シングルモルト 三郎丸 令和6年能登半島地震 チャリティーボトル
Single Malt Japanese Whisky
SABUROMARU
Noto Charity Bottle
Aged 3 years
Distilled 2000
Bottled 2024
Cask type Bourbon Barrel #200142
700ml 61%
評価:★★★★★★(6)(!)
香り:トップノートからしっかりと主張するスモーキーさ。グレープフルーツやレモンピールを思わせる柑橘香、燻した麦芽に土のアロマも伴う。
味:柔らかい麦芽由来の甘みを伴う口当たりから、ピートのほろ苦さ、スモーキーさが香り同様の柑橘感をともなって力強く広がる。余韻はピーティーでパワフル、焦げた藁や柑橘の綿、喉を通じて体の中心に熱い酒精が宿る。
三郎丸蒸留所のハウススタイルである、ピーティーな酒質の個性がはっきり感じられるシングルモルト。3年熟成という期間は一見すると短いが、雑味少なく柔らかい口当たりや香り立ち、存分に個性を発揮した構成。また、本リリースはアイラ島のピートではなく、スコットランド内陸で産出したピートで仕込んだ麦芽を用いているため、余韻にかけて強くスモーキーさが主張するのも特徴と言える。
この優しくも力強い味わいが、1日も早い復興の後押しと、被災地へのエールとなれば幸いである。
令和6年能登半島地震によってお亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみを申し上げます。また、被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。
本日紹介するのは、1月9日に若鶴酒造・三郎丸蒸溜所から発表(プレスリリースは1月16日に実施)された、令和6年能登半島地震への寄付を募るためのチャリティーボトルです。
本リリースでは、私もリリースメンバーの一員として原酒選定、各種文書の文案作成等で協力させて頂きました。
関東在住のくりりんが、なんでこのチャリティーに?と思われるかもしれませんが、これまでの活動や血縁関係で北陸地方には所縁があり、震災当日は偶然同地方に居たこともあって、現地の混乱も僅かながら経験しました。
能登半島等被害の大きな地域に比べれば私の経験は微々たるものですが、早期復興に少しでも協力できればと本企画に協力させて頂きました。
一般発売は1月22日から、若鶴酒造の直営オンラインサイトであるALCにて。その売り上げは消費税、資材費を除いた全額が、日本赤十字社の令和6年能登半島地震災害義援金に寄付されます。
生産量の限られる三郎丸において貴重な1樽を実質無償提供すること。さらに、本リリースとは別に、今やベストセラーとなった「三郎丸蒸留所のスモーキーハイボール缶」の売り上げを、一部義援金として寄付することまで発表されています。
三郎丸蒸留所があるのは本地震によって被害を受けている北陸地域であり、直接的な被害は少なかったとは言え、観光や消費の点では間違いなく影響があります。
自分達も苦しいが、それでも地域に恩返しがしたい。このプロジェクトには金額以上に、稲垣社長をはじめとした各メンバーの想いが込められていると感じます。
さて、ここから先はチャリティーボトルの中身の話をしていきます。
今回のチャリティーボトル用に選定されたのは、三郎丸蒸留所で2020年に蒸留された、内陸ピート仕込みの原酒です。フェノール値は50PPMで、蒸留器は勿論ZEMON。その原酒をバーボン樽で3年5ヶ月熟成させた、シングルカスク・シングルモルト・ジャパニーズウイスキーとなります。
後日リリース予定のシングルモルト三郎丸Ⅳ The Emperor と、スペック上は同じタイプの原酒ですね。
蒸留所で貯蔵する同仕様の原酒から、蒸留所スタッフの花里さんがピックアップしたのは写真の3種。No,200223は口当たりが非常に強く、まだ熟成が必要だと感じましたが、残る2つは最初の飲み頃を迎えているかのように、好ましいフレーバーと柔らかい飲み口を備えていました。
No,200182はピーティーでありつつ、全体を通して柔らかい麦芽や樽由来の甘さが主体。
No,200142は口当たりこそ同じ系統だが、余韻にかけて力強く好ましい柑橘感が特徴。
サンプルを飲んだ感想は概ね同じで、推しは後者。その後のミーティングで、単体で完成度が高く飲んで元気づけられるような、良い意味での勢いがあるNo,200142の原酒が全員一致で選ばれます。
なお、この原酒は昨年9月ごろ一度サンプリングされており、その際の下野さんの感想は今回のものとは全く別だったそうです。ギスギスとして溶剤系の刺激も強く、内陸ピートの仕込みであることからスモーキーさは強烈で、アイラピートの出汁感や柔らかさは出ていない、もっと暴れた印象の強いものだったとか。
それがわずか4-5ヶ月でこれだけの変化がある。熟成によるウイスキーの成長は、まさに男子3日会わざれば…と言うことなんですよね。今回選ばれなかった2種も、他の原酒同様に今後ますます成長していくでしょうし、次のサンプリングでは全く別な表情を見せてくれると予想します。
2024年1月1日、ちょうど新潟の南魚沼~長岡あたりの地域に自分は居ました。
同地域の震度は5強~。東日本大震災を想起させる揺れでした。
幸い、私の周囲に地震による直接の被害はなく。
普段やり取りするメッセンジャーのグループで、稲垣さんや下野さんの無事は確認。蒸留所も無事。ハリーズ金沢は少しばかりボトルが破損したようですが、マスターの田島さんも無事。まあT&Tの両名は元日から風邪で寝込んでいて、違う意味では無事じゃなかったのですが。
そしてその後、徐々に明らかになる震災の被害の大きさ。復興への険しい道のり…。
最初はBULKシリーズで復興支援ボトルをどうかと提案したのですが、それでは意味がないと稲垣さん。実は既に三郎丸モルトでチャリティーボトルをリリースしようと考えていたのだとか。そこからが早かったです。リーダーシップとはこういうものだと、見せつけられるような指示の速さ、周囲の仕事の速さで企画が動いていきます。
ラベルを書かれたコーラ氏(@c_o_l_a)に至っては、僅か2~3日でこの作品を完成。デザインもあっという間に決まり、当初予定より大幅に前倒してのリリース発表へと繋がります。
ラベルに描かれたのは、能登半島の見附島。今回の地震で大きな崩落があったことが報じられた、能登のシンボルとして知られている名所です。その在りし日の姿と昇る朝日に復興への想いを込めたNoto Charity Bottle。
この1本が、一日も早い被災地域の復興の一助となれば幸いです。