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THE NIKKA 
NIKKA WHISKY 
"Tailored" 
Tailor-designed to perfection 
700ml 43% 

グラス:木村硝子テイスティンググラス
時期:不明
場所:自宅@サンプルTさん
評価:★★★★★★(5ー6)

香り:ウッディでメローなチャーオーク香。オレンジピール、松の樹皮のような無骨なウッディネス。香ばしくビターな要素も感じさせるが、奥には溶剤系のヒリつくようなアルコール感を伴う。

味:口当たりはメローでビター、とろりとした質感に続いてスパイシーな刺激。香り同様に新樽系のニュアンスの裏に、オークのバニラ、蜂蜜や穀物を思わせるグレーンの甘味、続いて若いモルティーさも感じられる。
余韻は焦げたような苦味とピートフレーバーを伴う、スパイシーなフィニッシュ。

トップノートにあるニッカ味とも言えるチャーオーク系の要素、余市モルトのモルティーさが強く、度数以上にパワフルなブレンド。一見するとまとまっているように感じるが、奥にはヒリつくようなアタックや、若い原酒の個性も見えてくる。加水すると樽感は控えめになるが、全体的に繋がりが良くなって飲み口もマイルド、バランスが良くなる点は評価ポイント。


2019年4月、ザ・ニッカ12年が終売になり、それと同時にリリースされた代替品とも言えるNAS仕様のブレンデッド。テイラード。
12年からNAS仕様となったことで、若くなるのではとか、発売前は憶測的な意見が少なからずあったのですが。。。
飲んでみて、それは事実だったなと言う部分と、幅広い熟成年数からくる原酒の個性を上手く使っているな、という2つの印象を受けました。

全体の構成は、モルト比率高めで骨格のしっかりとした香味。旧12年で感じられた味わいのベクトルは維持されており、熟成された原酒の雰囲気も漂うため、まったくの別物というワケではありません。
この辺りに本社側の決定に対するブレンダーの意地というか、ニッカの個性は斯くあるべし、というレシピの方向性が伝わってくるようです。

ただ、使用している原酒の熟成年数を落としたからか、旧12年に比べて全体の香味を繋いでいるコク、粘性を伴う甘味が控えめになり。。。モルトのほうも黄色系統のオーキーなフルーティーさがトーンダウンし、逆にバニラ系の甘味や若くて勢いのある風味が強く出ている部分があります。
この辺りが、古い原酒のウッディさだけでなく、比較的若い原酒に樽感を強く付与したような、長短混じり合う要素。どちらが悪いという話ではありませんが、例えば、12年熟成の原酒のみと、6~20年までをブレンドして平均12年では同じもののにならないように、同じベクトルだけれど違うものに仕上がって当然なんですよね。

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(テイラードを飲んでいて、最も目立つ香味の傾向が、蒸留所限定のウッディ&バニリックのそれ。12年では新樽以外に宮城峡のバーボン樽系統の原酒、同様に蒸留所限定に例えるとフルーティー&リッチタイプの香味が良い仕事をしていたが。。。)

公式情報ではモルト原酒のなかで軸になっているのが、ピーティーな余市モルト、宮城峡のシェリー樽原酒という書きぶり。確かに余市の要素は、余韻にかけてビターなピートフレーバーやアタックの強さで分かりやすいと感じます。

一方で、宮城峡のシェリー樽というのは若干の疑問が。。。ニッカのシェリー樽原酒といえば、硫黄香が代表的キャラクターと言える構成ですが、その要素が感じられない。ということは、リフィルか、最近の仕込みの若い原酒か。
使ってるのは事実で、ほんのりシェリーっぽいニュアンスはありますが、目立つほどの量とは言えず。各個性の繋ぎになる役割は、上記新樽のエキスが担っているように思える作りです。

なお加水したりロックにしたり、もうひとつ繋ぎになる(全体をおとなしくする)要素を加えていくと、バランスがよくなりまとまりも出るので、そういう飲み方を前提としているのかもしれません。
テイラード(仕立て屋による作品)の名を冠するには少し手助けが必要ですが、古きを押さえつつ新しさも備えた、今のジャパニーズウイスキー業界のトレンドとも言える味わいだと思います。