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2019年04月

カーデュー 8年 1960年代流通 43%

カテゴリ:
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CARDHU 
Aged 8 years 
Highland malt whisky 
1960's 
750ml 43% (26 2/3FL.OZS 75Proof) 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後1ヶ月程度
評価:★★★★★★★(7)

香り:ドライで乾いた麦芽と微かにハーブのニュアンスを伴う香り立ち。合わせて存在感のある古典的なピートスモークと、カステラの茶色い部分やオレンジママレードを思わせる落ち着いた甘みが開いてくる。

味:香り同様にややドライだが、しっかりとメローでオールブラン、麦チョコなど甘みとともに乾いた麦感、奥にはオランジェット、リンゴのカラメル煮、色濃く味つけた果実の風味がある。余韻は若干ひりつくような刺激もあるが、古典的なピートフレーバーが染み込むように長く続く。

オーソドックスに麦とピートという古典的なモルトの味わい。そこに果実のアクセント、カラメルソースのような甘み。ベースの厚みを感じる一方、香味とも多少ドライな刺激が経年で変化した若さの名残なのだろう。それにしても8年熟成とは思えない。

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ジョニーウォーカーのキーモルトとされているカーデュー。しかし現行品を飲んでも、ジョニ赤に使われているかな?程度でピンと来るところが少ない印象。
ところが、オフィシャルは古い時代のものであればあるほど、カーデューとジョニーウォーカーに繋がりのあるフレーバーが増えて来て、特にこの1960年代流通品は共通する味わいが特に多い、当たり前の話ですがキーモルトとしての繋がりを実感できます。

ただ1960年代のボトルについては、付属する冊子(上写真)に書かれているように、出荷が1ロット6000本という少量生産を1年間のなかで複数作っていた模様。酒質と個性が強かった時代ゆえ、各ロットによって香味差が大きかったようにも感じられます。
というのもこれまで4種類ほど、同時期流通のカーデュー8年を飲んでいますが、今回飲んだものは比較的ドライな構成。以前飲んだものはピートが強め、逆にとろりとしたブラウンシュガーのような。。。それこそ昔のジョニーウォーカーにあるモルティーさそのものというロットもあり。経年変化だけでは説明できない、ベクトルは同じでもそれぞれ仕上がりが異なっていたことが伺えます。

これも時代ですね。この個体差をそぎ落とした結果が、今ということなのでしょう。洗練されて統一的な味わいが得たものもで、失ったものは田舎臭くもある地酒的な個性。。。そして今の世代はその個性と量産出来るレベルを両立しようと、様々な取り組みを行っていると言ったところでしょうか。

グレンフィディックなど、かつて(と言っても20年くらい前)の味わいを取り戻した蒸留所もあり、近年スコッチウイスキー業界の製造現場でも温故知新の動きがあると聞きます。
このレベルまでとは言わないものの、ゆくゆくは1980年代くらいまではカーデューも復活してくれるだろうか。そう考えると、10年後のスコッチウイスキーも案外楽しみになってくるのです。

ハーベイ ブリストルクリーム 1970年代流通 & シェリー樽の考察

カテゴリ:
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HARVEYS 
BRISTOL CREAM 
CHOICEST OLD FULL PALE SHERRY 
1960-1970's 
750ml About 20% 

かつてイギリスにおいて、スウィートシェリーのスタンダードと言われるほど、高いシェアを誇ったハーベイ社のクリームシェリーが「ブリストル・クリーム」です。

需要に対応するため、1980年代までイギリスのブリストル(またはその郊外)に製造工場があったほど。当時の物流では、生産地に瓶詰工場があるより消費地に生産拠点があった方が効率的だったのでしょう。結果、スペインの提携ボデガから多くのシェリー酒がイギリスに送られることとなり、輸送用、一時保管用のシェリー樽も必然的にイギリス国内に増えることとなります。

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1960年代はイギリスでのシェリー酒の消費が増加、その後1980年代の衰退とECによる原産地呼称制度の制定に伴うスペインへの工場移転。このハーベイ社がイギリスでシェリー酒を製造していた時期は、スコッチウイスキーのなかでも特にGM社などボトラーズにおける色濃いシェリー樽熟成ウイスキーの仕込みが多かった時期とリンクしています。

シェリー樽についてほぼ同じ時期にパハレテ説があり、これも行われていたと思いますが、ベースとなる樽がなければパハレテは成立しません。果たしてこれは単なる偶然でしょうか。同社がGMないし各蒸留所と樽の供給に関する契約を締結していたかは定かではないものの、少なくとも製造課程でイギリスに置いていた"シェリー樽"が、スコッチウイスキー業界に貢献していたことは間違いないと考えられます。
ちなみにこの樽材がスパニッシュオークか、アメリカンオークかはさらに議論が別れますが、自分は後述するようにボデガが「どうせなら廃棄前の古樽使え」で、わざわざ新しい樽を作らず、アメリカンオークの古樽を使ったと考えている派です。(スパニッシュもあったのだと思いますが、後年良質なシェリー樽と認識されたのは、アメリカンオークの古樽という認識。)

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(通称GMシェリーとして知られる、カラメルソースを混ぜたような甘みをもった特徴的なリリースは、60年代頃から多く、1980年代後半蒸留頃から姿を消す。かつてはストラスアイラ、モートラック、グレングラント、ロングモーン、マクファイルズ。。。多くのGM蒸留所ラベルや独自リリースがこの味わいを持っていた。)

今回のテイスティングアイテムは、スペインで作られた各原酒がイギリスでブレンドされていた、まさにその当時の流通品です。ラベル下部に書かれた「12 DENMARK STREET BRISTOL ENGLAND」は、かつて拠点を置いていたオフィスの名残であり、時代を象徴する記述と言えます。

クリームシェリーはオロロソシェリーとPXシェリーをブレンドして作られるのが一般的です。しかしその品質はピンキリ。当時は「品質の定かではない原酒をイギリスが大量に輸入していた」なんて説もある時代でもあり、特にスタンダード品は、明らかに色が薄く熟成した原酒が使われていないように感じるものも少なくありません。
一方、このブリストル・クリームの色合いは熟成を感じさせる濃さがあります。経年により若干濁りはあるものの、当時は淀みのない赤みを帯びた美しい褐色だったことでしょう。香味は甘酸っぱくダークフルーツの香味が豊かで、アーモンドクリームのような軽い香ばしさと甘み、若干のシイタケっぽさ。樽由来のタンニン、コクのある甘みはしっかりと熟成したオロロソとPXをブレンドしていることが伺えます。

ここ最近、有名どころのクリームシェリーのオールドをぼちぼち飲んできましたが、スタンダードでこのレベルは頭一つ抜けています。(もちろん、30年オーバー等の長期熟成クリームシェリーと比べると多少粗はありますが。)
1960年代に色濃いシェリー樽熟成のウイスキーが多い背景は、第二次世界大戦とその後の消費量低迷のなかで溜め込んでいたソレラの古酒を、輸送用に使う古樽とともに各ボデガが払いだしたからではないかというのが自分の考察の一つです。
シェリー樽の謎に明確な正解を紐解くことは恐らく出来ず、仮説に状況証拠を結び付け、どれだけ納得できる説が出来るかだと思います。今回のボトルのようにスタンダードでありながらクオリティの高いものを飲んでしまうと、長熟原酒の払い出しとともに一部メーカーが良い樽を確保していたという範囲で、その予想を裏付けているように感じてしまいます。


何の気なしに購入してみたボトルでしたが、思った以上に美味しく、そして背景情報の多いものでした。
このボトルは先日とあるテイスティング意見交換会の際、新宿ウイスキーサロンに寄贈しました。興味がある方は、同店でくりりんが置いて行ったシェリーを注文すると・・・何本かあるうちの1本が出てくるかもしれません。興味がある方はどうぞ!

バーバリー  17年 ブレンデッドウイスキー 40% 1990年代流通

カテゴリ:
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BURBERRYS
BLENDED SCOTCH WHISKY 
17 YEARS OLD
1990's
700ml 40%

グラス:テイスティンググラス
場所:お酒の美術館 神田店
時期:開封後1週間程度
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:品のいいフルーティーさのある口当たり。すりおろし林檎や熟した瓜、バニラウェハース、徐々におしろいや麦芽、柔らかくドライでバランスが良い。

味:軽やかにドライな口当たり。乾いた草、蜂蜜クッキーを思わせるグレーン感、生焼けホットケーキ生地のような甘みを伴う含み香。余韻はほろ苦く、心地よくドライ。かすかなピートが染み込むように長く続く。

際立った個性はないが、バランスのいいブレンデッドである。ハイランドモルト主体だろうか。嫌みなところは少なく、熟成感もあって侮れない。シングルカスクに疲れたときに飲みたい1本。


ヤフオク等のリユース市場でたまに見かける、イギリスを代表するファッションブランドのバーバリーが販売していたプライベートブランドのウイスキー。
同じく老舗ブランドのダンヒルも、製造委託したブレンデッドウイスキーをリリースして、ファッションというか格式的なものをブランドの一つとしていた時代。最近のウイスキーとは異なる位置付けが見えてくるようです。

キーモルトはディーンストンという記述がモルト大全やブレンデッド大全に見られ、当時のディーンストンはバーンスチュワート傘下。とするとトバモリーもキーモルトと考えられますが。。。バーンスチュワート社のリリース銘柄にバーバリーの情報は無く。
一方で1980年代後半流通のバーバリーウイスキーには、アーガイル社傘下のA.Gillies & Co社の表記があります。

同社が所有していた蒸留所がグレンスコシアであり、今回のボトルがリリースされた1980年代後半から1990年代前半はリトルミルも傘下としていたようです。
リリースしていたブレンド銘柄はオールドコート、スコシアロイヤル、ロイヤルカルロスなど。これだけの銘柄をリリースできていたのですから、ブレンド用のハイランドタイプのバルクの調達も、安定して行えていてもおかしくありません。

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(バーバリーウイスキーのエイジングはNA、12、14、15、17、18、20、25年そしてシングルモルトの1968年蒸留がある。それぞれ流通時期によってラインナップの年数の組み合わせが異なる。)

今回のバーバリーがどちらのメーカーの手によるものかはわかりませんが、ディーンストンにしてはオイリーさというか、原酒の癖が控えめであり、ブレンド用のハイランドモルトとグレンスコシアという組み合わせのほうが、今回の味わいからの印象にはしっくりくるようにも感じます。

とすると、バーバリーが1990年頃リリースしていたシングルモルトはリトルミルやグレンスコシアの可能性も?
こういう情報を探って、味から裏付けを考えていくのもオールドを飲む楽しみですね。

クライヌリッシュ 蒸留所限定 2018年詰め 48%

カテゴリ:
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CLYNELISH 
DISTILLERY EXCLUSIVE BOTTLING 
Cask type Ex-Bourbon 
2018's 
700ml 48% 

グラス:
場所:BAR Fingal
時期:不明
評価:★★★★★★(6)(!)

香り:オーキーで華やか、合わせてワクシーさのしっかりある香り立ち。バニラやおしろいの甘いアロマ、すりおろし林檎、微かに黄色い柑橘のアクセント。

味:香り同様にオーキー、オイリーな口当たりから麦感厚く、骨格がしっかりしていてアタックもほどよい、口内をホワイトペッパーが刺激する。
余韻にかけてグレープフルーツなどの柑橘のニュアンス、ウッディでほどよくドライ、長く続く。

蒸留所の特徴がしっかり出たウイスキー。加水だが適度に酒質のパワーが残っており、それがアメリカンオークの樽感と合わさって素直に旨いモルト。バーボン樽との相性が良いのだろう。蒸留所限定品としての特別感もある。


クライヌリッシュ蒸留所で販売されている限定品。以前は同じバーボン樽熟成で57.3%のカスクストレングス仕様でしたが、2018年頃に加水仕様へリニューアルしたようです。
加水に変更されたことで少々残念な印象を持つかもしれませんが、加水は加水で良さがあります。

熟成年数はオフィシャル現行品の14年と同じくらいだと感じますが、完成度の高さは現行品と比べて頭一つ抜けている。樽がバーボン樽で構成されていることが、酒質と馴染みの良いフルーティーさに繋がっているだけでなく、酒質由来の香味も分かりやすい構成です。
そして加水されていることで、それらがまとまり、全体的なレベルの高さに繋がっているものと感じます。

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中身以外でもう一つ変更されたのが、ラベルデザイン。
以前のカスクストレングス仕様はオフシャル14年に近いものでしたが、写真のようにラベル下部に山猫のイラストが大きく書かれています。
クライヌリッシュと言えば山猫。元々野生のものではあるのですが、ラベルのそれを拡大すると結構リアルな感じだったんですね。
このイラスト、なんだか威嚇されているような・・・(笑)。

ただし威嚇されてはいるものの、頭を撫でたら以外とフレンドリーだった。そんな味わい。スコットランドに行く人がいるなら、お土産に買って損のないボトルだと思います。

インペリアル 22年 1976 キングスバリー オールドインペリアルバー向け 46%

カテゴリ:
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IMPERIAL 
KINGSBURY'S 
22 YEARS OLD 
Distilled 1976
For OLD IMPERIAL BAR 
Cask type Ex-Bourbon Oak #7573
Bottle No,1/280
700ml 46%

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後1ヶ月程度
暫定評価:★★★★★★★(7)

香り:クリーミーでオーキー、甘く華やかな香り立ち。バニラやふかした栗のような柔らかい甘さから、徐々に洋梨、あるいは加熱したリンゴを思わせるエステリーさ、微かに蜂蜜生姜のようなスパイシーさも混じるフルーティーなアロマ。

味:ドライでウッディな口当たり。少し樽が強く主張するようだが、すぐに麦芽由来の粥や白粉のような柔らかい甘みが感じられ、洋梨のピューレやレモンクリームなど、加工した果実を思わせる角のとれた仄かな酸とオーキーなフレーバーが後半にかけて存在感を増す。余韻はほどよいウッディネスを伴って華やか、長く続く。

バーボンオーク由来のフレーバーが近年のリリースに良く見られるタイプではあるが、麦芽の厚みと熟成感で樽香が受け止められ、加水と経年で自然な感じに纏まっている。1990年代蒸留で同じ熟成年数のインペリアルとでは、酒質(原料)と経年の違いが出ている、飲みごろの美味しいモルト。

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帝国ホテル東京、大阪それぞれにバーラウンジとして長い歴史を持つオールド・インペリアル・バー。そのオリジナルボトルのひとつである、キングスバリーのインペリアル1976です。

同店舗のオリジナルボトルは他にも存在していますが、そもそも一般に出回るのは珍しく。加えて今回のボトルはボトリングナンバー1というレア物。本来は同店舗で消費されるか、関係者(それも結構偉い人)が持っているか、というようなボトルが、なぜオークションに流れ、縁も所縁もない場所に辿り着いたのか。。。
一言で運命ということなのかもしれませんが、それにしても数奇なものであるように思えます。

インペリアルホテルに、インペリアル蒸留所。実物を前にするとありがちな組み合わせであるようにも思えますが、中身は本物です。
酒質は癖が少なく、麦系の甘みとコクがあって適度な厚みを感じる、どちらかと言えばハイランドタイプを思わせる特徴。そこにバーボン樽(アメリカンオーク)熟成由来のオーキーで華やかな香味が付与され、加水で綺麗にまとめられている。また、この纏まりの良さには、ボトリング後約20年経過したことによる、瓶内変化の影響もあるものと考えます。

インペリアル蒸留所は、スペイ川をはさんで対岸に位置するダルユーイン蒸留所の傘下として創業。今回の原種が仕込まれた1976年はダルユーインとともにDCL傘下にあった時代であり、香味にあるダルユーインとの共通項は、同じ親元で同じ地域での仕込みとあればなるほどと思える特徴です。
ただ、インペリアルのほうが麦系の要素が多少プレーンというか柔らかいように感じられ、個性という点で面白味はないかもしれませんが樽との馴染みが良いように思います。今回のボトルも、その特性あっての完成度なのでしょう。(ダルユーインの70年代は比較的麦麦した主張が強く、ピートも微かに感じられる)


余談ですが、インペリアルは1990年代にアライド傘下に移り、その後シーバスブラザーズ傘下で閉鎖。今尚1990年代蒸留のリリースがボトラーズからちらほら見られますが、2014年には残っていた蒸留棟も、シーバスブラザーズのブレンド用原酒の蒸留所「ダルムナック蒸留所」を建設するために解体され、完全に消滅していることから、いずれは消え行く定めにあります。
そんな中でこのボトルを開封し、持ち込まれたのが先日レビューしたマデュロの持ち主、ミルキーKさん。「1番ボトルだから、大事にされてたんじゃないかと。状態良いですね」って、相変わらず男気溢れてます(笑)
しっかり堪能させてもらいました!

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