明治維新によって徳川幕府が崩壊し江戸時代の秩序が崩れ去ると、そこには貧民たちと彼らの住むスラムが出現します。
そんなスラムの姿と彼らを収容するためにつくられた養育院の歴史を語った本です。
東京のかつての四大スラム、鮫ヶ橋(現在の信濃町駅付近)、万年町(現在の上野駅付近)、新網町(現在の浜松町駅付近)、新宿南町(現在の新宿のウィンズのあたり)が現在の地図とともに紹介されている部分などは非常に興味深いですし(鮫ヶ橋が現在、創価学会の拠点となっている点も興味深いです)、また江戸時代の非人による貧民管理が明治になっても受け継がれた部分などは、歴史の裏にかくされた”現実”のようなものを感じさせてくれます。
ただ、ややまとまりに欠ける面もあって、東京の貧民について描くのか、近代における慈善事業の系譜について描くのかはっきりしない部分もあります。
また、文章はやや文学的です。このあたりを面白いと取るか、まとまりに欠けると取るかは意見の分かれる所でしょう。
個人的には、もう少し東京の貧民の実態にこだわって、特に十五年戦争期に「皮肉にも市内各地のスラムの混雑と密集がうそのように解消されていた」(212p)という部分をもっと掘り下げて欲しかったですね。
貧民の帝都 (文春新書 655)
塩見 鮮一郎

そんなスラムの姿と彼らを収容するためにつくられた養育院の歴史を語った本です。
東京のかつての四大スラム、鮫ヶ橋(現在の信濃町駅付近)、万年町(現在の上野駅付近)、新網町(現在の浜松町駅付近)、新宿南町(現在の新宿のウィンズのあたり)が現在の地図とともに紹介されている部分などは非常に興味深いですし(鮫ヶ橋が現在、創価学会の拠点となっている点も興味深いです)、また江戸時代の非人による貧民管理が明治になっても受け継がれた部分などは、歴史の裏にかくされた”現実”のようなものを感じさせてくれます。
ただ、ややまとまりに欠ける面もあって、東京の貧民について描くのか、近代における慈善事業の系譜について描くのかはっきりしない部分もあります。
また、文章はやや文学的です。このあたりを面白いと取るか、まとまりに欠けると取るかは意見の分かれる所でしょう。
個人的には、もう少し東京の貧民の実態にこだわって、特に十五年戦争期に「皮肉にも市内各地のスラムの混雑と密集がうそのように解消されていた」(212p)という部分をもっと掘り下げて欲しかったですね。
貧民の帝都 (文春新書 655)
塩見 鮮一郎
