写真と彼女
- 2023/07/24 22:16
- Category: bologna生活・習慣
夏の陽がようやく暮れて1時間も経った頃、鳴きだしたCivetta。日本語に訳せばフクロウだけど、恐らく何か特別な名があるに違いない。日本では何という名で呼ばれているのだろうか。自然豊かな場所に住み着く鳥だそうだが、何故こんな住宅地に住み着いたのだろう。大きな樹が沢山あるにしたって、である。一定の間隔を置いて鳴くこの鳥の声をはじめは車か家の防犯アラームだと思っていたが、そんな風に思っている人は案外少なくないのではないだろうか。周囲の住人たちが休暇に出掛けたので晩も遅くなると全く静か。だからCivettaの声が響き渡る。街にまだ残っている近所の人達も心を惹かれたようだ。何処にいるんだろう。あの樹のあたりかな。窓越しにそんなことを言っているのが聞こえ、街に居ながら鳥の声を聞けるこの界隈を嬉しく思うのだ。
今朝は3度もにわか雨が降った。そのせいか涼しく、案外快適な一日だった。勿論、夏なのである。だから少し歩けば汗もかく。でも、先週の暑さを思えば、やはり快適というべきだった。夕方旧市街に立ち寄ったのは、気になる写真があったからだ。ボローニャ旧市街で催されている写真展の宣伝の一枚で、大通りに面したところに貼られている。これを初めて見つけた時、何か感じるものがあって釘付けになった。何が私を惹きつけたのかは分からない。ただ、何か懐かしいもの、何か忘れていたもの、ああ、そうだった、なんて思わせる一枚だった。あの日、私は急いでいて、もっと眺めていたかったけれど、後ろ髪を引かれる想いで歩きだしたのだ。先日前を歩いた時は、フードデリバリー業の外国人青年たちが自転車を止めて眺めることが出来なかった。その次もやはりそうで、まさか、ちょっとその前からどいて頂戴、なんて言える筈も無く、泣く泣くその前を退いたのだ。今日はどうだろう、と思って出向いてみたら、例の青年たちの姿はなく、たっぷり鑑賞することが出来た。あまりにじっくり眺めるものだから、道行く人に不思議がられたりもしたけれど。そうして私に声を掛けてきた女性。いい写真だと言って私の横に並んだ。ボローニャのポルティコの下で撮ったに違いないこの写真を眺めながら、80年代を思い出すと彼女は言った。その当時彼女はイギリスに夢中だったそうだ。そして初めて行ったロンドン。刺激的で、こんな街があるのだなあと感激したそうだ。ボローニャに生まれ育ったという彼女にとってロンドンが刺激的だったのは分かるような気がする。と言っても私はロンドンどころかイギリスという国の土を踏んだことすらないけれど。イタリアに暮らしたらヨーロッパの近隣国に簡単に足を延ばすことが出来ると思っていたのに、いまだにイギリスもロンドンも遠い存在なのだ。10分くらい写真を眺めながら彼女と話しただろうか。そのうち例のフードデリバリー青年たちが写真の前に自転車を止めて立ち話を始めたので、私と彼女は顔を見合わせて、それを合図にお互い違う方向に歩きだした。ちょっと片手をあげて私に挨拶を送りながら歩く彼女はいい感じだった。フィーリングが似た感じの人だった。またどこかで会う事があればいいと思う。そうしたらちょっとテラス席に座って話をしてみたいと思った。
今夜はとても蒸し暑い。気温は僅か26度と低めだけれど。さあ、テラスの植物に水をあげよう。夏の晩のこの習慣は、一日だって怠けてはいけないのだから。