とりあえず今のところ自分は就活とは離れたところにいるので「読み物」として読んで「7点」をつけましたが、就活生、あるいはその親や周囲に就活生がいる人にとってはかなりいい本だと思います。「就活」関連の新書について、今までそれほどオススメできるような本を読んだことはなかったですが、とりあえず今まで読んだ中ではこの本が一番いいのでは、と感じました。
就活を扱った本というと「就活に勝つために過剰な適応を強いる本」か「就活の理不尽さを批判し、同時に日本企業の人事システムを批判した本」の二種類がまず頭に思い浮かびます。前者は妙にテンションが上がるだけで就活生以外が読んでも意味がないし、後者はそれなりに聞くべきところはあっても就活生の役には立たない、基本的にはそういった本が目立つように思えます。
一方、就活を「斜めから見る」ような本もここ最近目立ってきていて、就活のからくりや問題点、学生の盲点などが一端がわかったりします。ただ、そういった本の多くは多くの場合元リクルートの人事コンサルタントとかが書いたもので、個人的には「マッチポンプじゃないか?」という思いもあります。
そんな中、この本の著者は複数の大学のキャリアセンターで働いたことのある人物。名前は匿名とのことですが、その分、企業、大学、学生、そしてリクルートをはじめとする業者の問題点をしっかりと指摘した内容になっています。
就活をめぐる問題点が幅広く指摘されているこの本ですが、そうした中でも個人的に「なるほど」と思ったのが「ショーイベント化する企業説明会」という指摘。
ナビサイトの登場に一気にエントリー数が激増した大企業は、面接に回す人数を絞るためにSPIを行ったりエントリーシートにいろいろなことを書かせたりして志望者の絞り込みを図ろうとしています。
そして1次面接で面接を行うのは人事部の人間ではない若手社員のケースも多く、そこで「ノリの悪い」学生たちが落とされていきます。
このように志望者の増加というのは採用する側にも大きな負担をかけていますし、また、必ずしも企業にとっていい人材が確保できるシステムというわけでもありません。
けれども、最近の企業説明会はますますショーイベント化し、企業は若手の人事マンを表に出し、学生たちに「会社のイメージ」を熱心にアピールしています。
これについて著者は以下のように分析しています。
また、現在の学生に対してもよく見ています。
もちろん、文章の力の低さなど学力の面についての厳しい指摘もあるのですが、興味深かったのが「縁故採用を嫌う」という最近の学生の傾向。就活がここまで通過儀礼のようになると、どうしても仲間とは違うやり方で内定を取ることに値する後ろめたさがあるようで、縁故で悩む学生が多いのだそうです。
こういったことを知ると、今まではしょせんは運や縁故で決まっていた就職というものが、ナビサイトやさまざまな情報の流通経路の発達により、「オープンな競争(実質はオープンに見える競争)」になってきたことが就活の大きな問題のような気もします。
その他にも、人事マンの本音と建前や心理テストの答え方など就活生に役立ちそうな情報が沢山載っていますし、就活生の親にとっても現在の就活を知る上で有益な本でしょう。
個人的には、最終章にある著者の「大学はアカデミック追求型と職業教育校に積極的に二分化させていくべきだ」という議論を詳しく知りたかったですが、就活の本筋と外れてしまうので、まあ仕方がないです。
就活も問題点を指摘しつつも、就活に立ち向かうための知恵を授けてくれる本だと思います。
大学キャリアセンターのぶっちゃけ話 知的現場主義の就職活動 (ソフトバンク新書)
沢田 健太

就活を扱った本というと「就活に勝つために過剰な適応を強いる本」か「就活の理不尽さを批判し、同時に日本企業の人事システムを批判した本」の二種類がまず頭に思い浮かびます。前者は妙にテンションが上がるだけで就活生以外が読んでも意味がないし、後者はそれなりに聞くべきところはあっても就活生の役には立たない、基本的にはそういった本が目立つように思えます。
一方、就活を「斜めから見る」ような本もここ最近目立ってきていて、就活のからくりや問題点、学生の盲点などが一端がわかったりします。ただ、そういった本の多くは多くの場合元リクルートの人事コンサルタントとかが書いたもので、個人的には「マッチポンプじゃないか?」という思いもあります。
そんな中、この本の著者は複数の大学のキャリアセンターで働いたことのある人物。名前は匿名とのことですが、その分、企業、大学、学生、そしてリクルートをはじめとする業者の問題点をしっかりと指摘した内容になっています。
就活をめぐる問題点が幅広く指摘されているこの本ですが、そうした中でも個人的に「なるほど」と思ったのが「ショーイベント化する企業説明会」という指摘。
ナビサイトの登場に一気にエントリー数が激増した大企業は、面接に回す人数を絞るためにSPIを行ったりエントリーシートにいろいろなことを書かせたりして志望者の絞り込みを図ろうとしています。
そして1次面接で面接を行うのは人事部の人間ではない若手社員のケースも多く、そこで「ノリの悪い」学生たちが落とされていきます。
このように志望者の増加というのは採用する側にも大きな負担をかけていますし、また、必ずしも企業にとっていい人材が確保できるシステムというわけでもありません。
けれども、最近の企業説明会はますますショーイベント化し、企業は若手の人事マンを表に出し、学生たちに「会社のイメージ」を熱心にアピールしています。
これについて著者は以下のように分析しています。
多くの人事部は企業内のエライさんから、内定者の数(予定人数の確保)と質においてのみ、採用活動を評価されているわけじゃない。エントリー数、説明会参加者数、書類提出者数、筆記試験受験者数、面接受験者数…の人数管理を前年対比で評価される。(120p)著者によると、こうした学生に親近感を覚えさせ応募人数を増やすやり方は、外食チェーンやパチンコ産業から始まったそうですが、今や大手企業までにこうした採用活動が広まってきて、結果的に学生がそのイメージに振り回されているというのが著者の見立てです。
また、現在の学生に対してもよく見ています。
もちろん、文章の力の低さなど学力の面についての厳しい指摘もあるのですが、興味深かったのが「縁故採用を嫌う」という最近の学生の傾向。就活がここまで通過儀礼のようになると、どうしても仲間とは違うやり方で内定を取ることに値する後ろめたさがあるようで、縁故で悩む学生が多いのだそうです。
こういったことを知ると、今まではしょせんは運や縁故で決まっていた就職というものが、ナビサイトやさまざまな情報の流通経路の発達により、「オープンな競争(実質はオープンに見える競争)」になってきたことが就活の大きな問題のような気もします。
その他にも、人事マンの本音と建前や心理テストの答え方など就活生に役立ちそうな情報が沢山載っていますし、就活生の親にとっても現在の就活を知る上で有益な本でしょう。
個人的には、最終章にある著者の「大学はアカデミック追求型と職業教育校に積極的に二分化させていくべきだ」という議論を詳しく知りたかったですが、就活の本筋と外れてしまうので、まあ仕方がないです。
就活も問題点を指摘しつつも、就活に立ち向かうための知恵を授けてくれる本だと思います。
大学キャリアセンターのぶっちゃけ話 知的現場主義の就職活動 (ソフトバンク新書)
沢田 健太
