マッカラン 12年 シェリーオーク 40%
MACALLAN
12 YEARS OLD
SHERRY OAK CASK
Release 2018~
700ml 40%
グラス:テイスティンググラス
時期:不明
場所:新宿ウイスキーサロン
評価:★★★★(4)
香り:柔らかく、細い香り立ち。おが屑や乾いた木材を思わせる甘さと軽いウッディさ、輪ゴムのようなニュアンス。微かに林檎キャンディーを思わせる人工的な甘さに加え、ダークフルーツの要素もほのかに。
味:薄く、水っぽいキャラメルの甘味を感じる口当たり。薄めたオランジェット、デーツを思わせるドライフルーツが遅れて広がるが、これも主張は弱く、ボディも薄いため長く持続しない。逆に後半にかけておが屑や焦げたウッディさと樽のエキス、胡桃の皮を思わせる渋み、軽いスパイスが主張し、微かにあった良さを打ち消してしまう。
まるでトワイスアップを飲んでいるように、シャバシャバとしたボディと薄いシェリー感のモルトウイスキー。でありながら、樽由来の渋み、タンニンはある。出涸らしの紅茶から無理矢理香味成分を引き出したよう。
あるいは加水でバランスを整えて、不要なものを極力薄めた結果、良い部分がそれ以上に薄まってしまったのだろうか。
諸行無常は世の理と言え、どうしてこうなった・・・。
2018年頃からリニューアルした、マッカランのオフィシャルスタンダードラインナップ。
ここのところ、シングルモルトのブームもあってか、多くの銘柄でリニューアルがあり、リカルの執筆もあって色々飲んでいるところ。一長一短ながら、良くなったと思えるような銘柄もあるのですが・・・マッカランについてはその流れは適用されなかったようです。
少なくとも、ダブルカスク、トリプルカスクとリリースがあるなかで、シェリーオークに拘る必要はないということがよくわかりました。
マッカラン・シェリーオークに使われている樽材はスパニッシュオークのみ。これは、後述するマッカランの伝統とも言える樽製造プロセスから来ているこだわりですが、近年はファーストフィルに対してリフィルの割合が増えているように感じます。
シェリー感は薄く、微かにリフィルオーク由来のバニラやグリーンアップルのようなニュアンスも混じることから、その特徴を感じることができます。
良し悪しはともかく、マッカランは1974年から独自の樽製造プロセス「スペインで伐採したスパニッシュオークを自社の樽工場で加工し、ボデガに預けて約2年間オロロソシェリー酒を熟成させたもののみを使う」によって、自社で管理し品質を安定させる樽作りを行ってきました。
皮肉なことに、10年くらい前はこれがマッカランの味が落ちた要因として推測されてもいましたが、それは長期的な視点に立つと、シーズニングシェリー樽製造において先進的かつ重要な取り組みであったことを、近年のウイスキー業界におけるシェリー樽事情が裏付けているように思えます。
ただ、マッカランの人気から樽の供給とのバランスがとれていないのか、シーズニング期間の短縮や、リフィル樽の比率が増えるなど、樽側の変化がウイスキーマガジン等のWEB媒体の過去の公開情報と、現在進行形でオフィシャルサイト等で発信される情報の差として見られるようになってきました。今回の香味の変化も、それらと無関係とは思えません。
(マッカラン現行品の2本。18年については先日のレビューを参照。どちらも同じベクトルにある香味構成で、比較すると同じようにボディの薄さがあるなかで、18年のほうがまだ濃厚だが、それは12年のほうが熟成期間が短いのと、リフィルの比率も多いため樽由来の要素が弱いという違いである印象を受ける。いずれにせよ、双方コスパが良いとは言い難い。)
一方、上記18年のレビューでも触れていますが、樽の品質以上に、酒質の変化が大きな影響を与えているようにも感じます。
例えば重要な要素と言える麦芽品種は、2000年代のマッカランでは当時業界で主流のオプティックやコンチェルトだけでなく、独自の品種モメンタムで仕込まれています。
そこに今なお語られる伝統のゴールデンプロミスの姿はなく、調べてみると1990年代中頃にかけて年々使用比率が下がっていたそうで、真偽不明ながら1993年には全体の30%だったという情報もあります。その影響が出ているとすれば違和感はありません。
あるいは作り方の問題もあるのでしょう。シェリー樽由来の香味の薄さだけでなく、それを支える弱く、緩い酒質。。。近年リリースのカスクストレングス等を飲む限り、全般的に軽い酒質とは思えないのですが、奥行きを補う樽感が弱いと、加水による落差が大きいのかもしれません。(ゴールデンプロミスが良い品種だったかどうかは議論が別れますが、ドライでプレーン気味ながら強い酒質が生まれていた傾向は、同品種が主流だった70~80年代のモルトに見られます。)
マッカランについて、一世代前のボトルは言うてそこまでひどくないというか、丸瓶最終時代と同じベクトルにあるマッカランシェリー味を経験するには良い、と思っていましたが、今回レビューした現行品はまったくの別物です。
オフィシャルが飲み方でストレートではなく、ロック、あるいはトニックウォーター割りのカクテルを推奨するのも納得してしまいました。
コメント
コメント一覧 (14)
素人の感覚なのですが、ウイスキーに含まれる苦味とかえぐみとかの成分は、感覚の閾値が低いのかなと思っています。
加水やブレンドでそれぞれの要素の濃度が下がった時に、閾値の高い他の要素が引っ込んでも、閾値が低い要素が残るのでは。
マッカランの通常のラインも46%位で出してくれればもう少し違うだろうと思うのですが、価格が1.15倍になるとあまりにも厳しいですね。
小麦・樽・人件費とコストが高まり続ける中の、あの豪奢な大規模蒸留所建設でしたから”どうやって資本の回収を行うのか?”というのは当初からの疑問でした。
まさか、一番削ってはいけない所を削ってくるとは予想したくなかった…
実は、先日開封したばかりの”酒の王者”のスタンダードクラスでも似た感覚を覚えたばかりでした。
あまりにソフト、あまりにマイルド。特徴であるはずの”爆発するような”スパイシーさも潮気も至って穏やかで43…下手すると40度程度しかないんじゃないかという軽い飲み口。
私の思い違いであって欲しい寂寞感でした…。
これだけボロクソ言われる12年がこの味なら、みんなが良いと言う昔のマッカランはどれほど素晴らしいのか、と逆にワクワクしてきました。
コスパ悪い、というのは賛同します。今月また値上げしたそうですし。
自分もテレワークが導入されているのですが、システムが追い付かなくて結局始発で会社にいったり、感染を避けつつ仕事をする対応で疲弊していますw
闘値が低い。これはそうかもしれません。
他のウイスキーもそうなのですが、やはりアルコール度数と香味成分は密接な関係にあり、特に麦芽由来の味わいは抜けやすいなと。クラシックカットをそれなりだと感じで、40%だとしゃばしゃばで甘味よりも渋味やえぐみが強いと感じることと矛盾もありません。
もうなんていうか、マッカランである必要はどこにもなくなったと思います。
同じ値段で、美味しいワンランク上の熟成年数のものとか少なからずありますから。その辺も今後紹介していきたいですね。
正直、あの訃報はまさかという気持ちと共に、やっぱりというどこか納得する自分がいました。
そしてあれから自分もコロナへの危機感、対応をいっそう高めて過ごしています・・・。(おかげでブログがそのうちネタ切れになりそうですがw)
さて、マッカランですが、これに限らずスコッチウイスキーは老舗銘柄ほど、時間と共に効率化していく流れにあることは多くみられる現象でした。
それでもやり過ぎてしまうとこうなるんだなと、行き着くところを見せられてしまった気分です。
そしてスタンダードのスコッチは、概ねドライで、あるいは口当たりがマイルドで、個性が失われつつあるのは間違いないと思います。
万人にあわせた結果か、大量生産で失われるものもあったのか、いずれにせよ効率化の弊害として、スコッチは見直すべきと頃は見直すべきという時代に来ているように思います。
コメントありがとうございます。
気分を悪くさせてしまいましたら、申し訳ございません。
特徴がない訳ではないのですが、オールドと比べると・・・というのは確実にあります。機会があれば2000年代のものでも構いませんので、丸瓶の12年を飲んでみてください。これを量産できていたのか?と思えるはずです。また、他の銘柄で美味しいものはありますので、マッカランにこだわる理由は本当になくなってしまったようにも思います。
マッカランに同意見を持ってる人を初めて見たので。
私も現行の瓶になってからのマッカランにあれ?っと思いました。
自分の味覚に自信はないのですが、味が薄くて飲んだ後に苦みを感じます。
ひとつ前の瓶と比べてもこんなんだったけな?と思っていました。
好きだった銘柄がこんな感じなので、いまはドロナック12年が私の中のシェリーの常飲となっています。
マッカラン飲んだ後にドロナック飲んだらめっちゃ甘くて濃いって感じました。
マッカランは高くなるわりに、って言う想いになってしまって残念です。
この記事を読んで去年の正月前後に買って打っ棄ったままだったマッカランを慌ててテイストしてみたら、おっしゃる通りでした。全然ガツンとこない。私が最後に飲んだのは1990年代でした。華やかで美味しいと思ったのですが、ワイン党から「マッカラン美味いよね」といわれたのがシャクだったり値も張るしで敬遠してました。
それが家人からウイスキーを贈って欲しいと頼まれ好みも判らないので取り敢えずマッカランと思い近所の信濃屋へ行くとシェリーカスクが1本、ダブルカスクが数本。魔がさし自分様にシェリー(自腹)贈答用にダブル(公費)としてしまいました。全くバチが当たったというか恥をかかずに済んだというか。それにしてもこれを買うなら私ならシーバス18年にしますね。安上がりだし。と、思って調べてみたら最安値4900円でした(Amazon)シーバス18年と大してかわりませんでした。皆さんお目が高いならぬ、お舌が高い。
長文駄文失礼しました
コメントありがとうございます。
お酒は嗜好品ですから、やはり自分の感覚は大事にするべきだと思います。
勿論マッカランが美味しいというコメントもあると思いますが、自分は自分です。
マッカラン12年と同じ値段出すなら、自分はアランとかアベラワーをその予算のなかで買いますね。ドロナックもまだ頑張ってますし、18年とかは今のうちに飲んでおきたい。
また、そこに注目されてしまうと、マッカランと同じような状況になりかねませんから、それこそ今のようなバランスがちょうどいいのかもしれませんね。
コメントありがとうございます。
1990年代を最後に飲んでいなかった・・・となるとその落差たるやとんでもないですね。
また、当時のモルトは今から考えれば十分安かったので、価格的な面のギャップも心中お察し状態です。
正直、今の12年ならもうトニックウォーターあたりで割るくらいしかないんじゃないかと思っています。
シーバス18年は確かに18年熟成のウイスキーと考えればお値打ちですね。見た目もなんとなく高級感ありますし、おっしゃるようにシェリー系のニュアンスを含む樽感もリッチです。
ですがマッカラン12年シェリーオーク、この記事を書くにあたって調べてみたら8000円台だそうですよ。
いやもうちょっと、この値段を出すならそれこそシーバス18年でもいいですが、先日レビューしたアラン18年を買いますね。あるいは、ワインの新世界系で濃くて甘いやつを2~3本買います(笑)
どうしてこうなった・・・という気持ちがますます強くなってしまいました。
マッカランは、見るだけで終わるウイスキーってのが、私の位置づけです。
そして、くりりさんの記事で飲んだ気分を味わいながら、他のウイスキーと飲み比べをしていますw
まるで鰻屋さんの匂いで、白ご飯を食べる話と同じです。
腐ってもタイ、薄くてもマッカラン。
やはり一番読んでて楽しいなと思っています。
コメントありがとうございます。
>まるで鰻屋さんの匂いで白いご飯を食べる
そういって貰えて凄くうれしいです!
自分にとってウイスキーレビューは、なるべくメーカーレビューをコピペしたような機械的な情報発信にはなず、一人のウイスキー好きの視点、本音を交えたレビューで、こいつならこう考えるよなぁ、あ、やっぱそこそう思うか、みたいな共感をもらえたら良いなと思っています。
マッカランについてはそういう意味ですごく本音ベースです(笑)。
歴史や実績のある銘柄ほど凋落について触れることが難しいのですが、やっぱりそこは本音でしょ!と。
これからも引き続き楽しんで貰えたら幸いです。
2020年4月投稿であり記載内容から今年のマッカラン12年のテイスティングコメントと思われますが、クリリンさんとは真逆の評価で、ある意味面白かったです。
「薄いシェリー感」⇔「心地よいシェリー樽のニュアンス」「シャバシャバとしたボディ」⇔「重厚なボディ感」
>蒸溜所探訪Vol.3「スコットランド・マッカラン蒸溜所」レポート
>マッカランは熟成樽の異なる3種類のラインナップと、年数表示は必要とのリサーチ結果から12年熟成品をベースにしています。
>以前のマッカランは美味しかった、最近のは今ひとつ……という話も多く耳にします。
(中略)
>心地よいシェリー樽のニュアンスと熟した黒系果実の風味、しっかりとした重厚なボディ感とが相まって、この上ない満足感が得られます。
コメント&記事を読んでくださり、ありがとうございます。
ウイスキーの感じ方は人それぞれなので、谷嶋さんが感じたことと自分の感想は一致しないこともあると思います。
ただ、谷嶋さんが該当するコメントを記載するにあたって飲んだのが、どの12年なのか。はたまたそもそも12年のみに対してのコメントなのか(カスクストレングスリリースやボトラーズ系のものなど、近年のリリースを総合した原酒の傾向なのか)が、記事ではわからないですね。
同じボトルを比較しているわけではない場合、コメントにも差は出てきてしまうと思います。
ちなみに、私もマッカランのカスクストレングスリリースについては、これまでも強くボディがしっかりしているという旨のコメントで紹介しています。(別記事:マッカランクラシックカット2019での考察になりますが、酒質が弱いというよりは加水とチルフィルによるロット差均一化の影響が大きいのではないかとも思います。)。シェリー感についても、リリースによって異なりますし、バランスよく適度なものも見られます。
一方で、この蒸留所特集記事の主たるところは、テイスティングではなく大規模リニューアル(新設)したマッカラン蒸留所の内部や、その製法等に関する情報ではないかと思います。ビジュアル込みでこれだけまとめられた記事がフリーで読めるって、愛好家からすれば有難い話だと思います。
コロナウイルスの影響が落ち着きましたら、谷嶋さんにもこの話は聞いてみたいですね。