S東京特派員の映画祭巡礼記。
今回は恒例の東京国際映画祭、今回も見どころ満載の作品が並びレポいただきました。
小品とはいえアンソニー・ウォンが継続して“香港映画”主演にほろりときました。
そのアンソニー・ウォンを起用した『淪落の人』でデビューを飾ったオリバー・チャン監督も新作とともに来日、しかし画像の女性二人はどちらも女優さんぽいので監督はどちらだろうかと思いました。
あと今回、審査委員長がトニー・レオン、審査員にジョニー・トーが連なり、
当然、宴席を囲んだであろうから、話が弾んでこの二人がタッグを組んで新作を期待します。
ジョニー・トー映画にアンディ・ラウはよく起用されてるけど、
ドニー・レオンはプロデュース作で面白かった『ロンゲストナイト』ぐらいでしたっけ?
そして以前、りほりほ出演で取り上げた『十一人の賊軍』は長岡藩をチクリと刺して敵に回したな、と思いました。。
S特派員、ありがとうございます。またお願いします。
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日本の秋の映画祭シーズン最大イベント東京国際映画祭。今年も3連休有楽町に通いましたのでその感想を書きたいと思います。
『赦されぬ罪』香港 ジェフリー・ラム、アントニオ・タム監督
主演アンソニー・ウォン。娘を失った牧師の前にその原因になった若者が現れる。
映画が進むにつれ、事件の真相がわかる仕掛け。
タイトルの赦されぬ罪とはなにか。
「許すことができるのは神だけ」とアンソニー・ウォン牧師。
では人はなにができるのか?
韓国映画『シークレット・サンシャイン』と似ているテーマ。
洗礼式の大混乱がよかったです。
『母性のモンタージュ』Q&Aの様子
『母性のモンタージュ』香港 オリヴァー・チャン監督
オリヴァー・チャン監督は『淪落の人』の監督。
自身の出産、子育て経験を経て、香港でも多いという産後の鬱による死を題材にした映画です。
とくにドラマらしい展開はなくひたすら乳児の育児生活だけで母親が徐々に追い詰められていく様子を克明に描く映画でまるでドキュメンタリーのような迫力で圧倒されました。
ラストはギリギリのところで救いがあったのがよかったです。
そうじゃないとあまりにもかなしい…
『陽光倶楽部』ポスター
『陽光倶楽部』中国 ウェイ・シュージュン監督
2020年に長編デビュー、以来『永安鎮の物語集』、『川辺の過ち』とすべて日本の映画祭で上映されているウェイ・シュージュン監督。
今回も面白かった!
さながら中国版『フォレストガンプ』な今作。
余命わずかな母親と主人公、さらにそれを取り巻くクセのある人々の群像劇。
中でも怪しげなセミナーを主催する男を演じたジャ・ジャンクーがほんとにうさん臭くて最高。
ウェイ・シュージュン監督作品、もうそろそろ一般公開されてもいいころだと思います。
『冷たい風』Q&Aの様子
『冷たい風』イラン モハッマド・エスマイリ監督
プロの写真家として活動してきたエスマイリ監督はこれが初長編ですが元々映画を作りたかったそうです。
主人公の警部が殺人事件の捜査をするという映画ですが警部の一人称で語られるという変わった映画。
映画は警部が尋問する相手しか映しません。
回想場面もなし。
観客にリアルな捜査活動を体験するというすごい実験映画でした。
推理映画でこのやり方はちょっと合ってなかったかも。
すごくわかりにくかったです(笑)でもこういう挑戦、嫌いじゃないです。
『スターターピストル』中国 チュー・ヨウジャ監督
陸上競技でスタートピストルの音におびえてどうしてもスタートが遅れてしまう女子高生が夜の校内で無断で持ち出したピストルを撃つ。
その場に駆け付けた少年はとっさに彼女をかばう。
高校生の不安定さを偶像劇のように描く映画。
ちょっとしか出てない生徒たちも生き生きと描く演出がすごかったです。
時制の乱れた編集もかっこいい。
少女とピストルといえば『牯嶺街少年殺人事件』。エドワード・ヤンの影響も感じられます。
『男たちの挽歌Ⅲ アゲイン/明日への誓い』にも使われていた近藤真彦の「夕焼けの歌」のカバー「夕陽之歌」が一瞬流れるシーンがあり懐かしかったです。
『ギル』アン・ジェフン監督
『ギル』韓国 アン・ジェフン監督
日本でも翻訳があるク・ビョンモの小説「えら」をアニメーションで映画化。
「えら」はまだ未訳。翻訳期待したいです。
えらのある水棲人の少年と人間たちの交流。
とくに少年を助けた老人の少年とほぼ同世代の孫との愛憎、その薬物中毒の母親など重たい人間ドラマが続きその対比として純粋な水棲人がいるという感じ。
原作では普通に韓国が舞台なのを映画ではヨーロッパに変更。
韓国だとリアリティが出ないという判断でしょうか。
従来のアン・ジェフン作品とは違い商業アニメスタジオの制作でキャラクターデザインなどかなりスタッフの意見を取り入れての制作だったようです。
日本や中国とも違う韓国の2Dアニメになっていたと思います。
最近はいろんな国で優れたアニメが作られてますね。
『士官候補生』Q&Aの様子
『士官候補生』カザフスタン アディルハン・イェルジャノフ監督
一人息子を連れてとある士官学校に赴任した女性教師。
同級生から強烈ないじめにあう息子。
さらに士官学校には過去の怨霊がとりついていて母子を襲う。
『シャイニング』や『エクソシスト』のオマージュのような場面もあるし背後の暗がりに何かいるみたいな場面はまるでJホラー。
作品解説に「軍隊組織に内在する暴力や腐敗をホラー映画的な要素を加えて描いた作品。」と書いてありましたがまさかこんなにホラーだとは。
社会制度が恐ろしい事態を引き起こすという社会派ホラー。
不気味な雰囲気が常に漂う作品でした。
『ディスクレイマー 夏の沈黙』イギリス・イタリア アルフォンソ・キュアロン監督
東京国際映画祭では2021年から「TIFFシリーズ部門」が出来ました。
テレビや配信の連続ドラマが対象の部門です。『ディスクレイマー』はAppleTV+ですでに配信中。
全7話で今回は1~4話と5~7話にわけて上映。
ケイト・プランシェット演じる女性がかかわる過去の出来事によってケヴィン・クライン演じる老人から中傷攻撃を受けて生活が破壊されていくドラマ。
観客のほうも試されるような重いテーマでした。
すべてのエピソードをキュアロン監督が演出してるのでドラマとはいえ統一感があります。
前半は自宅で見て後半のみ劇場で見ましたのですが音響演出はやはり映画館のほうがちゃんと伝わる感じです。
長時間ですがさくさく進むので見やすくこの辺りは映画というよりドラマ的でしょうか。
『十一人の賊軍』日本 白石和彌監督
実は一般公開で見たのですが今年の東京国際映画祭のオープニング作品ということで。
会場も東京国際映画祭やってる丸の内TOEIのスクリーンで見たのでまあ半分映画祭上映という気分です(笑)
見る前は戊辰戦争時の新発田藩が舞台なのでさぞかし地元新発田は盛り上がるのでは…
と思ったのですが官軍と列藩同盟の間に挟まれた新発田藩が生き残るため十一人を捨て石にする、という話で正しくかつての東映残酷集団時代劇の系譜を継ぐ映画。
これは新発田の人達は複雑な気持ちかも…
しかし原案にクレジットされている笠原和夫が1964年に執筆した『十一人の賊軍』のプロットを元にしているとのことで確かに現代の映画とはちょっと異なる骨太さがある映画になっていたと思います。
『本日公休』フー・ティエンユー監督
『本日公休』台湾 フー・ティエンユー監督
これは東京国際映画祭とは関係ない上映ですがフー・ティエンユー監督が黒澤明賞受賞のため来日、せっかくの機会ということで都内で上映中の監督作品の上映にあわせて開催されたトークショーで見ました。
本来なら東京国際映画祭でも記念上映すべきだったと思います。
『本日公休』はお母さんが理髪師という監督のお母さんへのリスペクトが込められた映画。
映画に出てくる理髪店はなんと監督の実家。
ファミリー映画ですね(笑)みなさんも台南に来られたらぜひ来てくださいと話す監督でした。
有楽町・日比谷のみでの開催になって会場の移動も楽になり映画を見る時間も増えました。
一方で会期日数は減らないものの平日開催が増え会期中の週末上映は少なくなり結局見れる映画が減るのは残念。
しかし今年は3連休!例年より多く見れると喜んだものの香港・中国映画は大人気で何本も予約瞬殺で見れないことに。
人気があるのはうれしいですがもう少し予約は取りやすくしてほしいと思いました。
東京国際映画祭公式HP
https://2024.tiff-jp.net/ja/