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2017年11月

カリラ 35年 1982-2017 ケイデンヘッド175周年記念 55.1%

カテゴリ:
CAOLILA
CADENHEAD'S
175th Anniversary 
Aged 35 years 
Distilled 1982
Bottled 2017
Cask type Bourbon Hogshead
700ml 55.1%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:個人宅持ち寄り会
時期:開封直後
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:ドライマンゴーやオレンジの綺麗な酸味、乾いた麦芽、魚介系の出汁感を伴うピートスモーク。はじめはツンとした刺激を伴ってドライだが、スワリングしていると蜂蜜のような甘みも開いてくる

味:口当たりは柔らかく薄めたハチミツ、オレンジやアプリコットを思わせる甘みと酸味、香り同様にダシっぽいニュアンス。合わせて灰のようなピートフレーバーが広がり、存在感を増していく。
余韻は心地よくドライで、華やかなウッディネスとスモーキーさが混ざり合う。

樽感と酒質、アイラらしいピートやダシ感とフルーティーさのバランスが良く、実に整っている1本。しっかりと磨き上げられている。
少量加水すると甘みが引き立ち飲みやすくはなるが、失う要素の方が多く感じる。飲み口は度数を感じさせない柔らかさであり、ストレートで楽しみたい。


懐かしいだけでなく確実に進化している、一言でそんなカリラです。
自分がウイスキーに本格的にハマり始めた頃、1980年代前半で25〜30年熟成のカリラのリリースは特段珍しくなく、かなりの本数がリリースされていました。
70年代のクリアな味わいに比べ、80年代前半のカリラはいい意味で雑味があり、ピートフレーバーと酸味を伴うモルティーな香味が特徴。これがカリラのキャラクターか、という認識があったのですが、気がつけば周囲は80年代、90年代をすっ飛ばして2000年代の短熟ばかり。それらは幻の如く消え去ってしまいました。

あの頃もっと買っておけば。。。なんて先に立たない後悔を心に持つ飲み手は自分だけではないはずです。
他方で、当時のカリラはリリースが多かったこともあって、BARを巡れば出会えないわけではないですし、飲もうと思えばまだ飲めるボトルでもあります。
しかしはたしてそれらが30年以上の熟成を経ていたらどんなカリラに仕上がっていたか、知る術はありません。
そんな中、ボトラーズのケイデンヘッドから創業175周年を記念したラインナップの一つとして、久々に1980年代前半蒸留のカリラがリリースされました。

ケイデンヘッド社のリリースは、酒質を楽しませるような樽使いと言いますか、他のボトラーズ(GMやDTなど)と比べてあまり樽感の主張しないボトルが中心だった印象があります。
だからこそか、今回のカリラも樽感が過度に主張せず、程よい果実味が付与されてバランスが取れている。熟成によって失ったものは確かにありますが、失ったというより過剰なものを削ぎ落とし、時間をかけて磨き上げたという感じで、双方のらしさを備えつつ端正で美しい仕上がりなのです。

冒頭触れたように、自分にとっては懐かしさを覚えつつも、その仕上がり具合にさらなる進化と魅力を感じる1杯。これは今の時代にあって気合いを感じるリリースですね。度数も55%と保たれており、さらなる変化も期待できます。
今回のテイスティングは開封直後でしたので、1ヶ月後、2ヶ月後と様子を見たいボトルでもありました。
マッスルKさん、男気溢れる抜栓、感謝です!

キャンティ クラシコ ルフィーノ リゼルヴァ ドゥカーレ ゴールド 13%

カテゴリ:
CHIANTI CLASSICO
RUFFINO
RISERVA DUCALE "GOLD"
1996
750ml 13%

経年を感じさせる微かにオレンジがかった濃い色合い、濃厚な飲み口から熟成による落ち着いたタンニン、甘酸っぱさ。角の取れた濃厚なアロマは、カシスなどの黒い果実やスパイス、ハーブが溶け込むように複雑で、スワリングするとそれらが紐解かれていく。
余韻はハーブやカシスシロップ、微かなマディラ香と金属感。タンニンが穏やかに染み込むように残る。


イタリアで作られる最も有名なワインと言えるのが、トスカーナ州キャンティ地区のワイン。主に使われる葡萄品種はこれまたミスターイタリアのサンジョベーゼ。そしてクラシコはキャンティの中でも古くからワインが造られていて、一つ上のグレードに指定された地区(町)の畑によるものだとか。
ワインにあまり縁のなかった自分でも、外食時に見かけてキャンティの名前を知っていたくらいですから、それがどんなものかはさておき知名度が高いのは間違いないのだと思います。

その味わいは、なんていうか王道的な赤ワインのひとつと言いますか、ボディの有無は銘柄によりけりですが酸味もタンニンもしっかりあって辛口で。。。いかにも赤ワインの味わいという印象。子供の頃、ワインはぶどうジュースの延長みたいに思っていて、大人になって飲んだら「アレッ?」って言うあの感じ。
特に新しいビンテージのそれは自分にとってデイリーに飲むには強すぎて、ちょっと敬遠してしまうワインでもありました。

ですが「ボディがあって酸味もタンニンもある」という構成なら、言い換えれば熟成に耐える可能性でもあり。会社の飲み会で名前も知らないキャンティを飲み、一度長期熟成のそれを飲んでみたいなと思うに至り。。。その入門として今回飲んでみたのが、キャンティクラシコの代表的銘柄とGoogle先生にお勧め頂いた"ルフィーノ・リゼルヴァ・ドゥカーレ"の上級品、ゴールドラベルの1996年です。


ルフィーノ・リゼルヴァ・ドゥカーレは、パーカーおじさんからも熟成後の品質が高く評価されており、銘柄の知名度としても評価としても、熟成キャンティ初挑戦にはお墨付き。
1996年はトスカーナ全体があまり良い年ではなかったようですが、その分価格が手頃なだけでなく、いい年のキャンティ・クラシコなら飲み頃は30年後という指標からも、逆に今飲むにはちょうど良いビンテージといえそうです。 
(こういう考え方は仲間からの受け売りなんですけどねw)

濃い色合いの液体に溶け込む複雑さが、グラスの中でじっくり時間をかけて味わえる。これは確かに熟成に耐えうるというか、経年がしっくりきて美味しいワインです。
特に自分のように熟成した蒸留酒を主体に飲んできた飲み手には、新しいビンテージの溌剌とした味わいより、熟成を経たものの方が馴染みがあるのかもしれません。
ウイスキーに例えるなら、いくつかの要素は近年のシーズニングシェリーに共通するようなニュアンスも感じ取れます。

ちなみにこの時、妻が食事に用意したのがクリームシチューと冷しゃぶ風サラダ。
クリームシチューがトマト系の煮込みだったら話は違っていたのでしょうけれど、どちらともこのワインは本当に合わない。特に冷しゃぶ風のサラダとの相性が最悪で、合わせて飲むと青臭さというか肉の脂の嫌な味というか、ネガティヴ要素が際立ってしまう。
せっかくのワインでしたが、とんでもないミスマッチも合わせて経験してしまいました。

オールドプルトニー 29年 1984-2014 GMリザーブラベル 57.8%

カテゴリ:
IMG_5646
PULTENEY
GORDON & MACPHAIL RESERVE
Aged 29 years
Distilled 1984
Bottled 2014
Cask type Refill Bourbon Barrel #10171
Exclusively Bottled for JIS
700ml 57.6%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:個人宅持ち寄り会
時期:不明
暫定評価:★★★★★★★(7) (!)

香り:穏やかで熟成を感じる香り立ち。ほのかに溶剤的な要素を伴うバーボンオーク。麦芽やバニラの甘み、レモンピール、微かにハーブを思わせる爽やかさも。

味:コクのあるクリーミーな口当たり。刺激を伴う麦芽風味、バニラや洋梨の品の良い甘み。序盤はプルトニーらしいトーンの高いキャラクターから、余韻でドライパイナップル、黄色系のトロピカルフルーツ、オーク由来の華やかさが一気に開く。

香味ともプルトニーらしさがありながら、長期熟成故の熟成感、樽由来の要素も備わっている。プルトニーにおける熟成のピークのひとつ。酒質と樽が自然なバランスを保っている、実にうまいウイスキー。 
私事ですが、1984年生まれの自分にとって「生まれ年のスコッチモルト」で、これというボトルに出会えないのがスコッチ業界のあまり嬉しくない事情の一つ。1984年に限らず、同世代である方々は同じ問題を抱えているわけですが、これはスコッチ業界の冬というより暗黒時代が背景にあります。

当時、消費量の落ち込みから多くの蒸留所が生産を縮小、そのいくつかは閉鎖、操業停止に追い込まれている話は言うまでも無く。製造行程においては麦の品種改良からか何らかの原因で原酒にコク、深みが無くなっていった点に加え、樽の使い方が安定せず、代表的な事例としてシェリー業界の動向から1960、70年代は手に入りやすかったシェリー酒の古樽が入手困難となり、熟成の浅い青臭い木香が漂うシェリー樽や、シェリー酒を直接混ぜたような質の悪い樽によるウイスキーも見られるなど、単に蒸留所が閉鎖されただけではない、ウイスキー全体として質、量ともに落ちた時代でした。

もちろんその中でもすべてが悪かったわけではなく、素晴らしいと思えるボトルに出会えることもあります。
特にあまりファーストフィルシェリー樽に頼っていなかったと考えられる蒸留所は、バーボン樽やリフィル樽へのシフトがスムーズで、大きな落差がないように感じます。
それが中々1984年ではなかったというだけですが、今回のプルトニーは樽感と酒質の熟成によるバランスが素晴らしく、ウイスキーとしての高い完成度を感じられるものでした。


プルトニーは加水されてしまうとらしさが大きく軽減されて、46%であっても去勢されたような印象を受けることがあります。
かつてGMがリリースしていた長期熟成の蒸留所ラベルはもとより、オフィシャルでは21年はなんとか、しかし30年、35年は美味しいけれどプルトニーじゃなくても良いだろうというくらい樽感が主体的で、加水は20年くらいまでだなあというのが個人的な印象です。

それが今回のボトルは高度数のカスクストレングスゆえボディに力があり、樽感をしっかり受け止めて、まずは酒質由来の要素を味わった後で樽由来の華やかさが余韻で広がる。絶妙なバランスを味わえる構成に、熟成のピークとはこういうことかと感じられます。
しいて言えば、スケールという点ではさほど大きくないのが"時代"とも言えそうですが、そこは重箱の隅。自分の生まれ年で、こうしたボトルに出会えたことが嬉しい1杯でした。

チャールズウェイン 12年 1980年代流通 特級表記 43%

カテゴリ:
CHARLES'S WAIN
Aged 12 years
Scotch Whisky
1980's
750ml 43%

グラス:名称不明テイスティンググラス
場所:個人宅持ち寄り会
時期:開封直後
暫定評価:★★★★★(5)

香り:カラメルシロップや穀物系のバニラ香、アロエ、ほのかにサトウキビのような植物感、香りはしっかりしているがやや単調気味。微かにドライオレンジピールのようなアロマもある。

味:穀物系の香ばしさ、キャラメリゼを思わせる甘みとほのかな苦味。スムーズな口当たりだがアルコールのアタックは強めで、余韻にかけてハイトーンな刺激、ケミカルなフレーバーも感じられる。
   
ブレンド向けハイランドモルト主体な構成が連想される味わい。アイラ的なピーティーさはほとんどなく、素直というか、癖が少ないというか、あまり特徴が無いことが逆にプラスにも感じられるスコッチウイスキー。ロック、ハイボールどの飲み方でも無難に楽しめそう。


チャールズウェイン(北斗七星)の名を冠する親元不明なウイスキー。数あるバブル期の遺産の一つであり、日本市場向けのボトルだったのか、海外市場ではあまりその姿は無く。国内では4年、8年、12年、17年、20年と比較的豊富なラインナップが、1980年代後半流通品に集中して確認できます。

作り手であるMELROSE DROVER社は小規模なワイン商という記録が残っているものの、ウイスキー業界との繋がりは不明。1990年代後半~2000年頃には既に消滅しているだけでなく、蒸留所側の歴史においてもMD社の名前を聞いたことは無いので、おそらくどこかしらの子会社か代理店として、海外市場への商品企画か輸出に関わっていたのではないかと推察します。

したがって、企業から辿る線では中身について情報が得られないので、ラベルや味から推察するかありません。
まず、北斗七星という銘柄ですが、現地ではインバーゴードン社からエジンバラウィンという、同じく北斗七星の名前を冠したボトルが発売されていました。
インバーゴードン社はフィンドレイター社、ロングマン社を傘下として、日本の伊勢丹デパートにフィンドレイターを。阪急デパートにグレンドロスタンを輸出しており、小田急デパートにはMD社を介して本ボトルを展開していたとすれば、非常に細い線ですが繋がるような気もします。

実際、これらのラインナップは複数年数グレードを揃えて豊富にあり、生産力もお墨付き。まあ北斗七星なんて名前はありふれすぎていて、同じような銘柄が無関係なメーカーからリリースされていてもおかしくはないのですが。。。
そこで味はというと、テイスティングで述べたようにハイランド的な味わいが強い構成。上記2銘柄とはベクトルが異なっており、しいて言えばグレンドロスタン寄りですが、ブレンデッド向けのモルトを量産していた蒸留所の中ではインバーゴードングループのディーンストンでもタリバーディンでも無く、トマーティンを連想する要素が感じられました。
当時は宝酒造がトマーティンを買収しており、BIG-Tやトマーティンを国内向けに販売していたため、日本とのパイプは繋がっています。その繋がりで・・・という線もないワケではなさそうです。

ただし当時はバブル期の日本市場をめぐり、今となっては名前も知らないような自称名門スコッチが数多く入ってきていましたので、こういう繋がりもあまりアテにはなりません。
真実は今となっては定かではありませんが、そこを考えながら飲むのもまた、バブル期の遺産の楽しみ方なのかもしれません。

グレンモーレンジ 30年 オロロソカスクフィニッシュ 44.3%

カテゴリ:
GLENMORANGIE
Oloroso Cask Finish
Rare Aged 30 Years Old
Distilled 1972
Cask Changed 1989
Bottled 2004
700ml 44.3%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
場所:個人宅持ち寄り会
時期:開封後1ヶ月程度
暫定評価:★★★★★★★★(8)(!)

香り:注ぎたては黒砂糖や黒蜜を思わせる古酒感、コクのあるアロマ。スワリングすると華やかな陶酔感あるシェリー香、レーズン、コーヒーチョコ、徐々にビターなウッディネス。

味:スムーズな口当たり。深いコクのある甘みとほのかな酸味を伴うシェリー感、陶酔感も伴う。黒蜜、枝付きレーズン、チョコブラウニー、奥には微かに麦芽風味も潜んでいる。
余韻はベリージャムやブラウンシュガー、コクのある甘みが穏やかなウッディネスと共に染み込むように長く残る。

カスクストレングスらしくフレーバー一つ一つに存在感があるだけでなく、一体感が素晴らしい。深く甘美な甘みがありながら、過度な苦味とウッディネスがない、熟成のいいとこ取りと言える構成。まさにカスクフィニッシュの最高峰。

カスクフィニッシュの先駆けとも言えるグレンモーレンジの同ジャンルには、なんとも評価し難いモノがある反面、とてつもないモノもいくつかあるわけですが、今回のボトルは後者に該当する"とてつもないフィニッシュ"です。

1972年蒸留年の原酒をバーボンホグスヘッド樽で熟成させた後、1989年にオロロソシェリーバットに移し2004年まで約15年間熟成させた、複数樽バッティングのカスクストレングス仕様。
15年間のフィニッシュって、もはやそれはダブルカスクマチュアード表記なのではという疑問はさておき。全体の熟成期間は少なく見積もっても31年熟成なのですが、キリが悪かったのか、樽から移してる移行期間を差し引いたのか、ラベルの表記は30年となっています。

グレンモーレンジの1970年代前半蒸留には、通常ラインナップから限定品まで高い評価のボトルが多く、ベースは間違いありません。加えて、本来シェリー樽で30年となるとグレンモーレンジの酒質ではウッディさが強く出すぎるケースも考えられましたが、今回のボトルはホグスヘッドで酒質の荒さを取り除いた後、長期間の後熟で良い部分だけ取り出したような味わいと、全体的な一体感は特筆モノです。

シングルモルトウイスキーにおいて、一つの樽で熟成を通すシングルカスクの出来栄えが自然なものとすれば、カスクフィニッシュのボトルは手作り感、"狙って作られた"という別な意味でのイメージがあります。
しかし今回のボトルは、そのスケールがとてつもないというか、例えるなら一流のシェフが素材から調理法まで厳選して丹精込めたスペシャルなフルコースのような、「手作り」などとは言い難いスケールが感じられるわけです。

これまで様々なボトルを飲んできましたが、ウイスキーを知れば知るほど感動出来るボトル。シェリーカスクフィニッシュの最高峰であることは間違いありません。 
そして、これを「よくわからないモーレンジのオロロソカスクフィニッシュ持って行くよ」とだけ言って会に参加してきたウイスキー仲間にただただ感謝です。

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