オールドパー スーペリア 43% 近年流通品
Old Parr
Superior
Scotch Whisky
2000-2010's
750ml 43%
評価:★★★★★★(6)
香り:薄めたキャラメル、カステラの茶色い部分のような穏やかで色が少しついたような古酒系の甘やかさに、微かな鼻腔への刺激、スモーキーさを伴うトップノート。時間経過で熟成した内陸モルトに由来する品の良いフルーティーなアロマと熟成樽由来のウッディネスが開いてくる。
味:マイルドで軽いコクのある口当たり。シェリー樽由来のウッディさ、薄めたキャラメルや鼈甲飴、熟成したグレーンの甘みと香ばしいモルトの風味から、じわじわとビターで土っぽいピーティーさが染み込むように広がる。
余韻は穏やかでありながら存在感のあるスモーキーさが鼻腔に抜け、ピートとウッディなほろ苦さ、口内をジンジンと刺激する。
ウイスキー愛好家の中で話題になることはあまりない1本だが、それは日本市場において本ブランドのギフト向けと言う位置づけや、ブレンデッドのノンエイジという外観からくる印象もあったと推察。
しかし、中々どうして香味は多彩で味わい深く、熟成したスペイサイド、ハイランドモルトがもたらすフルーティーさや、若干アイラ要素を伴うピーティーな原酒がいい仕事をしている。ストレートも悪くないが、加水やロックで飲むと”場を壊さない味わい”をゆったりと楽しめる。さながら潤滑油としてのウイスキーである。
近年まで日本市場におけるオールドパーの定常ラインナップにおいて、上位グレードに位置付けられていた1本。シルバー、12年、18年クラシック※、そしてこのスーペリアですね。※ブレンデッドモルト仕様だった18年クラシックは2015年頃に終売。
モノはアメリカ市場向けとして作られていたため、日本の正規品であっても750ml仕様がスタンダード。というか、1980年代以降のオールドパーはアメリカ、メキシコ、アジアと関連する免税店を含む地域への輸出向けのブランドとなっているため、ヨーロッパ向けスタンダードである700ml仕様は造られておらず、日本向けも全て750mlとなっているのが実態としてあります。
さて、スーペリアが「販売されていた・・・」として過去形なのは、2019年11月にディアジオが日本市場向けオールドパーのブランド・リニューアルを発表するとともに、終売となっていた18年をブレンデッドウイスキーとして復活。そのラインナップにスーペリアはなく、一部酒販では製造終了の文字も見られるようになったためです。
中身がどれだけよくても、熟成年数表記があるほうが高級感が出るし、12年との違いも分かりやすいためでしょうか。現時点で日本向け公式サイトに情報は残っているようですが、今回のブランド戦略の変更と共に、徐々にフェードアウトしていく流れが見えます。
ご参考:オールドパー、リニューアルのお知らせ (oldparr.jp)
スーペリアは熟成した原酒のみならず、若い原酒まで幅広く用いることで、深みとコク、熟成感だけでなく、若い原酒に由来する骨格のしっかりした味わいを両立しようとブレンドされています。
こうしてテイスティングしてみると、確かに、熟成した内陸モルトのフルーティーさ、シェリー樽に由来する甘さ、そして若い原酒の刺激は香りの奥、味では余韻でアクセントとして若干感じられる。また、アイラモルトに由来すると思われる染み込むようなスモーキーさも特徴的で、レビューの通り中々味わい深いブレンドに仕上がっています。
構成原酒としては、オールドパーはグレンダランとクラガンモアがキーモルトであるとされていましたが、現代はこの2つだけでなく、ディアジオ社が持つ様々な原酒が用いられているようです。
というのも、クラガンモアやグレンダランは、古くは麦芽風味に厚みがあり、内陸系のピーティーさも主張してくるような原酒でしたが、両蒸留所とも現代はライト化が進み、特に蒸溜所が建て替えられたグレンダランのキャラクターは1985年以降大きく変わっています。
そのため、フルーティーさはともかくピートは異なる原酒の力を借りなければ出てこない。。。
例えば、カリラやラガヴーリンといった蒸留所の短熟、中熟原酒を隠し味に、内陸原酒の中熟、一部長熟原酒(一部シェリー樽熟成を含む)をブレンドしたとすれば、こういう仕上がりにもなるのかなと予想しています。
余談ですが、オールドパーはリユース市場での流通量が多い銘柄の一つです。
それは先に書いたように、ギフトとして使われることが多い一方で、もらった人が飲まずに放出してしまうため。また、オールドボトルは状態がよくないモノが多いことでも知られているわけですが、となれば取引価格は下がっていきます。一方で、コルクキャップで金属臭とは無関係な近年流通品のスーペリアも割を食っているのか、手頃な価格で取引されていることが多くあります。(2次流通価格を基準とするわけではありませんが、本ブレンドは終売品でもあるので。)
レビューの通り中身は熟成した原酒がたっぷり使われた、安価なブレンデッドやモルトでは実現できない深みのある味わいです。
この手のブレンドは、シングルモルトやボトラーズリリース等の個性を楽しむモノではないので、単品では物足りなさがあるやもしれませんが、その場の主役になるのではなく、例えば知人との談笑の場、読書や観劇のお供といった、場を壊さず空気を温めるような潤滑油としての使われ方なら、充分なクオリティがあると感じます。
そんな需要があるようでしたら、是非リサイクルショップやオークションを探してみてはいかがでしょう。