日本のこれから先の安全保障を、アメリカの戦略を読み解く事で考えようとしている本。
個々の材料や着眼点には面白いものがあるのですが、全体としてはあまりまとまっていないのではないかと。
例えば、イラク戦争を主導したとされるネオコンについても、はっきりと「異質」だと書いている部分もあれば、ソ連消滅後のアメリカは敵としてイラン・イラク・北朝鮮を一貫してその目標としてきた、というような記述もあり、アメリカの戦略の断絶性を見るのか連続性を見るのかはっきりしません。
また、この手の本にありがちなのですが、この本ではアメリカに比べて日本に戦略は「ない」とする見方が強いです。
しかし、これはあまり生産的な議論とは言えないでしょう。
戦略の巧拙は別にしても、小泉政権はイラクでは踏み込んだ対米協調をしながら、北朝鮮では必ずしもアメリカの意に沿ったわけではない外交を展開しました。これも一種の戦略です。
それをイラクでは対米追従を批判し、対北朝鮮ではアメリカの動向をわかっていなかったと批判するのは、あまりフェアな議論とは言えないでしょう。
また、「日本はシーレーン構想の目的をわかっていなかった」という話が冒頭になりますが、鈴木善幸首相はともかく、「日本列島浮沈空母論」を唱えた中曽根首相がわかっていなかったということはないのでは?
国家的な戦略というのは「ある」、「なし」ではなく、あくまでその巧拙で評価されるべきです。その点でこの本の議論はやや乱暴だと思います。
また、やや「陰謀論」的なものを取り入れすぎている感もあります。
もう少し客観的な戦略論が読みたかったですね。
日米同盟の正体~迷走する安全保障 (講談社現代新書)
孫崎 享

個々の材料や着眼点には面白いものがあるのですが、全体としてはあまりまとまっていないのではないかと。
例えば、イラク戦争を主導したとされるネオコンについても、はっきりと「異質」だと書いている部分もあれば、ソ連消滅後のアメリカは敵としてイラン・イラク・北朝鮮を一貫してその目標としてきた、というような記述もあり、アメリカの戦略の断絶性を見るのか連続性を見るのかはっきりしません。
また、この手の本にありがちなのですが、この本ではアメリカに比べて日本に戦略は「ない」とする見方が強いです。
しかし、これはあまり生産的な議論とは言えないでしょう。
戦略の巧拙は別にしても、小泉政権はイラクでは踏み込んだ対米協調をしながら、北朝鮮では必ずしもアメリカの意に沿ったわけではない外交を展開しました。これも一種の戦略です。
それをイラクでは対米追従を批判し、対北朝鮮ではアメリカの動向をわかっていなかったと批判するのは、あまりフェアな議論とは言えないでしょう。
また、「日本はシーレーン構想の目的をわかっていなかった」という話が冒頭になりますが、鈴木善幸首相はともかく、「日本列島浮沈空母論」を唱えた中曽根首相がわかっていなかったということはないのでは?
国家的な戦略というのは「ある」、「なし」ではなく、あくまでその巧拙で評価されるべきです。その点でこの本の議論はやや乱暴だと思います。
また、やや「陰謀論」的なものを取り入れすぎている感もあります。
もう少し客観的な戦略論が読みたかったですね。
日米同盟の正体~迷走する安全保障 (講談社現代新書)
孫崎 享






