クロナキルティ ギャレーヘッド シングルモルト 40% (新バッチ 2023.10〜)
CLONAKILTY
GALLEY HEAD
SINGLE MALT IRISH WHISKEY
Cask type Bourbon Barrel 4 years, Rum Cask finish
Batch 2023~
700ml 40%
評価:★★★★★★(6)
香り:華やかでオーキーなトップノート。ややドライな香り立ちだが、土や殻付き麦芽を思わせる要素に果実感豊富。洋梨や林檎、マスカット、微かに青瓜やジャスミン。奥から蜂蜜のような粘性を思わせる甘さも感じられる。
味:口当たりは柔らかく適度なコクがあり、麦芽風味から軽やかなスパイシーさと微かな青み。香り同様にしっかりとフルーティーで、黄色や白色の果肉を思わせるフレーバー。余韻は華やかで、ナッツや果実の皮のようなほろ苦さに、塩を数粒舌の上で溶かしたような出汁感を伴う長いフィニッシュ。
想像以上に王道で、想像以上に美味しかったシングルモルト。第一印象はバーボン樽の12年熟成程度のスペイサイドモルトかローランドモルトだが、それだけではない個性が印象的なウイスキーである。長期熟成アイリッシュウイスキーのケミカルトロピカルとは異なるが、麦芽風味と樽由来の豊かな果実風味は万人受けする構成。現代のウイスキー愛好家に広く評価されるだろう。最初の1杯にどうぞ。ハイボールもGOOD。
アイルランド南部、大西洋沿いにある街、その名を冠したクロナキルティ蒸留所のシングルモルトのスタンダードブランドが、今回のテイスティングアイテムである”GALLEY HEAD”です。
このリリースをご存じの方だと「知ってるギャレーヘッドとラベルが違う?」と思うかもしれませんが、今回の1本は今後市場に流通してくるリニューアル品で、構成原酒の異なるバッチ。個人的に前作より好みの味に仕上がってます。
蒸留所を操業するアトランティック・ディスティラリー社は2016年設立。蒸留所のオープンは2019年3月。
自社蒸留の原酒が充分熟成するまでの間は、同じアイルランドの蒸留所(ブッシュミルズやグレートノーザンなど)から調達した原酒をベースに、後述する海岸沿い高台にある熟成環境でのカスクフィニッシュやブレンドを経たリリースが行われています。
現在市場にある銀色のスタンプ(以下、画像参照)のギャレーヘッドは、バーボン樽で4年間熟成させた原酒を、ワイン樽で数カ月フィニッシュしたもの。軽やかな味わいにワイン樽由来のナッティなフレーバーが合わさって、ハイボールで楽しむにはピッタリなウイスキーでした。
一方で今回リリースされた新しいロットは、バーボン樽で4年以上熟成した原酒をアグリコール・ラムカスクで追熟。華やかでリッチなフルーティーさが好ましく、若さも感じず飲みやすい1本に仕上がっています。
先日、とあるBARで偶然クロナキルティ蒸留所の関係者、日本エリアマネージャーのフィオナさんとお会いしたことが、今回のレビューの発端でした。
せっかくなのでと、バックバーにあったギャレーヘッド(シルバースタンプ)のハイボールを頂きながら、色々お話を伺ったのですが・・・。お恥ずかしいながら、本ウイスキーについては「見たことある」程度、ハイボールの味もさっぱり系だったしで。。。作り手の熱量に対して「ほんとにほんとぉ~?」みたいな、多分そんな雰囲気を私が出してしまっていたのだと思います。
それじゃあこれを飲んでよと、取り出されたボトルがゴールドスタンプきらめく新ロットのギャレーヘッド。その場で開封、マスターすいません。グラス貸してください。
いや驚きました。シルバーのほうはストレートだと普通だなーという印象でしたが、ゴールドはレビューでも触れたように、想像以上に王道で、想像以上に美味しかったんですよね。
市場流通価格はわかりませんが、聞くところでは現在とそう変わらないとのことで、他社製品とも充分に渡り合える、センスの良さが光る1本だと思います。
◆クロナキルティ蒸留所について
せっかく色々お話しも伺ったので、ここからはクロナキルティ蒸留所についてざっくり紹介させて頂こうと思います。
同蒸留所は先に触れた通り、2019年3月からクロナキルティの街中で創業、熟成庫は町から約10㎞離れた、海岸そばの高台にあります。
原料となる麦芽もまた同地域にある自社畑で栽培されているものと、周辺の契約農家で栽培されたもののみを使用する、言わばローカルバーレイという原料、環境で造られている特徴があります。
※クロナキルティ蒸留所の熟成庫。眼前に広がる大西洋からは時折強い海風が吹き付ける。この熟成環境がもたらす個性は、現在のリリースからもその片鱗を感じることが出来る。
※クロナキルティ・ギャレーヘッドのリリースにおいて、ブランドストーリーにもなっているギャレーヘッド灯台。写真奥の矢印の場所に熟成庫が建てられている。
このこだわりの背景には、クロナキルティ蒸留所が原料の栽培から、熟成、ボトリングを全て蒸留所のある地域内で行う「GRAIN TO GLASS」をコンセプトに掲げていることがあります。
ただし創業時から蒸留していたのはアイリッシュ伝統のシングルポットスチルウイスキーのみで、シングルモルトは作っていなかったとのこと。
また現在シングルポットスチルウイスキー、またはアイリッシュウイスキー(ブレンデッド)としてリリースされているラインナップも、原酒が充分確保できていないこともあって、そのコンセプトを全て反映したものではありません。
これはこの蒸留所に限らず、新興蒸留所においては大概同じですね。大事なのは、そのコンセプトを継続することなんです。
そして新たなロットとして先日からラベルが切り替わり、日本では2023年11月からリリースされるクロナキルティ・アイリッシュウイスキー、ポートカスクとダブルオーク(以下、左、中央)には、クロナキルティ蒸留所で蒸留され、上記熟成庫で4年以上の熟成を経た原酒が使用されているとのことです。
また、クロナキルティ蒸留所の原酒を用いた100%シングルポットスチルウイスキーは、2025年のリリースを予定していること。2023年からはシングルモルトウイスキーの蒸留も開始しており、熟成後は今回レビュしたギャレーヘッドにも活用していく予定だそうです。
着実に、理想を形にするための歩みを進めていますね。
蒸留所を立ち上げたメンバーは、熟成庫がある地域のそば、ダーンディディで9世代に渡って農業を営んでいるスカリー家。今回紹介した「ギャレーヘッド」は半島の先端にある、この地域の象徴とも言える灯台をブランド名に採用したものであり、クロナキルティ蒸留所にとってのスタンダードブランドの一つとなっています。
今はまだワークインプログレスなクロナキルティ蒸留所ですが、この成長過程を楽しめるのが新興クラフトの面白さ。
酒販メーカーからも期待している蒸留所の一つとして名前を聞きますし、今回のギャレーヘッドも市場のニーズを満たす味作りに光るものを感じます。今後のリリースが楽しみです!
※ダーンディディで蒸留所創業者一族が耕作する大麦畑と収穫風景。シングルモルトのリリースが待ち遠しい。