ツバメを眺めながら

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金曜日は朝から二度寝して朝寝坊。あまりないことなので、如何に疲れていたかがよく分かる。おかげで朝からばたばたしてしまったが、案外うまく一日を過ごした。家に帰ってきたら一週間の緊張が解け、腰を下ろしたら立ち上がれなくなった。私はどうしてしまったのだろうと途方に暮れながら、其れでも何かをしたい気持ちと食欲があるから大丈夫だと自分に言い聞かせる。猫は人の気持ちが分かる動物で、座りこんだ私の横にぴたりと身体を寄せて、私の顔を覗き込む。可愛い私の猫。有難う。大丈夫だから。そんなことを言いながら猫の背を撫でると、気持ちよさそうにグーンと伸びをした。そうだ、私もストレッチをしてみよう、と猫を眺めながら考えた金曜日の夕方。

ボローニャは来週の月曜日からイエローゾーンに昇格して、少し変化するようだ。店の外のテラス席でカフェを楽しむことができるようになる。店内のカウンターやテーブル席はまた使用不可らしいけれど、それにしたって随分の進歩である。少なくとも私には。長いこと持ち去られぬように括り付けられていたカフェのテラス席の椅子たちもきっと喜ぶに違いない。例えばマッジョーレ広場に面して建つサン・ペトロニオ教会の裏手の広場。ここはカフェ・ザナリーニのテーブル席が並ぶ場所で、ちょっとした特等席。夕方の空を飛び交うツバメを眺めながらワインを頂くのは、ちょっと素敵な気分になる。他の店より値段が高いが、素敵な状況の場所代だと思えばいい。少なくとも店内での時間を楽しむことが出来ない今は、値段以上に価値あることだと私は思う。
ふと思いだしたのは、私と相棒がアメリカを離れた日のことだ。5月下旬で日差しが強く、陽気な空気の日だった。私達の親友が空港まで送ってくれて、空港の入り口で別れの言葉を交わした。3人で抱き合いながら大泣きして、何故私達はボローニャへ発つことを決めたのだろうかと思った。一生の別れじゃないのだからと口々に言いながらも。あれから26年が経とうとしている。私はあのアメリカの海の街が大好きだった。そして大切な仲間たち。それらは私の宝物だったから、長いこと私の決断は間違っていたのではないかと、口には出さずとも心の隅で思っていたけれど、これでよかったのだと、心に浮かんで私はひどく驚いた。ボローニャに暮らし始めてから私の人生は常に曲がりくねり、急な上り坂が長く続いたかと思うと恐ろしい下り坂であっという間に落下して。一体私は何をしているのだろう。どうして此処に居るのだろうと思っていたというのに、これで良かったと思えるようになるとは。諦めではなく、受け入れたと言う感じ。歳を重ねて、色んなことが分かるようになったのだろう。空高く飛ぶツバメを眺めながら、ようやく気持ちの整理がついて気分が良いと思った。随分と時間が掛ったけれど、其れが実に私らしくて、あはは、と笑いが零れた。

さあ、週末の始まり。特に何の予定もないけれど、散歩をしたり、本を読んだり、気に入りの友人と長電話をしたり、ほんの少し絵を描いてみたり。したいことが盛りだくさん。良い週末になる予感。




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