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野の娘

2011.11.07(11:09) 1744


 
 
私の好きな詩集に中川一政「野の娘」というのがあります。
 
(中川一政は洋画、日本画、書、陶芸など、とにかく多才な方です。画家としての方が有名でしょうか。)
 
とくにその中の「野の娘」という詩は初めて目にした時泣けてきて、
 
そしてその後読むたびに泣けてきて、
 
今朝、書棚で目にして開いてしまい、またポロポロと泣けてしまいました(T_T)
 
 
 
「野の娘」
 
愛子よ
 
おまへはまつくろけ
 
けれどぼくの愛するをさないいもうと
 
けふはクリスマス
 
おまへをつれて来いと
 
文子さんは云ったけれど
 
ぼくはまつくろけなおまへが
 
かたくなつて
 
自分のまづしい服装を
 
よろこぶおまへを
 
白い足袋からまつくろなふくらはぎが
 
でてゐるおまへを
 
あの上品なをさない人達の目に
 
軽蔑されるのをかなしむ
 
けふクリスマスと云ったぼくをゆるせ
 
おまへは野の花だ
 
くろい口の大きい叫びごゑのあらい
 
野のむすめだ
 
たのしさをゑがいてさびしかったら
 
かけまはつて慰めよ
 
けふのクリスマス
 
おまへをはずかしめられたくないので
 
ぼくはつれてゆかないのだ
 
つれてゆくと云わないのに
 
もうおほ兄さんとゆくと
 
となりに揚言してとんであるく
 
おまへをみると
 
ぼくはいろのくろいおまへが
 
うらめしい
 
ゆるしてくれ
 
わが愛惜しむ
 
くろいいもうとよ
 
クリスマスでも
 
俥屋やそばやの子とおまへは遊ぶのだよ
 
 
 
野の花のように純粋無垢で無邪気な妹を思う兄の気持ちが痛いほどわかって、
 
そしてその妹の無邪気さがまたたまらなくてまた今も涙が出てしまうのです。
 
 
「火垂るの墓」もそうですが、どうも私は年の離れた兄と妹の兄妹愛に弱いようです。
 
 
 
 
そのほかにも全部読み聞かせをしたいくらいなのですが^m^
 
もう1つだけ・・・
 
 
 
「母」
 
俺がだまつてゐると
 
母はやつてくる
 
彼方の室は母がひとりぼつちでゐる
 
こつちの室には俺が一人でだまつてゐる
 
母は時々立上がつてやつてくる
 
入口に手をかけて
 
俺の心を読もうとしてゐる
 
俺はだまつて読まれてゐる
 
が、しかし俺には愛情がわいてくる
 
何しに来たのと微笑み乍らきく
 
何しに来たか俺は知つてゐる
 
 
二言三言話した後母はかへつてゆくが
 
俺は人間といふ者を思ふ
 
各々支へあつてゐる
 
両方の人の肩と肩へ手をかけあつて立つてゐるやうなものだ
 
邪魔におもふ人間をすらたよりにしてゐるものだ
 
「俺が立つて居ていヽのか知らん」
 
淋しい人間はさう思ふものだ
 
俺が立つてゐるので人も立つていられるのだといふことも忘れて
 
 
俺の入口へ手をかけて
 
俺を見にくる母は
 
もしやさう思ふのではないかしらん
 
 
 
 
あ、やっぱりお孫さんが生まれた俊さんや、buttyさん、その他お孫さんが可愛くて仕方がない方々や小さいお子さんのいらっしゃる方々にもう1つ^m^
 
 
 
「幼児」
 
 
幼児来りて
 
わが顔を叩く
 
汝 元気なる幼児よ
 
汝が我が顔を叩くは
 
世にも甘き挨拶なるよ
 
 
 
中川一政の詩には家族や友への愛があふれています
 
 
 
 
 
 
 
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コメント
中川一政、画家の方が有名なんですねw
恥ずかしながら初めてこの方をしりました。
昔の言葉なんで何度か読み返しました。
最後の「幼児」は短い文ですがグッと来ますね^^
ありがとうございます。
早く顔を叩いてほしいなぁw^^
ポチw
【2011/11/08 00:44】 | - #79D/WHSg | [edit]
画家としての認識しかなかったですが、詩も書かれているのですね。

年の離れた兄妹。ochasukinekoさんのお子さんたちがまさにそうですね^^
優しいお兄ちゃんとお兄ちゃんを慕う妹さん。
お兄ちゃんも妹さんが可愛くて仕方ないことでしょう^^

兄妹の詩というと、私はやはり宮沢賢治の『永訣の朝』が浮かびます。
雪を見ると思い出し…
塾で講師がこの詩を熱唱し、熱弁を振るったことも思い出します。
【2011/11/08 04:29】 | メイ #79D/WHSg | [edit]
俊さん、はい、多分画家としての方が有名じゃないかと思います。
でもいろいろなことをされているんですよ。

「幼児」の詩をまた見たとき、俊さんのことを思い浮かべてしまいました^m^
ハイハイするようになるのも楽しみですね♪
ポチありがとうございます(^^)
【2011/11/11 14:45】 | ochasukineko #79D/WHSg | [edit]
メイさん、彼の詩は本当に家族、友人にたいする優しい気持ちが伝わってきて好きなんです。
そう、ちょうどウチのお兄ちゃんと娘ですね。
ああ、確かに。宮沢賢治の映画を思い出しました。緒方直人さんが賢治を演じたのを観に行きました。妹は水野真紀さんでした。
私もお兄さんが欲しかったから・・・^m^
【2011/11/11 14:53】 | ochasukineko #79D/WHSg | [edit]
今日は珍しく精神的に参ってるので、なおさらジーンときます。

温かい人になりたいなあ。
【2011/11/11 19:23】 | ムーミンママ #79D/WHSg | [edit]
ムーミンママさん、いろいろなことが重なって疲れているのかな?と心配ですが、もう気持ちは少しは落ち着きましたか?

両方の人の肩と肩へ手をかけあつて立つてゐるやうなものだ
邪魔におもふ人間をすらたよりにしてゐるものだ

だから誰でも自分も大事にしないといけないんですね。そういうことを教えてくれる詩でした。

ムーミンママさんは温かい人ですよ♪
【2011/11/12 08:33】 | ochasukineko #79D/WHSg | [edit]
こんばんは。

私も、思わず目頭が熱くなりました。
家族への想い、愛情が限りなくありのままに描かれている印象を受けました。

詩って不思議ですよね。
普通話している言葉よりも短いのに、なぜかよりたくさんの意味が
込められているように感じます。
【2011/11/13 21:51】 | あき #79D/WHSg | [edit]
今日クリスマスと言ってしまった後に
「軽蔑されるのをかなしむ」
でも妹は
「となりに揚言してとんであるく」
現代では少なくなってしまったのかもしれないけど、想像するだけで辛い心の葛藤が伝わってくるようです。その後、妹さんの心が落ち着いたのかどうか・・・。

邪魔におもふ人間をすらたよりにしてゐるものだ
そう感じた事、ありました。それでも表面上はそのままで・・・。

「この世に無益なものなどない。路傍の小石も空に輝く星も同じだ。」
家族愛ではないけど、自分が大好きな1954年イタリア映画「道(La Strada)」を思い出しました。
【2011/11/14 19:49】 | RIVERS END #79D/WHSg | [edit]
あきさん、本当ですね。短いことばの中に文字で表していない感情、情景が入っていて、それを読んだ人それぞれの立場で想う、詩ってそういうものなんですね。
【2011/11/16 11:13】 | ochasukineko #79D/WHSg | [edit]
PULSARさん、想像してしまうでしょう?お兄さんの辛い気持ちと何もわからずに喜んではしゃいでいる妹。あ、ダメ。
そのあと、どうしたか本当に妹さんを思って心配になる・・

「道」。フェデリコ・フェリーニの映画なんですね。音楽と動画とPULSARさんのことばでその内容がよく伝わってきました。
彼は乱暴だけれど心の中では彼女に愛情を感じていたんですね。彼女にはそういう彼の本当の姿がわかっていたんですね。
邪魔におもふ人間をすらたよりにしてゐるものだ。
PULSARさんにも経験があったんですね。どんな人でも自分以外の誰かになんらかの力を与えているものなのでしょうね。
TBありがとうございました♪
私もさせてくださいね。
【2011/11/16 11:25】 | ochasukineko #79D/WHSg | [edit]
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