以前↓こちらでご紹介した日本映画大学生が今年に山古志で撮影したドキュメンタリー作品。
http://nagaokatsukurukai.blog.fc2.com/blog-entry-117.htmlhttp://nagaokatsukurukai.blog.fc2.com/blog-entry-151.htmlとても深い関心を抱いたので
これまで長岡アジア映画祭をやってた繋がりから、
ご紹介いただきDVDを見せていただきました。
今年撮影された作品は4作品でいづれも20分弱の作品時間でした。
「とむらいのテンガロハット」
油夫集落のアルパカ牧場の代表・青木勝さんに焦点を絞った作品。
「冬のアルパカ」は青木さんの協力なくしては撮影できませんでした。
山古志の名士の一人らしく相談事があったらまず青木さんに連絡したほか、
撮影スタッフが泊り込んだ合宿所も手配いただきました。
かつて橋本信一監督と一緒に「掘るまいか」「1000年の山古志」の制作に尽力いただき、
映画に大変理解がある方なのも助かりました。
作品は中越地震と復興のシンボルであるアルパカを絡めて、
アルパカの飼育に関する苦労話、
この牧場を山古志の産業の基盤のひとつを目指す青木さんの思いにカメラを向けてます。
何より自身も大きなダメージを受けた中越地震から
いかに知恵を絞って山古志が復興していくのかに力を注ぐ青木さんの姿に心打たれます。
そしてやはりアルパカたちが沢山登場するのも見てるとなごみます。
ただしタイトルの「とむらいの~」はアルパカ牧場で
最初に産まれた赤ちゃんが亡くなったことに関しての鎮魂の思いも込められてます。
青木さんのインタビューは「冬のアルパカ」の合宿所で行われ、
見てて懐かしく思いました。まだ去年の話なのに。
「さわぐ」
種苧原に一軒しかない雑貨屋さん「中道屋」の女主人に焦点を。
「冬のアルパカ」でも重要なロケ地となっており、
実はこの奥さんにも出演していただく予定でしたが
カットしてしまったのは今も申し分けなく思ってます。
作品を見るとかつてこの種苧原にも中道屋も含め雑貨屋さんが3軒ほどあり、
賑わいを見せていたことがこの奥様の証言で知り意外に思いました。
若い頃は東京でも働いたという奥様が中道屋を継ぐ男前のご主人と結婚。
以後、二人三脚でお店はかなり繁盛してたことが伺えましたが、
残念ながらご主人は病死、以後一人で残されたお店を切り盛りしてる姿が登場します。
また山中で山菜を採る姿が収められてましたが、
ひょいひょいと道なき道を山菜目指して歩く軽快な姿に驚かされました。
そしてタイトルが重要な意味を持ってこの奥様の生き様を示してるように思い、
山古志の女性の一代記としてとても興味深くみてました。
「唄にのせて」
竹沢集落の大工の棟梁に焦点を。
若い頃に父親から大工になることを決められ以後ガムシャラに仕事を全うする
職人さんの晴れがましい誇りと姿がまぶしい1作。
冒頭、聞きなれぬ仕事歌が流れましたが、
これが山古志の大工に伝わり棟梁となって歌うことができる「天神囃子」
天神囃子は十日町の清酒の名前だと思ってましたが、
これが山古志の大工の仕事唄と知り興味深く思いました。
作品では棟梁が父親から、そして自分のあとを継ぎいづれ唄も任せる兄の息子、
さらに山古志の小学生達に歌い継がれていく様子が収められて、
1曲の仕事唄がつなぐ山古志の伝統に何やら感激させてくれました。
「山古志寺のお坊さん」
山古志寺なんてあっただろうかと思い見てみましたが
山古志支所の隣にある”地域復興支援センター山古志サテライト”
中越地震以後、山古志の人たちに寄り添い復興への支援を行ってるメンバーの中でスキンヘッドの方に焦点を。
担当者もこのスキンヘッドの方にお会いしたことがあり、
ここの支援センターの顔であるという印象を受けましたが、
あのスキンヘッドはファッションでなく、
作品を見てこの方は本物のお坊さんであると驚き、
また山古志に住んでるわけでなく、
毎日クルマで50分かけて通勤してる知り、さらに驚いた次第です。
中越地震の後にボランティア活動に参加、
山古志の人たちが住む仮設住宅を担当したことを機にこの支援センターへ。
山古志のイベントを仕掛けたり、住民との交流を深めていく様が記録されてます。
確かにこれは本職であるお坊さんの仕事といっても過言でないように見えました。
しかしよそ者である自分やこの仕事がなくなることが山古志の自立という旨で、
その日をどこかで願ってることも察しられ、その日は近いうちに来るのか気がかりにも映りました。
あと紹介してた山古志バーガーはまたの機にぜひ食べてみたいものだと。
キネマ旬報の連載でこのドキュメンタリーを紹介した「ヨコハマメリー」の中村高寛監督。
「1000年の山古志」の助監督を努めたので、
山古志に詳しいほか初監督作「ドコニモイケナイ」が高い評価となった島田隆一監督。
そして森達也監督「A」等、ドキュメンタリーの問題作を多く手がけてる安岡卓治プロデューサーと、
ドキュメンタリー畑で活躍してる映画人が指導者としてどの作品にもクレジットされてました。
以上、4本続けて見ると山古志の文化、歴史が次第に浮かび上がってくるように思い、
島田監督によれば4年前にも訪れ、その時は鯉師、牛飼いなどにカメラを向けたそうです。
それらを含めるとなおのこと山古志が立体的に大きく立ち上がるように思ったので、
いづれ4年前の作品も見たいと思いました。
そしてこれらをきちんと上映する機会は出来ないだろうかとも思い始めてます。
画像は「冬のアルパカ」クランクアップ後、青木さんは向かって左に写ってます。
作品を見るためにご協力をいただきました方々、ありがとうございました。