本の帯に「その島はかって『大宮島』だった」とあるように、第2次大戦時に日本に占領され、「大宮島」として統治されたグアム。現在は「リゾート地」としてのイメージしかないグアムですが、この日本の統治を含めて、スペインによる支配、アメリカの軍事基地としての側面などさまざまな歴史があり、その中で翻弄されてきた現地のチャモロ人の生活があります。そうした、日本人の知らない、あるいは忘れたグアムについて教えてくれる本です。
特に、アメリカ軍によるグアム上陸によって「玉砕」したとされる日本軍のほぼ半数が実はジャングルで潜伏を続け、その中から1952年に皆川文蔵氏と伊藤正氏が「発見」され、さらに1972年には横井庄一氏が「発見」された経緯を、当時の日本社会の反応を絡めて書いた部分は面白いですし、さらにはその横井氏の「新婚旅行」が、グアムの新婚旅行誘致のイベントとして行われた顛末も当時を知らない者としては非常に興味深いものがあります。
それ以外にも、グアムが1960年代中頃まで立入禁止の孤島であり、現在にいたってもグアムの住民にはアメリカ大統領選の投票権がないといった部分は今まで知らないことでした。
逆にやや物足りない点としては、第4章でグアムのガイドブックを分析しつつグアム観光の変化を追っているのですが、その部分で肝心の観光客の行動の変化がいまいち書かれていないので、少し消化不良になっている点など、全体的に「人への取材」といったものが少し足りない所です。
ただ、グアムの歴史やひと味違った観光のガイドブックとしても読めますし、社会学の本としても面白い本だと思います。
グアムと日本人―戦争を埋立てた楽園 (岩波新書 新赤版 1083)
山口 誠

特に、アメリカ軍によるグアム上陸によって「玉砕」したとされる日本軍のほぼ半数が実はジャングルで潜伏を続け、その中から1952年に皆川文蔵氏と伊藤正氏が「発見」され、さらに1972年には横井庄一氏が「発見」された経緯を、当時の日本社会の反応を絡めて書いた部分は面白いですし、さらにはその横井氏の「新婚旅行」が、グアムの新婚旅行誘致のイベントとして行われた顛末も当時を知らない者としては非常に興味深いものがあります。
それ以外にも、グアムが1960年代中頃まで立入禁止の孤島であり、現在にいたってもグアムの住民にはアメリカ大統領選の投票権がないといった部分は今まで知らないことでした。
逆にやや物足りない点としては、第4章でグアムのガイドブックを分析しつつグアム観光の変化を追っているのですが、その部分で肝心の観光客の行動の変化がいまいち書かれていないので、少し消化不良になっている点など、全体的に「人への取材」といったものが少し足りない所です。
ただ、グアムの歴史やひと味違った観光のガイドブックとしても読めますし、社会学の本としても面白い本だと思います。
グアムと日本人―戦争を埋立てた楽園 (岩波新書 新赤版 1083)
山口 誠
