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2023.01.01 20221231 土
 2022年もとうとう大晦日を迎え、ゆっくり眠って7時半起床。
 大晦日でもあるし、今日は外出なしにして部屋でダラダラと暮らすことにする。いいじゃないか、大晦日なんだから。でもまあ、ぼーっとしているわけにもいかないので、それなりに読んだり書いたり観たりする。

 今朝の新聞の番組欄を見るのだが、観たいものがない。大晦日の夜であればかつてはあれこれ観たくて困ったものだが、様々なジャンルの歌手を脈絡なく混ぜ合わせ、何十年と変わらない紅白形式でやっているような時代遅れの番組には興味がないし、一時多くの民放でやっていた格闘系番組は嫌いではないが、いつのまにか有料チャンネルにもっていかれて観戦できなくなっている。では何を放送するのかといえば、ただ薄ら笑いしか出てこない時間潰しの無感動バラエティ番組ばかりがずらりと並んでしまっている。これは、溜め撮りしていたものを流して自分たちも休んでしまおうという民放各社の安易すぎる怠慢としか思えない。
 マスメディアという準公共的な手段を握っているのだから、少しは社会貢献的なことを考えてしかるべきはずだが、そんなことを言っても彼らは「視聴率が得られない」などと受け手を悪者にするばかりで、聴く耳を持っていない。番組なんて受け手に合わせてつくってりゃいいんだよと思っているのだろうが、そうではないと思いますよ。

 午前中、つれあいが掃除機がけを始めたので、当方は雑巾を手に拭き掃除をする。つれはまめに掃除機をかけるが、なぜか拭き掃除はほとんどやらない。こちらとしては、掃除は「拭き」が基本という考えがあり、雑巾1枚をダメにするまであらゆるところを拭いていく。夫婦とは、お互い足りない部分を補い合うことでなんとか悪くない関係が保たれる、ということだろうか。

 昼食は自宅で。週末定番のゲソ天蕎麦に、お歳とりのフルーツが二本立ての大サービス。一足早い年越し蕎麦だ。つれは夕刻からの会食に備えて蕎麦の量を控えているが、その分当方が余計に食べなければならなくなり、この昼も満腹感に浸ることになる。

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(週末定番のゲソ天もり蕎麦は、デザート2種付)

 読書は「短篇ベストコレクション 現代の小説2008」から始める。
 母入院の知らせを受けて戻った久しぶりの郷里で、主人公はかつて自分が描いた絵を通して以前交際していた女性と再会する。甦る過去の思い出が感動へとつながっていく秀作、蓮見圭一の「秋の歌」。
 共同でデザイン事務所を経営していた弓枝は、事務所に勤めていた女性から、いつも対等な立場で接していた夫をかすめ取られてしまうのだが……という、唯川恵の「みんな半分ずつ」。
 恋人と食を同時に失ったヒロインが、自殺も考えた橋の上でひとりの初老男性に声をかけられ、そのまま北への旅に同行するという、夢中の話のような桐生典子の「雪の降る夜は。」
 この日の読書はこれ1本だけの、90ページ。

 長閑な午後は、1966年公開の映画「網走番外地 荒野の対決」を録画で観る。“網走番外地”シリーズ第の5作目で、主演・高倉健、監督・石井輝男。
 北海道の牧場地帯の話だが、男たちはなぜかライフルを持ち歩き、超田舎なのになぜか開拓時代のアメリカ西部にあるようなバーがあり、若い女性たちがドレスをまとって登場する。そして高倉健らは日本刀を手にして殴り込みに行くという、今となってはよくわからない設定で撮られていた。
 キャストには、田中邦衛、杉浦直樹、由利徹、嵐寛寿郎、小林稔侍らも名を連ねており、19歳の大原麗子も。

abashiribangaichi kouyanotaiketsu 1966 (映画「網走番外地 荒野の対決」)

 夕刻には長男家族3人がやってくることになっているので、16時過ぎから入浴を始める。すると、入ったばかりの時間帯に彼らは着いてしまい、食事が待てないはるき君が騒ぎ始めたらしく、17時過ぎに火照りを冷まして居間に行くともう自分抜きでの食事が始まっていた。
 長男の嫁さんが調達してきてくれたイタリアンのおせち料理(!)と、当方で用意した和のおせちの何種類かと出前の寿司で楽しい食事。
 あと3か月もすれば2歳になるはるき君も元気そのもので、楽しいと思ったことは何度でもやって大人たちを笑わせてくれる。こちらの言うことはほとんど理解して的確な行動に結びつけるのだが、彼の話す言葉はまだ幼児語ではっきりせず、親の通訳があって初めてナルホドと気づかされるものが多い。そんなところがまたかわいい。19時過ぎ頃になって、あわただしく帰って行った。

 飲み足りないので自室で缶チューハイを開け、プロボクシングWBO&WBA世界スーパーフライ級王座統一戦のWBO王者井岡一翔対WBA王者ジョシュア・フランコ(米)@大田区総合体育館をディレイで観る。
 いずれもパンチが弱い上に井岡はヒット&アウェイのアウトボクシングに終始して判定となったが、最終ラウンドだけは両者の打ち合いが伯仲して見応えがあった。結果はドローで双方の防衛となり、王者統一はならなかった。戦った両者には申し訳ないが、井上尚弥のレベルからはかなり落ちるというか、井上だけが異次元のレベルであることがよくわかった一戦だった。

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(大晦日11戦目となる井岡一翔はドローで2団体統一ならず)

 2022年の書籍読破総冊数は124冊となり、年間目標の100冊を超えて、去年と同数になった。リタイアしてフリーになってからの3年は毎年100冊超えをクリアしている形だ。ただ、このうち沖縄関連本に関しては、今年15冊の設定に対して12冊と、目標に届かなかった。でもそこに関しては、それほど悔しいとは思わない。読みたい本を好きなだけ読めばいいという考えに変わってきているからだ。

 ボクシングの観戦以降はテレビを消し、23時半には就寝態勢に入って本を読み、眠くなった24時過ぎ頃には眠りへ。2022年よ、サヨウナラ。

 2022年12月中に購入した本は、次の9冊となりました。

1 driver臨時増刊 オール国産車&輸入車完全アルバム2023  八重洲出版 202212 700
2 短篇ベストコレクション 現代の小説2007  日本文藝家協会 徳間文庫 200706 古220
3 無印OL物語  群ようこ 角川文庫 199109 古110
4 東洋ごろごろ膝栗毛  群ようこ 新潮文庫 199710 古110
5 雀の猫まくら  群ようこ 新潮文庫 199810 古110
6 注文の多い料理小説集  柚木麻子ほか 文春文庫 202004 古330
7 四次元温泉日記  宮田珠己 ちくま文庫 201501 古330
8 四度目の氷河期  荻原浩 新潮文庫 200909 古110
9 格闘王への挑戦  前田日明 講談社文庫 199301 古220

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 1のみアマゾンから定価で、2~9はブックオフオンラインから古書にて1冊110~330円で買ったものです。9冊合計で2,240円のお買い物。

 1は、いずれやってくる車の買換えに向けて、数年前からスタディしておこうという意図で、去年からこの時期に買っているもの。
 2はこのシリーズ8冊目、3~5は群ようこの4~6冊目、7は宮田珠己の11冊目、8は荻原浩の6冊目の購入本となります。
 6は料理小説のオムニバス、9はプロレスもの。

 よしよし、このぐらい買っておけば、すでに買い置きしている分と合わせて45冊ほどあるので、春頃まではもつのではないか。本棚に未読本が山積みされていることで心の安寧が得られる今日この頃です。

2023.01.02 20230101 日
 新年を迎え、7時前に起床。比較的穏やかな天候の正月を迎えることができている。この新年が今朝のような穏やかな1年となることを願いたい。

morning0700 20230101
(2023年元旦、朝7時の風景は雪もなくわりと穏やかだ)

 忘れないうちに2022年について振り返っておく。
 前年から乳がんの治療を始めていたつれあいが、3月をもって第二の職を辞して4月からフリーになった。その後の経過は幸いにして順調で、何か月かに一度の経過確認の通院をしながら薬を飲むだけになっている。一時薄くなってしまっていた頭髪もある程度元に戻り、近々地毛の髪染めをしてこようかと言っている。これが2022年の最もよかったことではなかったか。4月以降家で暇そうにしているので、昼の外食に連れだしたり、あまり好きではないのを我慢して買い物につき合ったりするようにしている。
 一方母は、介護施設にいる間には頻繁に様々な病院に連れて行かなければならない上に、施設とは職員との折り合いがよくなかったり、何かと電話1本による安易な要請が多かったりして辟易していたものだが、体調不良のため一時入院した総合病院の医師から、母をこれまでのように介護施設で面倒をみてもらうには無理があり、高齢者認知障害を専門とする医療施設への入院が妥当ではないかと勧められ、9月後半には2年7か月入居していた老人ホームから専門病院へと移ることになった。
 その後は、介護施設よりもずっと適切な医療が受けられるようになり、夜の不穏行動がある程度収まり、一時自分では食べられなかった食事をある程度自分で、しかもたいていはきちんと食べるようになっているとの報告を受け、かつてよりもずっと安心していられるようになった。しかし認知度はかなり落ちてきているようで、そのためもあってか身の回りに関する不必要と思われる多くのこだわりも一定程度は収まってきたように思う。
 当方の健康に関しては、7月に急な腹痛で休日診療所へと赴いたところ、尿管結石と診断された。その後痛みがなくなったので何もしないでいたところ、10月にこれが再発し、いくつかの病院を引き回されることになる。これについては痛みこそなくなったが完治宣言は受けていず、治療途中の状況が続いている。
 旅に関しては、5月には10日間の博多ステイ、7月には6日間の金沢ステイ、9月には琉フェス鑑賞の上京と甲府散策をやった程度にとどまった。つれあいや母の健康不安に加えて、自らの唐突に発生する腹痛に対する不安も重なってのことだ。だが、現在の足元を見れば、つれあいはほぼ回復しているし、医師が常駐する病院にいる母はこれまで最も安全な場所にいると思われ、自分の健康不安以外はかつてよりもずっと改善していると言っていいのではないか。そうであれば、かつてやっていた長期にわたる車旅までは控えたほうがいいにしても、不測の事態があればすぐに戻って来られる程度の数日間ほどの短期の旅ならば、今年は十分可能だろう。つまり、ショートレンジのジャブ程度の旅をいくつか用意して、いつでも行けるようにしておけばよさそうだ。
 楽しいのは孫のことだ。彼とは昨夜も楽しく過ごしたが、日々の成長がかわいらしくて、眩しくさえ感じる。孫とは、授かってみて初めてわかる喜びがたくさんあるものだった。
 こんな1年ではあったが、家庭内の問題や課題はいくつかあったとしても、対外的なこと、例えば仕事のことや親戚・友人、天変地異などのことで悩まされずに済んだのは極めてよかった。この年齢になると、こういう平穏な毎日であることが何よりもありがたく思えるもので、ぜひとも新年も、すごくうれしくて楽しいことなどはなくてもいいから、穏やかななかで静かに、健康で暮らせることを望みたい。

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(image-新年)

 さて、新年に当たっての今年の目標設定だが、まず読書は、過去2年と同じ年間100冊を最低目標とするが、実績を踏まえれば毎月10冊ペースの120冊超えは意識したいところだ。内数としての沖縄本の読破数は、もう設定しなくてもいいだろう。
 旅に関しては、母親の健康状態や世の中のコロナの蔓延度などに左右されるだろうが、母の入院状況が安定している現況のままいけば、一週間以内程度の短いものであれば数本程度は実施できそうだ。もっともこれは、自分が健康でいられることが基本条件になるわけだが。
 ほかには、ぼちぼち実家の処分について具体的に動き始めなければならず、それに先立って建物内に残っているものの整理をしなければならない。むろん価値のあるものはないが、家族にとって大事なものは多少ながら残っている。具体的には、祖父の遺していった絵画等が主で、これらについてはいずれウェブ上で体系的に見ることができるようにそれなりのデジタル化を図りたいと思っているのだが、道半ばになっている。これも孫である自分にとっての2023年の課題といえるだろう。
 これらがどの程度進められたか、1年経過後にはしっかり検証してみたい。

 午前中は、「ニューイヤー駅伝」を観ながら、2022年の終盤に読んだ本のインプレッション6冊分をものにする。新年早々いい滑り出しといえようか。

 昼食は、正月らしく自宅で餅を焼いて食べる。年に一度の雑煮餅と、納豆に砂糖入れますか?を実践して、若干甘さのある納豆餅。ほかに蒲鉾などのおせち風も。

house lunch 20230101
(元日は家で雑煮餅など)

 午後からは強雨が降ったりする。正月といえどもというか、新年だからこそ、午後は読書だ。「短篇ベストコレクション 現代の小説2008」を読み、夜までに120ページ。
 黄色の好きな年上の女性と不倫関係にあった主人公が、女性の突然の死に遭遇し、黄色いハイビスカスを育て始めると、その先には春を予感させるような変化が……という、藤田宜永の「黄色い冬」。
 図書委員をしているクラスメートに会いたくて図書室に通う男子中学生。彼女が転校するまでに少しでも親しくなりたいという少年の切ない気持ちが伝わってくる、関口尚の「図書室のにおい」。
 言動に問題の多い刑事コンビがなぜか高収入の女性漫画家の身辺警護に駆り出された顛末を描く大沢在昌の「ぶんぶんぶん」は、会話の羅列で推敲が甘く、やっつけ仕事になっている。他作品と並べて読むことで、そういうことがあからさまになってしまう。
 劇中劇のような形で一人芝居が展開されていくもので、この作品で作者は何を言いたかったのかを考えさせられるところに不思議な魅力がある、恩田陸の「弁明」。
 ホテルに逗留中の作家二人が出会い、怪奇な伝承にまつわる話をする。すると、その後に予想外の出来事が起こり……という、ホラー小説と言っていい桜庭一樹の「五月雨」。

 夜には、近々赴くいわきとその通過点の郡山付近の食事処を少しだけ調べ、「もっと秘境駅へ行こう!」を50ページ読み、23時頃には静かに眠りへ。

2023.01.03 20230102 月
 7時10分起床。軽い朝食をとっているうちに、もう箱根駅伝の中継が始まる。これが始まることに正月を感じる人は世に多いのではないか。
 朝のうち、今年は読書で片岡義男を攻めてみるのはどうだろうと思い、彼の人となりや作品一覧を調べることから始める。ウェブ上の「青空文庫」には彼の12作品が並んでいるので、まずは無料で読めるこれからいこうと、12個のWORDファイルに落としてスタンバイをする。面白ければ他作品は古書市場から文庫本を買い求めようという算段だ。ほかにも、村上春樹もどうだろうかと思っている。

 2023年の外食始めは、富の中の「大阪王将山形南店」にて。3か月ほども間が空いていないけれども、元日から元気に営業していること、手元に餃子の無料券が2皿分あること、期間限定メニューがおいしそうだったことなどが理由となっての訪問だ。
 その期間限定メニューは、「幸福絶倒でれうまえびめし」で、その派生メニューの「とろとろ玉子のオムえびめし」790円に、通常290円する元祖焼餃子を無料で添えて。香り高いスパイス(カレー粉・豆板醤)を効かせた炒飯に、香ばしく焼き上げた大ぶりの海老ととろとろ玉子をトッピングしたもので、スパイシーなコク旨ソースが食欲をそそる大阪王将流の“えびめし”であるとのこと。
 思い出したが、えびめしは岡山のB級グルメで、山陽方面の車旅をした際に岡山県瀬戸内市牛窓の「キッチンかいぞく」で食べたことがあった。ごろりとした揚げ海老が5個。そしてこのクオリティの餃子がタダ! おいしくいただいた。

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(「大阪王将山形南店」のオムえびめし)

 午後になって、つれあいは1泊の予定で実家へと出かけて行き、ここからは自分一人の気楽な正月となる。本を手に取ったりするが、今日は寝正月でもいいかなと、大休憩と称して昼寝を貪る。極めて静かだし、部屋は暖かいし、心地よし。
 起き出してからは、さっそく片岡義男の「彼のオートバイ、彼女の島」を文庫本換算で40ページ読む。電子媒体の読み物は、年間読破冊数にはカウントしないことにしている。

 夜はアルコールの量をいつもの1.7倍、つまり缶チューハイを500+350mlの大小2本にして、12月30日にBS朝日で放送された「ワールドプロレスリングリターンズ」の年末3時間スペシャル「“燃える闘魂”アントニオ猪木~私たちに遺してくれたもの~」を一気に観る。
 次々に登場する猪木の対戦相手がすごい。ストロング小林、タイガー・ジェット・シン、ブルート・バーナード、キラー・カール・クラップ、ビル・ロビンソン、アンドレ・ザ・ジャイアント、ザ・モンスターマン、ボブ・バックランド、スタン・ハンセン、アブドーラ・ザ・ブッチャー、前田明、ハルク・ホーガン、長州力、ブルーザー・ブロディ、藤波辰巳、天竜源一郎、ビッグバン・ベイダー……。全身全霊でこのような極悪で大きな相手に立ち向かっていく猪木が神々しく、見ていて泣きたくなるぐらいに感動する。これだけの名場面を集めて放送してくれたテレ朝にも大きな拍手を送りたい。
 飲んで、観て、満足したあとは、インスタントのトッポギとカップ焼きそばで腹ごしらえをする。こんなもので十分だ。

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(アントニオ猪木)

 寝る前には、「もっと秘境駅へ行こう!」を60ページ読む。
 身近な秘境駅として、奥羽本線の大滝駅(山形県)が載っていた。山形・秋田県境に近い及位駅の一つ手前らしいのだが、ずっと山形県に住んでいてその駅を知らないでいた。1912年に信号所として開設されたが、その後林業の衰退で人々が離れ、1975年の集中豪雨で駅周辺の人家が埋まるということがあり、山形・秋田両新幹線の開業でこの地の列車交換機能も不要となって、秘境駅になったという。旧駅舎は1968年築。2010年以降は新駅舎に変わっている。
 仙山線の八ツ森駅も。仮乗降場で、1年を通してまったく列車が停まらない、到達難易度の高い駅なのだそうだ。

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(奥羽本線の大滝駅の旧駅舎)

 24時前頃には眠りへ。

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   新潮文庫  438円+税
   2011年1月1日 第1刷発行

 開業から140年、鉄道はもはや、日本人と切っても切れない存在になった。その発達は都市の形成に影響を与え、文学の一ジャンルを生み、沿線に特有の思想を育てた。また天皇制支配を視覚的に浸透させる目的で活用されたお召列車での行幸啓など、国家や政治とも密接な関わりがあった。──鉄道を媒介にして時代を俯瞰する、知的で刺激的な「鉄学」入門。(カバー背表紙から)
 ――というもので、2009年初出の「鉄道から見える日本」を加筆修正・再編集して改題したものです。

 著者は「はじめに」で、「私は本書の中で、鉄道に対するこれまでとは違った見方を提示したい」とし、「時間的・空間的な広がりをもつ鉄道を媒介にして、時代なり、社会なり、都市なり、郊外なりを論じてみれば、一般の教科書レベルの歴史とは全く異なる、日本の近現代を俯瞰する巨視的な世界が見えてくるはずである」と述べています。

 第1章「鉄道紀行文学の巨人たち」では、鉄道に「乗ること」を第一義にしてすぐれた文学をつくりあげた「巨人」として、内田百閒、阿川弘之、宮脇俊三の3人を取り上げて論評しています。近時読んでいる作家たちのことなので、興味深く読みます。ただ、阿川弘之については未読なので、これも読んでみたいと思ったところです。

 明治、大正、昭和天皇の行幸啓の密度を地図に落とし込んだ比較が興味深い「鉄道に乗る天皇」、阪急の小林一三と東急の五島慶太との鉄道事業の進め方に見られる差異を明らかにした「西の阪急、東の東急」、1950~60年代に東京郊外に相次いで造成された「団地」について論ずる「私鉄沿線に現れた住宅」、60年代後半の地下鉄の建設ラッシュと都電の消滅が以後の人々の「空間認識」に大きな変化をもたらしたと論じる「都電が消えた日」、60年代後半~70年代初頭にかけての「政治の季節」、1968年、69年と相次いで起きた新宿駅の騒乱事件について記した「新宿駅1968・1974」、国労・勤労が行った「順法闘争」にサラリーマンらの怒りが爆発した1973年3月から4月にかけての暴動事件について述べた「乗客たちの反乱」などが内容となっていて、一気に読みました。

 著者とはほぼ同世代ということもあり、当時の出来事や東京の変わりようについて同じような目線とメンタリティを持って読めることがうれしくもあり、面白かったと思う。
 原武史の著作についても、もう何作か読んでみたいと思いました。
(2022.12.13 読)

2023.01.04 20230103 火
 いつもどおり目覚めたものの、ベッドの中でしばらくくすぶって、7時半起床。前夜多めに飲んだことで眠りが浅くなったのと、家に一人なのでつい気が緩んでいるということもある。外は積雪のため白々、寒々とした冬景色になっている。

 午前中は、箱根駅伝の復路を横目で見ながら、「彼のオートバイ、彼女の島」を読む。この日はこれを80ページ。

kawasaki650RS 02 1973
(主人公の橋本巧(コオ)が乗っていた「カワサキ650RS W3」。1973年発売)

 昼の一人外食は久しぶりで、4か月ぶり3訪目となる飯田西の「きのくにや」で肉そば(冷)とミニカレーのセット850円を食べる。
 肉そばは、小さめのどんぶりで供されるため、これ1品では不足。しかし味はよく、テイクフリーの揚げ玉を多めに加えればその香ばしさも手伝って、ついズバズバとあっさり啜り上げてしまった。
 おっと、カレーも食べなきゃ。ミニにしてはごはんが多めのためルーが多いとは感じないが、びろんとした豚バラ肉が数枚入っていて、業務用の本格スパイシーな味わいも悪くない。
 セットでちょうどいい感じ。選べるミニ丼は、やっぱり前回食べた天丼か、かき揚げ丼あたりのコスパが高いかもしれない。

kinokuniya 20230103
(「きのくにや」の肉そば(冷)ミニ丼セット)

 午後は、「もっと秘境駅へ行こう!」を50ページ余り読んで読了。
 巻末には前作の「秘境駅へ行こう!」を読んだ原武史の「列車が停まらぬ駅がもつ「近代日本の記憶」」(「論座」2001年10月号掲載)が引用されている。原はそこで、なぜ秘境駅に惹かれるのかということについて、「ただ、都会の雑踏を逃れて一人だけになりたいからとか、駅の周りに手つかずの自然が残っているからだけではないだろう。著者の動機を私なりに言い換えれば、そこには鉄道の黄金時代であった近代日本の「記憶」が、ひっそりと刻まれているからではないのか。……駅に残された一つ一つの「遺跡」に注意深く眼を向けることで、かつてその線が栄華を誇っていたころの風景に、著者の想像力は確実に届いている。……本書は単なるきわもの趣味の本ではない。ローカル線の廃止がますます進み、全国が新幹線や道路だらけになったときにこそ、本書の真の価値が明らかになるに違いない」と記している。

 夜は、映画「網走番外地 南国の対決」を途中まで観る。1966年制作のシリーズ第6作目で、あらすじはワンパターンだが、背景にアメリカ治世下の沖縄の様子が窺えて興味深い。世良利和著「沖縄映画大全」(ボーダーインク 2008)によれば、沖縄で本格的なヤクザ映画が撮られたのはこれが最初で、照屋林助、森田豊一、神谷義武といった地元役者が無名のチンピラ役で登場する程度だという。

abashiribangaichi nangokunotaiketsu 1966 (映画「網走番外地 南国の対決」)

 本は、「短篇ベストコレクション 現代の小説2008」を80ページ。
 麻布十番の「味六屋」には、鰹が入ったと報せると欠かさずタタキではなく刺身を食べにくる常連がいる。彼は和歌山の鰹が最高で、食べればその味がわかるという。主人の銀次はそれを食べさせるため、女将の女房とともに出かけるのだが……という、柴田哲孝の「初鰹」。
 15年前に人を殺し指名手配されて逃亡を続けているかつての同僚女性の時効成立の日が迫るなかで、ある事情がヒロインを追い詰めてゆく、新津きよみの「その日まで」。

 24時前頃には就寝。

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   萌文社  1,200円+税
   2019年1月28日 第1刷発行

 古書店から送料込みわずか274円で入手した、きれいな単行本です。12月初めに読み終えた「幻影の嘉例吉」に続く沖縄関係本で、沖縄本としては今年の12冊目となります。

 アマゾンの商品紹介を読むと、著者は1948年、那覇生まれ。18歳までアメリカ施政権下の沖縄で過ごし、その後東京に居住して50余年が経っている女性です。
 ウチナーグチで語れるほど沖縄の暮らしと文化に明るい著者にとっては、望郷の念が募るばかりのよう。多感な青春時代の体験を織り交ぜながら、基地のある暮らしをはじめ、家族や叔父・叔母、友人とのさまざまな出会いや出来事を題材に、厳しくも愛おしい沖縄の姿を綴る渾身のエッセイになっています。
 普天間中・高を卒業後したあとに上京し、国学院大学を卒業し、東京都職員として32年間障がい児教育に携わった人物。また、東京沖縄県人会の機関紙「月間・おきなわの声」に琉愛子のペンネームで「ちゅいゆんたく」というエッセイを書いている人物でもあります。

 巻頭の「刊行によせて」は、東京沖縄県人会名誉顧問の川平朝清(沖縄戦後初のアナウンサーで、ジョン・カビラ、川平慈英の父)が筆を執っていて、それによれぱ、この本は「ちゅいゆんたく」を改稿したものに、「琉球新報」に掲載された文章や書下ろしを加え、単行本としてまとめたものだとのことです。
 1題につき1~2ページ程度のショートエッセイで、ふるさと沖縄や家族を想う気持ちが女性らしいやさしい筆致で綴られています。
 たとえば、「誇り」という項では、沖縄を誇りに思う県民が多くなったことに気づいた著者は次のように記しています。
 「……私は沖縄を誇りに思ったことはなかった。しかし、最近、沖縄って「すごい」と思うことがある。それは、反骨精神と政治意識の高さだ。「基地反対」で一つになれるし、90歳になる母も、80代の叔母たちも「政府にごまかされるな」と発憤する。誇りが実体を伴ったものになるかどうかは、今の沖縄の現状に泣き寝入りをせず声を出し続けていくことではないだろうか。最近、本土の友人たちは、沖縄って「大変ね」の後に「すごいね」と付け加える。私は、東京で三線を弾いて沖縄民謡を歌って披露することがある。今、私は沖縄独自の文化を誇りに思っていたことを自覚する。」
(2022.12.15 読)