お茶の水大学の学長も務めた児童学の第一人者による少子化論。
 少子化を、克服すべき課題として単純に捉えるのではなく、「女性の権利の進展」、「子どもの価値の変化」といった歴史的なパースペクティブで捉えているのが特徴です。

 第一章では、ここ最近の少子化をめぐる議論を整理していますが、これは便利。少子化問題を論じた著作が幅広く紹介されていますので、この問題へのブックガイドとしても使えます。
 また、第二章と第三章での日本の間引きや堕胎、そして母性をめぐる議論も面白いです。
 女性に取って誇りともなり、同時に重荷ともなる「母性」というもののやっかいさがよくわかります。

 ただ、著者が専門とする「子ども」についての記述に関してはそれほど新しい発見はありませんでした。
 何となく今まで読んだような記述がつづいて第四章以降はいまいちでした。

 子どもというのは、自ら発言することが少ないだけに、「子ども論」というのはどうしても書き手の印象論になりがちです。子どもの真の姿というのは逆に統計のようなものを使わないと見えずらいのではないでしょうか?
 
それでも子どもは減っていく (ちくま新書)
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