T&T TOYAMA ザ・バルク Vol.2 オーバークロック 45%
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T&T TOYAMA
THE BULK Vol.2
BLENDED WHISKY OVER CLOCK
Speyside Malt Whisky 12yo & Blended Scotch Whisky 5yo
Oloroso Spanish Oak Cask Finish
Selected by T&T with kuririn
One of 900 Bottles
500ml 45%
評価:★★★★★★(6)
香り:複雑でウッディなトップノート。複数のダークフルーツやカカオチョコレートを思わせる豊かなアロマ。色濃く濃厚な甘さの奥には焼き栗や焦げた木材、微かに樹液の要素が混じる。
味わい:まろやかで濃厚な口当たり。香り同様にダークフルーツ、ドライプルーンやブルーベリージャムを思わせる甘さと角の取れた酸味から、徐々にどっしりとしたウッディネス。ビターで煮だした紅茶、微かな刺激を伴う長いフィニッシュへと繋がる。
ベースとなるウイスキー、THE BULK Vol.1が持っていた熟成感とシェリー樽由来の要素に、後熟したスパニッシュオークのフレーバー、シーズニングのシェリー感が加わって一層濃厚で甘酸っぱく、複雑な香味へと仕上がっている。
後熟期間も合わせてほぼ13年熟成シングルモルトと言えるブレンデッドウイスキーだが、この樽感を受け止められる酒質のキャパは流石というところか。開封直後は後熟に用いた樽感が若干浮ついて感じられるかもしれないが、時間経過で馴染み、某M蒸留所のリリースに求めたいリッチな味わいを楽しませてくれる。
当方が関わらせてもらっている、T&T TOYAMAのTHE BULKシリーズから、第2弾となるVol.2 オーバークロックが2023年12月5日より発売されます。
本リリースは、メーカー間で主にブレンド用の原酒として取引されているバルクウイスキーの中でも、高品質なもの、面白い個性やメッセージ性のあるもの、そして手頃な価格で楽しめるものを個人向けにバラ売りする。いわばパソコン部品のバルク品から着想を得たリリースです。
前作Vol.1は、ほぼ●ッカランとされるバルクブレンデッドスコッチウイスキー。
スペイサイド地域のシェリー樽熟成で有名な某M蒸留所の、シェリー樽で12年間熟成されたシングルモルトウイスキーに、なんらかの事情によって5年熟成表記相当のブレンデッドウイスキーがごく僅かに混入してしまったもの。
表記上はブレンデッドウイスキーとなりますが、その香味はバランスの良いシェリー樽由来の要素と、シングルモルトとしか思えないほどはっきりとした個性があり、まずはそのままボトリングしました。※Vol.1の記事はこちら
THE BULK Vol.1は、エピソードの面白さや、近年高騰を続けるシェリー樽熟成ウイスキーを手軽に楽しめるという位置付けもあって、愛好家の皆様からは想像以上の好評を頂いたところ。
THE BULK Vol.2 オーバークロックは、Vol.1でリリースしたバルクウイスキーを、スパニッシュオークのオロロソシーズニングカスクに詰めて、三郎丸蒸留所の熟成庫で約1年間後熟した、濃厚仕様のリリースです。
1年間の追熟とはいえ、明らかに濃く、やや赤みがかった色合いの変化から、外観の情報だけでも違いを感じて頂けると思います。
度数は1%落ちましたが、香味は濃厚なものとなっており、Vol.1で感じた以上のダークフルーツやカカオチョコレート、煮出した紅茶、ほのかに焦げた木材。。。といった、スパニッシュオーク由来のフレーバーがマシマシです。
ですが濃厚さと引き換えに多少ウッディさも強くなり、Vol.1と比較してアンバランスであるのも本リリースの特徴となっています。
これは本リリースのサブタイトルが“オーバークロック(Over Clock)”とあるように、ラベルデザインにもなっているパソコン部品のCPUで、安定性を犠牲にする可能性があるものの、本来の定格以上の性能を引き出す手法と掛けて表現しています。
Vol.1を企画した際、これはこれで美味しいのだけれど、ボトラーズリリースとしてはバランス寄りで、シェリー樽熟成には更なる濃厚さを求めるニーズもあるのではと感じており。全体のバランスを多少犠牲にしても、面白さや個性を強化したものをと、昨年から並行して仕込んでいたのがVol.2なのです。
通常、フィニッシュで樽感を後付けしたウイスキーは、香味に多少のズレや違和感が生じることとなります。
今回のフィニッシュ用いた樽は、Vol.1の大多数を占めるわっからんなシングルモルトの熟成に用いられた樽と近い特性を持っていると思われるものを選んでいますが、熟成が途中でリセットされることで濃厚さに加えてウッディネス、渋みといった要素も新たに足されることとなり、リリースとして上手くまとまるかはチャレンジでもありました。
本品開封直後は多少その香味のズレが感じられるかもしれませんが、時間経過でまとまり、複雑さや良い部分が増していく印象。
実はカスクサンプル時点では「あれ?」と思う要素が強かったのですが、ボトリングしてみたら甘みと果実味が強くなって想像以上にいい具合。8月くらいにリリースしようかと話していましたが、引っ張って正解だったかもしれません。
やっと寒さの増してきた2023年年末。家でゆったり飲む1本にちょうどいいリリースだと思いますし、Vol.1が手元にある方は飲み比べてフィニッシュによる違い、オーバークロックによる進化を楽しんで貰えたら幸いです。
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