タイトルは「外国人労働者」となっていますが、実質的には中国人の研修生・技能実習生と日系ブラジル人の二つの労働形態についてのルポになります。
外国人の単純労働が禁止されている日本において、その抜け穴となっているのがこの2つの制度。特に外国人の研修生・技能実習生制度に関しては、いままでもその問題の多い実態は知っていましたが、この本を読んで改めてそのひどさを思い知りました。
「外国人研修生・技能実習生制度」は、表向きは日本の進んだ技術を主に途上国の若者に学んでもらう制度でありながら、実態は研修と名ばかりで、研修生は工場や農場で単純労働に従事させられているケースが多く、この本では基本給5万円で、そのうち3万5千円は強制貯蓄、残業代は1時間300円など、最低賃金をはるかに下回る待遇で働かされている研修生の姿が紹介されています。
また、逃げたりしないようにパスポートをとり上げているケースも多く、ほとんど「人身売買」に近いような実態もあります。
このような問題のある研修制度の実態を、著者はさまざまな取材を通して明らかにしていきます。
中国人女性労働者への性的虐待や、「強制帰国」の実態、研修生が起こした受け入れ団体理事の殺人事件。いずれも、この制度の歪みがもたらした悲劇です。
また、冒頭で紹介されている、中国人研修生を日本に奥ろ出すために軍隊式訓練を行っている学院の様子は興味深いと同時に少し怖いものがあります。
そこの理事は著者の疑問に対して次のように答えていまう。
とにかく、一刻も早い制度の改正または廃止が必要だと強く感じます。
第2部の日系ブラジル人労働者に関してです。
こちらもリーマンショック以降の境遇は大変なのですが、中国人研修生の話と比べると、お国柄もあるせいか、どこかしら明るく、それぞれの人間ドラマが垣間見える内容になっています。
90年代、日本の人手不足は日系ブラジル人の労働力を欲し、日系ぶるジル陣たちも1月に30万近く稼ぐのがざらでした。ところが、リーマンショック以降、どこに行っても仕事はなく、職を失った日系ブラジル人たちは身を寄せあって暮らしています。
日系ブラジル人の現在の状況を知ると同時に、日本経済のここ20年の低迷を思い知らされるような内容です。
外国人労働者全体のことをすることができる本ではありませんが、その断面を切り取った非常に優れたルポだと思います。
ルポ 差別と貧困の外国人労働者 (光文社新書)
安田 浩一

外国人の単純労働が禁止されている日本において、その抜け穴となっているのがこの2つの制度。特に外国人の研修生・技能実習生制度に関しては、いままでもその問題の多い実態は知っていましたが、この本を読んで改めてそのひどさを思い知りました。
「外国人研修生・技能実習生制度」は、表向きは日本の進んだ技術を主に途上国の若者に学んでもらう制度でありながら、実態は研修と名ばかりで、研修生は工場や農場で単純労働に従事させられているケースが多く、この本では基本給5万円で、そのうち3万5千円は強制貯蓄、残業代は1時間300円など、最低賃金をはるかに下回る待遇で働かされている研修生の姿が紹介されています。
また、逃げたりしないようにパスポートをとり上げているケースも多く、ほとんど「人身売買」に近いような実態もあります。
このような問題のある研修制度の実態を、著者はさまざまな取材を通して明らかにしていきます。
中国人女性労働者への性的虐待や、「強制帰国」の実態、研修生が起こした受け入れ団体理事の殺人事件。いずれも、この制度の歪みがもたらした悲劇です。
また、冒頭で紹介されている、中国人研修生を日本に奥ろ出すために軍隊式訓練を行っている学院の様子は興味深いと同時に少し怖いものがあります。
そこの理事は著者の疑問に対して次のように答えていまう。
「当学院の目的は、日本の経営者に望まれ、喜んでもらえる人材を育成することです。経営者の指示を素直に受け入れ、どんなに苦しくても勤労意欲を失わない。そんな人材こそが必要とされているのです。苦しさに耐えることができなければ、日本企業のなかではやっていけません」
とにかく、一刻も早い制度の改正または廃止が必要だと強く感じます。
第2部の日系ブラジル人労働者に関してです。
こちらもリーマンショック以降の境遇は大変なのですが、中国人研修生の話と比べると、お国柄もあるせいか、どこかしら明るく、それぞれの人間ドラマが垣間見える内容になっています。
90年代、日本の人手不足は日系ブラジル人の労働力を欲し、日系ぶるジル陣たちも1月に30万近く稼ぐのがざらでした。ところが、リーマンショック以降、どこに行っても仕事はなく、職を失った日系ブラジル人たちは身を寄せあって暮らしています。
日系ブラジル人の現在の状況を知ると同時に、日本経済のここ20年の低迷を思い知らされるような内容です。
外国人労働者全体のことをすることができる本ではありませんが、その断面を切り取った非常に優れたルポだと思います。
ルポ 差別と貧困の外国人労働者 (光文社新書)
安田 浩一
