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2023年07月

カバラン トリプルシェリーカスク 40%

カテゴリ:
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KAVALAN 
SINGLE MALT WHISKY 
TRIPLE SHERRY CASK 
700ml 40% 

評価:★★★★★★(6)(!)

香り:枝付きレーズンやクランベリー、ダークフルーツを思わせる果実の香り、オールドタイプのシェリー樽を思わせるチョコレートやカラメルを思わせる色濃い甘さ。開封直後は微かにサルファリー、ややドライで鼻腔への刺激もあるが、好ましい要素の方が強く、非常に充実している。

味:スムーズな口当たりから香り同様、ダークフルーツを思わせる甘酸っぱいフレーバー、アーモンドチョコレート。苺シロップやフレーバーティーを思わせる含み香から、余韻は若干後付けしたような甘さが軽くスパイシーな刺激、程よいウッディネスと共に残る。

色濃い甘さと果実感を伴う甘酸っぱさ。ボディは少々軽いが、香りだけならもう1ポイント上の評価をしてもいいくらい、古き良き時代のシェリー樽熟成ウイスキーの一つを連想させる1本。多少作為的なところもあるが、オロロソ、PX、モスカテル、3種の樽を組み合わせることで、上記香味を作り上げたブレンダーの手腕は見事。言うならばこれは完成度の高いレプリカ。70〜80年代流通のシェリー系オールドボトルを連想する1本。
なお、そうした経験からくる整理を除いても、よく出来たリリースでる。

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昨年、某所でこのボトルを飲んで「こいつは面白い」と即購入した1本。本レビューは開封後、1年ちょい経過時点という感じですね。
開封直後はテイスティングコメントでも触れたように少しサルファリーな要素がありましたが、それはすぐに馴染み、今では全体のフルーティーさ、ベリー系の香味を支える香味の一つに転じています。

最も特筆するべきは、その香味の方向性です。
昨今のシェリー樽は、シーズニングのアメリカンオークやスパニッシュが主流となり、甘くクリーミーで、ドライプルーンやチョコレートのようなフレーバーを感じるものが多くあります。
普通に買えてそのフレーバーを確認できる代表的なものは、エドラダワー10年とかですね。先日当方関連でリリースがあったT&T TOYAMAのTHE BULK Vol.1も同様。まずここで断っておくと、本リリースのフレーバーは、それらとは異なるものです。

では、どういったモノか。10年以上前のウイスキー市場には、一口にシェリーカスクといっても、様々なフレーバーの方向性が見られました。
そのうち、代表的なものが某ボトラーズのリリースや、有名家族経営蒸留所のリリースに多く見られた、カラメルのような緩い甘さと程よいフルーティーさがある、今はなきオールドシェリーの一つです。
これは時系列的には通称パハレテ、古樽に甘口シェリーを圧入して再活性化させた樽によるものと考えられ、1980年代以前には、いくつかのブレンデッドウイスキーにも見られた個性です。

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※本リリースを飲んで連想したオールドブレンドは、ロイヤルサルートの1980年代以前流通や、同時期のグランツ21年、スチュワート・クリームオブザバーレイなど。
今回のこのカバラン・トリプルシェリーカスクの最大の特徴は、そうした当時の味わいに通じるフレーバーが備わっていることにあります。
といっても、昔の樽を使ったとかそういう話ではなく、今ある素材を組み合わせて、限りなくかつての味わいに近いものを仕上げています。偶然か、狙ったか、それはわかりませんが、市場で評価されている香味であることは確かです。

元々カバランは、クリアで軽く、フルーティー寄りの酒質を、厳選した樽で仕上げることで、愛好家の好ましいと感じるフレーバーに上手く焦点を当ててブランドを確立してきました。
例えばソリストのシェリーカスクには、スパニッシュオークのフレーバーを上手く使って、赤黒系の果実味と豊富なタンニン、ミズナラとは異なる香木系のアロマを付与した、さながら山崎シェリーカスクを思わせるリリースが多く。フィノカスクはアメリカンオークの古樽熟成がもたらす角の取れたフルーティーさ、トロピカルフレーバーとも称される個性が付与されているものが多い。
わかりやすく好ましいフレーバーが強いため、国際コンペ等でも非常に強い銘柄ですね。

今作の樽構成はオロロソカスク、PXカスク、モスカテルカスク。熟成年数は比較的若く、5〜7年といったところで、それ故少し刺激もあります。
PXはシェリー酒そのものが濃厚な甘さであるのに対して、確かに味わいに厚みは出るものの、樽由来のフレーバーはビターになる傾向があり、おそらく3種の中では控えめ。口当たりの甘酸っぱさはモスカテルで、ベリー系のフレーバーにも寄与している。そして軸になっているのがスパニッシュオークのオロロソ。。。
自分の経験値から分析すると、これらが絶妙なバランス(記載順に、2:3:5あたりと予想)で組み合わさり、加水で整えられ、万人向けでありながら自分のような愛好家にも刺さる、さながら高品質なオールドレプリカとなっているのです。

え、カバランの40%加水?
そう感じる方も多いかもしれませんが、このフレーバーのものを安定してこの価格で作れるというのは正直凄いですし、納得できる味わいだと思います。
夏本番のこれからの時期に濃厚シェリーはちょっとキツいかもしれませんが、今から開けておいて秋口から楽しむなんていうのも良いかもしれません。

シングルモルトあかし 4年 2018-2022 ヘビリーピーテッド 62% for KFWS

カテゴリ:
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EIGASHIMA DISTILLERY 
SINGLE MALT AKASHI
Heavily Peated 
Aged 4 years 
Distilled 2018 
Bottled 2022 
Cask type Bourbon Barrel #101855 
For Kyoto Fine Wine & Spirits 
500ml 62% 

評価:★★★★★★(6)

香り:フレッシュでスモーキーなトップノート。表層的にはピートと柑橘系のニュアンスが主体で好ましい香り立ち。そこからハーブ、焦がした針葉樹、微かに古い酒蔵のようなアロマが混ざり、度数相応の鼻腔への刺激も感じられる。

味:口当たりはオイリーでややビター、スモーキーで角のとれた麦芽風味。続いてバーボンオーク由来のバニラと麩菓子の甘さ、グレープフルーツ、オレンジオイルのような質感、奥には針葉樹や根菜を思わせるニュアンス。
余韻はピーティーでほろ苦くスパイシー。強いスモーキーさとハーブのよう青みがかった要素がが鼻腔に抜けて長く続く。

素性のいい麦芽風味に力強いピートフレーバーが特徴の1本。造り手の違い、意識の違いがこうも味わいに影響するのか。雑味が多く樽のノリも悪いかつての姿はなく、柑橘系の要素と樽感も良い塩梅で感じられる。決して洗練された味わいではないが、そこに江井ヶ嶋らしさ、個性を感じることが出来るとも言える。
江井ヶ嶋蒸溜所、新時代の始まり。是非先入観を捨てて飲んで欲しい。

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京都の酒販&インポーター、Kyoto Fine Wine & Spirits社(KFWS)からリリースされたプライベートボトル。実は、自分もちょっとお手伝いさせて貰いました。
同社のPBは、先日のWDC向けボトルをはじめ、多少価格は高くとも、高品質で間違いのないモノをリリースしていることで知られており、言い換えるとKFWSは愛好家からの信頼の厚いブランドであると言えます。
さながら一昔前のシルバーシールみたいな位置付けですね。

それ故、KFWS向けリリースで、江井ヶ嶋蒸溜所のあかしがラインナップされた時の愛好家の反応は…想像に難くないと思います。
少なくとも2010年代までは愛好家からほとんど評価されることがなかった、あの“あかし”です。
今回のリリースは、蒸留所とKFWSの繋ぎから関わらせてもらっているのですが、元を辿ればKFWSの2人もまた、いやいやくりりんさん、江井ヶ嶋ですよ?と、信用半分疑問半分といった反応でした。

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それが、現地で原酒をテイスティングしてから、「あれ、これ良いじゃない」と評価が変わります。本リリースを飲んだ愛好家の、SNS等での反応も総じて同様。
自分は、三郎丸蒸留所の原酒交換リリースであるFAR EAST OF PEATや、T&T TOYAMAのLAST PIECEのブレンド等を通じて、江井ヶ嶋蒸留所の酒質の変化、進化を知っていましたが、やはり最初は同じようなリアクションをしました。

何故こうも、多くの愛好家が同じような反応をするのか。
それは、以前のシングルモルトあかしは単純に美味しくない、という表現が正しくないとすれば、雑味が多く決して洗練された酒質ではない、雑味が多いが複雑と言うわけではなく妙にシャープで樽感と馴染みが悪い、全体的に何かしらのこだわりを感じさせる味わいではない、ということ。
現蒸留所長に伺ったその理由は、端的に言えば、雑に造った酒は雑な味にしかならない、ということでした。

かつて江井ヶ嶋蒸溜所は、そもそもの企業名・江井ヶ嶋酒造の通り日本酒をメインに作っていましたが、醸造酒を作らない夏場に製造スタッフを遊ばせない為に蒸留酒も作っていました(現在はウイスキーは通年製造)。そのため、意識は高くなく、言うならば安かろう悪かろうな、あるいは桶売り前提のようなスタンスでウイスキー造りが行われてきました。
一例となる出来事として2010年ごろ、自分が江井ヶ嶋蒸溜所を訪問した際、スタッフが麦芽のフェノール値を把握しておらず、「商社が勝手に持ってくる物で作ってるからわからない」なんて説明を受けたこともあるくらいです。

そうなると、様々なことがおざなりになっていくものです。
一方で、2016年に現蒸留所長の中村裕司氏が着任され、現場の問題点を把握し、上層部に伝え、その改善に着手したことで、特に2018年ごろの酒質から明確に違いが現れてきます。
具体的に何をやったかと言えば、錆びて汚れた配管やタンクなどの交換・整備、清掃の徹底、発酵等の造りのノウハウ部分の見直しです。
中村氏は元々日本酒側の人間であるためウイスキーは未経験でしたが、だからこそこの設備、この造りではいけないと気づけたと言います。
そして「お前ら、そんなウイスキー作ってて家族に恥ずかしくないんか、一緒に飲みたいウイスキー造ってるって言えるんか」とスタッフに檄を飛ばした意識改革は、同氏の酒造りに対する熱い想いを感じさせるエピソードとなっています。

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なお、同社がウイスキー製造免許を取得して100年に当たる2019年は、ポットスチルの交換も実施。古いポットスチルは、現在蒸留所正面にオブジェとして設置されています。
変更といっても、サイズも形状も変更されていませんが、2019年以降の仕込みは雑味が減ってさらに酒質が良くなったことから、確実に効果はあったこの交換。逆に言えば、2018年蒸留の原酒はまだ発展途上であると言えます。

ですが、蒸留における心臓部であるポットスチルが変更されていない2018年蒸留原酒に見られる旧世代からの進化こそ、中村所長がもたらした同蒸留所の変革と新時代の始まりを、最も感じられる要素だと私は感じています。
成分分析した場合も、数値上の特性が良いのは間違いなく2019年でしょう。記録に残る2019年、記憶に残る2018年と言ったところでしょうか。
本リリースはピーテッド仕様なのも良いですね。アイラのイメージから、やはり海辺のモルトにはピートが似合う。アイラ海峡、あかし海峡、なんか似てるし(笑)

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本リリースは昨年の発売で既に完売していますが、今回の樽が必ずしも特別な樽だった訳ではなく、2018年の中では平均的なものから好みに合う成長の原酒を選んだという感じ。
この時テイスティングした原酒のサンプルのクオリティは総じて安定しており、その証拠に、現在流通しているスタンダード品であるシングルモルト・ホワイトオークあかし(3〜4年熟成原酒がメイン、500ml 46%)の味わいも、確実に向上しています。

ただし江井ヶ嶋蒸留所のハウススタイルは、実はバーボン樽でもピートでもなく、ノンピートから極ライトピートでシェリー樽熟成にあります。
今回のボトルはその点では少し外れたものですが、今後リリースされるいくつかの他社PBはシェリー系で、そのキャラクターが良い具合にマッチしていることから、また違った驚きを愛好家にもたらしてくれると期待しています。
新時代の到来からまだ5年あまり、原酒の成熟はこれからですが、地ウイスキーからクラフトウイスキーへ、あかしの遂げた進化を本リリース、あるいはいずれかのボトルで感じてもらえたらと思います。

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厚岸蒸溜所 シングルモルト 雅 55% 免税店向けリリース

カテゴリ:
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THE AKKESHI “MIYABI”
Single Malt Japanese Whisky 
For Travel Retail 
700ml 55% 

評価:★★★★★★(6)

香り:スパイシーでスモーキーなトップノート、ビターオレンジや夏蜜柑などの爽やかでほろ苦いアロマ。微かに乳酸系の酸や香ばしさもあり、一本芯の通った複雑さを感じさせる。

味:度数を感じさせないねっとりとした口当たり。オレンジを思わせる甘酸っぱさとスモーキーさ、香ばしい麦芽風味。徐々にスパイシーで、口内をひりつかせる度数相応の刺激。ほろ苦く焦げたようなピートフレーバーに、ウッディな甘さが混ざり、長く続く。

やや若さはあるが、ミズナラ樽に由来するスパイシーさや柑橘の要素を主体に、奥には厚岸モルトの個性たる麦芽風味、ピートフレーバーを感じることが出来るはっきりとした作りのシングルモルト。
情報が公開されてないため、飲んだ印象からスペックを分析すると。フェノール値は30PPM程度、熟成年数は4年程度、キーモルトは和柑橘香る個性から北海道産ミズナラ樽原酒と思われる。比率を予想すると、ミズナラ樽7割、バーボン樽1〜2割、残りはシェリー樽、ワイン樽を隠し味といったところか。
ハイボールにするとスパイシーさが収まり、麦芽と樽由来の甘みが主体となって、実に飲みやすい。厚岸の酒質の良さが光る1本。

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北海道、釧路よりもさらに東、車で1時間程の場所にある、厚岸町の蒸留所。
麦、ピート、樽、水、酵母、全て地のものでウイスキーを造る、「厚岸オールスター」を掲げた取り組みを掲げ、その理想の実現に向けて着実に準備を進めていることは、改めて説明の必要はないかと思います。

その厚岸蒸溜所のリリースといえば、広く知られているのは2020年からリリースが始まっている二十四節気シリーズです。1年間を12ヶ月ではなく24の季節で区切る古来の整理の中で、それぞれの季節をイメージしたウイスキーをリリースしていくもので、限定品ながら厚岸蒸溜所のスタンダードなブランドとして位置付けられています。
言い換えると、厚岸蒸溜所のウイスキーを飲もうとすると、基本的には二十四節気シリーズのどれかということになるのですが・・・実はそれ以外にも、プライベートボトル、異なる市場や地域を限定したリリースなど、あまり知られていない限定品があります。

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※シングルモルト厚岸 ブレンダーズチョイス
AFトレード社がリリースしたシングルカスク。通常の複数樽ブレンドよりも、個性がはっきりとしており、麦芽風味や酒質の良いところを感じやすい。去年あたりからPBでシングルカスクリリースが国内向けにも出てきたので、機会があればぜひ飲んでみてほしい。

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※厚岸 ブレンデッドウイスキー 牡蠣の子守唄
厚岸町内だけのウイスキーとして2021年にリリース。基本的に厚岸町以外に流通していない地域限定品で、海外原酒と厚岸のモルトをブレンドし、厚岸町の名産品である牡蠣に合うスモーキーで麦芽風味の中にソルティーなフレーバーを感じるウイスキーとなっている。


さて、今回紹介する、シングルモルト厚岸“雅”は、国際線免税店向けに2022年にリリースされたシングルモルトです。
樽構成、原酒構成、諸々情報がオープンになっておらず、裏ラベル等への記載はおろか公式にも紹介ページがないため、謎のシングルモルトとなっており、実は私も全てを把握しているわけではありません。

蒸留所関係者に確認したところ、キーモルトが北海道ミズナラ樽に北海道産麦芽、つまりオール北海道熟成の原酒であることと、そしていくつかのバックストーリーがあることがわかりました。
同スペックの原酒は、オリエンタルな香味のあるものに加え、スパイシーで和柑橘系のフレーバーを感じられるものが多く、本シングルモルトからはその個性をはっきりと感じることが出来ます。厚岸蒸溜所の理想の実現に、着実に準備が整っていることを感じさせる味わいです。
一方、それ以外に香味から想定されるスペックはテイスティングで紹介しておりますので、ここから先は本リリースの背景にあるエピソードを紹介していきます。

まず“雅”というネーミングは、同蒸留所の代表である樋田氏のご友人の名前から1文字を取ったもの。そしてこのウイスキーは、急逝されたご友人への追悼としてボトリングされたものだそうです。
ご友人はどちらかというと下戸であったそうですが、天国でハイボールを楽しんで貰えたら…と。そう、テイスティングでも触れましたが、本リリースはストレートよりハイボールの方が、酒質の良さ、麦芽や樽由来の甘さが引き立って、非常に親しみやすくなるのです。
ひょっとするとこのリリースの原酒構成には、立崎ブレンダーではなく樋田氏が関わられているのかもしれません。

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そして“雅”にまつわるもう一つのエピソードが、この商品名が既に他社の商標としてあり、リリースにあたってハードルとなったことにあります。
それはそうですよね、お酒の名前として違和感のない文字ですし…。
ですが、上述のリリース経緯と1度だけの発売ということで、特別に許可を頂けたのだそうです。義理と人情といいますか、相手の狙いが悪意でない以上、同じ心で対応する。
ウイスキー関連で、あるいは本業側では結構ギスギスした話を見ることも珍しくないのですが、久しぶりにスケールの大きさ、懐の広さを感じる話だなと思えるエピソードでした。

シングルモルト厚岸 雅はバックバーを含め国内市場ではあまり見かけませんが、もし見かけたら単なるウイスキーというより、自分の目指す夢を友人に伝える、そんな意味を持ったウイスキーとして見て貰えたらと思います。

T&T TOYAMA ザ・バルク Vol.1 46% リリースとスペース配信告知

カテゴリ:
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T&T TOYAMA 
THE BULK Vol.1
BLENDED WHISKY 
Speyside Malt Whisky 12yo & Blended Scotch Whisky 5yo
Selected by T&T with kuririn
One of 1000 Bottles
500ml 46% 

評価:★★★★★★(5ー6)

香り:スパニッシュオークの色濃いウッディネス。ドライブルーンやシロップ漬けチェリー、アーモンドヌガーを思わせる甘さ。奥にはウッドチップ、微かにハーブのアクセント。

味:口当たりはまろやかで、チョコレートやドライフルーツの甘酸っぱさ、紅茶を思わせる含み香。フレーバーは骨格がしっかりとしており、余韻も長い。果実味の残滓からややビターなウッディネス、干し草、じんじんと軽やかな刺激が口内を引き締める。

香味ともシェリー樽由来の要素がしっかりと感じられる。突き抜けたウイスキーではないが、蒸留所の個性に加え、酒質と機感、全体のバランスが良いシングルモルト・・ではなく、ブレンデッドウイスキーである。ストレートやロック、またはオリジナルブレンドのベース としてなど、自由に楽しんで欲しい。
ラベルモチーフは、バルクパーツと掛けてPCパーツのCPU。え、どこかで見たことがある?…勘のいい読者は嫌いだよ…。

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先日のグラスに次いで、今度はT&T TOYAMAさんとのコラボリリースとなる1本。7月20日から、ALC、モルトヤマ、そして関連酒販店さんで発売予定。価格は4980円+税です。
裏ラベルにも記載の通り、本リリースにかかるウイスキーの選定者の一人として、協力させて貰っています。(勿論、いつものように売上や協力料等の報酬は受け取っておりません。)

THE BULKのコンセプトを端的に紹介すると、ブレンド用に調達してきた輸入ウイスキー(バルクウイスキー)の中から、そのままリリースして全く問題ないクオリティのものを一般向けにリリースすることで、ウイスキーの価格高騰の中でも、手軽に良質なウイスキーを楽しんでもらおうというものです。Vol.1とあるように、シリーズものであり、今後も継続したリリースを予定がされています。

また、副次的な狙いとしては、バルクウイスキー=粗悪なウイスキーという誤った認識に対して、実際のところどうなのかを示していく狙いもあります。
日本に限らず、世界のウイスキー産業を支えているのがバルクウイスキーです。日本においては、ウイスキー産業の黎明期から現代に至るまで、原酒の幅を補って、品質の向上にも寄与してきたことは暗黙の了解的に知られていますが、それは他のウイスキー大国であっても同様であり、メーカー間で盛んにブレンド用原酒がやりとりされ、縁の下の力持ち的に多くの銘柄に用いられてきたのです。

しかし現代の日本においては、安価なバルクウイスキーを使ってあたかも高価なジャパニーズウイスキーのように販売する、ロンダリング的な使われ方をした経緯から、人によってはその品質を疑問視する声もあります。
またバルクウイスキーなので素性が明かせない、あるいは素性不明なものがほとんどで、なんだかわからないものを買うのはちょっと…という不安もあるかと思います。そこでその品質は、本リリースに選定者として関わる、ウイスキーの造り手、ウイスキーの売り手、そしてウイスキーの愛好家、それぞれの視点で問題なしと担保したもののみをリリースしていきます。

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第一弾は、販促情報にある通り、スコットランドはスペイサイドの、シェリー樽熟成で有名な某蒸留所Mの12年熟成シングルモルトウイスキーに、ほんの少しブレンデッドウイスキーが混入してしまったもの。混入したブレンドは“とても有名なモノ”だとのことですが、香味からはそのブレンドやグレーンの特徴を感じることは…まず不可能です。

基本的にはスパニッシュオークのオロロソシェリーカスク由来の香味が主体にあり、ボディも適度に感じられる。某シングルモルト12年シェリーオークを濃くした味わいですね(加水比率が少なく、フィルタリングが最低限であるためと予想)。自分の感覚では98%、あるいは99%はモルトウイスキーではないかと予想しています。

突き抜けて素晴らしいウイスキーではないですが、標準以上のクオリティは間違いなくあるウイスキーです。価格的にも悪くない、いやむしろ手頃(金銭感覚崩壊)。
最近はシェリー系原酒が貴重ですし、下手するとこの事故エピソードを隠して某Mベースのブレンドとするか、何か美談的な(古くは某アイラモルトや某バーボンにもあった)エピソードを付け加えて、リリースされててもおかしくないと思います。

昨年、あるブレンドを企画中にこのバルクに出会い、え、これそのままリリースしたらいいんじゃとなって、今回の企画が動き出します。どうせならVol.2、Vol.3の見通しを立ててからリリースしようとT&Tの方で調整した結果、第一弾のリリースが夏場にずれ込んでしまいましたが。
クーラーの効いた部屋で、食後に軽く冷やしたシェリー系シングルモルトもオツなものです。またキャンプに持ち込んで、夜の空気と共に楽しまれるなんてのも良いですね。あるいはブレンドに使ってみるのも一案。自由に楽しんで貰えたらと思います。

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※ラベルはバルクウイスキーとバルクパーツをかけて、バルクCPUっぽいものに。ここはT&Tの二人の拘りで、QRコードからはブランドページにリンクします。ただ、なんだか狙いとは別に見た目が某社の某リリースっぽくなったような…フロム ザ バル…(おや、誰だこんな時間に

※スペース配信 告知※
日時:7月15日(土) 22:00〜
URL:https://twitter.com/i/spaces/1OdJrzzlMoVJX

本リリースをはじめ、最近何かと話題の多いT&T TOYAMAおよび三郎丸蒸留所。ゲストも交えて今回のリリースや今後の予定をトークします。
また、最近様々な商品が投入され、熱気を帯びるテイスティンググラス市場。今後発売されるオーツカ氏開発のテイスティンググラス第3弾(スティルグラス)や、静谷氏開発の咲グラス(蕾グラス)も使い勝手を先行レビューします!

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久住蒸溜所 グリーンドラム ワールドモルト 46% Lot.2021

カテゴリ:

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KUJU DISTILLERY 
Green Dram 
Blended Malt & New Born 
World Malt Whisky 
Lot. 2021 
700ml 46% 

評価:ー(New Bornのため評価なし)

トップノートはややドライで鼻腔への刺激があり、合わせてアメリカンオークの華やかさ、ドライアップル、麦芽由来の甘さ、微かな酸を伴うフレッシュで爽やかなアロマ。
口に含むと軽くスパイシーな刺激の奥から、麦芽のオイリーで優しい甘さが広がる。若さと共に、やや単調ではあるが、素性の良さが伺える1本。

ハイボールにするとフレッシュな木々の香りにすっきりとした味わいで飲み進めていける。多少若さが目立つようにも感じられるが、スペックを考えれば特に不足はない。むしろ最近のトレンドをおさえ、よく出来ていると言える。
育つ若木は大樹となるか。ウイスキー愛好家の想いが結実した、今後に注目したい蒸溜所の1本。

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久住蒸溜所は、シングルモルト通販 洋酒専門店TSUZAKIの代表である宇戸田氏が、2021年に創業した大分県のクラフト蒸溜所です。
まず同酒販店は、宇戸田氏が家業である酒販店(津崎商事)を継ぐ際に、ウイスキーの販売に新規参入したもの。当時は日本市場におけるウイスキー冬の時代であり、消費は低迷中。その時代でありながらもウイスキーを扱おうと思ったのは、同氏がウイスキーの魅力に取り憑かれた愛好家の一人だったためです。

どれくらい惹かれていたかというと、その後ウイスキー好きが高じて地元の大分に蒸留所を建ててしまうくらいですから、よっぽどというか、もはやウイスキーが人生の一部であると言っても過言ではないほど。
ウイスキー蒸留の開始にあたっては、熊本県阿蘇山、大分県くじゅう連山にほど近い、旧小早川酒造の跡地を取得。豊かな水源、涼のある環境、この場所も縁の地であったそうですが、そこにさまざまな苦労を経て蒸留所を創業し、現在に至っています。
この際あった出来事は、同社WEBページでも語られていますが、その深掘りは、いずれシングルモルトがリリースされた時に取っておきたいと思います。

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※久住蒸溜所のポットスチルライトアップ。「100年後も久住でウイスキーを作り続ける」を掲げ、絶賛稼働中。画像引用:久住蒸溜所informationより。

さて、今回レビューしたグリーンドラムは、2023年にリリースされた、久住蒸溜所のニューボーンと、輸入したモルトウイスキーを久住蒸留所で追熟しバッティングした、ワールドブレンドモルトです。
ラベルのLotはリリース時期ではなく、久住蒸溜所の原酒の蒸留時期を示しており、香味から樽はバーボン系、2021年蒸留のニューボーン原酒に、おそらく熟成年数は5〜10年クラスの内陸スコッチモルトウイスキーが使用されていると予想します。

スコットランドより温暖な環境を思わせる若く強めの樽感が若干あるものの、基本的には華やかでドライな輸入原酒にオイリー、あるいはワクシーというような柔らかく甘い麦芽風味の仕事が感じられ、若さはあるが嫌味なところなく、素性の良さが伺える1本となっています。
久住蒸溜所は現在大分県産大麦をはじめ、伝統的なスコットランドのウイスキー製法をベースに、そこに大分の地がもたらす恵み、ならではの工夫を取り込んだ製法を模索していますが、それだけでなく造り手の独りよがりになってない香味の方向性にも、今後のリリースが期待できそうだと感じます。

余談ですが、宇戸田氏がウイスキーに惹かれたきっかけは、大学時代に飲んだグレンフィディックだったそうです。
30年以上前ですから、当時流通していたフィディックはメルシャン時代のNASか、ドットウェル時代の10年か。何れにせよ、現代より麦芽風味が厚く、洋梨やすりおろし林檎を思わせる白色系のフルーティーさがしっかりあった頃のモノ。
そして今回テイスティングしたGreen Dramにも、華やかで麦芽の甘みを感じる先に、同銘柄が見えてくるような…。そんな印象も感じる1本でした。

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