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 5月30日夕、福岡ステイから帰ってきました。

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(天神中央公園 旧福岡県公会堂貴賓館 2022.5.22)

 今回の滞在旅は、2022年5月21日(土)から30日(月)までの9泊10日。往復新幹線で片道8時間の移動となり、博多駅筑紫口(東口)にある居心地のよいホテルを早割で確保して9連泊しました。
 実際の行程は、概ね次のとおりとなりました。

5/21 移動 博多駅
5/22 築港エリア、中洲、川端、博多、住吉
5/23 博多、博多旧市街エリア、吉塚方面、大濠公園駅エリア
5/24 大分県日田市
5/25 百道浜、地行浜、長浜、天神
5/26 二日市温泉(筑紫野市)、三国ヶ丘(小郡市)、天神
5/27 秋月・甘木(朝倉市)、太刀洗(筑前町)
5/28 久留米市街、旧草野宿(久留米市)
5/29 姪浜、能古島渡島、生の松原
5/30 移動

 梅雨入りが近くなっている季節だったので、往きと帰りの2日を除く中8日のうち1~2日程度は雨で使えなくなることも考えてのスケジューリングでしたが、幸い天候に恵まれて降雨のための日程変更は半日だけにとどまったため、予定していたポイントの大部分に足を運ぶことができました。
 また、事前に調べていったグルメポイントの多くにも立ち寄れて、いろいろと楽しんできました。

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(能古島 のこのしまアイランドパークにて 2022.5.29)

 ステイしているときの詳細については、別途旅日記として書いていきますので、そちらのほうをお読みください。

 2022年5月21日(土)。
 いつもよりも早い5時40分に起床。今日は福岡ステイに向けて旅立つ日だ。博多駅の、メインとなる西口よりも価格の安い東口のホテルを9泊分確保している。滞在を9泊10日にとどめられればそれでいいが、見たいものが多かったり、天候に恵まれなかったりした場合は、数日程度ならさらに伸ばしてもいいと思っている。

 博多までの往復は、航空機利用よりも料金的に安い鉄道利用としてみた。「のぞみ」を使っても片道たっぷり8時間ほどかかるが、幸いにして時間的には余裕がある。仕事を持っていた頃は「時は金なり」だったが、今は「安ければよし」になっている。また、山形から博多まで通しで新幹線に乗るなどということはついぞなかったことで、時間のある者にとっての楽しみのひとつなのではないか。
 ということで、モバイルパソコンの最終チェックをして、8時前には準備を完了させる。

 駅まで送るというつれあいの申し出を敬遠して、10時前のバスで山形駅まで出る。旅は家から始まるのであって、別段の支障がなければ家から一人でスタートしたい、というわけなのだ。そんなことにこだわりを持っている人間なんて、自分ぐらいのものなのだろうけれど。

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(今回はバスに乗るところから撮ってみた)

 山形駅では、博多までの切符を、窓口ではなく券売機で買ってみる。
 10時57分発の新幹線「つばさ」は定刻に発車。つばさは最近、全車指定席になった。乗った車両は、この日は週末土曜日だというのに、10数人程度の利用客にとどまっている。
 駅ビル内のパティスリーでサンドイッチを買ったが、パンの部分がいったん乾燥し、その後湿気を吸ったためかぐにゃぐにゃな弾力までもっていて、最悪に不味い。ここまで出来のよくないサンドイッチを食べることはついぞなかったことだ。こういうものを売ってはいけない。その店のみならず、山形の食品業界のレベルを問われることになる。
 山形地方は今が田植えの時期で、田という田に一面水が張られ、ところどころで田植えをしている様子が車窓から見ることができる。ざっと半分以上はすでに苗が植えられている。

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(こういうものを売ってはいけない)

 栃木県に入ってから埼玉あたりまでは、雨。東京はどんよりした曇り空。
 東京駅では乗り継ぎ時間が20分ほどあるので、いったん新幹線エリアから出て駅弁販売エリアを物色する。東京駅では今や全国の有名駅弁が買えるようになっていて、その中から「横浜崎陽軒」のシウマイ弁当1,120円をチョイスしてみた。
 博多行き「のぞみ」も14時09分定刻に発車。すぐに缶ビールを開け、シウマイ弁当を楽しむ。動いて身体が熱くなっているときにビールを飲むと、大汗が出るのは自分だけ? ごはんが炒飯で、おかずエリアは焼売4、チキンカツ、鶏唐揚げ、青椒肉絲、サイコロ状の筍煮、ザーサイに紅生姜と充実している。これは予想以上にうまかった。崎陽軒だから横浜かと思っていたら、東京の江東区大島でつくっているのだった。

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(「横浜崎陽軒」のシウマイ弁当)

 新横浜を過ぎて以降は、パソコンを出して車内でのログ付けを始め、それもすぐに終わったのであとは読書へと移行する。
 名古屋を過ぎたあたりで、一昨日から読み始めていた「定食ニッポン」(今柊二著、竹書房、2007)を180ページ余り読んで、あっさり読了。
 次は、「ぼくの旅のあと先」(椎名誠著、角川文庫、2020)を読み始める。主に山陽地方を走っている間に60ページ読む。

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(乗車券とのぞみの特急券)

 広島県に入ったあたりから快晴となり、九州の天候もゴキゲンだった。明日も晴れるとの予報なのはうれしい。ちょうど陽が沈む頃合いだった19時06分に、博多駅着。
 少しだけ馴染みがある駅の西口に当たる「博多口」を少し眺めて、ほぼ3年ぶりに九州入りしたことに思いを馳せる。それからホテルのある駅東の「筑紫口」方面へ出て、駅から5分強を歩いて難なくホテルを発見することができた。

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(19時過ぎの博多駅博多口(西口))

 この日から連泊する予定なのは、「ホテルハルロット福岡博多」だ。部屋に入っての第一印象は、「いいんじゃないかこのホテル」だった。2019年に新築開業したとあって古ぼけたところがないし、とりわけデスクまわりと部屋の照明システムがともに機能的で、エアコンが部屋ごとに付く方式なので空調的にも問題はない。割り当てられた部屋は5階の最奥に位置していて静かだ。Wi-fi、冷蔵庫にも不満はなく、チェックイン時にミネラルウォーターが無料でサーブされるのもいい。それでいて9泊で3万5千円ほどなら、この立地では激安と言っていいのではないか。

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(9連泊する予定のホテルの部屋)

 20時近くになって、ようやく食事のために外に出る。ホテルまで歩いてくる道すがら、「ルーロー飯」と大きく看板に書かれた店を見つけていたので、そこにしようと決めて入店する。ルーロー飯はハムカツと生ビールをやっつけてからと思いそちらから注文すると、ハムカツは切れているのですとのこと。それではと別の物に変更すればそれもなく、挙句はお目当てのルーロー飯もないというではないか。ナンダこの店は。3連発で注文をはずされればもうダメでしょ。なので、内心ムッとしながらも、じゃあまた今度ねと飲み食いせず苦笑いで店を去る。今度なんてあるはずもないのだけれど。

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(筑紫口の一角にあった居酒屋ビル。ダメな店とは別のところ)

 じゃあ、駅の博多口すぐそばの「博多バスターミナル」のビルに行けば何か面白いものがあるだろうと考えて、そちらへ行ってみる。すると8階に、博多っ子のソウルフード「スタミナ鉄板焼」の店があったではないか!
 スタミナ鉄板焼は、「秘密のケンミンショー」で紹介されて以来、行列のできる人気店となったびっくり亭」があぶない旨さだと有名だ。メニューはシンプルで、飲み物、ご飯、鉄板の焼肉のみ。ざく切りキャベツがもりもりで、豚ハラミ肉がゴロゴロというもの。
 バスターミナルにあった店は「竹ちゃん亭」という店で、「辛みそ鉄板」という名称で売っているが、つくりは同じだ。辛みそ鉄板1枚800円に、小めし80円と生ビール中590円を注文。木の棒を鉄板の片方に敷いて傾斜をつけ、下に滲み出した脂に付随の辛味噌をブレンドさせて、それを焼肉とを絡ませて食べる。
 強い塩味と強烈なニンニクパンチが相俟ってとても刺激的。このプレート1枚で、ビールとけっして「小」ではないめしと、どちらもぐいぐいといけてしまった。いやぁよかったなあ、鉄板焼。
 食後に同じフロアにある他店視察をしてみたが、いい店がいくつかあって楽しそうだ。「まんぷく食堂ぎおん亭」という店のロースかつ定食のサンプルはカツが特大で800円だって。これではもう、博多バスターミナルには今後何回か行かなければならない。

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(「竹ちゃん亭」の「辛みそ鉄板」と小めし)

 部屋に戻って21時半過ぎ。その後ログ付けをしてシャワー。それらが済んだら、締めの部屋飲みを始める。
 さらに、酔いが醒め始めてから、パソコン上にあるグーグルマップで自作した今回の福岡ステイのマイマップを、自分のスマホからも見られるように共有設定する。要領を得ず、これにも多くの時間を取られてしまう。だがこうしたことで、紙の地図をいちいち見なくても、ポイントをはずすことなく歩き回れるようになるだろう。
 明日の行動をどうするかを考えなければならないのだが、それは明日になってからでいいやとやらず、ぼやぼやしているうちに日付が変わり、ベッドに入ったのは25時頃になってしまった。

 2022年5月22日(日)。
 昨夜の就寝が遅くなってしまったが、いつもなみの6時20分に起床。漫然と家にいるのと違って、まだ寝足りないなと思う程度のほどよい疲れが残っている。脚や足裏にも疲労感がある。まあ、こういう疲れこそが、自分は今旅をしているのだなと思わせてくれるひとつの明確な証拠にもなっているわけであって、むしろ爽快なぐらいの気分だ。

 この日は天気の心配はいらない模様。今日はまず、どこかでコーヒーと軽食をとって、博多・川端・住吉方面を散策することにしようか。キャナルシティなどの繁華なところはある程度人が出てきてからのほうがよいだろうから、公園的なところからいくべきかもしれない。
 マイマップを見ながらルートを検討し、まずはバスで川端より北の福岡築港まで行ってしまい、そこからあれこれ見ながら博多駅方面へと歩いて戻ってくることにする。

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(連泊中の「ホテルハルロット福岡博多」)

 ホテルの1階でコーヒーが無料提供されていたのでそれを飲み、軽食は省略することにして、8時発。
 博多バスターミナルで築港方面行きを探すが、その路線がいくら探しても見当たらない。日曜のためかインフォメーションの窓口も開いていない。もしかしたらここ発着ではないのかもしれないと思い当たり、駅前の野外を探すと、やはりこちらにもいくつか乗り場があるではないか。アルファベットの「F」という乗り場からの便があるらしく、それは福岡シティ銀行の前にあるというのだが、その建物は跡形もなく取り壊されていて、これまたよそ者にはわからない。結局バスに乗れたのは9時過ぎで、ここまでですでに歩き疲れてしまうのだった。

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(博多駅では、今後乗りまくることになるJRローカル線を確認しておく)

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(「JR博多シティ」の入口(博多口))

 88番のバスで、終点の「博多港(博多港旅客船ターミナル)」へと向かう。
 乗車時間15分ほどで、博多ふ頭着。ここは海の中道、博多平野、糸島半島に囲まれた博多湾の湾奥に位置する、福岡市管理の港で、古くは那の津・那大津・博多津と呼ばれていたという。近年、国際海上コンテナターミナルが整備されて、外国人旅客数とクルーズ船寄港数は日本一。また、神戸港より西の西日本では、貿易額、コンテナ取扱量ともに首位なのだそうだ。

 ここにある「博多ふ頭第2ターミナル」には、2012年の夏、壱岐島から戻る船で一度立ち寄ったことがあるのだが、もうそのときの記憶は薄れている。
 ふ頭にはちょうど、博多と壱岐・対馬を結ぶフェリー「きずな」が着岸し、乗客が下船してきたところだった。この船は2012年4月就航なので、当方の壱岐・対馬渡島時にはすでに使われていたものだが、あのときは壱岐からジェットフォイル「ヴィーナス2」で博多に戻ってきたため未乗船であることを、あとで確認した。

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(博多ふ頭第2ターミナル)

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(ふ頭では、壱岐・対馬から戻ったフェリー「きずな」が着岸、下船中だった)

 その並びには、博多港のシンボルとして親しまれている「博多ポートタワー」がある。地上70mの展望室からは360度の大パノラマを望むことができ、夜景スポットとしても博多っ子たちに知られているのだとか。無料らしいが、10時からなのでまだ開いていないだろう。

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(博多ポートタワー)

 また、そのすぐ近くには、志賀島・玄海島・壱岐対馬へのジェットフォイルが発着する「福岡市営渡船博多旅客待合所」の建物もある。乗り場はキャナル風に整備されていて、ショップ、レストランなどが入っている「ベイサイドプレイス博多」もある。
 こちらのふ頭の先の北側の対岸には、大イベントや展示会、スポーツイベント、コンサートなどが催される大型施設「マリンメッセ福岡」の建物が見えた。

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(福岡市営渡船博多旅客待合所)

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(「ベイサイドプレイス博多」の前庭はキャナル風)

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(対岸には「マリンメッセ福岡」が遠望できた)

 そこからは、福岡市立博多中学校の校庭で体育祭をやっているのを眺めたりしながら、南方面へとたっぷり歩く。
 次のポイントは、那珂川に架かる西中島橋の近くにある「旧日本生命保険株式会社九州支店(福岡市赤煉瓦文化館)」だ。
 東京駅なども手掛けた名建築家の辰野金吾らの設計により1909年、保険会社の社屋として竣工。小規模ではあるものの、尖塔やドーム、螺旋階段を有するなど変化に富んでいる建物だ。赤煉瓦と白の石材の組み合わせは、19世紀末に英国で流行したスタイルなのだという。
 戦後も日本生命のオフィスとして使われ、1969年に市に譲渡。1990年まで市歴史資料館として活用され、94年に建築当時の内装を復元し、「福岡市赤煉瓦文化館」としてリニューアルオープンした。ここは無料で内部を見ることができた。

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(旧日本生命保険株式会社九州支店(福岡市赤煉瓦文化館))

 その南東の、中州の天神中央公園内にある「旧福岡県公会堂貴賓館」。
 フレンチ・ルネッサンス様式を基調とする木造のクラシカルな洋館で、明治時代には来賓接待所として使われていたという。2012年に美装化工事が行われた。こちらは内部見学は大人200円。じゃあいいや、外側だけで。

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(「旧福岡県公会堂貴賓館」の1)

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(「旧福岡県公会堂貴賓館」の2)

 そこから地下鉄中洲川端駅方面へと進んで、駅至近にある大きな建物「博多リバレインセンタービル」に入ってみる。ホテル、美術館、商業施設、飲食街、アトリウム・ガーデン等が入っている複合施設だ。
 高島屋が絡んでいる商業施設「博多リバレインモール」は、地下2階~6階部分を占め、同ビルを含めて3棟のビルからなる大型複合商業施設「博多リバレイン」の中核的テナントを担っているが、ここもまだ各テナントが開く時間にはなっていない。
 7・8階にある「福岡アジア美術館」は開いていて、入館料200円と安いので入ってみようとエスカレーターに乗ったが、ここは雨が降ったときに地下鉄でまた来ればいいのではないかと思いなおす。アジアの近現代美術を展示しているとのことだ。5・6階には「福岡アンパンマンこどもミュージアムinモール」があるそうだが、こちらは当方には無縁。

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(博多リバレインセンタービル)

 その道路を挟んで隣りに並ぶ「博多座」は、演劇、歌舞伎、ミュージカルなどが毎月替わりで公演される九州有数の演劇専用劇場だ。エントランスのみ入場可能と聞いたので寄ったのだが、朝の準備が整っていないためか不発。チケットセンターを覗いたところ、5月公演は「千と千尋の神隠し」なのだが、関係者の一部に新型コロナの陽性反応が出たため、この日の公演は急遽中止にするとのことだった。知らずにやってきて残念がって帰る客を数人目撃する。

 中洲川端駅から南東方向に向かって「川端通商店街」が伸びているので、歩いてみる。全蓋アーケード式の長い商店街で、全長400m超はあるとのこと。博多で最初に栄えた場所で、今も130以上の店舗が営業している。天神と呉服町の中間に位置し、博多川を挟んだ西側は歓楽街として有名な「中洲」に隣接している。北に「博多リバレイン」や「博多座」、南側にやや離れて「キャナルシティ博多」と、近隣に大型複合商業施設もあるため、商店街の人通りはけっこうある。

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(地下鉄中洲川端駅前交差点)

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(「川端通商店街」の西側入口)

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(「川端通商店街」の南には博多川が流れていた)

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(ド派手な博多ラーメンの店があった)

 朝は食べていないし、昼食はどこにしようかと考えていたところ、中洲らしく博多・長浜ラーメンの店が林立している商店街の中ほどに偶然、博多系うどんのチェーン店のひとつ「ウエスト」を発見する。11時を回ってちょうど店を開けたところのようだ。ああそうだ、ここだ。ここにしよう。「秘密のケンミンSHOW」で見たことがあり、ここは明太釜玉うどんがウリなんだよ。博多ラーメンよりも気分は博多うどんに傾いているんだよナ。
 ということで、「ウエスト川端店」の明太釜玉うどん650円。待つことわずかで登場。釜玉なので熱々。博多系の軽いコシのうどんはそこそこ美味。それに明太子のしょっぱさ、生臭さ、辛さが適度に混淆してうまいのなんの。いいものを食べることができた。

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(「ウエスト川端店」の明太釜玉うどん)

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(「櫛田神社」脇の味のある小路地)

 川端通商店街が尽きる東南側には「櫛田神社」があった。
 博多の総鎮守として、「お櫛田さん」の愛称で広く市民から親しまれている神社だ。なお、「博多祇園山笠」は、この神社の奉納神事で、毎年7月1日から15日に開催される700年以上の伝統のある祭。各地に伝わる素戔嗚尊(スサノオノミコト)に対して奉納される祇園祭の一つで、博多どんたくとともに博多を代表する祭りだ。
 「櫛田神社の夫婦銀杏」は地上15mほどのところで空しくすべての枝が伐られて無残。その近くには格納庫に収まった「博多祇園山笠」の山鉾1体。「御神木櫛田の銀杏」のほうは健在だった。

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(「博多祇園山笠」は「櫛田神社」の奉納神事なのだ)

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(「櫛田神社」の拝殿)

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(御神木櫛田の銀杏)

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(「櫛田神社」表参道は東側についていた)

 櫛田神社に寄ったついでに、その東側の表参道沿いにある「博多町家ふるさと館(旧三浦家住宅)」にも行ってみた。
 博多の歴史や文化を学び体感できる観光施設だというのだが、外観はリニューアルが過ぎて古色というものがない。しかし、「町家棟」の内部に入ってみると、いかにも町家のつくりが感じられる落ち着いた空間になっていた。明治中期に建てられた町家を移築復元したものなのだそうだ。

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(博多町家ふるさと館(旧三浦家住宅))

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(「町家棟」の内部は奥に長かった)

 博多うどんの有名店「かろのうろん」を発見し、その行列を見ながらスルーして、次は複合商業施設の「キャナルシティ博多」へ。

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(博多うどんの有名店「かろのうろん」)

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(「川端通商店街」を東側入口から振り返る)

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(そこから通路を渡って、キャナルシティ博多へ)

 名前の通り運河が流れ、中央ステージでは音楽ライブが行われ、なかなかいい雰囲気をつくり出せていると思う。3、4階あたりから運河を見下ろして写真を撮れば、かつてどこかで見たような構図のものばかりが撮れる。施設内には大型専門店、映画館、ホテル、福岡シティ劇場などが揃っていて、ここに来さえすればほかを買い回りしなくても済みそうだ。
 約5千種の無印ブランドが揃うという「MUJIキャナルシティ博多」や、センター・ウォークの5階で8店舗ほどが覇を競う「ラーメン・スタジアム」などを見て歩く。

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(「キャナルシティ博多」1)

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(「キャナルシティ博多」2)

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(「ラーメン・スタジアム」もあった)

 次は、住吉方面へと歩を進めて、「楽水園」に寄り、入園料大人100円なので、入ってみる。
 博多のオフィス街にある商人の元別荘で、一時期旅館として使用されたものが今は市所有の日本庭園になっている。池泉回遊式の静かな庭園で、ビルの谷間の不思議な異空間といった印象。歩き続けたので、庭園を眺めながら木陰のベンチで一休み。時折そよいでくる風がサイコーに気持ちいい。なんだか100円では申し訳ない気もするのだった。
 敷地の周りを囲む博多塀と呼ばれる、石や焼け瓦などが埋め込まれた土塀の塀が、最も印象的だった。

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(「楽水園」入口の門)

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(園内は、ビルの谷間の不思議な異空間)

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(敷地を囲む博多塀が印象的だった)

 「住吉神社」。比恵川と那珂川の河口にあり、航海守護神の住吉三神を祀っている。鮮烈なオレンジ色の立派な本殿が印象的だ。
 全国には住吉神社が2千社以上分布し、一般には大阪の住吉大社が本社とされているのだが、同社の「住吉大社神代記」によれば、住吉三神は筑紫大神と記されていて、福岡の神社が全住吉神社の始祖であるともいわれている。
 境内に建立されている「古代力士像」が迫力満点。住吉神社と相撲は古くから強い結びつきがあるのだそうで、等身大を超える大きさで参拝者を威圧している。大きく広げた両手の掌には漢字の「力」の字の手相が刻まれているとのこと。

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(住吉神社)

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(境内でオーラを放っていた「古代力士像」)

 少し遠くなるけれども、最後にもう1か所、「柳橋連合市場」へ。
 那珂川に架かる柳橋のたもとに、昔ながらのスレート葺きのアーケードが付いた狭い通路があり、70軒の店が120mほどにわたって並び、それらは大半が玄界灘の活きのよい魚介を扱う鮮魚店なのだという。
 市場なので日が高くなってからではにぎやかさはないのだろうなと思いながら行ってみると、人の姿のない穴倉のようになっていて、すべての店が閉まっている。そこで気づいたが、この日は日曜日で休みの日なのだった。ああもう。ここを見るだけのためにかなり遠回りして歩いたのだが、しくじったぁ!デアル。
 あぁ疲れた。日暮れまでまだ時間はたっぷりあるけれども、今日はこの程度でいいんじゃないか。痛くなり始めた脚をさすりつつそう決めて、ホテルへと戻り始めたのだった。

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(日曜日の「柳橋連合市場」)

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(人がいた!)

 途中コンビニで酒類とスナックを買い求めて、13時半、早々とホテル帰着。連泊だとチェックイン時間を気にしなくていいのが救いだ。ここまでですでに1万7千歩を歩いている。
 戻った部屋では直ちに飲酒を開始する。乾ききった喉に缶ビールとチューハイを流し込み、ポテトチップブスを合わせる。すぐにログ付けをすべきだろうが、けっこう酔ったし、疲れたので休憩!(笑) ここからは昼寝を決め込む。

 大相撲の千秋楽で照ノ富士が優勝したのを見て、本日の2食目を食べに外出する。歩いて5分もかからないところにある「松屋」と、同系列の「マイカリー食堂」のどちらかでいいかな。
 松屋で5月17日から復活発売しているという洋風ガーリックポークステーキ丼630円にもそそられるが、松屋は地元でも食べられるから「マイカリー食堂博多駅南店」のほうにして(店舗や厨房は共用なのだけど)、ハンバーグオムレツカレーの並盛750円を2辛にしてもらって。
 大きい平皿でどどんと登場。見た目もきれいでそつがないし、ボリュームにも牛めし(並)単品のような貧相なところがなく、これはいいと思う。欧風のカレーもピリッとスパイシーでおいしい。
 ステイするホテルは飲食店が多い街場にあるので、食べるものには困らない。歩き疲れた帰途に買い物をして帰るより、夜になってからふらりと食べに出るというスタイルも、ここなら楽でいいのかもしれない。でもそれは、午後の時間帯を部屋で過ごす場合のことであって、今後そういう日をつくれるかどうかはわからない。

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(「松屋」と「マイカリー食堂」が一つの店舗で営業する博多駅南店)

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(「マイカリー食堂博多駅南店」のハンバーグオムレツカレー)

 夜は、22時過ぎまでかけて今日のドキュメントをする。ああ、キーボードを叩き続けるのもなんだか疲れた。ささ、ここから軽く飲んで、明日に備えて寝よう。
 明日の予定は明日になってから。明日も晴れで暑くなるとの予報だ。
 23時就寝。

 旅の3日目の2022年5月23日(月)。
 6時前には覚醒。昨日は午後に昼寝を入れているので睡眠は足りているが、脚の筋肉については回復レベルには至っていない。日頃いかに脚を使っていないかが身に染みてわかるのだが、まあ、旅に出たときはたいていそうなるものであって、いずれ回復することはわかっているから、なんてことはないのだ。

 昨夜洗面台で洗い、一夜で完全に乾いた下着類を取り込み、昨日のうちに買っておいたピザパンとマスカットジュースの軽食をとって、今日はどうするかを考える。
 まずは、博多旧市街の寺社エリアを見てから、九州展開のチェーン店でうどんを啜り、そのまま北方面へと進んでJR吉塚駅近辺を散策し、九大病院の前から地下鉄に乗って天神地区に行ってみるという流れだろうか。またたくさん歩くことになるな。残された時間はまだたっぷりあるから、疲れたら途中で帰ろうな。

 8時45分に、1階にあるセルフサーバーでコーヒーを飲んでから出かける。
 月曜になった外の通りは前日までとはがらりと変わって、なぜこの通りをこんなにたくさんの通勤者が歩いているのと驚くほどだ。そうなんだよ、平日になると、これだけ多くの人々が仕事という足枷をはめられて、職場という名の留置場の中に閉じ込められてしまうわけだ。気の毒なシステムではあるが、そうなればやはり、ボクたち無職組は休日よりもゼッタイに平日を選んで動くべきだよね。

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(静かだった通りは月曜になって人が激増している)

 博多駅前に出て、「博多駅前道路陥没事故」の現場に立ってみる。
 2016年11月8日、博多の中心部でシンクホールの大陥没の事故が発生したことは、ショッキングでまだ記憶に新しいところだ。博多区の「博多駅前2丁目」交差点(カフェ・ベローチェ博多駅前店)付近。大規模な地盤崩落事故だったにも関わらず、犠牲者が1人もなく、復旧工事が発生後わずか1週間で完了したことなどが注目を浴びたのだった。
 今はもちろん、道路はフラットで、多くの車と歩行者が何事もなかったかのように普通に活動している。都市施設はいったん壊れれば住民には多くのダメージを与えるものだが、その復元力も瞠目するに値する。

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(「博多駅前道路陥没事故」現場 2022.5.23)

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(発生当時の現場 2016.11.8)

 その北方向に位置する「博多旧市街エリア(承天寺通り)」へ。
 神社仏閣が建ち並ぶエリアで、博多の歴史を知る上で重要な場所のようだ。
 その入り口には「博多千年門」があった。2014年というからまだできたばかりの立派な造りの門だ。寺社町エリアのウェルカム・ゲートとして、博多の街の千年の繁栄を願って造られたものだという。
 承天寺通り自体はかなり力を入れて整備された通りのよう。ここは、博多祇園山笠の追い山フィナーレのコースになっている。

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(博多千年門)

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(しっかりと整備された「承天寺通り」)

 寺社のひとつの「承天寺」の門をくぐってみると、入った左手に3つの碑が並んでいる。左端は「饂飩・蕎麦発祥之地」の碑。なんと、うどんの発祥は福岡県なのだった。
 承天寺は臨済宗の寺。聖一(しょういち)国師の開山で、1242年に博多の豪商らによって建てられたもの。聖一国師は、水車を利用した製粉技術を記した設計図を宋から持ち帰り、この挽臼技術による粉をベースにした食品、羹(今の羊羹)・饅(まんじゅう)・麺(うどん・そば)の製法を日本人に教えたと伝えられているのだそうだ。
 あとの2つは「御饅頭所(おんまんじゅうどころ)」の碑と「満田弥三右衛門(みつたやそうえもん)の碑」。ちなみに満田弥三右衛門は、博多織の伝承上の創始者とのこと。
 「天與庵」の入口の山門?も立派だったので、撮影しておく。

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(「饂飩・蕎麦発祥之地」の碑(左)ほか2碑)

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(「天與庵」の門も立派だった)

 そこからさらに北のJR吉塚駅方面へと進んでいく。
 途中にお目当ての「資さんうどん博多千代店」があることを事前リサーチしていて、ここで食べていく。
 うどんチェーンの「資さんうどん」は、福岡でも特に北九州を中心に展開していて、ここの肉&ゴボ天こそが福岡のうどんのスタンダードなのだという。これと決めていた冷やし肉ごぼう天ぶっかけ800円。これはゴージャス。ただでさえ具が多いのに、これに卓上のとろろ昆布と揚げ玉を多めに加えてえいやっとタレをぶっかける楽しさよ。
 並盛りなのにボリュームがすごい。揚げたてのごぼう天が5本もあって、牛すじ肉の大和煮風の味もよく、とろろ昆布の風味も東漢にとっては新鮮な印象だ。福岡ではうどん1杯をナメたらアカン。軽く1杯腹に入れて次に何かをもう一つ……という目論見は大きく崩れる。九州のうどんは麺そのものよりも、それと合わせて具材をたっぷり味わうことに主眼があるような気がする。

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(資さんうどん博多千代店)

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(冷やし肉ごぼう天ぶっかけ、800円)