リーマン・ショック以後の経済危機を扱った本ですが、副題に「「アリとキリギリス」で読み解く世界・アジア・日本 」とあるように、主に経済危機を国際経済の構造面から分析した本です。
「アリ」とは日本や中国、そしてアジアの通貨危機以後のアジア諸国のように輸出主導で経常収支が黒字の国、「キリギリス」は経常収支は赤字で国内の与信を拡大させていた国のことで、この2つのタイプの国の間での商品と資金の循環が00年代の世界的な経済成長を支え、同時に矛盾を溜め込んだと筆者は分析しています。
これは例えばグリーンスパンも言っていたことですし、竹森俊平の『資本主義は嫌いですか』などにも書かれていたことです。
豊富なデータを用いた議論は説得力がありますし、データ集としても使えそうです。
さらに本書の売りとなるのは、アジア経済の分析の部分でしょう。
今回の経済危機だけではなく、アジア通貨危機のをまたいだ分析になっていて、ここ20年近くのアジア経済の発展と構造転換を追うことが出来ますし、タイや中国についての個別の分析も鋭いです。
例えば、中国の格差問題に対して
また、完成品ではなく、対米輸出を行う中国に先端的な部品を供給する日本の姿というのも見えてきますし、今後のアジア経済について考えるヒントがつまっています。
最後の提言はやや曖昧ですが、経済危機を振り返り、そして今後を展望する上で有益な本だと思います。
グローバル化経済の転換点 - 「アリとキリギリス」で読み解く世界・アジア・日本 (中公新書)

「アリ」とは日本や中国、そしてアジアの通貨危機以後のアジア諸国のように輸出主導で経常収支が黒字の国、「キリギリス」は経常収支は赤字で国内の与信を拡大させていた国のことで、この2つのタイプの国の間での商品と資金の循環が00年代の世界的な経済成長を支え、同時に矛盾を溜め込んだと筆者は分析しています。
これは例えばグリーンスパンも言っていたことですし、竹森俊平の『資本主義は嫌いですか』などにも書かれていたことです。
豊富なデータを用いた議論は説得力がありますし、データ集としても使えそうです。
さらに本書の売りとなるのは、アジア経済の分析の部分でしょう。
今回の経済危機だけではなく、アジア通貨危機のをまたいだ分析になっていて、ここ20年近くのアジア経済の発展と構造転換を追うことが出来ますし、タイや中国についての個別の分析も鋭いです。
例えば、中国の格差問題に対して
「経済格差の是正を本格化しようにも、そのための財政支出は景気のさらなる加熱を招くリスクがあり、政府として手を付けにくかった。」(217p)<中略>「高度成長に伴う自国経済の歪みの拡大に長年頭を悩ませてきた中国の政策担当者にしてみれば、経済危機は過去数年温めてきた政策を実施に移す機会でもあったわけである」(219p)と分析していますが、これはまさにその通りで、だからこそ今後の中国の経済運営には注目すべきだと思います。
また、完成品ではなく、対米輸出を行う中国に先端的な部品を供給する日本の姿というのも見えてきますし、今後のアジア経済について考えるヒントがつまっています。
最後の提言はやや曖昧ですが、経済危機を振り返り、そして今後を展望する上で有益な本だと思います。
グローバル化経済の転換点 - 「アリとキリギリス」で読み解く世界・アジア・日本 (中公新書)

経済学者ぶってたけど、所詮犯罪者。
野村證券もとんだ社員を中途採用したものですね。