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2022年08月

ロッホローモンド クラシック シングルモルト 40%

カテゴリ:

IMG_9823

LOCH LOMOND 
CLASSIC 
SINGLE MALT SCOTCH WHISKY 
700ml 40% 

評価:★★★★★★(6)

香り:硬さの残る麦芽香とすりおろした林檎、蜂蜜、ほのかにオーキーな華やかさがアクセント。基本的に品良くバランスの良い構成で、奥にはパイナップルや柑橘を思わせるフルーティーな要素も感じられる。強くはないが好ましい香り立ちである一方で、時間経過で単調気味になっていくなど、平均熟成年数の若さを感じさせる要素もある。

味: スムーズだがオイリーで厚みのある口当たり。蜂蜜を思わせる甘さに、オレンジシロップや黄色系のケミカルなフルーティーさ。後半にかけて軽やかな刺激があり、余韻はビターでほのかにスモーキー。じわじわとピートとウッディなほろ苦さが広がり、フルーティーな甘さと混じちぇいい意味での複雑さが長く続く。

香味に好ましいフルーティーさがあり、微かなピートが全体を引き締めて、フレーバーのバランスも良好。40%加水モルトの平均的なそれより厚み、飲み応えを感じられ、これでエントリーグレードクラスのNASかと驚かされる。
一方で時間経過やハイボールにすると樽由来の要素が弱まるのか、ややドライ寄りの変化。麦芽由来の風味と仄かなピートスモークで、食中酒や暑い時期に飲むには丁度いい。
いずれにせよ、ロッホローモンドだからと偏見を持っていた時代は遥か遠く、価格的にも内容的にも使い勝手の良いシングルモルトである。

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最近のスコッチモルトの中で、年々酒質が向上し、ラベルチェンジもいい方向に作用していると感じる数少ない事例。ロッホローモンド蒸留所のエントリーグレードであるクラシックが、今回のレビューアイテムです。

ロッホローモンド蒸留所の酒質にいつから変化があったか、それはこれまで度々レビューで触れているので割愛しますが、2000年代前半と考えられます。
では、流通しているオフィシャルボトルの変化についてはどうか。以前、青色にメタリックカラーでクラシックと表記されていた、2015年前後流通のロットはグラッシーで癖の強さが目立っており、悪くはないけど良くもないというか、まさに文字通り”クラシック”なロッホローモンドスタイルが残っていたのです。

一方、当時からインチマリン12年には好ましいフルーティーさが強く「ロッホローモンド良くなったんじゃない?」と、徐々に愛好家の評価を変えていったところ。
その後2020年~2021年にかけて、ロッホローモンドは3ブランドあった全てのオフィシャルリリースを、以下の写真のようにロッホローモンド・XXXXXXに統一。日本市場での評価がどこまで反映されたかはわかりませんが、香味の傾向は全て同じフルーティーベースになり、蒸留所としてこうあろうという方向性、新しいハウススタイルを感じさせてくれます。

lochlomond12_o
※ロッホローモンドは、ピーティーなインチモーン、フルーティーさ重視のインチマリン、そしてバランスをとったロッホローモンドとで整理されている。NAS製品は12年クラスに比べると麦芽風味の硬さ、プレーンさが目立つ傾向はあるが、バランスは悪くなく、上述3銘柄に共通する個性を楽しめる。

今回テイスティングレビューしたクラシックも同様に、市場のトレンドを押さえた、21世紀のロッホローモンドのフレーバー構成が特徴。
原酒としては5〜12年クラスの若いものからスタンダードなクラスまで、広く使っているようで。熟成したモルトのフルーティーさと若い麦感が程よく合わさった構成。
ともすると、他銘柄だと口当たりのオイリーさ、とろりとした要素がしつこく感じられることがある一方で、このクラシックは後半から余韻にかけての軽い刺激と苦味が、それを引き締めてくれています。

樽はバーボン樽、アメリカンオークがメインと思われる構成。ただ、ほのかにシェリー樽を思わせるようなコクのある甘み、オレンジ系のフレーバーがいい仕事をしていて、ホグスヘッドやバットも繋ぎとして使われているように感じます。
またロッホローモンドは蒸留所敷地内に樽整備工場も備えており、余韻にかけて感じるほろ苦さ、ビターなウッディネスは、同工場で整備したリチャー樽由来ではないかとも思われます。

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なんというか、普通エントリーグレードのボトルって、ストレートで飲むとあまり触れられるところが少なくて、ハイボールに逃げて終わりってことも少なからずあるんですが…。このボトルはストレートでも見るところが多く、普通に楽しめます。
公式サイトに書かれている「ノンヴィンテージながら非常にエレガントでフルボディな味わい」も、あながち言い過ぎではないなと。ちょっとハリボテ感があるようにも感じますが、この価格帯ならもう十分でしょう。

ただ、ハイボールについてはレビューの通りドライ寄りに変化しちゃうので、個人的にはもう少し甘みやコクが欲しかったところ…最後にちょっとしたアレンジを紹介。
ロッホローモンド蒸留所は連続式蒸留機としてカフェスチルを導入しており、グレーンも自前で蒸留している、スコットランドでも数少ない蒸留所です。

そうして作られたグレーンは、シングルブレンデッドとしてシグネチャーに活用されるだけでなく、ノンピートグレーン、そして世にも珍しいピーテッドグレーンの2種類が、それぞれシングルグレーンとしてリリースされており・・・。
単体でもメローで適度な熟成感もある、美味しいグレーンですが、クラシックモルト6、シングルグレーン4くらいでブレンドしてハイボールにすると、これがいい具合に甘さとコクが出て、フルーティーさも底上げしてくれるのです。
どちらも、3000円前後、2本で6000円くらい。下手な限定品を買うより断然楽しめる組み合わせだと思います。

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余談:以上、ロッホローモンド・クラシックのレビューでした。が、記事を書くにあたって公式サイトを見たらですね、なんか、また、ラベル変わってませんかね(笑)。
この前変えたばかりなのに。。。ただ冒頭述べたように、近年のロッホローモンド銘柄はラベルチェンジの度に原酒が代替わりしてクオリティを上げてきましたので、今回のラベルチェンジにも期待しています。

酒類の原料原産地表示制度がもたらす国産ウイスキーの課題と闇

カテゴリ:

はじめに:今回の記事は、2017年に改正され、2022年4月から有効となっている改正食品表示法「原料原産地表示制度」の解説です。
長文かつ地味に難解な箇所もあるので、興味が無い方は、4月以降に変わった国内ウイスキーメーカー各社のラベル表記と、その意味を解説した記事として、記事中盤のラベル表記分析、それが内包する誤解の種や闇に関する箇所を読んで頂ければと思います。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

日本で作られるウイスキーの一部には、海外から輸入された原酒が使われていたこと。輸入ウイスキーやウイスキーではない酒類を、ジャパニーズウイスキー化して販売するロンダリングビジネスの存在…。

2016年、あるウイスキーのリリースがきっかけで表面化した、日本のウイスキー産業が内包する課題、ある種のグレーゾーンとそこから生じる”闇”は、その後、様々な議論や情報発信を経て基準が制定され、国産ウイスキーといっても一括りにはできないことが、愛好家の中では常識と言えるくらい認知度が高まったところです。
当ブログにおいても、最初期から問題提起、解決策の提案、メディアによる関連する情報発信の紹介、関連規約の紹介・解説等の情報発信を継続的に行ってきました。

一方、最近、国内メーカーが製造・販売するウイスキーの裏ラベルに「●●産」や、「国内製造」「英国製造」などの表記がみられるようになりました。
先の経緯を知る方だと、なるほどこれは2021年に定められたジャパニーズウイスキーの基準による表記か、と認識されるかもしれません。ですがこれは2017年に改正された食品表示法「加工食品の原料原産地表示」によるもので、この法律が効果を発揮するまでの経過措置期間が、酒類においては2022年3月31日までだったことから、4月以降に製造・出荷されたウイスキーについて法律に準じた表記がされるようになってきたものです。

同改正法はすべての食品、酒類に適用され、あくまで一定の整理に基づいて原料・原産地を明記しようという法律です。
後発となる洋酒酒造組合のジャパニーズウイスキーの基準は、同改正法との横並びはとられているものの、一般消費者へのわかりやすい説明を行う義務を定めた改正法と、ジャパニーズウイスキーのブランドを守り、高めるための独自基準とでは、全く別の概念となります。
結果、今年の4月以降酒類全般において今までは無かった原料、原産地等に関する情報が明らかになった一方で、ウイスキーだからこそ生じる問題点、分かりにくさが生まれつつあります。

一例としては以下の画像、左側のシングルブレンデッドジャパニーズウイスキー富士。富士御殿場蒸留所のモルト原酒とグレーン原酒のみをブレンドした製品ですが、国内製造(グレーンウイスキー)表記がどういう意味か、パッと理解できますでしょうか。

top

そこで今回の記事では、改正食品表示法の運用を実際の表示例(各社のラベル)に基づいて紐解き、そうして新たに見えてきた情報、解釈の幅、誤解の種や新たな闇となる危険性を紹介しつつ、今後解決すべき課題を整理します。

前置きとして食品表示法の改正による、ウイスキーにおける原料原産地表示の概要を、以下の通り説明します。
同改正法では原料原産地表示以外に、事業者情報の記入など、他にも変更された箇所がありますが、本記事ではウイスキーの中身を見る上で最も大きな変更点と言える原料原産地表示についてまとめていきます。

※酒類の原料原産地表示に関する概要(ラベルに表記する情報)
  1. 原材料名での産地記入(●●産)は、その製品のもととなる原料の産地が表記される。。
  2. 原材料原産地名での●●製造は、その製品の内容について”実質的な変更をもたらす行為”が行われた国、地域が表記される。
  3. ●●産、または●●製造は、どちらか片方しか表記できない。また、●●産、●●製造が3地点以上になる場合、多く使われている順に2地点を記載し、それ以降をその他としてまとめても良い。
  4. ●●製造に紐づいて表記されるもの(モルトウイスキーorグレーンウイスキーorスピリッツ等ブレンドアルコール)は、製品内で最も比率が高いものだけ記載すればOK
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※参考資料
・食品表示法(酒類関連変更箇所概要):https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/shokuhin/pdf/0020002-131.pdf
・改正食品表示法Q&A:https://www.nta.go.jp/taxes/sake/hyoji/shokuhin/sakeqa/bessatsu_2909.pdf
・ウイスキーの表示に関する公正競争規約及び施行規則:https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/whiskey.pdf
 ⇒本規則の解説記事はこちら
・酒税法及び関連法令通達:https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sake/01.htm
・ジャパニーズウイスキーの表示に関する基準:http://www.yoshu.or.jp/statistics_legal/legal/pdf/independence_06.pdf

以上。。。
といっても、文面を読んだだけではわかりにくいと思うので、各社のラベルから代表的なものを解説していきます。
企業の姿勢やブレンドの造り、実は結構色々なことがわかってきます。

なお、本記事は全てのメーカーのラベルを掲載したわけではありません。純粋にパターンが同じだったり、在庫と流通のタイミングの問題もありますが、中にはニッカウイスキー(アサヒビール)のように掲載していないケース※もあります。
表示したりしなかったり、あるいは全部表示したり…そして今まではウイスキーだと思ってたものが…だったり、各社本当にバラバラの状況も見えてくるのです。

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※2022年4月以降も掲載していないケース:
当該改正表示法では「できる限り新基準に基づいて原料原産地表示をすること」としつつも、2017年9月1日の改正法施行前から製造所に貯蔵されていた原酒や原料を使用する場合、産地情報を確認できない可能性もあることから、それが一部使用であっても●●産、●●製造の表記をしなくても良いとされている例外規定がある。
ニッカウイスキーの場合は、主としてベンネヴィス産原酒、ニューメイクの使い方によると推察。


■各社のラベルの原料原産地表示解説

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サントリーの響21年(左)とローヤル(右)。
これはお手本のような表記の整理です。
原材料名、モルト、グレーンは、ウイスキーの表示に関する公正競争規約及び施行規則(以降は「表示規則」と記載)によって、通常のウイスキーはモルト、グレーン、アルコールの順番に記載することとなっているので、これまで通りです。

サントリーはオールド以上のブランドがジャパニーズウイスキーであることを明言されており、響もローヤルも、原料原産地はどちらも国産表記となります。
ただし響21年はモルトウイスキーが、ローヤルはグレーンウイスキーが割合として一番高いため、国内製造(モルトウイスキー、グレーンウイスキー)か、国内製造(グレーンウイスキー、モルトウイスキー)か、異なる順番で記載されています。
響は予想通りかもですが、ローヤルについては意外に感じる方もいるかも知れない新情報です。

red_midai

続いては同じサントリーからレッド、そしてサンフーズ社から御勅使。
安価なウイスキーに見られる、スピリッツがブレンドされいてるケースです。
レッドは原材料名はローヤル等と同じ、モルト、グレーンですが、原料原産地は国内製造(グレーンスピリッツ)のみの表記です。

ここで言うグレーンスピリッツは、酒税法に照らし、アルコール度数95%以上の穀物原料のブレンド用アルコールになると思われます。
おそらくモルト原酒、グレーン原酒も一部使われているのでしょうけれど、比率としてはグレーンスピリッツが一番高く。この場合、グレーンスピリッツ+グレーン原酒・モルト原酒+水(度数が高くなりすぎるので39%に調整)を加えた後、カラメル色素で色彩調整であることがわかります。

一方で、サンフーズの御勅使は原材料名、モルト、グレーン、スピリッツで、原料原産地名は国内製造(スピリッツ)になります。
ウイスキーにブレンドされるスピリッツは、先のレッドに使われている穀類を原料としたものと、そうでないモノの2種類に分けられ、穀類原料のものは表示規則で原材料への表示義務がなく、一方で、表示されている場合は廃糖蜜ベースのモラセスアルコールが一般的です。
つまりレッドは穀類原料のスピリッツがメインなので、原材料名には記載がないが原料原産地名に記載があり。御勅使は上述の穀類ではないスピリッツがメインなので、どちらにもスピリッツ表記があることになります。

なお、酒税法上のウイスキーをざっくり整理すると、原酒10%で他ブレンドアルコールでもウイスキーとして成立するのはご存知かと思いますが。つまり上述2銘柄は、記載したスピリッツをモルトとグレーンの合計に対して過半数以上90%未満までブレンドしたもの、とも整理されます。
またどちらも国内製造表記ですが、これらのスピリッツは、アメリカや中国、ブラジル等から粗留アルコールという形で輸入され、それを大手のアルコールメーカーが連続式蒸留を行い、純粋アルコールとして流通させたものが一般的です。
海外からの輸入原料でありながら国内製造表記となっているのは、概要2.にある製品の内容に”実質的な変更”が行われた場所が国内であるため、国内製造表記に切り替わっているのです。

kirin_riku_fujisanroku

ラベルがリニューアルしたばかり、キリンから陸と富士山麓。
これは同じ会社の製品ですが、原材料名の順番が違うもの。
シングルブレンデッドの富士の表記は本記事の上部の画像にある通りですが、輸入原酒を使っている陸と富士山麓は、原料原産地名に国内製造、英国製造の2か所の表記があり、どちらも一番多く使われているのはグレーンウイスキー。ただし、モルトウイスキーをブレンドしていない陸は、原材料名の表記がグレーン、モルトと、富士山麓の逆になっています。

陸も富士山麓も、グレーン系でアメリカンっぽい仕上がりの味わいなので、香味の面ではグレーンウイスキー表記に違和感はないわけですが…
「Kさん、富士山麓の裏ラベルの説明文に”世界”が加わったのいつだっけ」
「えっと、最近だね」
「キリンは、フォアローゼズをタンクで運んできて、国内工場でボトリングしてるんだってね」
「…そうだね」
「もう一つ質問いいかな」
「…なんだい?」
「米国関連の表記どうなった?」
「勘のいい客は嫌いだよ…」

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マルスのツインアルプスは、紛らわしい事例の1つ。
自前で蒸留したモルト原酒に、輸入したモルト原酒とグレーン原酒を用いてブレンドされています。
原材料は、前述の通りモルト、グレーンですが、原料原産地名は、英国、カナダ、国内と3か国が並んでいる一方で、国内製造の隣にグレーンウイスキーのみが表記されています。

これはグレーンウイスキーが100%でも、何より国産なのでもなく、使われている原料全体の中でグレーンウイスキーが一番多いという説明です。(※上記概要4.参照)
使われているだろうグレーンウイスキー、モルトウイスキーあるいはブレンデッドバルクも含めて産地としては英国産、カナダ産、国産の順に比率が高いという表記でもあり、その中で一番多いのはグレーンウイスキーですと。おそらくマルスの場合、国産はモルトウイスキーだと思いますが…。
このラベルは背景情報まで知らないと、誤解を招きそうな表記となっています。

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江井ヶ嶋酒造のブレンデッドのあかし(上左)と、シングルモルトのあかし(上右)。
こちらも紛らわしい事例で、よくあるパターンになりそうなもの。
一方で桜尾蒸溜所のブレンデッド戸河内(下4本)は、1種類でもいい原料原産地情報を、全ての原料毎に記載する表記を採用していて、対応は真逆となっています。

ブレンデッドのあかしは、説明文にもあるように自社蒸留のモルト原酒も使われていますが、輸入原酒のグレーンを最も多く使っているので、原料原産地表記は英国製造(グレーンウイスキー)のみ。
逆に、シングルモルトあかしは自社蒸留のモルト100%なので、国内製造(モルトウイスキー)となっています。
シングルモルトはシンプルで分かりやすいですが、ブレンデッドの方は説明文で補足されているものの、ちょっと分かりづらいですね。
戸河内のように書いてくれれば良かったのですが。。。

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原料原材料表記で、大括り化がされている事例もあります。それがイチローズモルトのモルト&グレーン、リーフシリーズのホワイトラベル。

裏ラベルには、世界5地域からの原酒を使っていることが表記されています。直近ロットの原料原産地表示は「英国製造、アイルランド製造、その他(グレーンウイスキー)」。
最近のホワイト、香味としてはほぼほぼグレーンで、若いグレーンやカナディアンの酸味と穀物感のあるフレーバーが目立っており、表記を見るにイギリス(スコットランド以外含まれる可能性も)とアイルランド産のグレーンウイスキーがメインということなのでしょう。
勿論、両国産のモルトウイスキーも、グレーンウイスキーの比率未満で含まれると言う表記でもありますが、香味的にはモルト2のグレーン8とか、そんな比率では…。

一方でここで初めて出てくるのが「その他」表記。つまり大括り化です。
これは、同改正法においては含まれる原材料の産地や原料原産地が3以上ある場合、比率の多い順に2地点を表記して残りは「その他」として良いとされているもの。ここではカナダ、アメリカ、日本はその他分類の比率であることがわかります。
香味的にも、まあ確かに…と言う感じではあり、違和感はないですね。

akkeshi

最後に今年6月にリリースされた、厚岸シングルモルトの清明。
少し表記の仕方が違うタイプで、原材料が●●産であることを表記する方法をとっています。モルト:(大麦(イギリス、オーストラリア、北海道産))
嘉之助蒸溜所のシングルモルトも同様の表記が採用されてますね。この場合、改正食品表示法では全ての原産地を記載することになっており(※上記概要1.参照。大くくり化も一部認められている)、それに準じた表記となっています。

なお、概要3.でも触れた通り、この●●産表記と、原料原産地の●●製造表記は併記できないため、せいめいの裏ラベルに原料原産地表記はありません。そしてこの表記は、後で別メーカーの商品でも出てくるので頭の片隅に置いてもらえればと思います。


■原料原産地表示の解釈と誤認事例
同改正法の運用が本格的に始まったのは、経過措置期間が終わった2022年4月1日。
一見すると産地が見える化されたようでいて、実は正しく読み解くには改正法以外に、酒税法や表示規則の知識も最低限必要になり、誤解を生みそうな表示になっている商品があるなど、課題を残す状況も理解頂けたのではないかと思います。

なぜこんなことになっているかと言うと、輸入原酒と国産原酒という、2か所以上の産地・種類の原酒を混ぜてリリースされるのは、ウイスキーとブランデーくらいであり。かつこれだけ多くの銘柄、製造メーカーと需要が存在するのは、酒類においてはウイスキーのみであるためです。
ビールや日本酒、あるいは本格焼酎ならこうはなりません。甲類焼酎は、レッドのところで触れたスピリッツを加水したものが大半なので、原料と製造地域で類似の問題が発生しますが。

じゃあウイスキーはもっと詳しく表記するようにすればいいじゃないかと言うと、これもまた難しい。ちょっとでも中身が変わったら、ラベルを全て替えなければならないのは事業者にとっては大きな負担ですし、世界的に原酒と原料が調達されている現代にあって、どこに線を引くのか、何より一般消費者はそこまでの情報を望んでいるのか、消費者と生産者、どちらの立場にも立って線を引くのが法律であるためです。

結果、他の酒類では起こりえない表記と整理の複雑さが生じることとなり、表示に解釈の幅もある運用から、誤解を招きかねない表記だけでなく、新たな闇につながりかねない事例も発生してきています。

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例えば、ファミリーマートで限定販売している、南アルプスワインアンドビバレッジ社製のハイボール缶。原材料名にウイスキー(国内製造)とありますが、同社は国内でウイスキーの蒸留を行っているわけではありません。

同社は以前「南アルプスから湧き出るウイスキー」と説明文に記載した隼天※というウイスキーをリリースしていたことから、なるほど南アルプスにはウイスキーが湧き出す源泉があるのかとかぶっ飛んだことを考えてしまいましたが、そんなトリコ(少年ジャンプ)みたいなことはなく。
※実際は、以下の通り「南アルプスから湧き出るウイスキーに 最適な源水で仕上げた」という説明文で、絶妙な個所で改行されていたことと、文章をどこで区切るかで意味が違ったことから生じた誤読。

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この缶ハイボールは、輸入スコッチバルクとスピリッツをブレンドして加水し、ハイボール用に調整した段階で、モルトでもグレーンでもなくウイスキーとなり、上述の概要2.の「”実質的な変更をもたらす行為”」が行われた中間加工地点が国内と整理されたものです。

おそらく、当該ウイスキーを単体で原料原産地表示すると、
品目:ウイスキー
原料原産地名:グレーン、モルト、スピリッツ(国内製造)
でしょう。そして原材料としてのウイスキー(国内製造)となったものに、添加物とガスを加えて、最終的な品目がリキュール表記となったのではないかと考えられます。

以上の事例だけでも、改正法解釈の”実質的な変更をもたらす行為”については、蒸留なのかブレンドなのか加水なのか、解釈の幅があり得ることが分かるかと思います。
そして、そうした解釈の一つなのか、単なる誤表記か、最後は今回もまた事例の一つとなってしまうのが「松井酒造合名会社」のリリース各種です。

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左:マツイウイスキー 山陰 ブレンデッドウイスキー
原材料名:モルト・グレーン(国内製造)

中央:マツイピュアモルトウイスキー倉吉
右:マツイピュアモルトウイスキー倉吉シェリーカスク
原材料名:モルト(国内製造)

注目してしまうのが国内製造表記ですが、ポイントはそこから少しずれます。
この“原材料名”というのは、食品表示法でも表記規則でも、どちらの整理でも、モルト=大麦、グレーン=穀物となる、文字通り原材料です。モルトウイスキー、グレーンウイスキーの意味ではありません。
つまり、松井ウイスキーの山陰も、倉吉も、表記そのまの意味では、100%国産の精麦麦芽と穀物を使用したウイスキーということになります。(洋酒酒造組合側に、表記の整理を確認済み。) 

松井酒造は倉吉蒸留所にポットスチル等製造設備を2018年に導入・ウイスキーの自社製造を開始していたことから、ひょっとしたらひょっとするのか?
100%国産原料の国産モルトウイスキーとグレーンウイスキーを製造し、他社とは別格な極めて手頃な価格で提供するという、愛好家にとっての優良企業である可能性が微レ存か?

微粒子レベル級の期待を込めて、直接問い合わせをしてみたところ、製造担当者の方の回答は以下の通りでした。
  • 自社蒸留のモルトウイスキー原酒を一部使用している。だが全てを賄うことは出来ていない。
  • それ以外の原酒は、国内提携酒造から調達した国産原酒である。
  • マツイピュアモルトは、この2種類以上の国産原酒をブレンドしているため、ピュアモルトである。
  • 本社は過去にあった事例から、懐疑的な目を向けられることが多くあるが、現在は全て国内調達したウイスキーを使用している。故に裏ラベルも国内製造表記となる。
え、本当に100%国産なの?と、驚いてしまうと思いますが、慌ててはいけません、ここは冷静にいきましょう。

まず、使われているモルト原酒について、わかっていることから整理すると。
倉吉蒸留所は、輸入した麦芽を使ってウイスキーを仕込んでおり、計画としては発表されているものの、現時点で国産麦芽を使った仕込みは確認できていません。
仮に、国内提携酒造から調達した原酒というのが、モルト(国内製造)の本来の意味である、国産麦芽100%で作られた希少なモルト原酒であったとしても、自前の原酒が条件を満たさないため、このラベル表記は誤記である可能性が高いということになります。

グレーンについては、国内の大規模蒸溜所(富士御殿場や知多)からのグレーンウイスキーの安価多量提供のみならず、国産穀物で仕込んでいるグレーンウイスキーの存在は、各蒸留所関係者にヒアリングしても確認できません。
ですがグレーンスピリッツであれば、先に触れたような粗留アルコールを蒸留して造る国内製造グレーンスピリッツを提供してくれるメーカーがあるため、調達は不可能ではないことになります。しかし、純粋にグレーンウイスキーを指さないという消費者の誤解を誘うマナー違反に加え、国内製造の定義が”実質的な変更”によるもので国産穀物ではないことから、こちらも誤記、表示違反である可能性が極めて高いということになります。

そしてこれらは”国内提携酒造から調達した国産原酒”が、本来の意味での国産表記を満たすという前提に立っているものです。
ここから先は私見ですが、これまで個人的に関わってきた日本全国のクラフト蒸留所において話を聞く限り、松井酒造規模の大量リリースに対応できるだけの3年熟成以上のモルトウイスキーを提供してくれる蒸留所は、記憶にありません。ましてオール国産原料となると、なおのことです。
ラベルだけなら認識不足による単なる誤記となりますが、中の人の説明と合わせて考えると、そこにはもう一つ深くて暗い何かがあるように思えてならないのです。


■可能性の話:商品を製造して販売するA社と原酒を調達するB社
さて、以降はどこのメーカーの話でもありません。あくまで私の妄想であって、他産業(魚介とか食肉とか…)での過去の事例から、こういうことが出来てしまうのではないかという仮定の話になります。

現在、日本において各蒸留所で使われているブレンド用ウイスキーの外部調達は、蒸留所が直接行っているケースはまれで、大概は商社、輸入業者を介して行われています。
有名なところだとK物産さんとかですね。商社が調達可能なモルトウイスキーとグレーンウイスキー、その最低量と価格をリストアップし、蒸留所側に提示。蒸留所側が必要な量を発注する。
届いたウイスキーを使って、蒸留所側は商品を開発して販売するというのが、一般的な流れです。

ここで、
・商品を製造して販売するA社
・A社と繋がりが深く、実質的にA社の原料調達部隊であるB社
が居るとします。

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上のイラストのように、B社が輸入してきた原酒を、A社に対して「国産原酒」として展開。
A社は、B社の表記した仕様のままに、商品を「国産」として製品化し、販売した場合はどうでしょうか。

B社が酒類製造免許を持っている場合は、先に説明した概要2.の「”実質的な変更をもたらす行為”」で可能な解釈次第では、輸入原酒を国内製造化できる可能性があり、この場合はグレーゾーンですが合法的に国内製造表記が成立するかもしれません。例えば、上述のハイボール缶の時のような整理です。
ですが酒類製造免許は申請に製造設備を保有していることや、その後の製造実績等の必要があったりするので簡単にはいきません。安易な方法ですが、示し合わせた上での1:1取引なら、何らかの嘘をつく可能性もあります。

そして当該商品に対し、おかしいと消費者が感じたとしても、A社にあるのはB社が提供した「国産原酒」の情報のみです。また、消費者に対しては契約時の守秘義務の関係からと、別会社であるB社の情報をいちいち明かすことはないでしょう。

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食品表示法の改正には、食品を扱う事業者の責任の所在を明確にすることも趣旨としてあり、製造生産者の表記も追加修正されています。
そして法律であるので、某組合基準とは異なり違反金等の罰則規定も当然存在します。原産地の虚偽記載は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金。法人である場合は、1億円以下の罰金。所管省庁による、立入検査等もあり得ます。
ですがこのケースでは、消費者等からB社の存在は見えず、仮に何かがあってばれたとしても、A社としては持ち得る情報で法令に合致した発信をしていたが、調達先(B社)に問題があったと、トカゲのしっぽ切りが出来てしまうのです。

先に触れたように、類似の事件は食品産業においては過去にあった事例であり、紙面とお茶の間を少しばかり賑わせてきたことは、皆様も記憶の片隅にあるのではないかと思います。
これまで、ウイスキーは各社の小さな事業の1つでしかありませんでしたが、今や日本酒を越える日本の主要輸出産業の1つであり、観光資源や地域産業復興のキーポイントとしても期待される、様々な産業と結びつくまでに成長してきています。
光りあるところに闇がある、光が強くなれば、闇もまた濃くなる。こうした考えのもと、見えない形で何かをしようとする人達が出てきてもおかしくないわけです。


■最後に:解決すべき課題と議論の必要性
今回、改正食品表示法について調べることにしたのは、先日キリンの富士シングルブレンデッドジャパニーズウイスキーに関して「この商品はシングルグレーンなんでしょうか?ラベルに国産グレーン表記しかないんですが」としてTwitterで質問を受け、正しく答えることが出来なかったことがきっかけでした。

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この質問は、酒造関係の知人が代わりに解説してくれたことでことなきを得ましたが。
少なくとも私も、質問をくれた方も、そして酒造関係の知人も、この表記は合法でも分かりにくいし誤解を生むという見解で一致しており。
じゃあ他の銘柄はどうだろうかと、色々調べてみたわけですが、思った以上に複雑で、情報量が多く、おかしな表記もある話だったことは、この記事を通して紹介した通りです。

加えて、別に特定企業を叩く意思は全くないし、私怨の類もないのですが、調べていく中で出てきてしまったマツイさんの名前。
マツイさんは、2016年に発生した業界と愛好家を巻き込んだ一連の騒動から、燃えてしまった火を消すのではなく、商売のターゲットを事情を知らないようなライト層、ウイスキー以外の酒類の愛好家、そして日本の情報を得にくいだろう海外層に定めている印象で、その点から見ても今回の表記がただの理解不足による誤記なのか、判断しかねる部分があります。
何故なら、所定の手続きを行い、内容を説明して所管の税務署等の許可を得たうえでリリースするのが酒類だからです。

私自身、以前からブログ等で記載している通り、また自分自身でもリリースに関わっているように、輸入原酒を使って自社原酒には無い個性を得て完成度の高いリリースをすることは、決して悪ではないと考えています。
電子機器、自動車、生活用品各種…オール国産でやっているのが珍しいくらいであるように、良いものは国内外問わず使う、その考え方はものづくりの一つの方針であり、それが結果として独自の強みになることも考えられます。
ただ、問題なのはそれを偽って使うこと、誤解を与えるような形で製品とすることです。

食品表示法の趣旨は、「食品を摂取する際の安全性及び一般消費者の自主的かつ合理的な食品選択の機会を確保する」ことにあります。
偽った説明の元で、合理的選択の機会を確保できるかと言われたら出来ないでしょう。また、誤解を生む表記についても同様であると言えます。
同改正法は、実際に効力を発揮してから間もないため、運用的には法律の趣旨に合致する解釈が、更なる議論を経て整備されていく段階かと思います。先に触れた、いくつかのラベルの表記がそうであり、単に表記を詳しくすればいいだけの問題でもありません。ここは様子をみていきたいところです。

各社の表記をもう1段階統一する、あるいは表記の解釈に関するガイドラインを作る。国内製造表記の実質的変更に関する事例や基準、消費者目線でのQ&Aの拡充があってもいいでしょうし、状況によっては原材料名と原料原産地表記に二重の記載を必要とする…など、知りたい人が必要な情報を、誤解なく正しく得られるようにする取り組みは、この法律の概念に基づき必要なのではないかと思います。
そして、闇になり得る事例、消費者から見えないところへの対応も…。
なんというか、法律や政策というのは、あちらを立てればこちらが立たず、必ず何か想定外が生まれる。バランスが本当に難しいですね。
本記事がこれらの議論の呼び水となり、そして皆様の理解の一助となることに繋がれば幸いです。

シングルモルト 山崎 リミテッドエディション2022 43%

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SUNTORY 
THE YAMAZAKI 
SINGLE MALT JAPANESE WHISKY 
LIMITED EDITION 2022 
700ml 43% 

評価:★★★★★★(6)(!)

香り:華やかでオリエンタルなトップノート。少々刺々しいが、ミズナラ由来のお香や和柑橘を思わせる独特の要素と、微かに黄色系のドライフルーツのアロマ。ただし持続力がなく、前面にあるミズナラ系のアロマの奥はスパイシーでドライ寄りなウッディさ。

味:やや粗さのある口当たり。とろりとした蜜っぽい質感に、含み香りではっきりとミズナラ系のニュアンス、オレンジなどの果実感を伴うドライなウッディネス。乾いた麦芽とヒリヒリとした刺激、口内から鼻腔に届くオリエンタルなアロマ。ほろ苦くスパイシーな余韻が長く続く。

香味のまとまり具合は若い原酒の影響か少々荒削りで、イメージとしてはやすりがけ前の木材。しかしその木材には光るものがある。はっきりとしたミズナラ香と強めのウッディネスを、ワインやシェリー樽由来の甘みを繋ぎにして、若いなりにまとめられた構成。持続力があまりないが、山崎らしさがわかりやすく、各香味がはつらつと主張するバランスは、これはこれでアリ。原酒の成長と、作り手の確かな技術を感じる1本。

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NAS山崎が美味しくなったので、リミテッドはどうだろうと飲んでみました。所謂サンプルでお持ち帰りというヤツです。

感想はテイスティングの通りですが、このリミテッドエディション2022は、昨年リリースされたリミテッドエディション2021同様に12年熟成以上のミズナラ熟成原酒を軸としたもの。
現行品のシングルモルト山崎のオフィシャルがNAS、12年、18年、25年と連なる香味の系譜の中で、リミテッドという位置付けから山崎らしさ、サントリーらしさを限られた原酒の中でわかりやすく強調して作っているのが非常に面白く、印象的な1本でもありました。

山崎リミテッドエディション2022は現在公式で抽選販売を受付中とのこと。これはボトルで飲んでも良いですし、BAR飲みでも後述するサントリーの最近の原酒使い含めて色々経験を得られる1本となっています。
※サントリー 山崎公式サイト:https://www.suntory.co.jp/whisky/yamazaki/news/108.html

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山崎リミテッドエディションは、現時点では2014〜2017年まで発売された第1期。2021年からリリースされている第2期に整理されます。
第1期の山崎リミテッドエディションは、20年以上熟成のシェリーやポートワイン樽原酒を軸にしており、それ以前に新リリースされた山崎NASも赤ワイン樽原酒の存在を強調。当時の山崎18年や25年はミズナラ系のキャラクター以上にスパニッシュオーク樽のシェリー感を強調していた時代であり、ミズナラはどちらかと言えばアクセント。山崎は「グレードが上がるほど重厚で複雑なウッディネス」これがキャラクターとなっていました。

ところが、近年にかけて山崎関連のブランドには、重厚さに通じるシェリー樽やワイン樽原酒の比率が下がり、目に見える違いとして色合いがどんどん薄くなってる一方、ミズナラの個性が強くなっている印象を受けます。
先日、とある方のご好意で2022年ロットの山崎12年、18年と響21年を飲み比べましたが、山崎18年はモルト100%でボディこそ厚いものの香味は上述の通り。響21年はグレーンのキャラクターを除くとシェリー感は以前ほどなく、あるのはパンチョンやバーボン系のオーク感とミズナラの個性的な香味。間違いなくサントリー味なんだけど…あれ、これもどっちも同じ系統だなと。

ミズナラ風味が強くなったというより、シェリー感が薄くなった分、隠れていた他の香味を感じやすくなっただけというのもあるかもしれませんが…。
そこで今回のレビューアイテムである山崎リミテッドエディションです。第1期の酒精強化ワイン樽原酒から、第二期はミズナラ樽へとコンセプトを変えており、かつ新樽原酒をメインに据えています。
最近はエントリーグレードのローヤルでもミズナラ要素を感じられるようになってたりで、それもおそらくこのミズナラ新樽原酒由来でしょう。サントリーのブランド形成と軸とする原酒戦略が、シェリーからミズナラへと変わった(というよりシェリーがフェードアウトしつつある)ように感じられます。


シェリー樽もミズナラ樽も、バーボン樽に比べてコストがかかる樽です。
その特性は、1st fillの爆発力は凄いが2nd fill以降は同じ濃さと味わいが見込めない一発屋のスパニッシュオークのシェリー樽に対し、一度作れば新樽からリフィル以降まで安定して香味を得られるミズナラ樽の方が、香味という観点では長期的には使いやすいのかもしれません。
管理や欠損などの難しさもありますが、2回目以降は長熟も狙えますし、国内で樽を製造できるというのも、物流に混乱があるこの状況では利点。何より、シェリー樽よりジャパニーズブランドとしての強みにも繋がります。

2017年でリリースが止まっていたリミテッドエディション。なぜこのタイミングで復活したのか。なぜ軸となる原酒を変えてきたのか。
考え過ぎかもしれませんが、その裏にはサントリーのリリース全体にかかる、戦略の一端があるように思えるのです。

キリン 陸 LAND DISCOVERY 50% 2022年ロット

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KIRIN WHIKEY 
RIKU 
LAND DISCOVERY 
Release 2022~ 
500ml 50% 

評価:★★★★★(4ー5)

香り:ピリッと鼻を刺すアルコールの刺激と合わせて、グレーンの甘さ、リフィルチャーオークあたりの樽感。ペットボトル販売の紅茶飲料を思わせる甘く、ほのかな苦味を連想するアロマが感じられる。

味:口当たりはメローでコクがあり、ウォッカを口に含んだ時のようなプレーンなアルコールの含み香と甘さを感じた後で、グレーン由来の穀物感、じわじわとほろ苦いタンニン、微かに柑橘のフレーバー。余韻はほろ苦く、品が良くすっきりとしている。

グレーンベース、アメリカンウイスキータイプのブレンデッド。香味とも単調というかクリーンで、アルコール感が混じるがフレーバーに強さもある。元々ストレートではなく、ハイボールや水割り等で割って飲むことを想定している原液のようなウイスキーなので、割り切った作りなのかもしれない。
一方で、ハイボールにするとほんのりとバーボン風味のフレーバーを残し、プレーンな味わいとなる。単体だと面白みにかけるものの、食中酒では不思議と2杯、3杯と飲めてしまう。個性を強化したい場合は、富士山麓シグネチャーブレンドや、バーボンウイスキーをフロートするのがオススメ。

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キリンが調達した輸入原酒と自社蒸留の国産原酒を使って作るワールドウイスキー。この商品は「KIRIN WHISK“E”Y」表記なのが特徴で、2020年5月にリリースされ、2022年4月にリニューアル。今回のレビューアイテムは、リニューアル後の1本です。

キリンは2019年に富士山麓のスタンダードグレード(樽熟原酒50° 700ml 50%)を生産終了とし、構成原酒のうちグレードの高い原酒は富士山麓シグネチャーブレンドや富士シングルグレーン等に。それ以外の若い原酒はハイボールなどで手軽に飲むことを割り切った構成とするブレンド(陸)に、ブランド再編というか、ある種のチーム再編を行なっています。

富士、陸ともコロナ禍真っ只中でのリリースとなりましたが、キリングループ全体としてのウイスキーの売上は好調だった一方で、陸については商品認知度が2割と非常に低く、テコ入れが行われたというのが今回のリニューアルの経緯とされています。
まあ…パワポで作ったような地味なラベルに加え、PRも積極にはおこなわれていなかった。そもそもウイスキーにあまり関心がない層が飲むだろう価格帯の商品ですから、この結果は必然だったのかもしれません。

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で、リニューアル後は白黒カラーからゴールドをあしらって、ちょっと垢抜けた感じのデザインを採用。合わせてパウチ容器で試供品を50万人分配ったりとか、今までにない取り組みもありました。
また、中身もリニューアルされており、「ほのかな甘い香りと澄んだ口当たり」「何層にも感じる香味豊かなおいしさ」を強化したとのこと。

リニューアル前はブレンデッドというよりはグレーンウイスキーとして優秀で、自前でブレンドを作るなど使いやすい1本だとして評価していましたが、リニューアル後の陸は構成原酒の傾向は大きく変わってないと思うものの、ブレンド比率や作りの傾向の変化で純粋にバーボンタイプのハイボーラーになったなという感じです。
強化ポイントの後者は評価が分かれると思うものの、前者については間違いなく。リニューアル前に比べてバーボン(グレーン)系の甘さ、アクのような要素が抑えられて、品良くプレーンでピュアな感じにまとまっています。

ゆえに、購入して口開けの印象は「薄いな…」と。ウイスキーそのものの飲みごたえはあるのですが、香味の主張がプレーンで面白みに欠けると感じていました。同じ時期にリリースされた富士シングルブレンデッドも軽めの仕上がりだったので、キリンのブレンドコンセプトはライト系にシフトしてるのかとすら思ったところ。
ただ陸に関しては食中酒用ハイボールで使っていくなら強みとなる構成で、何よりこの香味系統の商品は他社にないので、日本人が潜在的に持っている甘く飲みやすいお酒、という需要にもマッチする戦略だと評価できます。

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(個人的に最近ハマってるツマミが、らっきょうの甘酢漬けと合鴨スモーク。バーボンウイスキー系の香味分類にある陸はハイボールが肉に合う。そこに脂とマッチするらっきょうの甘酸っぱさと食感がなんとも良い塩梅。)

なお、キリンがブランドを整理した結果、輸入原酒を使って作っている陸と富士山麓。国産原酒のみを使って作る富士シリーズ。と、大きな2本柱が出来上がりました。
この中で、富士山麓が広報戦略的に浮いているため今後どうなるかわかりませんが、これはこれで面白い商品なのと(下手なハイプルーフバーボン飲むより美味い)、裏ラベルの表記をこっそりリニューアルしていたりしているので、後日最新版をレビューしてみたいと思います。

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三郎丸Ⅰ THE MAGICAN 2018-2021 48%

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SABUROMARU Ⅰ 
THE MAGICAN 
Aged 3 years 
Distilled 2018 
Bottled 2021 
Cask type Bourbon Barrel 
One of 3000 bottles 
700ml 48% 

評価:★★★★★★(6)

香り:穏やかだがどっしりとして存在感のあるスモーキーさ。乾草、野焼き、焚火の後のような、どこか田舎的でなつかしさを感じる燻した麦芽のピートスモーク。奥には柑橘、微かに青菜の漬物を思わせる酸もある。

味:程よくオイリーでピーティー、しっかりとスモーキーフレーバーが広がる。香ばしい麦芽風味、微かな土っぽさ。バーボン樽由来の甘みや柑橘を思わせる甘酸っぱさがアクセントになっている。
余韻はピーティーでビター、湧き立つスモークが鼻腔に抜けていく。

香味とも少々水っぽさがあり、複雑さのある仕上がりではないが、元々の重みのある酒質と若い原酒であることが由来して一つ一つのフレーバーに輪郭があり、鼻腔、口内に長く滞留する。カスクストレングスリリースのものと比べると、奔放さも荒々しさもなりをひそめて穏やかに仕上がっており、こちらは万人向けの仕上がり。新世代の三郎丸蒸留所の個性を知る上では入門編と言える1本。

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(三郎丸 THE MAGICIANのカスクストレングス(CS)エディション。稲垣マネージャーが初号機は暴走していますと、リリースに当たり意味深なコメントをしていましたが、このCS仕様は確かにパワフルで三郎丸らしさが暴走気味。将来性を見るなら削りしろが残ったCSを。現時点での味わいを楽しむなら加水のほうがバランスがとれている。)

そう言えばレビューしていなかったシングルモルト三郎丸I。
昨年11月にリリースされて今更感凄いですが、このまま放置したらⅡが出ちゃいそうなので、このタイミングでネタにしちゃいましょう。2018年蒸留原酒をベースにしたTHE SUNも先日レビューしたところですし、2022年の仕込みはなにやら新しい動きもあるようなので。

さて、まずこのリリースですが、既に多くの方がご存じの通り、2018年の三郎丸蒸留所はマッシュタンを自家製のものから三宅製作所製に変更。粉砕比率を4.5:4.5:1から2:7:1に変更すると共に、旧世代の設備からの脱却として大きな一歩を踏み出した年にあたります。
その効果、酒質の変化は劇的で、当時の驚きと将来への確信は、今から約4年前のブログ記事では「素晴らしい可能性を秘めた原酒が産まれており、一部の愛好家が持っていたであろう若鶴酒造への評価を、改める時が来たと言っても過言ではありません。」としてまとめています。

当時記事:若鶴酒造 三郎丸蒸留所 ニューポット 2018 CF結果追跡その2
https://whiskywarehouse.blog.jp/archives/1073202772.html

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その当時の原酒がどのように変化してきたか、こうしてリアルタイムで進化を見ることが出来るのは今を生きる我々の特権であり、クラフトウイスキーを追う楽しみでもあります。
自分の息子の成長を見るような、推しのローカルアイドルがメジャーになっていく過程を見るような。。。ちょうど小さい子供が居るというのもあるのでしょうか、そんな心境で見ている自分が居たり。

で、実際飲んだ印象は、まずニューメイクにあった三郎丸のらしさと言えるピートフレーバー、柑橘系の甘酸っぱさ等は良い感じでバーボン樽由来のフレーバーと馴染んできてますね。
通常の熟成環境は比較的温暖というのもあって樽感は強めで、これだと5〜7年くらいでピークに当たりそうな感じですが、未熟感が目立つ酒質ではないので問題無さそう。
また、2020年に完成した第二熟成庫は屋根散水での温度管理を、2022年完成のT&T TOYAMA 井波熟成庫はCLTや断熱シャッターを用いるなどしてさらに優れた温度、湿度の特性があり、今後はさらなる長期熟成も可能になっています。

一方で、2017と2018の原酒の違いは、オフフレーバーの量が少なくなっていることと、ピートがしっかりと主張するようになっていることが挙げられます。
勿論、ポットスチルを入れ替えた2019年以降に比べたら、まだこの時代はオフフレーバーが多く、特に2018年の最初の仕込みのほうは仕込みの関係で2017年の余留液を引き継いでいることから、旧世代の残滓が強めに残ってもいます。その辺りの原酒は、このリリースにも使われているのでしょう。針葉樹のような青菜の漬物のような、オイリーさの中に独特な個性が感じられます。

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(T&T TOYAMA THE LAST PIECEのリリースで使用した、2018年原酒2種。片方は仕込み前半、片方は後半。前半は癖が強くオイリーで、後半はドライ寄りでピートが強く主張する。明らかに酒質が異なっている。)

それでも2017に比べたら格段に酒質が向上しており、中でも今まではぼやけていたピートフレーバーに芯が通り、骨格のはっきりとした主張をするようになったことが傾向として挙げられます。

それは熟成を経た後も変わらず、樽香の乗りが良く、三郎丸らしいヘビーな酒質はそのままに、どっしりとスモーキーで個性の強い味わいを形成しているだけでなく、2018年蒸留のほうが骨格の強い酒質になっていることもあって、さらなる熟成の余地を感じさせる点もポイントです。3年熟成リリースはあくまで始まりであって、今後にも期待できる。
ああ、これはきっと、某バスケットボール漫画の安西先生の心境なのかもしれません。見ているかラ○…お前を越える逸材が富山に居るのだ…。


余談ですが、そんな逸材三郎丸は、設備のアップデート、ポットスチルの開発、木桶の導入、アイラピートの調達やスーパーヘビーピート原酒の仕込みと、毎年毎年、何かしら新しい取り組みを行なってきました。
毎年夏に行われる三郎丸の仕込み。2022年は一体どんな取り組みが行われているかというと…、世界的な物流の混乱からピーテッド麦芽の輸入が前期の仕込みに間に合わず。国産麦芽を使った仕込みで、蒸留を開始したのだそうです。

国産麦芽で勘の良い人はピンとくるかもしれませんが、そうこれはノンピートなのです。三郎丸及び若鶴酒造の歴史において、公式には初めてノンピート麦芽による仕込みが行われている、アブノーマルな状況(稲垣マネージャー曰く)が、きせずしてこの2022年の取り組みとなっています。
なんとも言い難い話ではありますが、個人的にはノンピートの三郎丸は非常に興味があります。3年後のリリースだけでなく、それこそノンピートの飛騨高山とのブレンド、飲み比べも面白そう。
取り急ぎ、ニューメイクを飲むのも今から楽しみです。

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