VAT69 1980年代流通 特級表記 43%
VAT69
FINEST SCTOCH WHISKY
1980's
750ml 43%
グラス:国際規格テイスティング
場所:お酒の美術館 神田店
時期:開封後1ヶ月程度
評価:★★★★★(5)
味:やや若さを感じるドライでスパイシーな口当たり。干草、バニラウェハース、ハッカ、ほのかなヒネ感とべっこう飴を思わせる甘み。
余韻はドライでほろ苦いピーティーさ、ヒリヒリとした刺激を伴う。
若くてプレーン、荒さの残る原酒の要素にグレーン感強め。淡いカラメルっぽさが古酒に通じるニュアンスとなっている。少量加水すると刺激が収まりマイルドな飲み口となり、特にフレーバーの幅は広がらないが余韻は長く続く。
100種類のブレンドの試作の中で69番目のヴァッティングレシピが採用されたことから、ヴァッティングNo,69を略してVAT69とする名称が採用された銘柄。。。というのは1882年のことであり、今となっては由来である原酒構成も大きく異なる時代のこと。
1980年前後の構成原酒はグレネスクやロッホナガー、また作り手であるWサンダーソン社は当時DCL傘下であったため、同社の内陸系ブレンド向け原酒の融通を受けていたものと思われます。
ロッホナガーがキーモルトとしてピックアップされることの多い銘柄ですが、今回紹介する1980年代流通になると、ロッホナガーではなく個性の穏やかなグレネスクがメインとする説があります。
加えて比較的若い原酒を使っているのか、あるいはローランドタイプのモルトもベースに使われているのか、飲み口に軽さとひりつくような鋭さが感じられるようにもなり、それ以前の流通品とは大きくキャラクターが異なる印象です。
(VAT69の各年代ラベル別。左から、1980年代後期から1990年代、1980年代、1970年代の流通品。この3種の中では1970年代流通が熟成感と共に最もロッホナガーを思わせる、独特のピーティーな味わいを楽しめる。1990年代はボディ軽く、グレーン感も強い。)
(1970年代よりもさらにロッホナガーを主体的に感じられるのが、右側の1960年代流通コルクキャップ。麦芽風味と柔らかいピーティーさがこの時代の魅力。なお、同様のニュアンスはジョンベッグのオールドボトルにも感じられる。)
この70年代と80年代の違いに仮説を一つ立てるとすれば、1980年にVAT69のデラックス版、上位グレードとなるVAT69リザーブがリリースされたことが関係していると推察。
1970年代までは熟成した原酒も、若い原酒も全て使って作られていたVAT69が、1980年代から原酒の使い方が整理されて上位と下位、リザーブとスタンダードに分けられたとしたら。。。70年代以前に比べて妙に若さが感じられるのも納得できます。
あるいは、この後1990年代、2000年代になるにつれ、VAT69はDCL、UD、そしてディアジオ内のブランド見直しでどんどん低価格ウイスキージャンルにシフトしていくことを考えると、この若さに通じる変化も1980年代から始まっていたと考えられるのです。
なお今回の時代のVAT69は、自分がオールドを探し始めた当時平塚や三浦半島方面の酒屋でだいぶモノが残っており、ありがちなサービス価格で買わせてもらったのを覚えています。
ホントは60年代〜70年代流通を見つけたかったのですが、結局実店舗では見つからなかったですね。オークションにはあんなに出品されてるのに、一体どこに眠っていたのやら。。。