第14回・座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル ~映画祭巡礼記~
S東京特派員の映画祭巡礼記。
今回は初参加の「座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル」
読んでみると、その場にいたかったという思いがしました。
またよろしくお願いします!
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座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル 「第14回特集“教育“について」
映画祭ではなくTV・映画の枠にとらわれないのでフェスティバル。
今回のテーマは教育です。今年は2本見ることができました。
『Blue Island 憂鬱之島』2022年 チャン・ジーウン監督
こちらはゲストセレクター枠での上映。選んだ人は森達也監督。
『Blue Island 憂鬱之島』は現在の香港民主化運動を扱った映画かと思っていたのですが実際は違っていて、過去に大陸から逃れてきた人、1960年代の暴動、天安門事件などと香港の関わり合いを描いた映画で再現ドラマの部分など自分は見ているんだろう…これはドラマ?ドキュメンタリー?という思いがよぎったりしたのですが見続けるうちにこうしたものが「香港の現在」を形作ってきたのだな…と現在の運動につながる歴史を感じさせて、異色のドキュメンタリーでした。
上映後のセレクションした森達也監督と観客の質疑応答では中国からきたと思しき若い女性たちからの「しょせん一部のエリートたちが不満を抱いてるだけじゃないか」「抗議活動をするほうの暴力性を描いてない」「個人的なエモーションだけを描いた映画」といった批判に真摯に答えていたのが印象的でした。
高円寺ドキュメンタリーフェスティバル、ドキュメンタリーならではということでしょうか、質疑応答も熱かったです!
『ヘイ!ティーチャーズ!』2020年 ユリア・ヴィシュネヴェッツ監督
こちらは珍しいロシアの教育現場を描いた映画。
モスクワから地方の学校に赴任した新人教師2人を主人公に彼らの1年間を映画は追うのですがロシアの教育事情、90分の映画からも問題山積、というのが見えて興味深かったです。
映画の上映後にはロシアの監督とオンラインでのトークもあったのでさらに興味深い話が聞けそうだったのですが時間がなくて断念。きっと熱心な質疑応答になったんじゃないかと思うので残念でした。
おまけに『スープとイデオロギー』 2021年 ヤン・ヨンヒ監督
こちらチケットが売り切れで見れなかったのですが同じ日に横浜シネマリンでも上映していたのでそちらで見ました。
ヤン・ヨンヒ監督は自分の家族を題材に映画を撮っていますがこの映画は母親が主人公。大阪で空襲、疎開先の済州島で虐殺に遭遇、南側の政府とその後ろ盾のアメリカに幻滅、日本に帰り当時成立した北の政権に参加、3人の息子を北に送り出す…イデオロギーに振り回され過酷な人生。
そしてなんとも残酷なことに封印してきた虐殺の体験を語ったことで認知症が進んでしまう…ラストの切れ味がまたすさまじくて深い余韻を残す映画でした。
これも北のイデオロギー教育が人の一生に影響を及ぼす、という意味においては教育を扱った映画とも言えそうです。
高円寺にはヤン・ヨンヒ監督が来られていたというので観客と熱いやり取りがあったのでしょう。うう、残念。
さらに脱線しますが最近配信サービスJAIHOで見た『バッハマン先生の教室』も教育を扱ったドキュメンタリーの秀作でした。
教育をテーマにしたドキュメンタリーを立て続けに見ていろいろ考えさせられて刺激的でした。
いつも2月は忙しくてなかなか行けないのが残念。来年こそはもっと通いたいと思います。
http://zkdf.net/
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こちらで上映会を開いた『乱世備忘 僕らの雨傘運動』『デニス・ホー ビカミング・ザ・ソング』そして上映された『Blue Island 憂鬱之島』はいづれも小林三四郎氏が代表を務める太秦の配給作品。
三四郎氏は香港民主化運動に強いシンパシーを抱き『Blue Island 憂鬱之島』ではプロデューサーも買って出たハズ。
その香港民主化運動をテーマにした作品は当然、香港そして中国での上映は不可能なので、
時折、大陸の人たちはこのテーマにどんな感想を抱くのか興味を覚えてましたが、
特派員のレポには“中国から来たと思しき若い女性たち”が観に来て映画を批判し、
なるほど、こういう感想を抱くのかと
それに聞き入り真剣に応えていたという森達也監督。
改めてこの場にいたかった強い思いを抱きました。
レポにあった森達也監督、ヤン・ヨンヒ監督のほか、このドキュメンタリーフェスティバルには原一男監督、是枝裕和監督、大島新監督と大物たちが次々と登壇してるようで豪勢に思いました。
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