リンクウッド 27年 1992-2019 ザ・ニンフ forハリーズ高岡 46.9% #5282
LINKWOOD
The Nymph "Blue Dun"
Aged 27 years
Distilled 1992
Botlled 2019
Cask type Hogshead #5282
For Harry’s Takaoka
700ml 46.9%
グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:開封後1週間程度
場所:自宅
評価:★★★★★★(6)(!)
香り:オーキーでエステリー、ドライで華やかな香り立ち。じわじわとファイバーパイナップルやアプリコットなどのドライフルーツ、微かにすりおろしたリンゴや麦芽の甘やかなアロマ。オーク由来のハーブを思わせる要素も混じる。
味:香りはドライ寄りだが、口当たりはクリーミーで柔らかい。ナッツをまぶした焼き洋菓子の香ばしさ、熟した洋梨の柔らかい甘酸っぱさと蜜のような熟成感のあるフレーバー。ボディはミディアム程度。じわじわとほろ苦いグレープフルーツやオレンジピールの柑橘感を感じるウッディさ。微かなピート香が余韻にかけて感じられ、軽い刺激と共に全体を引き締めるようにまとまっていく。
自分の好きなタイプのリンクウッド。アメリカンオークとリンクウッドの組み合わせの代表的なフレーバー構成。そこに麦感の甘味がオーク由来のフルーティーさ、ウッディネスに混じり、華やかさ、果実味、軽い香ばしさと麦芽風味、そしてビターなフィニッシュへの変化を味わうことができる。度数は46.9%と下がっており、余韻は多少弱くもあるが、逆に飲み口の柔らかさとの一体感、バランスの良さに通じていて杯が進んでしまう。加水には向いておらず、ストレートでじっくりと楽しみたい。
若鶴酒造・三郎丸蒸留所の稲垣マネージャーが、独身豚ことモルトヤマの下野さんと立ち上げたオリジナルブランドのファーストリリース。昨年スコットランドで確保してきた1樽で、若鶴酒造と同じ系列のBARである Harry's Takaoka(ハリーズ高岡)向けのプライベートボトルとして、5月18日にリリースされたばかりの1本です。
今回のリリースは、事前予告なく若鶴酒造、モルトヤマで一般販売が開始されたのですが・・・公開から約30分で完売。
リンクウッドにバーボンホグスヘッドという間違いない組み合わせに加え、最近リリースの少なくなってきた1990年代前半蒸留の中長熟モルトなら、今の相場だと2万円前半してもおかしくないのがあの価格。記載間違いか、味や品質の訳あり樽なのではと思った人も少なくないのではないでしょうか。
味については、レビューに記載のとおり問題なし。価格については「今回は運が良かった」との話を聞いていますが、ウィックおよびリラックスというグループ傘下の系列企業によるメーカーとのコネクション、輸入・流通で独自の強みがあるとしたら、今後のリリースにも期待が持てますね。
ブランド名となっている「Nymph(ニンフ)」は、ギリシア神話で川や泉に住むとされる妖精の名前です。そうした精霊はウイスキー樽にも住んでいるのではないか、というイメージから、ニンフが住む樽のウイスキーをリリースするというのが、ブランドコンセプトのようです。
とするとラベルに描かれるのは、当然美しい妖精の姿・・・かと思いきや、描かれているのは”毛鉤”。ご存じの方も多いと思いますが、川に住むトビケラやカゲロウなどの羽虫を総称してニンフとも呼び、その羽虫の姿をベースにした毛鉤もまた、ニンフと呼ばれているのです。(ブルー・ダンはそのニンフフライの配色と種類にあたります。)
先日、ラベルデザインとともにこのリリースの話を聞いた時は、「スコットランドはサーモンやトラウトフィッシングのメッカだし、ウイスキー好きは釣り人も多い。良いブランド名じゃないですか。」なんて返していた、学の無い趣味人な私。。。
稲垣さんも釣り好きだし、ラベルも毛鉤だし、マジで違和感なかったんですよね。
それが蓋を開けたら妖精ってどういうことやねんと。いや価格だけでなく味も良いので、妖精が住んでる樽として文句はありません(笑)。
近年多く見られるプレーンで主張の乏しいリンクウッドと違い、程よく残った麦芽風味、ほろ苦いウッディネス、しっかりとした熟成感にオールドスタイルなリンクウッドにも似た個性を感じます。
度数落ちは組み直しのホグスヘッド樽によくある仕様とはいえ、しかしこれが適度な落ち具合。抜けた感じ、枯れた印象は目立たず、アメリカンオーク由来のオーキーなフルーティーさとナッツを思わせる軽い香ばしさ、そしてクリーミーな麦芽風味とウッディネスが熟成を経て混ざり合う。2杯、3杯と杯の進む飲み口でありながら、シングルカスクらしい主張の強さも適度に感じられるバランスの良さが、このリリースのポイントです。
(富山県高岡市駅前、BARハリーズ高岡のバックバーの一部。ウイスキーBARとして本格的に動き出してから3年間でみるみる増えた。近年リリースのボトルに限れば、日本全国でもこれだけボトルが揃うところは少ない。今回の1本は、同店にとっても待望のプライベートリリースとなる。)
(富山県高岡市駅前、BARハリーズ高岡のバックバーの一部。ウイスキーBARとして本格的に動き出してから3年間でみるみる増えた。近年リリースのボトルに限れば、日本全国でもこれだけボトルが揃うところは少ない。今回の1本は、同店にとっても待望のプライベートリリースとなる。)
一方、今回のリリースで謎なのが、27年熟成で300本というボトリング本数。ホグスヘッドなので250リットル容量として、年1%のエンジェルシェアで計算しても27年で180~190リットル、250本程度しか残らない計算になります。
つまりよほど水分の揮発が少なく、アルコールの揮発が多い環境にあった樽ということになるのですが、実はメーカー側から聞いていた本数にブレがあったそうで、300本と言われてラベルを作ったところ、最終的にはそれより少ない本数に落ち着いたのだとか。
うーん、なんというスコットランドクオリティ(汗)。
とはいえ熟成した原酒の確保が難しい状況下で、これだけの原酒をあの価格でプライベートボトルに出来たハリーズ高岡さん、なにより稲垣・下野ペアの引きの良さには軽く嫉妬してしまいそうです。
評価は、価格の件があるので(!)は確定。自分が大好きな味の系統なのもあって、★6からプラスで6.5前後のイメージ。もっとガツンとくる50%オーバーが好みの人には物足りないかもしれませんが、麦感とフルーティーな甘酸っぱさが苦味へと変化していく流れが、古典的なスペイサイドモルトを連想させて個人的にどストライクなのです。
あとは香りが注ぎたてから甘やかに広がれば★7固定なのですが、そこまで求めるのは無粋というものですね。従って7に近い6ということで。
時期は不明ながら、ニンフシリーズは次のリリースも予定されていると聞いていますので、次回作が今から楽しみです。