近代フランスを中心にタイトル通り「犯罪者の自伝」を読んだ本。
カテゴリーを「社会」ではなく「文学」にしたように、犯罪者の自伝を通して犯罪のメカニズムや当時の社会状況を探った本というよりは、「自伝」という文学の一つのジャンルの枠組みの中で犯罪者の自伝を読み解いているところにこの本の特徴があります。
とりあげられているのは、フーコーによる研究でも有名なピエール・リヴィエール、「洗練された犯罪者」として社会に反逆を試みたラスネール、冤罪とも考えられる夫殺しで罪に問われたマリー・ラファルジュ、猟奇的殺人者の走りとも言えそうなアンリ・ヴィダル、妻を扼殺した哲学者ルイ・アルチュセール、そして永山則夫。
いずれの人物に関しても事件そのものやその背景への言及もありますが、中心になるのは彼らの自伝の内容。
例えば、知性と才能に恵まれながら社会に居場所を確保することができず、社会に対する反逆として犯罪に手を染めたラスネール。獄中で詩作をし、裁判にも挑発的な態度で臨んだ彼は、ある意味でロマン主義のもう仕事も言える存在で、ロマン主義的な自伝を書くために犯罪者になったのではないか?と思えるほどです。
このように犯罪者の自伝にはある種の方やストーリーがあり、その時代の「言説」に大きな影響を受けています。
ルイ・アルチュセールの「自伝」は明らかに精神分析の影響のもとに書かれており、その構造はポストモダン的です。
新しい知見や、犯罪についての何がしかノリt論がある本ではありませんが、なかなか読み応えのある面白い読み物に仕上がっていると思います。
犯罪者の自伝を読む ピエール・リヴィエールから永山則夫まで (平凡社新書)
小倉 孝誠

カテゴリーを「社会」ではなく「文学」にしたように、犯罪者の自伝を通して犯罪のメカニズムや当時の社会状況を探った本というよりは、「自伝」という文学の一つのジャンルの枠組みの中で犯罪者の自伝を読み解いているところにこの本の特徴があります。
とりあげられているのは、フーコーによる研究でも有名なピエール・リヴィエール、「洗練された犯罪者」として社会に反逆を試みたラスネール、冤罪とも考えられる夫殺しで罪に問われたマリー・ラファルジュ、猟奇的殺人者の走りとも言えそうなアンリ・ヴィダル、妻を扼殺した哲学者ルイ・アルチュセール、そして永山則夫。
いずれの人物に関しても事件そのものやその背景への言及もありますが、中心になるのは彼らの自伝の内容。
例えば、知性と才能に恵まれながら社会に居場所を確保することができず、社会に対する反逆として犯罪に手を染めたラスネール。獄中で詩作をし、裁判にも挑発的な態度で臨んだ彼は、ある意味でロマン主義のもう仕事も言える存在で、ロマン主義的な自伝を書くために犯罪者になったのではないか?と思えるほどです。
このように犯罪者の自伝にはある種の方やストーリーがあり、その時代の「言説」に大きな影響を受けています。
ルイ・アルチュセールの「自伝」は明らかに精神分析の影響のもとに書かれており、その構造はポストモダン的です。
新しい知見や、犯罪についての何がしかノリt論がある本ではありませんが、なかなか読み応えのある面白い読み物に仕上がっていると思います。
犯罪者の自伝を読む ピエール・リヴィエールから永山則夫まで (平凡社新書)
小倉 孝誠
