山下ゆの新書ランキング Blogスタイル第2期

ここブログでは新書を10点満点で採点しています。

2006年08月

ロナルド・ドーア『誰のための会社にするか』(岩波新書) 6点

 同じ著者の、中公新書『働くということ』に関してはかつてこのページで(http://blogs.dion.ne.jp/morningrain/archives/2616975.html)、「勇ましい提言や、高らかな正義の主張はないが有益な本」と書きましたが、この本にはややそういう部分があって、『働くということ』に比べると分析に冷静さがないような気がします。

 著者は株主至上主義を批判し、株主だけでなく従業員、地域、顧客、取引先などのステークスホルダーの考えた会社を目指すべきだと言っていて、それは大きな間違いではないと思うのですが、最終的な形はともかく、日本ではまだまだ株主の力が弱すぎるのではないでしょうか?
 今まで日本の共同体的で不透明な経営に比べれば、株式市場というものの公正さというものは、やはり評価されるべきだと思うのです。
 
 この辺りに関しては個人個人によってずいぶんと考えのちがいというものがあるのでしょうが、少なくとも僕はこの本を読んで、「今の日本において株主重視の流れを変えなければ」、とは思いませんでした。

ロナルド・ドーア『誰のための会社にするか』

郡司ペギオ-幸夫『生きていることの科学』(講談社現代新書) 2点

 意識や生命を解読する鍵となる概念は「マテリアル(物質)」であるという基本コンセプトを、さまざまな比喩や思考実験などを通して明らかにしようとしているけど、哲学的な概念のいい加減な使い方が酷すぎる。
 「内包と外延」とか「実在論」とか著者は意味が分かってないんじゃないか?
 帯で養老孟司が「彼の話はむずかしい。でもその本気の思考が、じつに魅力的なのだ。」って言ってるけど、単に著者の思考が思いつきの域を出ていないとしか思えない。

郡司ペギオ-幸夫『生きていることの科学』

小田中直樹『日本の個人主義』(ちくま新書) 5点

 大塚久雄の議論を参考に「個人の自律」という問題について論じた本なのですが、現代社会における個人の自律をめぐる問題と議論の下敷きになる大塚久雄の考えがいまいちリンクしきれていないという印象を受けます。
 政治面におけるネオ・リベラリズムの台頭などからも「個人の自律」をどう捉えるかということがアクチュアルな問題なのだという著者の考えはわかりますが、大塚久雄にこだわらないで、より現在の問題に焦点を当てたほうが面白かった気がします。
 間違ったことを行っているわけではないけど、ちょっと印象に残らない感じです。

小田中直樹『日本の個人主義』
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