『日中戦争』や『<満洲>の歴史』など、ここ最近新書を多く書いている小林英夫によるノモンハン事件の本。
 ノモンハン事件について知るには悪い本ではないと思いますが、新しい知見といった部分は弱いと思います。

 副題に「機密文書『検閲月報』が明かす虚実」とあり、憲兵隊によるノモンハン事件の検閲の実態が明かさています。また、ノモンハン事件後に書かれた本や藤田嗣治の絵などから、ノモンハン事件の実態がねじ曲げられ、十分な反省も行われなかったことが浮かび上がってきます。
 ただ、新しい史料などを使っているものの、ここでの分析に取り立てて目新しい点はないですし、分析においても鋭さはないです。

 個人的には、なぜ陸軍の中央がノモンハン事件の作戦を担った辻政信や服部卓四郎を厳しく処分出来なかったのか?という点をもっと突っ込んでほしかったです。

 ノモンハンについては今年の6月に岩波新書から田中克彦『ノモンハン戦争』が出ていますが、ノモンハン事件についてまったく知識のない人にはこちらを、ある程度の知識のある人には田中克彦『ノモンハン戦争』をお薦めします。


ノモンハン事件―機密文書「検閲月報」が明かす虚実 (平凡社新書 483)
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