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2016年05月

最近試飲したボトルから アラン18年、ノッカンドゥー15年、キルホーマン7年

カテゴリ:
なじみの酒屋をめぐるとあれこれ出てきて、帰る頃には1軒目が終わった状況になっていることもしばしば。
今回はその中でも面白かったなと思うボトルをいくつかまとめてみようと思います。
アラン18年
・アラン18年 46% 2016年リリース
つい先日リリースされたばかりのアランのオフィシャル通常ラインナップとしては最長熟成品。
これまではシェリーホグスヘッドの18年が暫定的にリリースされていましたが、今回リリースされた18年はバーボンホグスの比率を上げ、通常ラインナップの一つとして定常的に供給されるようです。
味わいは素直なアラン。オーク系のドライなフルーティーさに麦芽風味、旧ボトル18年のほうがフルーティーさはリッチだった印象ですが、ドライオレンジ以外にドライパイナップル、バニラ等の華やかなフレーバーが感じられました。
ボディは軽めで、癖の少ないオーキーな仕上がり。ブラインドで飲むとハイランドモルトと答えそうな、オフィシャルボトルです。
ノッカンドゥ15年

・ノッカンドゥー15年 1997 43%
平行品でいくつか入ってきたようで、価格もお手ごろ、なんともコスパの良いボトルでした。
ノッカンドゥーはオールドから現行品まで、麦芽風味中心の素朴な味わいが特徴ですが、このボトルもホットケーキにメープルシロップをかけたような、スムーズなマイルドな麦芽風味。1杯を通じて飲み飽きないのもポイントです。ジャブジャブ注いでもらいましたが、美味しく頂けました(笑)。
ノッカンドゥーはあまりメジャーではありませんが、15年他、21年などしみじみ旨いボトルが揃っており、もっと評価されて良い蒸留所だと感じています。


・キルホーマン2008 7年 46%
乱発されているので何がどうだかわからないのですが、公式にはバーボンバレルで最長熟成年数となる7年の原酒でボトリングされた1本。加水なんでどうかなーと思ったのですが、変な要素は無く若めのアイラとして十分楽しめる1本です。
熟成が短いため、バーボン樽由来のバニラやフルーティーな要素は淡く、どうしても荒い部分はありますが、加水で飲み口は整えられており、後半に勢いのある若干焦げたようなピートフレーバーが、ほろ苦い麦芽風味とともに広がります。
こういう加水のボトルって飲み疲れないのが良いですよね。これがシングルカスクで出ていたら、ハーフショットでさようならだったと思います。


今回のボトルは全てオフィシャルですが、最近ボトラーズが苦しい反面、シングルモルトを中心にオフィシャルリリースが多様になってきており、リリースが充実してきているなと感じます。
このブログでもなるべく紹介するようにしていきたいと思いますので、面白いと思うボトルがあれば是非コメント等で情報提供いただけますと幸いです。

アラン ピーテッド 10年 2005-2016 バーボンバレル 59.3%

カテゴリ:
ARRAN Peated
Private Cask for Japan
Aged 10 Years
Distilled 2005
Bottled 2016
Cask tyep Bourbon Barrel #101
700ml 59.3%

グラス:サントリーテイスティング
量:ハーフショット
場所:BAR飲み(Y's Land IAN)
時期:開封直後
暫定評価:★★★★★★(6)(!)

香り:オーキーでスモーキーな香り立ち。濃い目の樽香と麦芽香が、バタークッキーの甘い香りやおしろいの白っぽさ、ドライフルーツの華やかな酸味に通じる。

味:ねっとりとした口当たり、香り同様バーボンオークのフレーバーが主体で、奥には白っぽい麦芽の甘みが味に厚みを出している。蜂蜜、バニラ、ドライオレンジ。
余韻はスモーキーでピーティー、ピリッとしたスパイスを舌先に感じ、オークとグレープフルーツの華やかで長い余韻。

2005年から仕込みが始まったアランのピーテッドモルト。今回のボトルは熟成期間満10年を迎えた初めての日本向けのカスクという事ですが、思いもかけぬ良い出来栄えにびっくりしました。
まずここ最近の傾向として、あまりピート麦芽を使ってこなかった蒸留所が仕込むピーテッドは、それが際立って強くアンバランスな傾向があったように思います。しかし今回のアラン10年は、それほど自己主張していないというか、バランスの良いタイプなのです。

10年でカスクストレングスというだけあって、まだ荒い部分は残っており、★7にはもう一歩という感じですが、アランの素直な酒質を考えると、これが第一の飲み頃と感じます。
麦感は厚めでおしろいのような麦の芯を感じる白っぽい甘み、そこにバーボン樽特有の華やかでフルーティーなオークフレーバーが強めに乗っかっており、パワフルでリッチな飲み心地です。
ここまでは純粋にアランそのものというか、普段ならここで終わって、後は余韻が華やかでオーキーでドライで・・・となるところ、今回はピーテッドです。スモーキーで程よいピートフレーバーが余韻にかけて仕事をして、ただ華やかで終わらないのもポイントです。

アランでピーテッドというとマクリムーアが加水もハイプルーフもリリースされていましたが、その完成度は頭一つ以上今回のボトルのほうが抜け出ています。
今すぐ開けて飲んでも楽しめますし、開かせても樽感が馴染んでバランスが良くなるでしょう。10年くらい置いて一体感が出てから飲んでも良い方向に作用すると思います。

アードベッグ ダークコーヴ 46.5% 一般市場向け

カテゴリ:
ARDBEG
DARK COVE
(No Age) 
46.5% 700ml

グラス:サントリーテイスティング
量:ショット+ハイボール
場所:BAR飲み(Y's Land IAN)
時期:開封直後 
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:最初は甘く濃厚な香り立ち。ヨードやタール、燻した魚介を思わせるスモーキーさ、チャーオークのべったりとしたウッディネスにわずかな酸味もある。

味:濃厚だがべたつきと甘酸っぱさもある口当たり。燻した麦芽、オレンジジャムやみたらし、ヨード、そこから焦げたピートフレーバーにチャーオークのねっとりとしたコクと甘みがある。
余韻はウッディーでスモーキー。木の渋みとともに強くドライ。唇がべたつく。

アードベッグファンが熱い視線を向けるニューリリース、ダークコーヴ。今回のボトルは一般市場向けにリリースされた加水バージョンです。
密造時代をオマージュし、ダークシェリー樽なる聞きなれない樽で熟成された原酒を一部使用、後はバーボン樽原酒とのバッティング。全体を通して濃いフレーバー、ねっとりとしたコクと強い樽感に加水の力技で完成度を高めてきたような、そんな印象を受けます。
複数タイプの原酒により、味わいには複雑さがありますが、余韻にかけてのべたつきも感じられ、謎のダークシェリー樽(おそらくはペドロヒネメスで間違いなさそうですが、それ以外にも工夫がある様子)と思われる特徴がはっきり感じられます。 

このダークコーヴは先日記事にしたコミッティー向けのハイプルーフ版と、加水版の2種類がリリースされています。
原酒比率は変わっているようで、むしろ一般市場向けのほうが濃さというか、今回のボトルのブランドイメージである"ダーク"な感じを受けます。
コミッティー向けもまた同傾向のフレーバーはありますが、加水版は樽感が強く、コミッティーはそれ以外の要素も強い、様々な個性がはっきりしているという感じ。フレーバー全体がシャキッとしているため、様々な要素が楽しめるのはコミッティー向けですが、ダークを体現するような甘みや味の濃さは、一般向けも負けていないと感じます。 


ちなみに、先に飲んだウイスキー仲間から、一般向けのダークコーヴはハイボーラーであるというコメントがありました。そういわれたら、試さないわけには行きません。
マスターおかわりください、今度はハイボールで! 

自分はアードベッグTENのハイボールを飲むことが多いですが、飲み口はピーティーで、コクのある甘さと柔らかいがどっしりとしたスモーキーさが、ライトでさっぱりピーティーな通常のTENハイボールとは大きく違うところ。コストの高いハイボールですが、この感じは柔らかめの葉巻と合わせても良さそうだなと感じました。 

昨年は200周年ボトル、今年はダークコーヴ、一年に一度こうしてなんらかの限定ボトルが出てくるのは楽しみが増えて良いことですね。
来年はどのようなテーマでくるのか、言うなればお祭り的に楽しみたいです。

イチローズモルト 秩父 5年 IPAカスクフィニッシュ #3867 空港免税向け

カテゴリ:
image
ICHIRO's MALT
CHICHIBU
Aged 5 Years
Cask type Bourbon and IPA Cask Finish #3867
Travel Exclusive
700ml 59.4%

グラス:創吉テイスティング
量:50ml+30ml以上(サンプル@TBさん、ボトル@Nさん)
場所:自宅飲み
時期:開封後1ヶ月以内
評価:★★★★★★(6)

香り:フレッシュでツンとしたアルコール感に加え、ハーブやホップ、グレープフルーツやドライパッションフルーツを思わせる、爽やかな酸のある香り立ち。徐々に乾いた麦芽や植物の苦味、これはまるでIPAだ。時間経過でホップ香が収まると、奥からオーキーなフルーツ香も感じられる。

味:香り同様にフレッシュで勢いがあり、酸味のある麦芽風味とホップ、グレープフルーツ、中間からはねっとりとした口当たりに変化する。余韻はほろ苦くビターで微かにオーキーなフルーティーさ。高アルコール度数らしくヒリヒリする。


バーボン樽で熟成したあとでIPAを熟成させていた樽でフィニッシュしたシングルカスクボトリング。 
日本国内の空港免税店で販売されているイチローズモルトの限定品であり、WWA2016日本地区大会のシングルカスクモルトウイスキー部門で最優秀賞に輝いたボトル・・・なのですが、今年はこのボトル以外にエントリーが無かったというのは見なかったことにして中身を評価したいと思います。

飲んでみると、今までに飲んだことがないような衝撃的な味わい。
っていうか香りも味も、IPA感がバリバリ出ていて、そのものが混ざってるのか、あるいは製造行程で麦芽の代わりにホップでも入れたんじゃないかというフレーバーです。 (過去にはもう一樽大阪フェス向けにもボトリングされたそうですが、そちらはまた違った構成なのだとか。)

こうなってくるとフレッシュでスパイシーな口当たりも悪くない。香味の良し悪しとしては、ウイスキーそのものは相変わらず若いわけで、当然そうした要素が出るであろうところ。IPA樽の強さでその若い嫌味な部分を押さえ、かつ秩父原酒が持つ酸味や麦芽風味を取り込み、これはこれでアリなんじゃないかというフレーバーに昇華しています。
重ねて言うと、それはただIPA味というだけなんですけど(笑)。

IPAについては解説不要と思いますが、インディアン・ペール・エールの略で、総じて多量のホップが使われ、フルーティーで苦味が強い特徴があるエールタイプのビールです。
IPAって何?って方はそもそも受け付けない可能性がある反面、私はこのタイプのビールが好きで、抵抗なく楽しめました。IPA好きな方々に飲ませてみたいボトルでもあります。 
それこそハイボールにしたらビールになるんじゃないかと、馬鹿なことを考えてグラスの残りに炭酸を加え、ハイボールでも飲んでみましたが、麦芽風味に加えて近年系のトロピカルフルーティーさに、後一歩でヤバイという危うさのある華やかさ。ビールにはなりませんでしたが、さらに面白さが感じられました。


成田空港ではかなり強気のお値段で売られていたというこのボトル。まさか2名の方からテイスティングの機会をいただけるとは思っていませんでした。
貴重な機会を頂きまして、本当にありがとうございました!

ベリーオールドセントニック 25年 43.2% バレルプルーフ エステート

カテゴリ:

VERY OLD ST,NICK
Aged 25 Years
Barrel Proof Estate
750ml 86.4 Proof (43.2%)

グラス:SK2
量:50ml(サンプル@愛知のKさん)
場所:自宅
時期:不明
暫定評価:★★★★★★★(6-7)
※ボトル写真に写っているグラスの中身は違うものとのこと。

香り:リッチで濃いチャーオーク香。焦げたカラメルやメープルシロップ、干した藁、コーン、トゲトゲしさがなく落ち着いているが存在感のあるウッディネス。
奥からニスを塗った家具のような、薬品系のアロマも感じられる。

味:まろやかで濃厚、まるでシロップのように甘い口当たり。シロップ漬けのチェリー、熟したバナナ、駄菓子のフルーツゼリー、チャーオーク。中間はあまり開かず平坦だが熟成年数からくる深みとコクが感じられ、ピチピチと微炭酸のようなスパイス、オーク由来のタンニンが染み込んでくる。
一口目の余韻はあまり長くなく、スッと消えてしまうが、杯を重ねるごとに蓄積して、スパイシーでメローな余韻が長く続く。


聖人のバーボンこと、ベリーオールドセントニック。今回のボトルは同ブランドにおける最長熟成品です。
名前の由来は禁酒法時代にやたら旨い密造酒(バーボン)を作っていたというニック爺さんで、あまりの旨さに聖人扱いされていたのだとかなんだとか。ただ、ベリーオールドセントニックの中身はヘブンヒル蒸留所から買い付けた原酒で作られており、ニック爺さんとの繋がりはありません。
まあ「旨いバーボン」という点では、共通点がありそうだと言えるわけですが。

自分が飲み始めた頃はこの25年含め17年や20年など様々なボトルを見かけましたが、最近はエンシェントカスクなどのごく一部の銘柄を除いてすっかり見なくなってしまいました。
また、この唯一流通していると言っても過言ではないエンシェントカスクシリーズは、それまでのビンテージ品と比べて熟成感が大きく異なり、もはやベツモノ。長期熟成原酒の不足か、良質なオーク樽の不足なのか、ヘブンヒルも苦しいんだろうなと推察します。(火事もありましたしね・・・。)

今回サンプル交換から久々にこの25年を飲ませていただきましたが、長期熟成ならではのまろやかさ、コクと深みのある甘さ。そして熟成年数の割りに余韻のタンニンが柔らかく、甘いオーク香と合わさってなんとも優雅なフィニッシュに繋がっています。
若干ケミカルっぽさが感じられるのと、度数の低さから突き抜けるような陶酔感はもう一歩というところですが、ハイプルーフのボンデッドバーボンが背中を叩いて元気付けてほしいときに飲みたいバーボンなら、これは優しくその日の疲れを労ってくれるような、体に染み込むしみじみ旨い1杯なのです。


追記:最近本業のほうが忙しく、日々終電帰りであるため1日1本しか記事をUPできていません。サンプルやネタとなるボトルは多数あるのですが、更新できないのが歯がゆいばかり。
コメントもまとめて返答することが多くなってしまっており、サンプルを頂いた皆様、読者の皆様、お待たせしてしまい申し訳ありません。

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