ブレアソール 23年 1993-2017 スペシャルリリース 58.4%
BLAIR ATHOL
Natural Cask Strength
Aged 23 years
Distilled 1993
Bottled 2017
Bottle No,1241/5514
Cask type European Sherry Oak
700ml 58.4%
グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後数日以内
場所:Y's Land IAN
暫定評価:★★★★★★(6)
香り:最初はあまり香りが立たないが、ドライでスパイシーなアロマ。プルーン、黒蜜、ナッツ、少し古酒っぽさを伴う甘みが徐々に感じられ、奥からハーブや林檎のコンポートのようなフルーティさも開いてくる。
味:スムーズでとろみのある口当たり。プルーン、蜂蜜入りのエスプレッソティー、徐々にビターで干草を思わせるウッディネスが感じられる。
余韻はシロップのような甘みが残り、オーキーさからドライなフィニッシュが長く続く。
所謂温かみのある味わい。近年系のシェリー感だが、それは濃厚というほど強くなく、シェリー樽熟成としてバランスの良い範囲にまとまっている。時間で甘みが開くので、じっくりと楽しみたい1本。
スペシャルリリースでは珍しいシェリーオークでの熟成にして、シリーズ初となる同蒸留所のリリース。ブレアソールはオフィシャル扱いである花と動物シリーズがシェリータイプでしたので、この樽使いはそこに合わせてきたのかもしれません。
さながら花と動物の進化版、あるいは真打ち。シェリー樽熟成のウイスキーとしてバランスが良く、ハイプルーフながらまとまりのある味わいは、流石大手の安定感です。
ただ、このリリースは使われたシェリー樽に疑問点があり、今日の更新は蒸留所そっちのけで樽の話に終始します。
今回のリリースにおいてMHDが配布した資料では、熟成に使われた樽は「元ボデガヨーロピアンオークシェリー樽」との記載があります。
この表記は「ボデガで使われていた樽」と見えそるのですが、その筋の知識がある方なら違和感を感じる表現。それは「元ボデガ」というのが、何を指すのかによって変わってくるのです。
使われていた樽が、"ボデガで「シーズニング」されていた樽"という意図なら、少なくとも表記上の矛盾はありません。(それは近年のウイスキー用シェリーカスクなので、普通にシーズニングと書けばいい話とも思いますが。)
しかし、"製品用シェリー酒を熟成させるソレラで使われていた樽"を用いた、ということなら話は別です。
シェリー酒製造側のプロセスで考えると、ソレラに使われる樽は通常アメリカンホワイトオークです。これは木材の特性からヨーロピアンオーク(スパニッシュオーク)ではシェリー酒そのものへの影響等により、長期間の熟成が困難であるためです。
誤解のないように補足すると、スパニッシュオークはウイスキーに対して良い影響を与える香味成分を持っています。近年ではメーカー側にノウハウが蓄積されて、山崎やグレンファークラス、あるいはカヴァランなどで高い評価を受けるリリースを生み出した実績と、将来的な可能性もある樽材です。
他方、それは近年の話。シェリー樽熟成のウイスキーは、1960年代前後蒸留のものが高く評価されており、この当時どんな素性の樽が使われていたかについて、明確な記録がないことから度々議論となります。
ウイスキー業界では「ボデガではアメリカンホワイトオークが使われていたが、当時ボデガから市場への輸送用の樽にはスパニッシュオークが使われており、それがウイスキー業界に再利用された」「1980年代以降は樽でのシェリー酒輸送が禁止されたため、シーズニングでそれを再現する努力をしている。」とする説明が、裏付けのために使われているところ。まあこれも矛盾点がいくつかあって議論の種ではあるのですが、今回の話とはこれ以上無関係なので話を戻します。
ボデガで商品向けシェリー酒の熟成に使われている樽は、ヨーロピアンオークではなくアメリカンホワイトオークであることは先に触れた通り。
このブレアソールに使われた"元ボデガ樽"がヨーロピアンオークであるなら、あくまでシーズニングのシェリー樽という可能性が高いと言えます。また海外のサイトを見ると、元ボデガに該当するような記載は見られず、ex-sherryのヨーロピアンオークカスクだという説明のみです。
以上から「MHDさん樽の説明ちょっと雑じゃない?」というのが現時点のオチなのですが、個人的にもう一つ感じている疑問が味わいに関する点。
このブレアソールは、ヨーロピアンオークでは付与されない、アメリカンホワイトオーク系の黄色いフルーティさをシェリー感の奥に備えているように感じます。
勿論ヨーロピアンオークのシーズニングに見られるねっとりした甘み、ウッディなスパイシーさもあるのですが、アメリカンホワイトオークと言われてもしっくりくる要素がいくつかあり・・・。例えば鏡板にアメリカンホワイトオークが使われている、ハイブリットカスクなのではないかという印象も持ちました。
シェリー樽は表記も含めて定まってない点が多く、謎の多い世界です。
少なくとも、このブレアソールはもう一度テイスティングしてみないといけませんね。IANさんが現在諸事情により短期休業中のため、再開次第同じボトルで確認します。
また、自分はこう感じたという意見がありましたら、非公開前提でも構いませんので是非コメントください。