カテゴリ:
IMG_4827
HAZELBURN
DUTY PAID SAMPLE
Aged 13 years
Distilled 2002
Bottled 2016
Cask type F Conac Butt
700ml 55.9%

グラス:サントリーテイスティング
量:50ml以上
場所:ホテルラウンジ(個人所有ボトル)
時期:開封直後
暫定評価:★★★★★★(6-7)

ヘーゼルバーンはスプリングバンク蒸留所で作られるノンピート麦芽と3回蒸留が特徴、スプリングバンクの兄弟銘柄です。かつては実際に操業している蒸留所でもありましたが、こちらはキャンベルタウンのウイスキー産業衰退を受け1925年に閉鎖。1997年から、スプリングバンクの1銘柄として生産される形で復活しています。
閉鎖されたほうのヘーゼルバーンは、マッサンこと竹鶴政孝が修行した蒸留所の一つとしても有名ですね。

実は個人的にヘーゼルバーンはこれという良い印象は持っておらず、スプリングバンクやロングロウの陰に隠れているようなイメージすらありました。というかその元凶は、かつて販売されたヘーゼルバーンCV(初期のセット販売向け200mlボトル)にパフューム香を感じたり、当時リリースされていた8年のもっさりしたような味わいにピンとこなかったため。 
その後、スプリングバンクやロングロウは飲む機会がある中で、ヘーゼルバーンはほぼないまま時間だけが過ぎていきました。

DSC00300
DSC00302
(スプリングバンク蒸留所のフロアモルティング風景。切り取られた1枚から伝統的な美しさを感じる。同製麦工程の効果について科学的な報告はないが、麦の乾燥が機械式と比べて均一でないことが香味の多様性に繋がるのではと推察。Photo by K67)

そして今回、偶然にもテイスティングの機会が巡ってきたのが、このDuty paid sampleです。
この見慣れないボトルは国内未流通はもちろん、基本的には現地ケイデンヘッドのショップと、スプリングバンク蒸留所(あるいはケイデンヘッド)と繋がりのあるショップで販売されている、まさに愛好家のための1本。
樽を全て払い出すのではなく、一部をボトリングして文字通り"税金支払い済みサンプル"の下に販売している・・・といった感じでしょうか。樽違いで複数種類がリリースされているだけでなく、ヘーゼルバーン以外にもロングロウ、スプリングバンクのリリースもあり、そのマニアックさ故か購入された方曰く、現地のショップには普通に在庫が残っているとのことです。


今回の1本はバーボンやシェリーではなく、フレンチオークのコニャックカスクとは変化球な・・・モノを見た瞬間から出来栄え以上に、どのような個性が感じられるかが楽しみでもありました。

麦芽系の素朴な香り立ち、干し草、微かにライチや洋梨のような果実香が混じる。3回蒸留だからローランドモルト的な個性というほど、エッジの鋭い飲み口や、ライトな味わいというワケではなく、スプリングバンクに共通する蝋っぽさを伴う麦の旨み、柔らかいコクとほのかな酸味があるしっかりとした造りのモルトです。
ともすればギスギスした味わいに感じられるような舌当たりや、コニャックカスク由来の酸味やウッディーさの強い樽感もなく、しみじみ旨い、バランスの良いところに落ち着いています。
この日、写真の分量で2杯も飲んでしまったことから、度数を感じさせない飲みやすさや美味しさは伝わるのではないかと思います。

IMG_4959

余談ですが、こちらは同じDuty paid sampleのロングロウです。
ヘーゼルバーンを飲んだ次の日の夜、偶然にも頂きました。
フレッシュシェリーカスクのホグスヘッド樽で、出汁っぽさのあるシェリー感が出ている一方、ピートや塩素、そして独特の麦感に樽由来のサルファリーさも混じり・・・随分やんちゃでそれぞれの個性がぶつかり合うような味わいでした。 

こうした個性豊かな味わいを楽しめるのも、単一原酒であり単一樽だからこそ。 現地でショップを訪れた方など、機会がありましたら是非このシリーズのボトルを試してみてください。