この本はタイトルが『飯田のミクロ経済入門』ではなく『飯田のミクロ』となっているところがポイントで、実はかなり難しい本。
帯には「複雑な数式は不使用。若手論客による画期的入門書」とありますが、正直なところ代表的な経済学の教科書であるグレゴリー・マンキューの『マンキュー経済学〈1〉ミクロ編』よりも難しく、この本から「経済学」の勉強を始めるのは難しいでしょう。
「経済学についてある程度の知識を持っている人が、「ミクロ経済学」にチャレンジするための本」、というのがこの本の位置づけだと思います。
第1章は「比較優位」の話とその分析から始まりますが、第2章では消費者理論と生産者理論を使って需要曲線と供給曲線を導くという、素人から見るとめんどくさいことをやっています。
普通の経済学の入門書だと、まずは簡単に需要曲線と供給曲線を導いて、需要と供給のグラフをつくり、そこからさまざまな意味を読み取るといった形になるのですが、この本ではそのよく見る形の需要と供給のグラフが登場するのはかなり後になります。
これは著者が狙いを持ってやっていることです。通常のテキストではいわゆる需要と供給のグラフで表される部分均衡分析からはじまって一般均衡分析に至るのが普通ですが、この本ではあえて難しい一般均衡分析を先にやっています。
この理由を著者は次のように述べています。
けれでも、著者によるとこれを「望ましい」と言い切るためには、「(A)人びとの幸福度を計測することが可能」、「(B)それを合計したり比較したり することが可能」、「(C)1円の価値は誰にとっても同じ」という3つの前提条件が必要で、それを受け入れることは困難だというのです(150ー 151p)。
確かにこの前提条件というのはよく経済学を攻撃するときにも用いられるものなので、こうした前提条件を使わない一般均衡分析を優先するというこの戦略は正しいのかもしれません。
ただ、直観的に理解がしやすい部分均衡分析に対して、一般均衡分析が理解しづらいのも事実。特に新書を通勤途中の電車で読んでいる身としては、読んでいながら「?」となる部分も多かったです。
誰かの講義を聞いたり、自分で紙の上に簡単な計算とかをしながらであればなんとかなりそうなのですが、この本の文章や数式を読んだだけで一般均衡分析のからくりを理解できる人はかなり数学的な思考に慣れた人なのではないでしょうか?
ミクロ経済学がどんなものなのかということがコンパクトにまとめられているので、例えば、大学で本格的に経済学を学ぼうと考えている高校生などが読めば、実際の「経済学」のイメージが掴めると思います。また数学的な理解力が高い人であれば、この本でミクロ経済学の仕組みがつかめるでしょう。
ただ、個人的にはこのレベルの本であれば新書サイズではなく机に広げられる大きさの本であったほうがいい気がしました。
飯田のミクロ 新しい経済学の教科書1 (光文社新書)
飯田 泰之

帯には「複雑な数式は不使用。若手論客による画期的入門書」とありますが、正直なところ代表的な経済学の教科書であるグレゴリー・マンキューの『マンキュー経済学〈1〉ミクロ編』よりも難しく、この本から「経済学」の勉強を始めるのは難しいでしょう。
「経済学についてある程度の知識を持っている人が、「ミクロ経済学」にチャレンジするための本」、というのがこの本の位置づけだと思います。
第1章は「比較優位」の話とその分析から始まりますが、第2章では消費者理論と生産者理論を使って需要曲線と供給曲線を導くという、素人から見るとめんどくさいことをやっています。
普通の経済学の入門書だと、まずは簡単に需要曲線と供給曲線を導いて、需要と供給のグラフをつくり、そこからさまざまな意味を読み取るといった形になるのですが、この本ではそのよく見る形の需要と供給のグラフが登場するのはかなり後になります。
これは著者が狙いを持ってやっていることです。通常のテキストではいわゆる需要と供給のグラフで表される部分均衡分析からはじまって一般均衡分析に至るのが普通ですが、この本ではあえて難しい一般均衡分析を先にやっています。
この理由を著者は次のように述べています。
しかし、部分均衡分析から始める通常の順序立ては、経済学そのものの意義・特性について書き手が意図しない誤解を招く可能性があります。その誤解の原因が、部分均衡分析での経済厚生の評価基準〜余剰です。(137p)需要と供給のグラフでは、需要と供給の均衡点で消費者余剰と生産者余剰が最大限になることから、この均衡状態を望ましいものだとしています。
けれでも、著者によるとこれを「望ましい」と言い切るためには、「(A)人びとの幸福度を計測することが可能」、「(B)それを合計したり比較したり することが可能」、「(C)1円の価値は誰にとっても同じ」という3つの前提条件が必要で、それを受け入れることは困難だというのです(150ー 151p)。
確かにこの前提条件というのはよく経済学を攻撃するときにも用いられるものなので、こうした前提条件を使わない一般均衡分析を優先するというこの戦略は正しいのかもしれません。
ただ、直観的に理解がしやすい部分均衡分析に対して、一般均衡分析が理解しづらいのも事実。特に新書を通勤途中の電車で読んでいる身としては、読んでいながら「?」となる部分も多かったです。
誰かの講義を聞いたり、自分で紙の上に簡単な計算とかをしながらであればなんとかなりそうなのですが、この本の文章や数式を読んだだけで一般均衡分析のからくりを理解できる人はかなり数学的な思考に慣れた人なのではないでしょうか?
ミクロ経済学がどんなものなのかということがコンパクトにまとめられているので、例えば、大学で本格的に経済学を学ぼうと考えている高校生などが読めば、実際の「経済学」のイメージが掴めると思います。また数学的な理解力が高い人であれば、この本でミクロ経済学の仕組みがつかめるでしょう。
ただ、個人的にはこのレベルの本であれば新書サイズではなく机に広げられる大きさの本であったほうがいい気がしました。
飯田のミクロ 新しい経済学の教科書1 (光文社新書)
飯田 泰之
