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2022年12月

三郎丸蒸留所のスモーキーハイボール 缶ハイボール 9% 2022年リリース

カテゴリ:
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2022年12月1日、三郎丸蒸留所から「富山スモーキーハイボール」として販売されていた缶ハイボールが全面リニューアル。
名称を「三郎丸蒸留所のスモーキーハイボール」として変更し、構成原酒も三郎丸の稲垣氏が開発したポットスチルZEMONで蒸留したモルト原酒をブレンドするなど、外観も内容も大幅に刷新してのリリースとなります。

三郎丸蒸留所のスモーキーハイボール
355ml 9%
1缶 270円(税抜)
プレスリリース:https://www.wakatsuru.co.jp/archives/3543
PR動画:https://youtu.be/T7BMBoXDKjo

あれこれ書く前に飲んだ感想だけ述べると、これは美味いです。
リニューアル前後で比べたら、飲み口は一層クリアで、そこからしっかりピーティーなフレーバーが広がり、香ばしさとほろ苦さ、余韻は適度にドライでキレが良い。…
先にレビューしている三郎丸Ⅱ ハイプーリステスでも感じた洗練された味わいとなり、ハイボールとしての完成度も上がっているように感じられます。

そのまま飲んで良し、食中酒として使ってよし。この手の系統のスモーキーなウイスキーのハイボールを作るために、ウイスキーにソーダに氷にと、一式揃えて家で作るなら、もうこれで良いじゃんというレベルです。
価格はリニューアル前が税抜270円、リニューアル後が税抜298円で、約30円ほど上がっていますが、味が良くなっているので個人的にはまったく問題なし。
ここは価値観が分かれますが、例えば中途半端に安くて我慢しながら飲む酒よりも、ちょっと高くなっても良いからその分満足できる商品が良いなと思ってしまうんですよね。

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※今回リニューアルしたハイボール缶に使われている原酒を生み出す、三郎丸蒸留所独自のポットスチルZEMON。老子製作所との共同開発、世界で初めて鋳造で銅と錫の合金によるポットスチルを実現した。クリアでありながら厚み、重さのある原酒を生み出す特徴がある。

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ここで昨年リニューアルした富山スモーキーハイボール8%の特徴を振り返ると、同様にクリアでスモーキーな味わいながら、旧世代の三郎丸を思わせる若干の癖、根菜のようなニュアンスが僅かに感じられました。
それが普段使い、食中酒とした場合どうかというと、そこまで気にするものではないというレベルですが。

ただ、人間とはかくも欲深い生き物で、良い状態と悪い状態を比較すると、それまでこれでいい、あるいはこれが最高だと思っていたもので満足できなくなるんですよね。
だからこそ、人はより良きモノを求めて文明を発展させ、進化を重ねてきたわけです…。現状に満足しない、その向上心が生み出したのが今回の三郎丸ハイボール缶のリニューアルだと言えます。
おそらく、組み合わせる原酒の比率から、2019年以降が増え、特に2017年以前の原酒が減ったのでしょう。そこに輸入スコッチバルクウイスキーで、比較的クセの少ないピーティーなものや、グレーンを加えて非常に上手に作ってきたなという印象を受けます。

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※ハイボール缶が届いた当日、メニューは鶏大根。ヤバいぐらい相性が良かったです。無限に飲み食いできましたね。(語彙力)

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※三郎丸蒸留所のスモーキーハイボールプロ仕様。三郎丸Ⅱカスクストレングスをフロートしてスーパーハイボールに。これもスモーキーハイボールとして間違いない美味しさ。

こうしてよりクリアでスモーキーになったハイボール缶の真価は、夏場ならキンキンに冷やしてそのままで頂くのが一番ですが、今の時期は食中酒として合わせて、年末年始の食環境を充実させるのが一番だと考えます。
例えばコタツに入ってハイボール。飲み終わったのでいちいち底冷えする台所で作るか、冷蔵庫からサッと取り出して5秒で本格ハイボールか。どちらも同じクオリティなら、私は迷わず後者を選びますね。

そもそもこの缶ハイボールは、蒸留所マネージャーの稲垣さんが、家飲みするために作ったもの。いちいち準備するのがめんどくさいので、さっと本格ハイボールを飲めたらという考えで開発したものであり、その観点から見れば、今回のリニューアルで確実に完成に近づいたと言えるように感じます。(ブレンドも、部下に任せず稲垣さん自身が手掛けているとか。)
リニューアルしてラベルが変わると味が落ちる、あるいは薄くなるというのはウイスキー業界あるあるですが、ここではさらなる完成度のハイボールを味わえる。
ピートフリークの皆様は、年末年始用に今からでも調達されてみてはいかがでしょう。きっと満足できる味わいだと思いますよ!

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三郎丸Ⅱ 2019-2022 ハイプーリステス カスクストレングス 61%+46%加水版比較

カテゴリ:
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SABUROMARU 2 
THE HIGH PRIESTESS 
SINGLE MALT JAPANESE WHISKY 
Cask Strength 
Distilled 2019 
Bottled 2022 
One of 600 bottles 
700ml 61% 

評価:★★★★★★(6)(!)

香り:燻した麦芽と樽由来の甘いアロマ、はっきりとスモーキーなトップノート。野焼きの香りと焼けたオレンジのような焦げ感、ピートスモーク、土っぽさ、微かにジンジャー。それらに押し込められたオーキーな要素が厚みとなって柑橘感を後押ししている。

味:ネガティブな要素が少なくクリア。乾いた麦芽と醤油煎餅のような香ばしさ、ほのかな柑橘感、焦がした木材や土っぽさを感じるスモーキーさが力強く広がる。
余韻は高度数らしくジンジンとした刺激が口内にあり、鼻抜けはスモーキー、ビターなピートフレーバーが長く続く。

今はまだ溌剌とした若さ、勢いの強さも目立つ構成であり、人によっては未熟と捉えるかもしれない。しかしその酒質は変に傾いた要素もない無垢なもの。これから熟成を経て複雑さや果実感を纏っていくだろう伸び代、大器を感じさせる。成長の方向性はアードベッグやラガヴーリン。これで“完成”はしていないが、2016年以前からは考えられない進化、洗練された味わいである。
数年後、最初のピークを迎えるだろう「未来」に想いを馳せる楽しみもある。まさに新時代のはじまりの1杯。

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※(リリース比較)本シリーズは毎年カスクストレングスと加水仕様がリリースされている。今年のリリースは雑味が少なくピートと麦芽由来の風味がダイレクトに感じられるが、加水版はその荒々しさが整えられて非常に親しみやすい。人によっては物足りなさを感じるかもしれないが、三郎丸の進化とZEMONの可能性は、どちらを飲んでも感じられる。

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先月リリースされた、三郎丸のタロットシリーズ第3弾。
本ブログの読者であればご存知の方も多いと思いますが、三郎丸蒸留所は2016年から17年にかけての大規模改修工事の後、1年毎に新しい取り組みを実施しています。
そのため、各年の仕込みから3年熟成で構成されている本シリーズは、段階的にその取り組みの効果を確認できる、ただの3年熟成リリース以上の意味を持つシリーズとなっています。

【関連情報】
2017年 大規模改修
2018年 三宅製作所製マッシュタン導入
2019年 鋳造製ポットスチルZEMON開発・導入
2020年 発酵層の1つを木製に(ステンレスで発酵開始→発酵最終段階を木製へ)。アイラピーテッド麦芽の仕込み実施
・・・
※詳細はJWICを参照いただくとより詳しく記載されています。(参照先はこちら

そして今年のリリース、三良丸Ⅱのポイントは、なんと言っても同蒸留所マネージャー(現若鶴酒造CEO)の稲垣貴彦氏が老子製作所と共同開発した、ZEMONで蒸留された原酒が初めてシングルモルトとしてリリースされることにあります。

三郎丸蒸留所は、2018年までは若鶴酒造としてウイスキーを作っていた旧時代のステンレスポットスチルのネック部分から先を銅製に改造した、改造スチル(写真下・左)でウイスキーを仕込んでいます。蒸留所の機能としてはリニューアルを経て向上していたものの、旧世代のウイスキーづくりから脱却したとは言い難いものでした。
この点に関して稲垣さんの想いは非常に強く、本ボトルの裏ラベルに記載されたメッセージでも、これからが始まりであることを強調されています。

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さて、世界初となる鋳造製ポットスチルZEMON(写真上・右)。銅92%、錫8%の合金で作られるスチル。その特徴は様々な媒体で語られているため改めて記載することはしませんが、違いは明確に現れました。
私の記憶が確かならば、今から2年前の2020年に三郎丸0がリリースされた時。その進化を評価しつつも、三郎丸はまだこれからであると。今後間違いなく、さらに良いウイスキーがリリースされてくると。そういうレビューをしていました。
既に2019年、2020年のニューメイクをテイスティングしており、間違いないと確信があったためです。

ただし1つ不安があったとすれば、2020年には改善されたものの、2019年の酒質はニューメイク時点で少しぼやけた印象があり、ピートフレーバーは2018年の方が際立って感じられた点にあります。
ウイスキー造りの心臓部とも言えるポットスチルが全て変わったのですから、カットポイントなどその使い方で苦労があったという話。トライ&エラーがあるのは当たり前でしょう。
分析結果、数値の面でもネガティブな風味に繋がる要素(グラフ上段)で一部2018年の原酒を越えている点があり、これがニューメイク時点での「ぼやけている」という感想に繋がったのだと思います。

saburomaru_2018_2019_2020
saburomaru_newmake_2018_2019

しかし今、目の前にある最低限の熟成を経た三郎丸Ⅱをテイスティングし、改めて三郎丸Ⅰもテイスティングし、熟成による成長の違いを如実に感じています。三郎丸Ⅰはだいぶ暴れてますが、Ⅱの方は素直に、確実に成長している印象を受けます。
今後熟成を経ていく中で、さらに洗練されて、複雑さを増していく、3年間でその下地が出来た状況であるようにも感じます。

これに関して同様のイメージを思い起こし、頷いた方々もいらっしゃるのではないかと思います。
新酒を飲み、成長過程を飲み、そして未来をイメージする。既に完成品したリリースはそれはそれで良いものですが、10年、20年前となると当時何があったか分からない蒸溜所も珍しくありません。変化を知り、今だけでなく、過去や未来の姿との比較も含めて楽しめる。これこそ現在進行形で成長する、新興クラフト蒸溜所の最大の魅力だと感じる瞬間です。

なお、三郎丸のZEMONですが、ポットスチルが全て変わったのは事実ですが、改造スチル時代の良い部分を引き継ぐために一部類似の設計を採用しています。
それはスチルのネックが折れ曲がった先、ラインアームの角度と短さです。角度は兎も角そんな短いか?と思われるかもしれませんが、改造スチルはラインアーム部分約1m先から冷却機となっており、物凄くラインアームが短いのです。
三郎丸の重みと厚みのある原酒はここから産まれると考え、ZEMONも同様にラインアームはかなり短く設計されています。
良いものは使い、そうでないものは変えていく。変えない勇気がある一方で、変える勇気もある。若い稲垣さんだからこそ出来る柔軟さ、チャレンジスピリッツが三郎丸の魅力なんですよね。

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※蒸留所に展示されているZEMON開発の実験機。合金であっても同様の触媒反応があることだけでなく、鋳造の場合表面に細かい凹凸が出来ることで接触面積が増え、さらに高い効果が見込まれる等、様々なメリットが確認されている。

一方で少し気は早いですが来年のリリースはどうなるか。冒頭まとめたように、実は来年も設備面で変化があるだけでなく、それ以上に日本のウイスキー業界にとって前例のない革新的な取り組みの過程が、形になろうとしています。
そう、アイラ島産のピートを使ったモルトウイスキーの仕込みです。
稲垣さんが目指すウイスキーの理想像は、アードベッグの1970年代。アイラらしいフレーバーはピート成分の違いから産まれるのではないかと考え、現地で調達したピート、麦芽を使った仕込みが2020年に行われています。

つまり来年は
・三宅製作所マッシュタン
・木桶発酵槽(最終のみ)【2022NEW】
・鋳造製ポットスチルZEMON
これらの設備で仕込んだ
①内陸ピートを使った従来のピーテッドモルト原酒(52PPM)
②アイラピートを使ったピーテッドモルト原酒(48PPM)
以上2つ。時期はずらすことになるかもしれないが、2種類ともリリースされる予定と聞いています。

ニューメイクの時点で、既に違いがはっきりと出ていましたが、その違いは熟成後どうなったのか。。。
これまで仕込んできた原酒の成長だけでなく、来年のリリースも今から待ちどおしいです。

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シングルモルト 安積 2018-2022 ジャパニーズトレイル for TWC 59%

カテゴリ:
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THE JAPANESE TRAIL No,4 
ASAKA DISTILLERY 
SINGLE MALT WHISKY 
Distilled 2018 
Bottled 2022 
Exclusively For The Whisky Crew 
700ml 59% 

評価:★★★★★★(6)(!)

香り:注ぎたてはシャープな印象を持つトップノート、すぐにバーボン樽由来の黄色系果実のオーク香、柑橘、土っぽさやタールを伴うピートスモークが麦芽の甘さと共に広がる。

味:ややオイリーな口当たり。麦芽の甘みと土っぽさを伴うピートフレーバーが、柑橘やグレープフルーツ、微かにパイナップル等のフルーティーさ酸味、ほろ苦さを伴いつつ広がる。飲みこんだ後で口内にハイトーンな刺激を伴うが、それを柔らかい甘さが包み込む。スモーキーでほろ苦く、香ばしい余韻が長く続く。

安積蒸溜所のピーテッドモルトの個性を、しっかりと感じることが出来るリリース。内陸のピートであるためヨードやダシ感こそ無いが、バーボンオークの華やかさ、安積らしい湿り気のある柑橘感、加熱した果実のような酸味、麦芽風味、そこに強めのピートスモークが合わさって、ラフロイグやキルホーマンの8〜10年熟成品に近い系統に仕上がっている。
これでまだ4年。。。今後はさらにリッチで、フルーティーな成長を遂げていくだろう伸び代もある。安積蒸留所の軌跡を感じると共に、ジャパニーズの将来が楽しみになる1本。

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年末に向けてリリースラッシュのウイスキー業界。個人的に期待大だった1本が、このTHE WHISKY CREW向けのシングルモルト安積です。
蒸留所創業の2016年から、個人的に安積蒸留所に注目してきたというのもありますが、今回のリリースがピーテッドタイプだったという点が一番の理由です。

安積蒸溜所からの本格的なピーテッドタイプのリリースは、2020年の安積ファースト・ピーテッド以来(個人向けPBを除く)であり、このリリースが将来性抜群で美味しかったことや、ピーテッド原酒の成長を見ることが出来るのではないかと、期待していたわけです。
通常リリースだと今年発売されたシングルモルト安積2022はバランス寄りのピート感を備えていますが、ノンピート原酒の個性が強い仕上がりで、ピート原酒の成長を見るまでには至りませんでした。

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そして飲んだ感想は、コメントからも感じていただけるように期待通りの1本でした。
原酒の構成は、2018年蒸溜で4年熟成のバーボン樽3樽からのバッティング。内訳は50PPMのヘビーピーテッドモルト1樽、ノンピートモルト2樽。バッティングの比率はピーテッドモルトが60%、残り2樽からノンピートモルトが合計40%となっています。
また安積のバーボン樽原酒の度数は大概61〜62%くらいであり、そこから推定2〜3%だけ加水した、ほぼカスクストレングス、極少量加水リリースとなります。

この加水量で増える本数は微々たるもの。市場的にはカスクストレングスの方がウケが良い傾向がある中で、3樽の原酒を結びつけるため、香味の完成度を重視して加水を選ぶプロ意識。
まだ4年熟成で若いため、奥行きというか複雑さは若干軽いところもありますが、3樽のバッティングによってピート感とフルーティーさ、両方が感じられる構成となっており、今後1〜2年の熟成でさらに樽感がのって風味のカドが取れてくれば、一層リッチで複雑な味わいになることも想像出来る。
これはもう間違いないでしょう。

熟成によって蓄積する時間、つまり蒸留所の軌跡を辿る事が出来るだけでなく、そこから先の未来まで、来年が楽しみだねと前向きな気持ちになれる。
TWCのジャパニーズトレイルのコンセプトとしては勿論、年末にテイスティングするのにも相応しい仕上がりとなっています。

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※安積蒸溜所におけるピーテッド原酒の仕込みは、1年のうち蒸溜設備のオーバーホール期間前、夏場の前の1〜2ヶ月のみ行われている。仕込みの量が少ないため、リリース頻度も少ない。

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安積蒸留所といえば、2019年に木桶発酵槽を導入し、以降の仕込みでは酒質にさらにフルーティーさと厚みが出ています。
原酒の成長だけでなく、今後生まれてくる新しい原酒にも期待できるわけですが。
一方で、木桶導入前、ステンレスタンクを使っていた時代が悪かったかというと決してそんなことはなく、今回のように樽やピートとの馴染みがよく、ブレンドした際には他の原酒との繋がりも良い。仏のような笑顔で知られる造り手の山口哲蔵氏のような、懐深い特性も持っています。

一方でなぜこうした安積独自の酒質、独特の酸味を持つフルーティーな味わいになるのか、実は造り手側もよくわかっていないそうです。
ただし偶然の産物と言えど、何らかの理由はあるわけで。製造プロセスを聞く限り、変わったところはないので、私は発酵時に日本酒における生酛仕込み的な現象が起こっているのではと予想しています。
上の写真を見ていただければ伝わるように、安積蒸溜所の設備はかつて笹の川酒造で日本酒の製造・保管場所だった歴史ある造りの蔵に導入され、糖化、発酵、蒸留、全てが同じ空間で行われています。

生酛仕込みは発酵時に使用する乳酸菌を、自然に漂う乳酸菌を増やして使用する方法で、この乳酸菌は例えば木材などに住み着くと言われています。(木製発酵槽で香味の複雑さが期待出来るのもこの点にあると言われています。)
発酵時間はステンレスタンクでの発酵だった2018年頃までは約3日、現在は約100時間、その中で蔵に付いている菌が独自の発酵、フレーバーの生成に寄与しているとしたら、創業から250年、長い時間をかけて生み出された笹の川酒造の歴史が醸す味わいとして、なんとも浪漫ある要素ではないでしょうか。

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2016年の創業から、淡々と原酒を造り、焦らず、じっくりと原酒の熟成と合わせて事業を展開してきた安積蒸留所。
来年は熟成した原酒と、輸入原酒をブレンドしたワールドブレンデッドウイスキー安積蒸留所&4を発売するなど、ウイスキー事業本格参入から7年目の年に、同蒸留所としてさらなるチャレンジも発表されています。

一足お先にテイスティングしてきましたが、柔らかい甘さを感じるモルトとグレーンの風味、ほのかにピーティーですっきりと飲みやすく仕上がったブレンデッドで、ハイボールにめちゃくちゃ使いやすかったですね。
この7年間、決して平坦ではなかった安積蒸留所の道のり、飛躍の時は近いと感じる原酒の成長。来年以降もリリースを楽しみにしています。

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NAGAHAMA シェリーカスクブレンド for 乾杯会 56% Dream of Craft Distillery

カテゴリ:
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DREAM OF CRAFT DISTILLERY 
NAGAHAMA 
Sherry cask blend 
Blended Malt Japanese whisky & Scotch whisky 
For KANPAIKAI 
700ml 58% 

評価:★★★★★★(6)

香り:ドライプルーンやデーツなどのダークフルーツ、黒蜜やチョコレートを思わせる色濃い甘さ。合わせてハーブ、微かに焼き栗のような焦げたウッディさ、スパイシーな要素もあり、香りの複雑さに繋がっている。1:1程度に加水すると、華やかなフルーティーさが強く開く。

味:香り同様にリッチで色濃く甘酸っぱい味わいだが、そこにオレンジやパイナップルなどのシロップを思わせるケミカルで華やかなフレーバーが混ざる。余韻にかけては焼き芋のような樽香の香ばしさ、ほろ苦いウッディネスが全体を引き締めて長く続く。

長濱蒸溜所の原酒を含む、シェリー樽熟成のモルトウイスキーをレシピ全体で70%以上使用。
色合い同様にこってこてのシェリーカスクだが、一部使われているハイランドモルト由来のフルーティーさ、異なる樽感が全体の複雑さに繋がり、単調になりがちな若年圧殺シェリー系ウイスキーとは異なる仕上がりが特徴。
静謐な夜の琵琶湖と、湖面に浮かぶ満月のような陰のイメージを持つウイスキー。

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昨日レビューを投稿したワインカスクブレンドに引き続き、乾杯会向けリリースのブレンデッドモルトウイスキー2種のうちの1つ。こちらも当方がブレンダーを務めさせて頂きました。
見るからに濃厚そうな色合い、愛好家ホイホイとも言える外観。これは売れるでしょってなるボトルですが、実は想定外なことがあり、結果として良い方向に転がった、ある種“持っている”リリースでした。

リリースの主体となる乾杯会は、ウイスキー愛好家である鄭氏が立ち上げた、会員制組織にして酒販企業。ワインカスクブレンドの記事や、当該ボトルの販売ページでも紹介されているため、設立経緯等詳細な説明は割愛しますが、鄭氏自身は非常に熱心なウイスキー愛好家であり、自分の手で特別なリリースを愛好家に届けるという想いのもと活動しています。
その鄭氏から相談を受け、調整させて貰ったのが長濱蒸溜所の原酒をベースにブレンドしたブレンデッドモルト2種。昨日はワインカスクブレンドの構成エピソードに焦点を当てましたので、今回の記事では当然、このシェリーカスクブレンドにスポットライトを当てていきます。

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まず、基本的な仕様はワインカスクブレンドと同じで、「和の雰囲気があるラベル、フルーティーで濃厚なブレンデッドモルト(無加水)」です。
ラベルは和のイメージを出すべく、日本画家の外山諒氏に依頼し、日本画で作成。ワインカスクブレンドが朝(陽)に対して、シェリーカスクブレンドは夜(陰)としました。
構成原酒については、長濱蒸溜所を代表する、国際的な酒類コンペで高く評価されているシェリー樽原酒を使用出来るよう、長濱蒸溜所の伊藤社長と屋久ブレンダーにリクエスト。。。

そして、ブレンドが難しかったワインカスクブレンドに対して、シェリーカスクブレンドは完成系として目指す明確なイメージがあったこともあり、特に悩むことなくレシピは決まりました。
その完成系とは何か。ブレンドコンセプトは「静謐な夜の琵琶湖と、湖面に浮かぶ満月のような陰のイメージを持つウイスキー」となっていますが、具体的な“味”のイメージとして目指す理想は、例えばグレンファークラス1987ブラックジョージ等のフルーティーさのある濃厚シェリー系ウイスキーです。

シェリー樽熟成のシングルカスクリリースには、スパニッシュオーク樽の熟成であっても、ダークフルーツの色濃い甘さとウッディな味わいの中に、アメリカンオークを思わせる黄色系のフルーティーさが混じるものがあります。個人的にはそれが当たりであり、好きなシェリー系の一つ。
なぜそんな仕上がりとなるかはさておき、今回は該当する特徴を、シェリーオクタブ熟成長濱モルトの濃厚なシェリー感、シェリー樽熟成スコッチモルトや輸入ハイランドモルトのフルーティーさ、それぞれ複数のモルトをブレンドすることで再現しようとしたわけです。

結果は、レプリカ…くらいには出来たのではないでしょうか。
そもそも熟成年数から全く異なるため、あれだけの完成度は出せませんが、シェリー樽由来の濃厚な味わいの中に潜むフルーティーさ、さながら夜の湖面に浮かぶ月、雲間から差し込む月光のようなイメージに共感してもらえたら嬉しいです。

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なお、冒頭述べたように、ちょっとした想定外な出来事や嬉しい誤算もありました。まず一つは色合い、そしてシェリー樽由来のフレーバーの濃さです。
実は今回ピックアップいただいた原酒のサンプルは、レシピを検討した6月時点ではワインだけでなくシェリー樽原酒もややドライ寄りで、色もそこまで濃くありませんでした。
それこそ、今年1月に仕込んだ発刻と祥瑞の時に使用したものからすると、半分とはいかないまでも2/3くらいの濃さ。
濃ければ良いってわけじゃ無いんですが、今回は濃厚なシェリー感をプレーン寄りのハイランドモルトで引き算して整えるつもりだったので、出来れば濃い方が良かったのです。

また、もう一つ計算外が、ピックアップ頂いたスコッチウイスキーの中に、5年熟成表記だが12年以上に感じられる熟成感と豊かな味わいのシェリー系ウイスキーがあり、経緯を聞くと12年熟成のシェリー系モルトに誤って5年が少量混じってしまったバルクなのだと。
長濱蒸溜所のシェリー樽熟成原酒との相性もバッチリで、これは間違いないとレシピを組んで完成…

と一息ついた矢先、混ざった5年はブレンデッドウイスキー(モルト&グレーン)で、今回のコンセプトであるブレンデッドモルトウイスキーには使えないことが判明。急遽別な原酒を追加でピックアップして貰いましたが、届いた原酒はシェリー感の淡いタイプ。
シェリー感とフルーティーさのバランスを考えて、シェリー系のウイスキーを70%までブレンドしましたが、レシピ作成当時の味わいは今よりずっとバランス寄りで、色合いも夜や陰陽のイメージとしてはちょっと薄い。リクエストに100%応えられたか、自信を持てない感じだったのです。

ただしこの後、“持っている”出来事、嬉しい誤算が起こります。
実はレシピを検討した時点で、構成原酒はまだ樽に入った状態。その後ブレンドされるまで約5ヶ月間、月にして6月から11月、最も樽感に影響が出る夏場を挟んだことで、原酒が色濃くリッチに熟成。
その変化は「ブレンド完了しましたよ!」と、届いた画像を見て、思わず「樽違うの使いました?」と聞いてしまった程です。

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一方で、色は良いが味はどうか、変に苦くなってないか、テイスティングするまで不安が残りましたが、結果として全てが良い方向に落ち着いてくれて、いやー鄭さん持ってるなぁと一安心。
ひょっとして長濱の屋久ブレンダーは、ブレンド時期までの変化を考えて、今回の原酒をピックアップされたのだろうか?
それは皆様の想像にお任せしますが、結果が伴うのがプロの仕事ということで。改めて素晴らしい原酒を選んで、提供してくださったことに感謝ですね。

なお、完成したワインカスクブレンドとシェリーカスクブレンドですが、発売時期が同じだったこともあり、ラベルの原画を描き起こしていただいた外山氏の日本画個展(2022年12月15日〜21日)に展示していただきました。
ウイスキーと日本画のコラボ。実は外山さんとは以前別なブランドでリリースを計画していたことがあったのですが、それは色々あってうまく形にならず、今回それを実現出来たのは非常に感慨深くもありました。
改めまして、この機会をいただいた乾杯会の鄭氏に、この場を借りて感謝致します。
そしてこのボトルを手にして頂いた皆様。美味しさとウイスキー愛に国境はないことを感じさせる、同氏の情熱が結実した味わいを楽しんでもらえたら幸いです。

NAGAHAMA ワインカスクブレンド for 乾杯会 58% Dream of Craft Distillery 

カテゴリ:
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DREAM OF CRAFT DISTILLERY 
NAGAHAMA 
Wine cask blend 
Blended Malt Japanese whisky & Scotch whisky 
For KANPAIKAI 
700ml 58%

評価:★★★★★★(6)

香り:白ワインやシャンパンを思わせる爽やかな酸と、ブリオッシュ香にも似たアロマ。乾いた麦芽、ドライアップルやグレープフルーツ。奥からケミカルなニュアンスを伴う華やかでフルーティーな香り立ち。時間経過で麦芽由来の甘さが一層感じられる。

味:柑橘を思わせる酸と麦芽の柔らかい甘み。濃縮感のあるフレーバーで、ほのかに乾草や土っぽさのあるピートフレーバーがアクセント。度数を感じさせない口当たりから、飲みこんだ後でトロピカルなフルーティーさが盛り上がるように広がり、麦芽風味と共に口内に染み込んで長く続く。

長濱蒸溜所の赤ワイン樽熟成原酒と白ワイン樽原酒をレシピ全体で過半数以上使用しており、ワイン樽由来の個性と長濱の麦芽風味、らしさを感じることが出来る仕上がり。ブレンドした複数種類のハイランドモルト由来の、系統の異なる麦芽風味と干し草のニュアンスが牧歌的な雰囲気を感じさせ、余韻にかけては近年流行りのフルーティーさが広がる。ブレンドコンセプトは朝靄を纏う伊吹山に、柔らかく差し込む朝日のような、陽のイメージを持つウイスキー。それぞれのフレーバーが、コンセプトの各要素に紐づくようにブレンドされている(自画自賛)。

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先日、ウイスキーが縁で相談をいただき、プライベートボトル2種のブレンダーを務めさせていただきました。
蒸溜所は滋賀県は長濱蒸溜所。ジャンルは国産原酒とスコッチモルトウイスキーを用いたブレンデッドモルトウイスキー。勝手知ったる…というのは失礼かもしれませんが、グレンマッスルやお酒の美術館の発刻、祥瑞など、これまで度々同様のリリースに関わらせて貰っている蒸留所です。

既にウイスキーは発売され、販売分は完売しております。有難い限りです。
勿論、これまで同様に当方が本売り上げやブレンダー料等を受け取ることはありませんが、自分が関わらせて貰ったウイスキーが完売するというのは、どこか安心してしまうものです。
今後はBAR等飲食店で、あるいは手元にあるボトルを飲んでいただく段階にあるわけですが、ブレンダーとして本レシピに込めたイメージや、今回のレシピ作成の際の苦労話など、商品情報を深掘りする形で当ブログに掲載させていただきます。

クノアュサ・3

まず本リリースの主体である乾杯会について。
本ボトルの国内向け販売を頂いた、長濱浪漫ビールや信濃屋で紹介されている通り、乾杯会は愛好家、鄭冲氏が立ち上げた、会員制組織かつ酒販企業となります。

発起人である鄭氏は10年以上日本に住まれている中国出身の非常に熱心なウイスキー愛好家で、日本において北から南までBAR巡り、イベント参加、蒸留所訪問をし、新旧問わず様々なウイスキーを飲んで勉強されています。
一方で、世界的にウイスキー需要が高まる中で、愛好家間では通常リリースと異なる特別なウイスキーを飲みたいという要望が増えつつあります。自分たちの手でそうしたウイスキーを届けたいと考え、会員制組織を立ち上げての今回のリリースを企画や、各クラフトウイスキー蒸溜所での樽購入、さらに六本木でウイスキーBARの共同オーナーとなってウイスキーを提供する場所も整えるなど、一般的なウイスキー愛好家としての枠組みを超えた活動も行っています。

routaru
※鄭氏が共同オーナーとなっている、六本木のBAR莨樽(ろうたる)。2022年8月オープン。新旧問わず様々なボトルが揃っている。

そんな中で鄭氏から相談を受けて調整させていただいたのが、今回のリリースとなります。
頂いた条件は以下の3点。
・ラベルは日本を象徴するような和的なイメージ。
・蒸溜所を代表する原酒を使いたい。一つはシェリー系を希望。
・グレーンは使わずブレンデッドモルトで無加水、フルーティーな味わいで2種類。

ラベルについては筆字で漢字2文字ドーンみたいな、某S社さんを想起させるデザインは使いたくなかったため、日本文化の一つ、日本画をラベルに取り入れることを提案。
以前から交流させて頂いている、若手日本画家の外山諒さんを紹介し、ラベルを担当頂くこととなりました。

続いて原酒については、長濱蒸溜所を代表する原酒といったら、WWAや IWSCなどの国際酒類コンペで高い評価を受けているワイン樽熟成原酒とシェリー樽熟成原酒しかないだろうと、伊藤社長、及び同蒸溜所ブレンダーの屋久さんにイメージを伝え、原酒をピックアップしていただきました。
ラベルOK、原酒OK、スケジュールも決まってここまではトントン拍子で進み(長濱蒸溜所は本当に仕事が早いw)、さあ後は私の仕事だと、いざブレンドとなってサンプルを手に取って…ここから先が困難でした。

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ご存じの方も多いと思いますが、昨今、世界的なウイスキー需要増から輸入原酒の価格は上昇傾向にあるだけでなく、手に入る原酒も長期熟成のモノが手に入らなくなってきています。
グレーンなら比較的なんとかなりますが、それでも以前の2倍、モノによっては3倍近い価格まで高騰しています。

その結果、以前PBをブレンドした時は使えた長期熟成の輸入ハイランドモルトがサンプルに入っておらず、今までは無かった蒸留所構成から全く異なるハイランドモルトがピックアップされているなど、長濱でのブレンドならこの方向で安パイ…という想定は早くも崩壊。新しい挑戦となってしまいました。
また、今回特集しているワインカスクブレンドでは、長濱蒸溜所の赤ワイン樽熟成原酒が思ったよりも色が出ていないドライなタイプであったことも想定外でした。

色合いに関しては、じゃあシェリー系が黒、ワイン系が白、黒と白の太極図、夜と朝の陰陽でまとめようと、すぐにアイディアが浮かんだのですが、問題は味です。
なにせ、今回の条件は「グレーンは使わずブレンデッドモルトで無加水、フルーティーな味わい」。
自分はよくブレンドを”蕎麦”に例えて説明していますが、繋ぎとなる要素があったほうがまとまりやすくバランスよく仕上がることは明白です。その繋ぎとなる要素には、グレーン以外に、シェリー感やワイン感等の色濃い甘さ、ウッディなエキス、加水も該当し、若い原酒が多いブレンドであればあるほどその重要性は増します。
また、ピーテッド原酒を使ってごまかすことが出来ないことも、ハードルを高くしました。大げさに言うわけではありませんが、針の穴を通すようなコントロール、繊細なバランスでこれらの原酒をまとめ切らなければなりませんでした。

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そこで、今回は麦芽風味を軸にバランスをとることとしました。
長濱のワイン樽原酒が持つ柔らかい甘さの麦芽風味。
ミドルエイジのハイランドモルトの1つが持つ、牧歌的な雰囲気を持つ麦芽風味。
もう一つ、比較的若いハイランドモルトが持つ、フルーティーで乾いた香味を感じさせる麦芽風味。
これらの麦芽風味を大黒柱として、ワイン樽原酒は白ワイン樽を加えてもらい、色、甘さではなくフルーティーさを後押しする方向で。またピート要素、シェリー樽要素も微かに加え、全体の複雑さを増す。

試作品の最初のイメージでは、田舎街の朝、周囲に漂う草木や田んぼの香り、朝靄の漂う適度な湿度と清々しさ、そこに差し込む朝日のキラキラとした光。これらが長濱蒸溜所周辺の景色と共に、ウイスキーから感じられる各要素と紐づいて感じられました。
このイメージを、シェリーカスクブレンドのものと合わせて外山さんに伝えて原画を描いて頂いたのが、箱とラベルに印刷された作品となります。ここは流石プロですね。どちらもイメージやウイスキーの雰囲気にピッタリ合っており、プロの仕事の凄さを感じられるコラボとなったのです。

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※長濱蒸溜所 伊藤社長を挟んで、左:乾杯会 鄭氏。右:莨樽共同オーナー 郭氏。

依頼主にして発起人である鄭氏もワインカスクブレンドのほうが好みであると話されており、頂いたリクエストと期待を裏切らずに済んだと、国内販売完売と合わせて胸をなでおろしました。
以上のように、期せずして新しい挑戦もあった今回のブレンダー協力ですが、計画通りのところもあり、偶然もありで、しかしながらどちらのリリースもコンセプトが明確でラベルとの関連性もあり、手前味噌ですが、良いリリースになったのではないかと感じています。

さて、ここから先は、飲んだ人達の感想を聞きながら、自分の作品を愛でることが出来る、ブレンダーとしての特権、楽しみとなる時間です。ここまでひっくるめて一つの趣味、なんて贅沢で恵まれた時間でしょうか。
改めまして、お声がけ頂いた鄭さん、今回のリリースに協力頂いた関係者各位、そしてこのウイスキーを手に取って下さった方々に感謝申し上げて、記事の結びとします。
ありがとうございました。

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