをさらに引き出している、と手放しに褒めると、彼女は百万ドルの笑顔を私に向けてありがとうと手を振りながら階段を降りていった。彼女の夫はさぞかし自慢だろう。こんな美しい女性、しかも優しくて性格の良い女性は、そうそう居るものではないから。私だって嬉しい。こんな美しい人が同じ建物に住んでいるなんて。顔を合わせるだけで楽しい気分になるような人が同じ建物に住んでいるなんて。

空が暗くなるのが早くなった。19時過ぎには日没で、20時を待たずに真っ暗になる。おかげで月の美しいこと。悪いことばかりはない。良いことも必ず用意されている。上手い具合にできているのだ。




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