ロッホローモンド クラシック シングルモルト 40%
LOCH LOMOND
CLASSIC
SINGLE MALT SCOTCH WHISKY
700ml 40%
評価:★★★★★★(6)
香り:硬さの残る麦芽香とすりおろした林檎、蜂蜜、ほのかにオーキーな華やかさがアクセント。基本的に品良くバランスの良い構成で、奥にはパイナップルや柑橘を思わせるフルーティーな要素も感じられる。強くはないが好ましい香り立ちである一方で、時間経過で単調気味になっていくなど、平均熟成年数の若さを感じさせる要素もある。
味: スムーズだがオイリーで厚みのある口当たり。蜂蜜を思わせる甘さに、オレンジシロップや黄色系のケミカルなフルーティーさ。後半にかけて軽やかな刺激があり、余韻はビターでほのかにスモーキー。じわじわとピートとウッディなほろ苦さが広がり、フルーティーな甘さと混じちぇいい意味での複雑さが長く続く。
香味に好ましいフルーティーさがあり、微かなピートが全体を引き締めて、フレーバーのバランスも良好。40%加水モルトの平均的なそれより厚み、飲み応えを感じられ、これでエントリーグレードクラスのNASかと驚かされる。
一方で時間経過やハイボールにすると樽由来の要素が弱まるのか、ややドライ寄りの変化。麦芽由来の風味と仄かなピートスモークで、食中酒や暑い時期に飲むには丁度いい。
いずれにせよ、ロッホローモンドだからと偏見を持っていた時代は遥か遠く、価格的にも内容的にも使い勝手の良いシングルモルトである。
最近のスコッチモルトの中で、年々酒質が向上し、ラベルチェンジもいい方向に作用していると感じる数少ない事例。ロッホローモンド蒸留所のエントリーグレードであるクラシックが、今回のレビューアイテムです。
ロッホローモンド蒸留所の酒質にいつから変化があったか、それはこれまで度々レビューで触れているので割愛しますが、2000年代前半と考えられます。
では、流通しているオフィシャルボトルの変化についてはどうか。以前、青色にメタリックカラーでクラシックと表記されていた、2015年前後流通のロットはグラッシーで癖の強さが目立っており、悪くはないけど良くもないというか、まさに文字通り”クラシック”なロッホローモンドスタイルが残っていたのです。
一方、当時からインチマリン12年には好ましいフルーティーさが強く「ロッホローモンド良くなったんじゃない?」と、徐々に愛好家の評価を変えていったところ。
その後2020年~2021年にかけて、ロッホローモンドは3ブランドあった全てのオフィシャルリリースを、以下の写真のようにロッホローモンド・XXXXXXに統一。日本市場での評価がどこまで反映されたかはわかりませんが、香味の傾向は全て同じフルーティーベースになり、蒸留所としてこうあろうという方向性、新しいハウススタイルを感じさせてくれます。
※ロッホローモンドは、ピーティーなインチモーン、フルーティーさ重視のインチマリン、そしてバランスをとったロッホローモンドとで整理されている。NAS製品は12年クラスに比べると麦芽風味の硬さ、プレーンさが目立つ傾向はあるが、バランスは悪くなく、上述3銘柄に共通する個性を楽しめる。
今回テイスティングレビューしたクラシックも同様に、市場のトレンドを押さえた、21世紀のロッホローモンドのフレーバー構成が特徴。
原酒としては5〜12年クラスの若いものからスタンダードなクラスまで、広く使っているようで。熟成したモルトのフルーティーさと若い麦感が程よく合わさった構成。
ともすると、他銘柄だと口当たりのオイリーさ、とろりとした要素がしつこく感じられることがある一方で、このクラシックは後半から余韻にかけての軽い刺激と苦味が、それを引き締めてくれています。
樽はバーボン樽、アメリカンオークがメインと思われる構成。ただ、ほのかにシェリー樽を思わせるようなコクのある甘み、オレンジ系のフレーバーがいい仕事をしていて、ホグスヘッドやバットも繋ぎとして使われているように感じます。
またロッホローモンドは蒸留所敷地内に樽整備工場も備えており、余韻にかけて感じるほろ苦さ、ビターなウッディネスは、同工場で整備したリチャー樽由来ではないかとも思われます。
なんというか、普通エントリーグレードのボトルって、ストレートで飲むとあまり触れられるところが少なくて、ハイボールに逃げて終わりってことも少なからずあるんですが…。このボトルはストレートでも見るところが多く、普通に楽しめます。
公式サイトに書かれている「ノンヴィンテージながら非常にエレガントでフルボディな味わい」も、あながち言い過ぎではないなと。ちょっとハリボテ感があるようにも感じますが、この価格帯ならもう十分でしょう。
ただ、ハイボールについてはレビューの通りドライ寄りに変化しちゃうので、個人的にはもう少し甘みやコクが欲しかったところ…最後にちょっとしたアレンジを紹介。
ロッホローモンド蒸留所は連続式蒸留機としてカフェスチルを導入しており、グレーンも自前で蒸留している、スコットランドでも数少ない蒸留所です。
そうして作られたグレーンは、シングルブレンデッドとしてシグネチャーに活用されるだけでなく、ノンピートグレーン、そして世にも珍しいピーテッドグレーンの2種類が、それぞれシングルグレーンとしてリリースされており・・・。
単体でもメローで適度な熟成感もある、美味しいグレーンですが、クラシックモルト6、シングルグレーン4くらいでブレンドしてハイボールにすると、これがいい具合に甘さとコクが出て、フルーティーさも底上げしてくれるのです。
どちらも、3000円前後、2本で6000円くらい。下手な限定品を買うより断然楽しめる組み合わせだと思います。
余談:以上、ロッホローモンド・クラシックのレビューでした。が、記事を書くにあたって公式サイトを見たらですね、なんか、また、ラベル変わってませんかね(笑)。
この前変えたばかりなのに。。。ただ冒頭述べたように、近年のロッホローモンド銘柄はラベルチェンジの度に原酒が代替わりしてクオリティを上げてきましたので、今回のラベルチェンジにも期待しています。