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GLEN SCOTIA 
SINGEL MALT SCOTCH WHISKY 
Aged 45 years
Distilled 1973 
Bottled 2019 
Only 150 Bottles 
700ml 43.8%

グラス:国際規格テイスティンググラス
時期:不明
場所:セミナールーム
暫定評価:★★★★★★(6)

香り:白系統のフルーティーさが主体の上品な香り立ち。スウィートアップル、マスカット、微かにハーブ。あまりくどさのない華やかなオーク香に微かなピート香が混じる。

味:口当たりは少し水っぽさがあり、すりおろした林檎、パイナップルクリーム、徐々にドライ。後半にかけてウッディネスが強くなっていくと共に、じわじわとピートも存在感を主張する。フィニッシュはほろ苦く、枯れた印象を伴いながら染み込むように長い。

熟成によって整った樽香、度数相応のボディ感に、上品なフルーティーさと微かにピーティー。まるでスペイサイドの長熟度数落ちの原酒を思わせるような構成で、序盤は意外だったが後半にかけて感じられたピートフレーバーが異なる地域性を主張する。
オフィシャルらしい整った仕上がりでもある。

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先日ご招待いただいた、株式会社都光とリカーマウンテン主催の関係者向けロッホローモンドグループセミナー。ひとつ目の目玉は、先日レビューしたリトルミル29年でしたが、もうひとつの目玉が、同グループ傘下のグレンスコシア蒸留所から、こちらもブランド最長熟となるシングルモルト45年の発表でした。

原酒の構成は、1973年に蒸留した原酒を、リフィルバーボン樽で熟成。2011年にファーストフィルバーボン樽に詰め替え、2019年にボトリング。
加水はほとんど行われていない、カスクストレングス仕様と思われる一方で、さすがにバーボン樽熟成の原酒が38年弱経過して150本分残るとは思えないので、2011年に同じスペックのものが複数樽がバッティングされ、シングルモルトとして詰め替えられたものと推察。
いずれにせよプレーンオーク系統の樽での熟成を思わせる、ドライで白をイメージするような上品なフルーティーさが備わっています。

今回の原酒が作られたグレンスコシア蒸留所の1970年代前半。ホットトピックスは当時蒸留所を所有していたA Gillies社が、ブレンド向けの原酒提供を手広く行っていた通称ADP(Amalgamated Distilled Products)グループに買収されたこと。
元々グレンスコシアの1900年代は、キャンベルタウンの衰退に加え、10~20年毎にオーナーが変わるという落ち着きのない状況ではありましたが、作られたモルトは主として名もなきブレンド向け原酒(バルク)という位置付けは変わらず。
1970年にADP傘下、そして1989年には同じくブレンドメーカーであるギブソンインターナショナル傘下となったことで、それがより一層加速することになったと推察します。

今回のテイスティング中、これまで数多く飲んできたオールドブレンデッドの、特に1980年代後半から1990年代前半辺りで流通した長期熟成品(記憶しているなかで一番近いのがヘッジス&バトラー21年)と類似する香味があるように感じられたのが印象的でした。
同じ時期の、同じような樽に詰められていた原酒が、様々に使われたなかで、このシングルモルトはそのうちのひとつだったのかもしれません。
同じキャンベルタウンのスプリングバンクとは異なる軽やかさ、熟成によって備わった樽香、ウッディネス、穏やかだが存在感のあるピートフレーバー。。。度数落ちながら破綻しない味わいが魅力と言えます。

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先に書いた通り、グレンスコシアはブレンド向けの位置付けで、シングルモルトとして本格的に展開されてきませんでしたが、最近は同ジャンルのブランド価値向上で市場に出てくるようになりました。
セミナーで聞いた話では、最近ではシングルモルト向けのものは発酵時間、蒸留時間を長くし、樽も厳選することでクオリティの高い原酒が生まれるよう調整を続けているのだとか。

これまでの原酒では、蒸留所の閉鎖期間にあたる1984~1989年の前後くらいのものはキャラクターが定まらないというか、スペイサイドモルトをキャンベルタウンで無理矢理作ってるような、少しまとまりが悪いような印象がありました。
一方2000年くらいからは方向性が変わり、酒質が向上しているイメージ。この日テイスティングしたスタンダードのダブルカスク、18年はピーティーさだけでなく、麦感や厚みがあり「あ、結構しっかりキャンベルタウンっぽくなってる」というもの。
45年熟成を経験出来たことは当然収穫ですが、それ以上にシングルモルトに本腰を入れ始めたグレンスコシアの将来が楽しみになるセミナーで、参加させてもらえて大満足でした。