山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

ここブログでは新書を10点満点で採点しています。

2006年12月

今年の新書

 今年は順調に結構な冊数を読んだ気がするので、その中からよかったのを5冊ほど。

見田宗介『社会学入門―人間と社会の未来』
4004310091

 「ベスト新書」ともいえる『現代社会の理論』ほどではないですが、未開社会から近代、そして現代社会へと非常に大きなスケールで社会の変化、人類の変化を見つめ、なおかつ文学的な視点もあわせて社会の変化を捉えた本。


薬師院 仁志『日本とフランス 二つの民主主義』
4334033652

 日本の左派の基本的な立ち位置の間違いを鋭く指摘した本。日本の政治の対立軸を考える上で非常に参考になる本です。


梅田望夫『ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる』
4480062858

 けっこううさんくさく思える「web2.0」などという言葉も、この本を読むと、その形や可能性が見えてくる!


橘玲『臆病者のための株入門』
4166605143

 株について書いてある本は山ほどありますが、手軽かつ核心を書いている本としてもっともお薦めできる本。


米本昌平『バイオポリティクス―人体を管理するとはどういうことか』
4121018524

 さすがの議論の深さと言うべき本。単に「インフォームドコンセントを」的な提言にとどまらない、生命倫理問題に置ける深い対立軸を示した本です。


 これ以外だと黒田基樹『百姓から見た戦国大名』、白田秀彰『インターネットの法と慣習』、佐藤卓己『メディア社会』、竹中治堅『首相支配』、末木文美士『仏教vs.倫理』といったところでしょうか。
 今年発売以外のものなら、佐藤卓己『言論統制』ですね。

宮下誠『20世紀絵画』(光文社新書) 5点

 「わからない!」と言われる20世紀絵画を丁寧に読み解こうとした本。前半のマネから抽象画への流れはそれなりに「なるほど」と思わせるんだけど、後半の具象絵画を現代ドイツの画家を中心に見ていくところは正直いまいちかと。
 著者は旧東独の具象絵画に衝撃を受けていて、なんとかそれを伝えようとしているんだけど、現代絵画についてたいして知識のないものにとってはその衝撃が正直よくわからない。著者の専門がそちらのほうなんでしょうがない面はあるけど、入門書ならばベックマンあたりまでの紹介だったほうが「20世紀絵画」というテーマではまとまったと思います。
 それと、「ドイツ人のアイデンティティ」とか「ナチスの記憶」みたいな補助線には個人的には疑問のところもあって、そういう補助線がないと「わからない」絵ってのもどうなんだろ?

宮下誠『20世紀絵画 モダニズム美術史を問い直す』

スラヴォイ・ジジェク『人権と国家』(集英社新書) 5点

 ジジェクの論文「パリ暴動と関連事項にまつわる、物議を醸す考察」、「人権の概念とその変遷」の2つに岡崎玲子によるインタビューをあわせた本。
 ジジェクの論文はまあ相変わらずのジジェク節で面白いんですけど、インタビューはジジゼクがあえて過激なことを言って盛り上げようとしてくれってるっぽいのに、岡崎玲子がつまんない対応しかしていないので基本的につまらない。食器棚に服を入れているというジジェクの変人ぶりとかは面白いですけどね。
 ジジェクの論文を読みたかったら買うべき本で、ジジェクの入門書とか、「世界情勢に対する世界的知識人の提言」見たいのを期待している人にはどうかな?と思います。

スラヴォイ・ジジェク『人権と国家―世界の本質をめぐる考祭』

友野典男『行動経済学』(光文社新書) 7点

 2002年度にノーベル経済学賞を受賞したカーネマンらが唱えた行動経済学についての解説書。カーネマンの仕事については真壁昭夫『最強のファイナンス理論』(講談社現代新書)でも紹介がありましたが、こちらのほうが内容は圧倒的に濃いです。
 人間の直観的判断の強さやそれにかかってくるバイアス、将来を見通すときの双曲線割引など、合理的な経済人を想定するだけではわからない人間の行動が認知心理学の実験などを通して解説されています。
 こうした知見をどう経済学に組み込んでいくのかという点についてはけっこう問題もある気もしますが、純粋に認知心理学的な知識としても面白いものがあります。
 「神経経済学」という話までいくと、さすがにやりすぎな気もしますし、少し新書にしては中身を詰め込みすぎている気もしますが、面白い本だと思います。

友野典男『行動経済学 経済は「感情」で動いている』

吉本佳生『金融広告を読め』(光文社新書) 9点

 新書ながら500ページ以上あり1200円と値段も張る本ですが、是は非常に役に立つ本。新聞などで見かけるさまざまな”おトクな”金融広告のカラクリをバッサバッサと切りまくってくれます。
 金利表示のトリックから始まり、裏に隠された手数料を考えることの重要性、複数のファンドに投資する投資信託のぼったくり、元本保証もののカラクリとそれによりほとんど大きなリターンが狙えない現実など、金融機関側の騙しのテクニックの裏側を知ることができます。
 また、同時にインフレのリスクやリスクとリターンの考え方、円安が即インフレを生むといった俗説への批判など経済学的な考え方も同時に学ぶことができる本でもあります。
 最初に金融広告の例を50ページちょいにもわたってカラーで取り上げているのは無駄な気もしますが、非常にためになる本と言えるでしょう。

吉本佳生『金融広告を読め どれが当たりで、どれがハズレか』
記事検索
月別アーカイブ
★★プロフィール★★
名前:山下ゆ
通勤途中に新書を読んでいる社会科の教員です。
新書以外のことは
「西東京日記 IN はてな」で。
メールはblueautomobile*gmail.com(*を@にしてください)
<% for ( var i = 0; i < 7; i++ ) { %> <% } %>
<%= wdays[i] %>
<% for ( var i = 0; i < cal.length; i++ ) { %> <% for ( var j = 0; j < cal[i].length; j++) { %> <% } %> <% } %>
0) { %> id="calendar-294826-day-<%= cal[i][j]%>"<% } %>><%= cal[i][j] %>
タグクラウド
  • ライブドアブログ

'); label.html('\ ライブドアブログでは広告のパーソナライズや効果測定のためクッキー(cookie)を使用しています。
\ このバナーを閉じるか閲覧を継続することでクッキーの使用を承認いただいたものとさせていただきます。
\ また、お客様は当社パートナー企業における所定の手続きにより、クッキーの使用を管理することもできます。
\ 詳細はライブドア利用規約をご確認ください。\ '); banner.append(label); var closeButton = $('