きらきら光るクリスタル
- 2014/02/19 07:12
- Category: bologna生活・習慣
きらきら光るクリスタル。ボローニャに暮らし始めた頃、と言っても私がローマでの約一年間の生活にピリオドを打ってボローニャに戻ってきた頃、私が留守にしている間に相棒がアパートメントを見つけてくれた。決して広くはないけれど2人が暮らすには十分だった。居間の二倍もあるテラスがついていた。相棒が其処に決めた理由はどうやらこのテラスらしかった。ボローニャ旧市街からは歩いても15分と掛からぬ場所で、近所には店があって便利だった。郵便局もあればクリーニング屋さんもあった。新鮮な野菜と果物を置く青果店もあったし、朝産んだばかりの卵を売る鶏肉屋さんもあった。静寂とは無縁の場所だったが、活気があるのは良いことと思って板から苦ではなかった。私はたまにある仕事以外は家でのんびり生活すればよかった。けれども家で忙しくしていることの方が多かった。家に居る時間が長いなら、と家事のプロになろうと思ったからだった。することは探さなくてもあった。その中の大仕事と言えば照明器具を磨き上げる作業だった。その照明器具とは、今につる下がったクリスタルの、俗に言うシャンデリアなるものだった。幾つものクリスタルを連ねて作られたこの照明器具。美しくもそれを綺麗に保つのは口で言うほど簡単ではなかった。ひとつひとつを乾いた布で磨くのだから。それから上を見上げての作業だったから、そのうち気分が悪くなって中断しなければならないこともあった。そしてある日、私は相棒に言ったのだ。この美しい照明、他のに替えましょうよ。初めは不満を述べたかれだったが、ある日私の代わりに作業をして理解したらしく、数日後には新しい照明に替わった。それで私達はクリスタルを磨き上げる作業から解放されて嬉しかったはずなのに、骨董品市で似たようなものを見かけるたびに懐かしく思うのだ。ひとつひとつを磨き上げる。だから美しいクリスタル。じっと見つめていると関心があると間違えられて声を掛けられる。うん、昔持っていた物によく似ているの。でもね、磨くのが大変だったのよ。私が店主にそういうと、店主は笑いを殺しながら答えるのだ。だから、だから美しいのだと。
ジーナ
それにしても、居間の倍はあるという広さのテラス。主人の仕事の関係で地上階に住むこと以外の選択肢がほとんどない我々にとっては、例えそれが低層階でも、地面より高い所で気持ちの良い風に吹かれるテラスでの時間というのはとっても羨ましいです。