東日本大震災からの復興の中で明らかになってきた様々な問題点、そういった問題に法の側面から迫ったのがこの本です。「大災害が起こった時に利用できる法は何か?」ということを紹介するだけではなく、現在の法体系とその運用が抱える課題にまで踏み込んで論じているのがこの本の特徴といえるでしょう。
本の構成としては、第1部「法のかたち」で日本の災害法制の歴史をたどり、第2部の「災害サイクルと法」で災害直後、復旧、復興時にそれぞれ関わってくる方を紹介、第3部の「法の課題」で東日本大震災によって明らかになった日本の災害法の問題点を指摘するかたちになっています。
ただ、前半から日本の災害法の問題点はビシバシ指摘されており、ハウ・ツーにとどまらない考えさせる内容になっています。
例えば、避難所での粗末な食事について「法律で、一人一日1010円と決まっている」との言い分がありますが、これは法律より下位の「通知」や「事務連絡」による適用基準でしかありません(20ー22p)。
また、災害直後の被災者を救うための「災害救助法」は弾力的な運用を許すものになっていますが、その弾力的な運用を阻んでいるものが、「災害救助事務取扱要項」の中の5つの原則。
それは「平等の原則」、「必要即応の原則」、「現物給付の原則」、「現在地救助の原則」、「職権救助の原則」の5つ。こられの原則は間違ったものではないかもしれませんが、これが硬直的に適用されると様々な問題を生みます。
災害救助法では、「生業に必要な資金、器具又は資料の給与又は貸与」(23条1項7号)という規定がありますが、実際には「現物給付の原則」の前に、なかなか個人への資金の給付は行われません。
この「現物給付の原則」の問題点は、林敏彦『大災害の経済学』(PHP新書のせいかいまいち注目されていないですが、この本はいい本。この『大災害と法』でも参考文献にあげられています)、原田泰『震災復興 欺瞞の構図』などでも指摘されていたことですが、今後検討していくべき課題でしょう。
こういった、硬直的な法の運用が生み出す問題以外にもこの本ではさまざまな問題をとり上げています。
災害によって借家が全壊してしまったときに適用されることがある「罹災都市借地借家臨時処理法」の内容とその問題点、被災したマンションの選ぶべき選択肢、広域避難に伴う問題、災害があらわにした個人情報保護法の欠陥など、興味深いトピックが並んでします。
この本の中でとり上げられているトピックには、今回の東日本大震災においてはもう手遅れになっているものもありますが、まだまだ現在進行形の問題もあります。その意味からも復興に携わる人、そして被災者の方々に、この本が広く読まれていくといいのではないかと感じました。
大災害と法 (岩波新書)
津久井 進

本の構成としては、第1部「法のかたち」で日本の災害法制の歴史をたどり、第2部の「災害サイクルと法」で災害直後、復旧、復興時にそれぞれ関わってくる方を紹介、第3部の「法の課題」で東日本大震災によって明らかになった日本の災害法の問題点を指摘するかたちになっています。
ただ、前半から日本の災害法の問題点はビシバシ指摘されており、ハウ・ツーにとどまらない考えさせる内容になっています。
例えば、避難所での粗末な食事について「法律で、一人一日1010円と決まっている」との言い分がありますが、これは法律より下位の「通知」や「事務連絡」による適用基準でしかありません(20ー22p)。
また、災害直後の被災者を救うための「災害救助法」は弾力的な運用を許すものになっていますが、その弾力的な運用を阻んでいるものが、「災害救助事務取扱要項」の中の5つの原則。
それは「平等の原則」、「必要即応の原則」、「現物給付の原則」、「現在地救助の原則」、「職権救助の原則」の5つ。こられの原則は間違ったものではないかもしれませんが、これが硬直的に適用されると様々な問題を生みます。
災害救助法では、「生業に必要な資金、器具又は資料の給与又は貸与」(23条1項7号)という規定がありますが、実際には「現物給付の原則」の前に、なかなか個人への資金の給付は行われません。
この「現物給付の原則」の問題点は、林敏彦『大災害の経済学』(PHP新書のせいかいまいち注目されていないですが、この本はいい本。この『大災害と法』でも参考文献にあげられています)、原田泰『震災復興 欺瞞の構図』などでも指摘されていたことですが、今後検討していくべき課題でしょう。
こういった、硬直的な法の運用が生み出す問題以外にもこの本ではさまざまな問題をとり上げています。
災害によって借家が全壊してしまったときに適用されることがある「罹災都市借地借家臨時処理法」の内容とその問題点、被災したマンションの選ぶべき選択肢、広域避難に伴う問題、災害があらわにした個人情報保護法の欠陥など、興味深いトピックが並んでします。
この本の中でとり上げられているトピックには、今回の東日本大震災においてはもう手遅れになっているものもありますが、まだまだ現在進行形の問題もあります。その意味からも復興に携わる人、そして被災者の方々に、この本が広く読まれていくといいのではないかと感じました。
大災害と法 (岩波新書)
津久井 進
