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カテゴリ:秩父

イチローズモルト 清里フィールドバレエ 33rd 53% シングルモルトジャパニーズウイスキー

カテゴリ:
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KIYOSATO FIELD BALLET 
33RD Anniversary 
Ichiro’s Malt 
Chichibu Distillery 
Single Malt Japanese Whisky 
700ml 53% 

評価:★★★★★★★(7)

香り:メローでスパイシーなトップノート。松の樹皮、キャラメルコーティングした胡桃やアーモンド、艶やかさのあるリッチなウッディネス。奥にはアプリコットやアップルタルトを思わせるフルーティーさ、微かなスモーキーフレーバーがあり複雑なアロマを一層引き立てている。

味:口当たりはウッディで濃厚、ナッツを思わせる軽い香ばしさ、微かに杏シロップのような酸味と甘み。徐々に濃縮されたフレーバーが紐解かれ、チャーリング由来のキャラメルの甘さ、オーク由来の華やかさ、そしてケミカル系のフルーティーさが広がる。
余韻はスパイシーでほろ苦く、そして華やか。ハイトーンな刺激の中で、じんわりとフルーツシロップのような甘さとほのかなピートを感じる長い余韻。

香味全体において主役となっているのが、ウッディで新樽要素を含むメローでスパイシーな樽感。これは中心に使われているというミズナラヘッドのチビ樽によるものと考えられる。
また、アプリコットなどのフルーティーさやコクのある甘さにシェリー樽原酒の個性が、さらには秩父の中でもたまに見られるアイリッシュ系のフルーティーさを持った原酒の個性がヒロインのごとく現れる。その他にも、スパイシーさ、ピーティーさ、香味の中から登場人物のようにそれぞれの秩父原酒の個性が交わり、複雑で重厚な1本に仕上がっている。原酒の熟成は平均10年程度、高い完成度と技量を感じる。

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昨年8月に公演された、第33回清里フィールドバレエ「ドン・キホーテ」。その記念となるウイスキーが2023年5月15日に発表されました。
毎年、清里フィールドバレエのリリースにあたっては、その発起人である萌木の村の舩木上次氏が知人関係者にサンプルを配布されていて、今年もご厚意で先行テイスティングをさせていただいています。いつも本当にありがとうございます。

清里フィールドバレエの記念ウイスキーは、そのストーリーやフィールドバレエそのものをウイスキーのブレンドに反映して、25期の公開からサントリーとイチローズモルトで毎年作られてきました。
2020年までは、サントリーでは輿水氏、福璵氏が白州原酒を用いて。イチローズモルトでは肥土氏がブレンダーとして、羽生原酒と川崎グレーン原酒を用いて。
2021年からはイチローズモルトの吉川氏がブレンダーとなって、秩父蒸留所の原酒を使って、まさに夢の饗宴と言うべきリリースが行われています。

あまりに歴史があり、これだけで冊子が作れてしまう(実はすでに作られている)ので、本記事では直近数年、秩父のシングルモルトリリースとなった2021年以降に触れていくと、バーボン樽原酒とチビ樽のピーテッド原酒で白と黒の世界を表現した「白鳥の湖」。
ポートワイン樽原酒を用いて女性的かつミステリアスな要素が加わった「眠れる森の美女」。
それぞれのリリースがフィールドバレエの演目を元にしたレシピとなっており、グラスの中のもう一つの舞台として、更に贅沢な時間を楽しむことができます。

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※清里フィールドバレエが開催されている山梨県・萌木の村は、2021年に開業50周年を迎えた。その記念としてアニバーサリーシングルモルトが、秩父蒸留所のシングルモルトを用いてリリースされている。今作とは異なり華やかさが強調された造りで、こちらも完成度は高い。

一方、今回の記念リリースは舞台ドン・キホーテをイメージしてブレンドされているわけですが、正直見て楽しい演目である一方で、ウイスキーとして表現しろと言われたら…、これは難しかったのではないでしょうか。
造り手が相当苦労したという裏話も聞いているところ、個人的にも香味からのイメージで、老騎士(自称)の勘違い冒険劇たる喜劇ドン・キホーテを結びつけるのは正直難しくありました。

今回のリリースのキーモルトとなっているのは
・ミズナラヘッドのチビ樽(クオーターカスク)原酒
そこに、
・11年熟成のオロロソシェリー樽原酒
・8年熟成のヘビリーピーテッド原酒
という3つのパーツが情報公開されています。
これらの情報と、テイスティングした感想から、私の勝手な考察を紹介させていただくと。
通常と少し異なる形状のチビ樽原酒、つまりウイスキーにおける王道的な樽となるバーボンやシェリーではなく、個性的で一風変わった原酒を主軸に置くこと。これが舞台における主人公、ドン・キホーテとして位置付けられているのかなと。

そして、このチビ樽原酒に由来する濃厚なウッディさと、幾つもの樽、原酒の個性が重厚なフレーバーを紡ぐ点が、登場人物がさまざまに出てくる劇中をイメージさせてくれます。
特に中間以降にフルーティーで艶やかな、女性的なフレーバーも感じられる点は、まさに劇中におけるヒロイン、キトリ登場という感じ。
しかも余韻が樽感ではなく、ほのかなスモーキーさで引き立てられる点が、キトリと結婚することになるバジルの存在…、といったキャスティングなのだろうかと。口内に残るハイトーンでじんじんとした刺激は、さながら終幕時の万雷の拍手のようにも感じられます。

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※清里フィールドバレエ「ドン・キホーテ」
画像引用:https://spice.eplus.jp/articles/301927/amp

ただ、このリリースをフィールドバレエというよりウイスキー単体で捉えた場合、純粋に美味しく、そして高い完成度の1本だと思います。
造り手がベストを尽くした、一流の仕事。萌木の村に関連するリリースに共通する清里の精神が、確かに息づいている。秩父蒸留所の原酒の成長、引き出しの多さ、そして造り手の技量が感じられますね。

実は自分は秩父の若い原酒に見られるスパイシーさ、和生姜やハッカのようなニュアンス、あるいは妙なえぐみが得意ではなく、これまで秩父モルトで高い評価をすることはほとんどなかったように思います。
ただ10年熟成を超えたあたりの原酒のフルーティーさや、近年の若い原酒でも定番品のリーフシリーズ・ダブルディスティラリーの味が明らかに変わっている中で感じられる要素、そしてブレンド技術やニューメイクの作り込みと、流石に凄いなと思うこと多々あり、既に昔の認識のままでもありません。

良いものは良い、過去秩父蒸留所のモルトを使った清里フィールドバレエ3作の中では、今回の1本が一番好みです。
発表は5月15日、一般向けの抽選発売は5月20日からとのこと。萌木の村のBAR Perchをはじめ、国内のBARでももちろん提供されるはずですので、その際は、当ブログの記事が複雑で重厚な香味を紐解くきっかけの一つとなってくれたら幸いです。

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清里フィールドバレエ 2020 白鳥の湖 63% イチローズモルト 秩父蒸留所

カテゴリ:
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Kiyosato Field Ballet
31th Anniversary 
Ichiro's Malt 
Single Malt Japanese Whisky
Chichibu Distillery 
Aged 7 years 
1 of 680 Bottles 
700ml 63%

暫定評価:★★★★★★★(6ー7)

香り:甘やかで穏やかに立ち上る熟成香。トップノートに梅や杏を思わせる酸が微かにあり、アーモンドを思わせる香ばしさと、ほのかに酵母やピーテッド麦芽そのもののようなスモーキーさ、麦芽香が続く。グラス内で刻々と変化する個性のみならず、その残り香も実に魅惑的。秩父らしいスパイシーさと、長期熟成したウイスキーをも連想するウッディで甘酸っぱい樽香が感じられる。

味:しっとりとした口当たりから反転して力強い広がり。序盤は秩父原酒らしいハッカ、和生姜を思わせるスパイシーさが一瞬あった後、置き換わるようにウッディな甘み、微かに林檎のカラメル煮、オレンジジャム、古典的なモルティーさが穏やかなピートフレーバーを伴って広がっていく。
余韻はフルーティーな甘みとモルティーな香ばしさ、ジンジンとした刺激はゆったりと落ち着き、微かに残るピート香がアクセントとなる、官能的なフィニッシュが長く続く。

ノンピートモルトとピーテッドモルト、2樽合計4樽のバッティングとのことだが、それ以上に感じられる複層的な味わい。ノンピート3樽、ピーテッド1樽という構成だろうか。香味に起承転結があり、序盤は秩父らしい個性の主張がありつつも、余韻にかけてピーテッドの柔らかいスモーキーさと、モルティーな麦由来の古典的な甘みに繋がる。度数63%に由来する香味の厚み、広がりがある一方で、それを感じせない香りの穏やかさと口当たりの柔らかさも特徴と言える。

少量加水すると甘酸っぱさ、オールドモルトを思わせる古典的なニュアンスが前面に出て、スモーキーフレーバーと交わり一体的に広がっていく。ジャパニーズらしさと、在りし日のスコッチモルトを連想する要素が渾然一体となった官能的な味わいは、間違いなく愛好家の琴線に響くだろう。
それにしても、秩父モルト2樽だけでこの味わいがつくれるとは、俄に信じられない。麦芽か、樽か、通常とは異なる特別な何かが作用しているように感じる。こうしたミステリアスな要素がウイスキーの魅力であり、面白さである。

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山梨県・清里、萌木の村で毎年8月に開催されているバレエの野外公演。定常公演としては日本で唯一という”清里フィールドバレエ“の第31回公演を記念したボトルが、2020年夏から遅れること約半年、3月下旬からリリースされることとなりました。
本サンプルは、リリースに先立って萌木の村 舩木村長から頂いたものです。ボトルの提供はBAR Perchで先行して行われており、今後は一部BARを中心に関係者限りで展開されていくとのことです。

清里フィールドバレエ記念ボトルは、第25回記念としてサントリーから特別なブレンドが。第26回から第29回はイチローズモルトから羽生原酒と川崎グレーン原酒を使ったブレンデッドウイスキーがリリースされていたところ。これだけでも伝説と言うには十分すぎるリリースでしたが、節目となる2019年第30回開催では、再びサントリーから白州30年という過去例のないスペックのボトルがリリースされていました。
※過去作のレビューはこちら

一方、別ルートで聞いた話では、イチローズモルトに羽生原酒と川崎グレーン原酒のストックはほとんど残っていないとのこと。サントリーも毎年毎年協力出来るわけではないでしょうし、ならば今後、フィールドバレエとして過去作に相当するスペックのボトルがリリースされることは難しいのでは・・・と。実際、2020年夏を過ぎてもリリースの報せはなく、第30回をもって記念リリースは終わってしまうのかと、そう感じてすらいました。
(そうでなくても、第30回の1本は、フィールドバレエシリーズのフィナーレと言われても違和感のない、奇跡的なリリースでもありました。)

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ですが、コロナ禍にあっても第31回清里フィールドバレエが開催されたように、ウイスキーとしてのフィールドバレエも終焉を迎えた訳ではありませんでした。
同ウイルスの影響で苦しい想いをしている関係者、BAR・飲食業界に少しでも活気を、前向きな気持ちを与えることが出来たらと、舩木村長がイチローズモルト・秩父蒸留所を訪問して直接オファー。
今作は、秩父蒸留所のモルト原酒のみで造る、全く新しいチャレンジとしてフィールドバレエ記念ボトルがリリースされたのです。

今作のテーマは、第31回フィールドバレエの演目であった「白鳥の湖」です。
そのストーリーを構成する白と黒、善と悪の要素に照らし、スタンダードな個性のノンピートタイプの秩父モルトと、ピーテッドタイプの秩父モルト、正反対な2つの原酒が選ばれ、ブランドアンバサダーでもある吉川氏によってバッティングされたものが今作のシングルモルトとなります。

熟成年数は7年、使われた樽は4樽(うち1つはチビ樽)、ボトリング本数は680本とのこと。バーボンバレルからのボトリングでは、同じ年数だと180~200本程度となるのが秩父蒸留所で良く見られるスペックであるため、4樽のうち3樽がバーボンかホグスヘッドとすれば、ほぼ全量使われているものと考えられます、少なくともどちらか片方の樽は、最低500本程度は取れる、大きな樽で熟成した原酒が使われたのではないかと推察されます。

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それでは、この新しいチャレンジとも言えるリリースを、香味で感じられた要素から紐解いて考察していきます。

香りのトップノートは度数63%を感じさせない穏やかさ。ウイスキーには香りの段階である程度味のイメージが出来るものが少なからずありますが、このウイスキーは逆に香りから全体像が見えないタイプで、ピートスモークの奥にあるフルーティーさ、甘やかな熟成香に味への期待が高まる。まるでステージの幕がゆっくりと上がり、これからどのような展開、演出があるのかと、息を飲む観客の呼吸の中で始まる舞台の景色が連想されるようです。

飲んでみると、香り同様に穏やかな始まりで、バーボン樽とは異なる落ち着きのあるウッディな甘みがありつつ、力強く広がる秩父モルトの個性。これはノンピート原酒に由来するものでしょうか。秩父モルトの殆どに感じられる独特なスパイシーさ、そこからモルティーな甘みとピーティーなほろ苦さ、穏やかなスモーキーさへと、まさに白から黒へ場面が変化していきます。

物語において、結末はその印象を決定づける重要な要素です。
本作は、スモーキーフレーバーをアクセントに、リフィル系の樽の自然なフルーティーさ、ウッディな要素、そしてモルト由来の香ばしさと甘みが渾然となり、白と黒の個性が混ざり合うフィニッシュへと繋がっていく。軽く舌を痺れさせた刺激は観劇を終えた観客から響く喝采のようでもあり、名残を惜しむように消えていくのです。

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(直近リリースでバーボン樽系ではないフルーティーな秩父としては、THE FIRST TENがある。このリリースに感じたリフィルシェリー系のフルーティーさは近い印象があるものの、スモーキーさと後述する特別な要素で、異なるウイスキーに仕上がっている。)

ここで特筆すべきは、樽由来の要素として1st fillのバーボンやシェリー樽といった、俺が俺がと主張してくるような強い個性ではなく、麦芽由来の風味を引き立て、穏やかな甘みとフルーティーさをもたらしてくれる引き立て役としての樽構成です。その点で、このリリースに使われた樽は香味から判別しにくくあるのですが、バーボン樽だけではない複雑さがあり、なんとも絶妙な塩梅です。

何より、レビューにおいて”官能的”という表現を使うに足る特徴的なフレーバーが、このシングルモルトの魅力であり、ミステリアスな部分もであります。
ウイスキーのオールドボトルや、あるいは適切な長期熟成を経たウイスキーが持つ、ただドライでスパイシーなだけではない、独特の風味・質感を持ったモルティーさとフルーティーさ。このボトルは7年という短期熟成でありながら、そうした個性が溶け込み、香味において愛好家の琴線に触れうる特別なニュアンスを形成しています。

秩父の原酒はノンピート、ピーテッドとも様々飲んできましたが、こうしたフレーバーを持つものはありませんでした。
素性として、何か特別な仕込みの原酒か・・・可能性の高さで言えば、どちらかの原酒を熟成していた樽、またはマリッジを行った樽が羽生や川崎グレーンといった長期熟成原酒を払い出した後の樽だったりとか、白と黒の原酒の間をつなぐ存在がもう一つあったとしても不思議ではありません。
さながらそれは、フィールドバレエが公演されている、夏の夜の空気、清里の大地の香りのような、フィールドバレエたる舞台を形作る重要な1ピースのようでもあります。

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このブログを読まれている方はご存知かもしれませんが、私は秩父第一蒸留所のモルト原酒に見られる特定のスパイシーさ、えぐみのような個性があまり好みではありません。
飲んでいるとこれが蓄積されてきて、胸焼けのような感覚を覚えて、飲み進まなくなることがしばしばあるためです。

が、このウイスキーでは嫌味に感じないレベルのアクセント、多彩さを形成する要素にすぎず、むしろ好ましいフレーバーへ繋がって、味わい深く仕上がっています。確か秩父に★7をつけるのは初めてですね。
それこそ純粋に味と1杯の満足感で言えば、過去作である第26〜29回の羽生原酒と川崎グレーンのブレンドリリースに負けていません。長期熟成による重厚さは及ばないものの、若い原酒のフレッシュさと、それを補う落ち着いた樽の要素とピート香、余韻にかけて全体のバランスをとっている特別な要素の存在。。。今だから創れる味わいがあるのです。

先人の遺産ではない、現代の作り手と原酒が生み出す、清里フィールドバレエ記念ボトル、新しい時代の幕開け。ミステリアスな魅力も含めて、多くの愛好家に楽しんでもらえるウイスキーだと思います。
そして最後に私信となりますが、舩木上次さん、今回も素晴らしいリリースと、テイスティング機会をいただきありがとうございました。
コロナ禍という過去例のない事態であっても、最善を尽くし、一流を目指す。そのチャレンジ精神が形になったような、清里の地にもフィールドバレエにも相応しいウイスキーです。
是非今度、萌木の村で詳しい話を聞かせて頂けたら幸いです。


※4月7日追記:本件、関係者から2樽と聞いていましたが、正しくは4樽であるとの情報を頂きました。2樽だと色々腑に落ちない部分があったので、個人的にもすっきりしました(笑)。関連する部分を追記・修正させて頂きました。

秩父 10年 2008-2019 エイコーン #196 61.3%

カテゴリ:
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ACORN'S 
CHICHIBU 
MALT DREAM CASK 
Aged 10 years 
Distilled 2008 Dec 
Bottled 2019 Nov 
Cask type Bourbon Barrel #196
700ml 61.3% 

グラス:国際規格テイスティンググラス
時期:開封後1週間程度
場所:ジェイズバー
評価:★★★★★★(6)

香り:ドライな香り立ち。華やかさのなかに混じる甘酸っぱいウッディさ。バニラとオーク、ほのかにベリーや無花果のドライフルーツを思わせるアクセント。奥にはいつもの和生姜とハッカのスパイシーさ。

味:強い口当たり。 甘酸っぱいオークフレーバーは、アプリコットジャムや無花果の甘露煮。フルーティーさの奥からスパイシーさがあり口内を刺激する。余韻はドライでウッディ。フルーティーさの残滓を感じつつハッカやあくの残った筍、独特のえぐみ、ウッディな渋みを感じさせつつ、ドライなフィニッシュへ。

長熟バーボンが纏うような赤系のフルーティーさを備えた、不思議な樽感の秩父。オーソドックスに黄色いフルーツのバーボンオークで大正義だけではなく、その樽感がアクセントになっている。ベースの秩父味はいつもの通りだが、樽感が濃いこのボトルは他のそれらより余韻まで分離せず馴染んでいる。

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美味しいと評判の、エイコーンのMDC(モルト・ドリーム・カスク)です。
エイコーンと言えば先日のウイスキープラス5周年向けが個人的にちょっと。。。だったので、警戒していましたが確かに美味しい。ただし料理に例えるなら、かかってるソースが美味しい肉であり、ベース部分は安定の秩父。そしてなお価格。。。については言わぬが花でしょうか。

熟成樽はバーボンバレルとのことですが、アメリカンオーク由来の黄色系統だけでなく、少し赤みを帯びたようなフレーバー構成になっているのが特徴。バーボンそのものも、長期熟成したものはそういう果実風味をチャーオークフレーバーのなかに備えるものがあり、ひょっとしたらその系統の樽で熟成されたか、あるいは内側野焼き具合であるとか、なにかしらトリガーになる要素があったのかもしれません。
オーナーズカスクでこういう樽に当たるかどうかは、もう運次第ってのが面白さであり難しいところです。

そう言えば全然話は変わるんですが、どんぐりって食べれるんですよね。
息子が読んでた絵本を見て、昨年試してみたのです。あとなんの漫画か忘れましたが、どんぐりでラーメン作るみたいなのもあったなあ。。。と。灰汁抜きして加熱して、食べてみるとなるほど強引に例えるなら栗っぽい。でも灰汁がとても強いし渋い個体がw

そんなときにも連想する秩父味。ああ平常運行のウイスキー脳。秩父は秩父でも第2蒸留所はそういう個性が出ていないようなので、何が要因かはなんとなく。。。酒質由来とするかはともかく、それにしたって面白い個性です。

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今日のオマケ:アルト モンカヨ ヴェラトン 2014 グルナッシュ

スペインの濃厚赤。何やら近年パーカーポイント100点を複数回とってるオーストラリアの作り手が、共同ベンチャーとして立ち上げたメーカーによるもの。生産者側の実績は豊富。
エチケットがセンス良く、なにより値段も手頃だったので味も知らずに購入。ドキドキでしたが、これは良い買い物でした。

香りはブルーベリーやクランベリー、あるいはカシス。赤黒系の果実感が濃厚で、そこに杉やハーブ、少しきのこのようなニュアンスも混じる。ギスギスしておらず柔らかい香り立ちに、味も濃厚で度数もそれなりにあるほうだが、香り同様口当たりは柔らかく、余韻にかけて感じられる石榴のような酸味が樽香とともにアクセントになっている。

濃厚だが、それ故のバランスというか、丁寧さを感じる作り。系統はボルドーのカベルネでもブルゴーニュのピノでも、あるいは新世界のそれでもない。どっちかというとイタリアに近いような印象を受ける味わい。ああ赤ワイン楽しんでるなって思える1本で、自分は好きですね。みんなで集まってる時に、ワイワイ楽しめるワインだと思います。

イチローズモルト 秩父 オンザウェイ 2019 51.5%

カテゴリ:
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ICHIRO'S MALT 
CHICHIBU 
ON THE WAY 
Bottled 2019
700ml 51.5% 

グラス:国際規格テイスティング
時期:開封後1週間程度
場所:ジェイズバー
暫定評価:★★★★★(5ー6)

香り:トップノートは乾いたウッディネスと強めのアタック。フレッシュな林檎を思わせる果実香、柑橘の綿、乾燥した穀物っぽい軽い香ばしさから、メンソールやハッカ、スパイシーさが主張する。

味:口当たりはハイトーンでオーキーなウッディさ。バニラやドライアップル、樽由来の甘味にボリュームがあり。徐々にジャスミン茶の出涸らしのようなタンニン、えぐみを思わせるニュアンスも。
余韻はほろ苦くスパイシーで、和生姜やナッツの混じる乾いたウッディネスがクリアに抜けていく。

メインの樽はバーボンないしアメリカンオークと思われる乾いたウッディネス、オーキーさに由来するフルーティーさも感じられるが、下地にあるのは秩父の特徴。樽由来の要素は悪くなく、酒質部分と合わさって複雑でもあるが、馴染みきらないもどかしさ。まさにこれからの秩父へのオンザウェイ。

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秩父蒸留所の定期リリースのひとつ。。。といっても、2013、2015とリリースされた後で2017がなく2019年ですので、結構久しぶりな1本。
ON THE WAY(途中、~への道)というタイトルの通り、将来の秩父モルトの姿を見据えて、蒸留所に貯蔵された原酒をブレンドしてリリースされる発展途上のシングルモルトです。

ベースとなっているのは、同蒸留所の中で最も比率が高い、バーボン樽原酒と推察。
前作までは3~5年程度熟成の、比較的若い原酒のみで構成されていたところ。それ故ニューポッティーな若い酸であるとか、微かなピートであるとかも感じられたのですが、この2019年リリースは樽感が主体になっています。
ハイトーンな中に熟成感も伴うことから、6~8年くらいのものを軸に10年熟成くらいの原酒まで含まれているのではないかと思います。

ただその樽感はバーボンオークバリバリとはならず、ハイトーンななかに林檎系のフルーティーさとバニラ系の甘味が合わさって感じられる。複数年数の原酒がブレンドされた結果、オーキーではないクリーンなタイプと、ウッディーなタイプが相互に主張している感じ。
この構成を考察すると、意図して2つの樽感の中間を作り出そうとしたのではないかとも感じます。


秩父のモルトは「樽負けしやすく、長期熟成に向かない。」とする意見が、愛好家の間で少なからずあります。
そうした評価は蒸留所側にも届いているのでしょう。今年のモダンモルトのセミナーで、肥土さん本人が言及されており、同時に興味深い考察もされていました。
曰く、樽由来のフレーバーでタンニンは、熟成の初期はある程度まで濃くなるが、一定以上の期間を経ると分解されるため、秩父の原酒は10年以上の熟成に耐えられるのだと。
確かに、タンニンがポリフェノールなどに分解されるという現象は、熟成を通じて起こるもののひとつとされています。

つまり今回のボトルは、今ある原酒から将来こうなるのではというイメージのもと作ったのかなと。
ただ、ポリフェノールなどのタンニン由来の成分は渋味や苦味に繋がるだけでなく、樽から溶け出た成分、エキスは無くなる訳ではないので、ざらつくような感じやドライさは強くなる目論見通りに進むのかは神のみぞ知るところ。
日本はそもそも高温多湿なので、空調を使うなど特殊な環境に置かない限り、どの蒸留所も基本的に樽が強くなります。
あとはそれとどうバランスをとるか、いかに酒質部分のフレーバーと馴染ませるかがポイントであるわけですが。。。秩父の原酒はその独特の個性から、酒質に樽感が馴染みにくいんじゃないか、と最近思うのです。

長期熟成によって起こる樽内の変化には、原酒の味わい(分子構成)の均一化が進むというのもあります。
テイスティング中でも触れた、秩父の酒質そのものが持つハッカ、和生姜、あるいはえぐみの残った筍のような特徴。。。現時点の秩父はこの存在感が強いので、最初に樽感があって、後がこのフレーバーに続く、あまり馴染んでるようには感じられない要因となっています。(IPAカスクなどめちゃくちゃ個性の強い樽は後半部分まで圧殺されるため、逆にバランスがとれている。)
20年、30年熟成を目指すという秩父のゴールの姿は、この点がどうなっているのか。願わくば、適度に秩父らしさが残りつつ、馴染んだ味わいになっていると良いのですが。

秩父 7年 2011-2019 MDC 62.3% 古谷三敏 レモンハートラベル

カテゴリ:
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ICHIRO'S MALT 
CHICHIBU 
Malt Dream Cask For TMC 
Aged 7 years 
Distilled 2011 
Bottled 2019 
Cask type Bourbon barrel #1535 
700ml 62.3% 

グラス:テイスティンググラス
時期:開封直後
場所:Sinjuku Whisky Salon
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:ドライで乾いた木香、新築の日本家屋のよう。強くバニラとスパイシーな要素に、軽くオレンジピール、ハーブやハッカのような秩父らしい癖も伴う。

味:ツンとした刺激と粘性を感じる口当たり。香り同様に乾いた木香やナッツを思わせる軽い香ばしさ、そこからドライアプリコットやパイナップル、黄桃、オーキーで濃縮した黄色いフルーティーさが広がる。
余韻はスパイシーでウッディ、黄色い果実の残滓にハッカや和生姜のような、らしさも伴う長いフィニッシュ。

秩父味の上に美味しいバーボン樽味のソースがかかっているようなモルト。秩父モルトはともすると樽と酒質がばらついて、ごちゃごちゃしたような香味のものも少なくないが、これは樽由来の味が、アメリカンホワイトオークに求めるそれがしっかり備わっている。加水するとウッディさはマイルドになるが、良さもぼやけてしまう。

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イチローズモルトの樽売り制度、モルトドリームカスクによる、プライベートボトリング。
モルトドリームカスクは、通常はノンピート(極ライトピート)モルトにバーボンバレルというスペックで、最長10年の預かり期間のなかで熟成が行われています。
そうなると10年を目指したいのが飲み手の心情ですが、秩父という地域の特性上、樽感のピークが早い環境であることから10年まで熟成させるのはチャレンジであり、実際これまで5年から7年熟成あたりを中心にリリースが行われてきました。

それは周年ラベルや何らかの記念、あるいは純粋に商品として・・・時に工夫を凝らしたものであったのですが、そのなかでも”このラベルの特別感"は凄いです。
ウイスキー好きなら一度は見たことがあるだろう、漫画BARレモンハートの著者・古谷三敏氏の書き下ろしで直筆サイン入り。マスターと肥土伊知郎氏が、秩父蒸留所の蒸留設備を背景にウイスキーを飲み交わしている構図。やれと言われても、普通はこんな企画を形に出来ません。
くっ、これがオトナ(コネ)の力か・・・(笑)。

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一方肝心の中身はというと、やはり秩父の原酒なので、ハッカのような、あるいは和生姜のような、この蒸留所独特のトーンの高い辛さ、そしてウッディなえぐみのような要素は多少なりに感じられます。

この個性は秩父モルトという”料理”のお約束。あとはどれだけ熟成感があって、酒質と喧嘩しない"樽味のソース"がかかっているかなのですが、今回のボトルはまさに良い樽に当たっていると思います。
変に乾いた木材感だけではなく、特に味の後半にかけてアメリカンホワイトオーク由来の要素が濃縮したような華やかさとフルーティーさが好印象。8年弱という熟成的にも、ちょうどそれがピークに来ているという印象です。

今回のリリースはウイスキー愛好家グループの関係者を中心に配布されたもので、テイスティングは4月16日に正式オープンするBAR LIVETの2号店、Sinjuku Whisky Salon (新宿ウイスキーサロン)のプレオープン時、届いたばかりのボトルをオーナーの静谷さんと頂きました。

先に書いたように、MDCリリースはすべてが樽由来のフルーティーさを濃厚に備えるわけではなく、特に原酒の方向性を模索中だった蒸留所創業初期のものには「?」と思うようなものもあります。
そうでありながら、今回の味わいについては
「悪くないですね」
「良いフルーティーさです」
「でもこの樽に当たるって、ラベルといい妙な引きの強さありますよね」
「ほんとに、羨ましい限りで」
などという会話が、鬼の居ぬ間にあったようななかったような・・・。なんかちょっと悔しいけどそういうリリースなのです。

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以下、余談。
この度開店する新宿ウイスキーサロンは、サロンというだけあってLIVETとは方向性の違う、和のニュアンスを取り入れたスタイリッシュなデザインのお店となっています。
4月16日のグランドオープンにあわせ、また2月に5周年を迎えたLIVETの両店舗でイベントも行われる模様。以下は、お店側からのPR になります。

【ShinjukuWhiskySalon グランドオープン】×【BAR LIVET 5周年】
両店舗の合同イベント開催
〈4月16日(火)〜4月22日(日)6日間〉

【イベント内容】
Shinjuku  Whisky Salonではイベント期間中、2酒類のミニチュアボトルのプレゼントチャンスがあります。
・スペイサイドシングルモルト15年終売品(限定200本)
・某ジャパニーズニューボーン未発売品
(限定200本)

どちらもこの機会を逃すと入手が不可能な限定ミニチュアとなっています!
先着順ですのでお早めに御入手下さいませ。

【Shinjuku  Whisky Salon】
〒160-0022
東京都新宿区新宿3-12-1佐藤ビル3階
TEL:03-3353-5888
新宿3丁目駅B2出口より2分
プロントさんの向かいのビルの階段で3階
(BAR LIVETより徒歩50秒)
営業時間:19時〜0時迄(4月中)

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