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 今日これから、リタイアしてから7回目の車旅に出かけます。
 方面は、山陽道。山陽道にたどり着くまで、飛騨地方や近畿地方の一部などにも寄ります。

 今回はわりと緻密にルーティングしました。これまでの旅よりも都市部が多いので、駐車場の確保等都市的な課題にも神経質なぐらいに対応したところです。
 当然ながらこのとおりにはならないはずだし、車旅なので宿泊地は決めていないため、予期しなかったポイントが出てきたら旅の終わりを後ろにずらすだけとなります。概ね3週間ぐらいはかかるのかな。

 その計画は次のとおりです。
 旅の途中でインプレッション等をまとめながら進み、帰宅後に旅日記としてこのブログで公開しようと考えています。
 では、行ってきます。

(ルートの概要)
富山県 南砺市   瑞泉寺門前町の町並み、相倉合掌造り集落、菅沼合掌造り集落

岐阜県 白川村   白川郷合掌造り集落
    飛騨市   瀬戸川と白壁土蔵街、壱之町
    高山市   高山市三町伝統的建造物群保存地区
    下呂市   下呂温泉
    郡上市   郡上八幡市街地
    関市    名もなき池(通称:モネの池)
    美濃市   うだつの上がる町並み          山県市、本巣市通過
    揖斐川町  岐阜のマチュピチュ 天空の茶畑
    養老町   養老の滝

滋賀県 長浜市   長浜鉄道スクエア、ヤンマーミュージアムなど   彦根市通過
    近江八幡市 安土城跡、八幡堀、近江八幡の町並み   野洲(やす)市通過
    守山市   中山道守山宿
    草津市   草津宿本陣
    大津市   大津市街、坂本

京都府 大原・鞍馬・貴船エリア 三千院
    嵯峨野・嵐山・高雄エリア 渡月橋、竹林の道    向日(むこう)市通過
    長岡京市  長岡天満宮
    八幡市   石清水八幡宮           大阪府、兵庫県川西市通過

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(神戸市 北野異人館街)

兵庫県 宝塚市   宝塚大劇場                   尼崎市通過
    西宮市   カトリック夙川教会ほか
    芦屋市   谷崎潤一郎記念館
    神戸市東灘区 菊正宗酒造記念館
    神戸市中央区 ポートアイランド、三宮・元町・旧居留地、メリケンパーク、
           ハーバーランド、南京町、北野異人館街
    神戸市北区 有馬温泉
    神戸市垂水区 舞子公園
    明石市   明石公園                    三木市通過
    加古川市  かつめし
    高砂市   高砂市内の歴史的建造物、キッコーマン(株)高砂工場
    姫路市   姫路城、手柄山中央公園
    たつの市  揖保乃糸・資料館そうめんの里、うすくち龍野醤油資料館、
          龍野の町並み、室津
    相生市   相生ペーロン海館
    赤穂市   坂越地区の町並み、赤穂

岡山県 備前市   みなとの見える丘公園、日生諸島、特別史跡旧閑谷学校
    瀬戸内市  道の駅一本松展望園、牛窓諸島、牛窓オリーブ園  赤磐市通過
    岡山市   岡山後楽園、岡山城、吉備津彦神社、足守歴史ふれあい通り
    玉野市   宇野港
    倉敷市   鷲羽山、倉敷美観地区、倉敷アイビースクエア
    総社市   備中国分寺
    高梁市   高梁市街の町並み、備中松山城、吹屋ふるさと村
    矢掛町   矢掛宿街並み
              井原市通過。浅口市~里庄町~笠岡市のルートはとらず

広島県 福山市   福山城、新市、鞆の浦、阿伏兎観音堂
    尾道市   千光寺、尾道の町並み、尾道ラーメン、向島・因島・生口島
    三原市   すなみ海浜公園
    竹原市   大久野島、竹原町並み保存地区
    東広島市  西条酒蔵通り
    呉市    下蒲刈島~上蒲刈島~豊島~大崎下島~岡村島、
          御手洗の町並み、てつのくじら館、大和ミュージアム、
          アレイからすこじま公園、音戸の瀬戸
    江田島市  旧海軍兵学校・海上自衛隊第一術科学校      海田町通過
    府中町   マツダミュージアム
    広島市   広島城、平和記念公園、広島平和記念資料館、広島お好み焼き
    廿日市市  宮島、厳島神社、妹背の滝            大竹市通過

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(広島市 広島原爆ドーム)

山口県 岩国市   錦帯橋、R188海岸線
    周防大島町 明治維新百年記念公園、いくつかのビーチ
    柳井市   柳井白壁の町並み
    平生町   阿多田交流館                  上関町通過
    光市    伊藤公記念公園
    下松市   笠戸島                 周南市、防府市通過
    宇部市   ときわ公園
    山陽小野田町 本山岬公園
    下関市   城下町長府、赤間神宮、関門海峡、唐戸市場・カモンワーフ界隈
    美祢市   別府弁天池、秋吉台       長門市、萩市方面には進まず
    山口市   湯田温泉、亀山公園付近、瑠璃光寺

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(周防大島)

島根県 津和野町  津和野の町並み                 吉賀町通過

広島県 安芸太田町 井仁の棚田                  北広島町通過
    安芸高田市 土師ダム
    三次市   三次本通り
    世羅町   広島県立世羅高等学校
    府中市   上下白壁の町並み
    庄原市   庄原焼き

岡山県 新見市   夢すき公園
    真庭市   勝山町並み保存地区、旧遷喬尋常小学校
    津山市   城東の町並み、津山市内の歴史的建造物
    美作市   湯郷温泉、宮本武蔵生誕地、旧因幡街道大原宿

兵庫県 佐用町   兵庫県立大学西はりま天文台
    穴栗市   山崎藩陣屋門                  神河町通過
    福崎町   柳田國男生家
    加西市   酒見寺、住吉神社                小野市通過
    加東市   闘竜灘
    西脇市   日本へそ公園
    丹波市   高山寺
    丹波篠山市 篠山城跡、丹波篠山武家屋敷群

京都府 南丹市   日吉ダム、かやぶきの里北集落 亀岡市通過、福井県小浜市経由

滋賀県 高島市   白鬚神社、今津の歴史的建造物    敦賀市から北陸道を戻る

 2020年9月29日から10月26日までの28日間、主として中国地方の山陽道を巡ってきました。6月の四国旅に次いで2020年の2本目で、2019年3月に仕事を辞してからトータル7本目の車旅となります。
 旅の前後には、富山県、岐阜県の合掌造りの集落や滋賀、京都、兵庫など近畿地方の府県のみどころにも立ち寄っています。

 今回山陽道を攻めることで、退職前の時点までに描いていた日本の各地をドライブして見てまわる計画はひととおり達成することになります。
 四国と山陽道は今年の夏前までに巡り終えて、夏は東京オリンピックを見る計画でしたが、2月以降のコロナ騒動で、四国は初夏に巡れたものの、山陽道への旅は秋に実施することになりました。東京オリンピックの開催は来年に飛んでしまっています。

 これまで兵庫、岡山、広島、山口あたりにはどちらかというと縁遠く、神戸、姫路、倉敷、尾道、広島、岩国などの有名な観光地でさえじっくりと見たことがありません。
 しかし一方で、福山市は実母の出生地であり、呉は海軍軍人になろうとしていた実父が青春時代に暮らした地で、まったく関係のない土地でもないのです。
 このたびはまだ見たことのないスポットや、瀬戸内海の島と海の風景のあるところ、父母のゆかりの地などを丹念に巡ってこようと思っています。

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(2020.10.16 安芸灘諸島上蒲刈島「県民の浜」にて)

 四国への旅から戻ってから今回の旅まではけっこう間が空いたので、事前の情報収集をしっかりやれて、7回の中ではもっとも詳細に検討することができました。特に、近畿から山陽道にかけての多くは都市部を移動することになるため、行く先々で車をどこに停めれば安価で効率的になるかについて、よく考えました。結果としては、各ポイントをスムーズに見てまわることに大きく寄与しました。
 半面、悩みとしては、都市部になると道の駅が少なく、毎日道の駅で車中泊をするのは難しいことがわかってきました。24時間温泉・サウナやネットカフェは新型コロナ対策の面からあまり積極的に利用する気にはなれず、そうなると何回かはホテルを利用することになりそうです。しかしそのホテルも、快適である反面エクスペンシブで、これもあまり前向きにはなれません。
 夜はどこで寝るか。このことが過去6回の車旅以上に重要な問題となりそうです。まあ、行った先でその都度最善の判断をすることでしのぐしかないのですが。
 しかしこの悩みは、皮肉なことに意外な形で解決することになります。

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(2020.10.15 竹原町並み保存地区内にあった「おかかえ地蔵」)

 旅の記録は、できるだけ忘れないうちにまとめようと、野帳にあとで自分でもよく読めなくなるような粗雑なメモをとり、当日の夜もしくは翌日の朝のうちに、持ち込んだモバイルパソコンで書き続けました。この作業は日々、けっこう重たい作業となりました。
 写真も、ミラーレス一眼とコンパクトカメラの2台を用いて、できるだけ多く撮ることを心掛けました。

 人間の頭脳は、記憶を少しずつ失うことによって自らの機能の正常性を維持しているわけなので、旅をしている最中はとても印象深かったことでも、いずれは忘れていくものだと達観しています。しかし、その時に見た風景や、その場で考え、思ったことなどは、こまめに記録をすることによって、あとでそれを読めば多少ながら、その時の雰囲気や考えていたことを思い出すことができます。
 さらに言えば、書くこと自体がオンタイムで見聞きした事象を改めて確認するいわば追体験になるわけだし、書いたことが現実とは別の新しい記憶としてインプットされることにもなります。
 つまり、旅の途中で書くという行為は、自分が旅の中身を忘れてしまうことを前提として、いつ忘れてもいいようにしておくことを目的として行っているものなのです。いつ、何をしたか、何を見てどう思ったかを確認したいときは、書いたものをブログに載せてさえおけば、ブログ内検索をすることによって、キーワードひとつでその時のことを書いた記述を調べ出すことができるのです。

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(2020.10.18 「大島大橋」(周防大島町))

 そのような、主として個人的な備忘のための文章をこれから何十回かにわたって公開していきますので、長くなりますがよろしければお付き合いいただければ幸いです。

 2020年9月29日(火)。
 6時20分起床。いよいよ山陽旅への出発の日を迎えた。この日、日本はどこも秋晴れのいい一日になるようだ。
 しばらく使わないベッドの寝具類をすべて剥がして洗濯にまわし、パソコンでの朝ルーチン処理をし、車のリアシートの汚れを掃除機で吸い取り、荷物を車に入れて、10時に家をスタートする。

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(出発前に家の前で相棒フォレスターを1枚)

 11時過ぎ、街道筋の飯豊町にある「いわはなや食堂」でみそラーメンを食べる。ここに入るのは10年ぶりとなる。脂が少なく素直な味の味噌スープがおいしい。それに入るのは米沢風の細縮れ麺だった。

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(「いわはなや食堂」のみそラーメン)

 そこから約2時間走って、新潟市の中心部を過ぎた郊外に当たる西区で給油をする。そのあたりはハイオクがリッター134円と格安で、地元山形の最安店で入れるよりも実質5円ぐらいは安い。その先の柏崎ではもっと安い店を見つけたので、戻るときにはそこを使おうと思う。

 さらに2時間半以上走って16時半、「道の駅うみてらす名立」でトイレ休憩。ここは何度か利用しているが、閉店時間が近いためか、いつもよりも客と産直店の品数が少ない。すでにステイモードに入っているキャンピングカーなどの車旅派が数台。こちらもそろそろ御同様のモードに入りたいが、もっと進んでおかないと。

 糸魚川を過ぎ、親不知あたりで夕焼けとなり、この日雲の中に日が沈んだのは17時25分だった。
 日の入りを頻繁に眺めることになるのも車旅ならではのことだ。

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(親不知の日没)

 19時過ぎ、富山県上市町にある「つるぎふれあい館アルプスの湯」で入浴とする。610円だが、JAF割が効いて560円。これなら銭湯の料金と大きく変わらず格安感がある。
 浴室が広く、広めの大浴槽の湯は熱めでいい気持ちだ。サウナ、ミストサウナ、歩行浴、泡風呂と一通りそろっている。露天風呂は人口炭酸泉で、浸かっていると全身に泡が付くのがおもしろい。アロマ風呂はラベンダーとカミツレの香り。利用客が少なく、洗い場もゆったりと使える。
 旅に入る前に久住昌之の「ちゃっかり温泉」を読んでいて、風呂上がりにコーヒー牛乳を飲む場面があったので、同じように飲もうかと思ったが、ここの場合は紙パック入りのカフェオレなどしかなかったので飲まず。温泉ならやはり瓶じゃなきゃなあ。
 いずれにしても、始めにいい風呂に当たって、旅の前途は明るい。

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(つるぎふれあい館アルプスの湯)

 今夜のステイは、近くにマックがある「道の駅砺波」に決めて、さらに1時間以上走る。
 途中、「すき家 立山利田店」があったので、ここで軽く食べていこうと入店する。
 店側が売り出しにかかっているオム牛丼の並盛りとサラダセット、690円をチョイス。
 なぜか豚汁が付いている。なにかサービス期間でもがあるのかなとある程度食べ進んだが、レシートを見ると注文していないものが入って910円となっている。どうやら豚汁は間違いだったようで、指摘すると豚汁が下げられて普通の味噌汁が運ばれてきたのだった。
 軽く食べるつもりがけっこうヘヴィになった。

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(「すき家 立山利田店」のオム牛丼並盛り+サラダセット)

 今晩はなんだか飲まなくてもいい気分になっている。だいぶ走ったので身体のどこかは多分疲れているだろうし、今夜は飲まずにすぐに寝ようと決める。家にいれば飲まない日なんてそうそうあるものではないのに。

 コンビニに寄らずにまっすぐ「道の駅砺波」に入ったのは21時40分。ほぼすぐに歯を磨き、リアシートのベッドメイクをし、耳栓をして寝る体勢へ。
 飲んでいない脳は元気だし、旅の興奮もあって少しの間は寝付けなかったが、30分後には寝入っていたと思う。

 9月29日の走行距離は432kmとよく走った。

 2020年9月30日(水)。
 外が明るくなり始めた6時起床。明るくなったら起きるというのが車旅のスタンダードだ。
 昨日のロングドライブによる目の疲れが完全に取れているとは言えないが、車中泊の1日目にしてはぐっすり眠れたほうだと思う。夜の飲酒がなかった分、朝の尿意も少ない。
 この日の朝は冷えたようで、少し肌寒く、起きがけの窓はけっこう曇っている。Tシャツに長いジャージのボトムスという格好で眠ったが、外気よりも温度と湿度が高くなる狭い車内ではこのぐらいでちょうどよかったかもしれない。

 この日は、まだ北陸から岐阜県北部にかけて見ていく段階だ。
 車旅で西日本へと向かうときにはいつも北陸道を使い、今回が4回目となる。富山から石川へと進んでいくわけだが、そうなると富山県南部から岐阜県北部は通る機会がない。去年秋の東海・紀伊旅では岐阜県南部は見てまわったが、その後は中央線に沿って長野県へと抜けたので、その時も飛騨・高山地方は通っていない。なので今回は、岐阜県北部経由でいこうと考えたのだ。
 南砺市の瑞泉寺門前町の町並み、相倉(あいのくら)と菅沼の合掌造り集落、岐阜県白川郷の合掌造り集落、飛騨市古川町の瀬戸川と白壁土蔵街などを見ようと思っている。

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(朝6時20分の「道の駅砺波」)

 「道の駅砺波」を7時に発って、1kmと離れていないところにある開いたばかりの「マクドナルド156砺波店」に入って、久しぶりの朝マック。マックは車旅時以外ではほとんど利用していないので、店内でパソコンを開いてハンバーガーをぱくつくと、また車旅が始まったなという感じが湧く。
 8時過ぎまでにここまでのログ付けを終え、しばらくして退店。いよいよここから見て歩きが始まる。

 まずは、南砺市の「いなみ木彫りの里創遊館(道の駅井波)」に寄る。
 井波地区は「日本一の木彫刻の町」なのだそうで、ここはレストラン・土産・体験施設・職人工房などの複合型施設になっている。駐車場には木彫りのモニュメントがあった。
 「井波彫刻総合会館」には数百年続く「井波彫刻」の粋を集めた傑作品が展示されているそうだが、入館に500円もかかるしそれほど興味のあるジャンルではないので、イギリスの建築家によって設計されたという建物だけを見るにとどめる。

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(「いなみ木彫りの里創遊館」の駐車場にはずらりと木彫刻の像が並んでいた)

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(井波彫刻総合会館)

 その近くにあった「瓜裂清水(うりわりのしょうず)」。
 地方教化に出かけたある上人がこの地で休息の折に、駒の蹄が突然陥没してその跡から清水が湧き出したと伝えられている。里人が上人に献上しようとこの霊水で瓜を冷やしたところ、瓜は自然に裂け、その冷たさとおいしさは格別で上人はことのほか満足し、ここを「瓜裂清水」と命名されたという。環境庁選定の「全国名水百選」になっている。

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(瓜裂清水)

 この地でのメインとなる「瑞泉寺門前町の町並み(八日町通り)」を見に行く。
 はじめに寄った「井波別院瑞泉寺」は、大きくてすごく立派だ。1390年に開かれた寺院で、現在の本堂は1885年に井波の大工や彫刻師などによって再建され、北陸地方の真宗木造建築の寺院としては最大の建物なのだそうだ。とりわけ県重文の山門は、でかい上に、井波大工の力作だという正面の彫刻が精緻だ。

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(「井波別院瑞泉寺」の山門は井波大工の力作だ)

 その瑞泉寺の門前の通りが「八日町通り」になっている。
 格子戸のある町屋とともに彫刻工房、美術館、造酒屋などが軒を連ねていて、落ち着いた感じの街並みだ。
 「井波美術館」は、外観がギリシャ風の古風な建物。元北陸銀行井波支店の建物で、1924年の建築とのこと。井波で創作活動をする作家の発表場所になっているらしい。
 「よいとこ井波」の向かい、「芭蕉塚のこみち」の奥には、「黒髪庵」と味のある細路地があった。こみちの入口の造り酒屋は「若駒酒造」だ。

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(瑞泉寺側から見た「八日町通り」)

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(「八日町通り」の一隅に佇んでいた吉祥天)

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(元は銀行の建物だった「井波美術館」)

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(「黒髪庵」(左)と味のある細路地)

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(板壁がいい雰囲気の「若駒酒造」)

 八日町通りを離れ、スノーシェッドばかりが多かったR156の山道を20kmほど走って10時、「南砺市たいら郷土館」に立ち寄る。
 加賀百万石の礎となった塩硝の製造工程・資料の展示。養蚕の道具等五箇山の歴史を展示している。ここで開かれる「全国和紙ちぎり絵展」が有名らしいが、ここもまたちぎり絵では興味が湧かず、建物だけ撮って次へ。
 郷土館の下方一帯は「道の駅たいら」になっていて、茅葺合掌造りの民家を模した大きな建物が「和紙体験館」として設置されているのが高みからよく見えた。

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(南砺市たいら郷土館)

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(「道の駅たいら」の「和紙体験館」)

 そこから約7kmのところにある「相倉合掌造り集落」へ。
 庄川からやや離れた段丘上の細長い台地に広がる集落で、戸数27戸中20戸が合掌造り家屋になっている。その家屋の多くは江戸末期から明治期にかけて建てられたもので、最古のものは17世紀の建造と推測されるという。
 山道を歩いて全景撮影スポットにたどり着き、まずは全貌を俯瞰してから集落内に向かう。昔ながらの景観が維持されていて、集落内は非日常的な空間に思えるのだが、そんな中にも近く投票が行われるのであろう県知事選のポスター掲示板が立っていて、なんだかここだけ超現実的に見える。そういえば昨夜、富山県議の何人かが現職でないほうの候補を支援するため会派を離脱したとのニュースを見た。
 和紙製造道具や民具などの資料を展示しているらしい「相倉民俗館」は本日休館だった。

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(全景撮影スポットから「相倉合掌造り集落」を眺める)

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(集落内は非日常的な空間のようだ)

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(なんだこの風景は。たまらんなあ)

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(相倉民俗館)

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(富山県知事選挙だってサ。ここで人が暮らしている証でもあるわけね)

 相倉の集落のほぼ真ん中にあった「茶店まつや」で、五箇山豆腐の冷奴480円を食べてみる。
 五箇山豆腐とはとても硬い豆腐であるらしい。型箱に移した豆乳の上に数10kgの石を載せるために水分が抜かれて硬くなり、「藁で十字に縛っても崩れない」と言われるほどなのだ。
 どんなに硬いのと思いながら食べてみると、豆腐は豆腐で、歯応えがなくおいしい。沖縄の島豆腐と同じぐらいの食感だったろうか。

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(「茶店まつや」の、五箇山豆腐の冷奴)

 相倉合掌造り集落から6kmほど進んで、南砺市上梨地区にある「国指定重要文化財村上家」に立ち寄る。
 五箇山地方の民家中最大規模を誇る合掌造り家屋なのだそうで、この地方の有力な生産農家の構えを見ることができる。
 その近くには「加賀藩流刑小屋」。1667年から明治維新までの間に、加賀藩の罪人150余人が五箇山へ流されたという。庄川が渡れず逃亡できなかったらしい。
 同集落内には「羽馬(はば)家」もあった。1769年に火災で集落の大半が焼失したが、4km下流にあった古い建物を買い取って移築したものだという。

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(国指定重要文化財「村上家」)

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(加賀藩流刑小屋)

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(羽馬家)

 次は、「菅沼合掌造り集落」。
 旧上平村のほぼ中央、庄川の流れが方向を変える地点の右岸に広がる小さな集落だ。合掌造り家屋9棟をはじめ、土蔵や板倉などの伝統的な建物等を含めた地域が史跡に指定されている。
 駐車場となっている「南砺市世界遺産菅沼合掌造り集落展望広場」から集落を一望すると、素朴でのどかな景観を望むことができる。駐車場から少し東側がビューポイントだ。
 集落内には、塩硝の製造工程を人形や影絵等で紹介す「塩硝の館」や、古い民具、民俗資料を展示する「五箇山民俗館」があり、五箇山の歴史と伝統を学ぶこともできる。
 ここは相倉よりも規模が小さく、観光する人も多くない。駐車場から地下3階まで下るエレベーターとそのアクセス道となる長い歩道トンネルが整備されているのでそれらを維持する必要もあるのだろうが、駐車料金500円はチト高いよな。

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(展望広場から「菅沼合掌造り集落」を一望する)

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(五箇山民俗館)

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(茅葺屋根が密接している)

 県境を越えて岐阜県に入るところにある「合掌大橋」も、橋の北詰の展望所に車を停めて眺めてみる。
 R156のシンボル、地域のモニュメントとしての役割を果しているといい、塔の形が合掌屋根に似せてある。
 このあたりは橋を渡るたびに交互に岐阜県と富山県の行政区域に変わるのがおもしろい。

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(合掌大橋)

 「道の駅白川郷」で小休止。
 かやのみソフトクリーム350円を試してみる。「超大盛りになっちゃった」と笑顔のおばちゃん。ホントに大盛りで、急いで食べないと溶けてしまい、カメラを構える暇がない。結果、かやのみがどういう味なのかはよくわからずじまいとなった。

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(道の駅白川郷)

 この日メインの「世界遺産白川郷合掌造り集落」。
 合掌造りの建物が最も多く残る地域で、大小合わせて100棟余り。合掌集落の規模としては全国最大で、国の伝統的建造物群保存地区に選定されている。1995年に世界遺産登録。今も実生活の場として使われているところに価値があり、それが観光地化している他地域の合掌民家集落と違うところだ。

 せせらぎ公園駐車場から「であい橋」を渡った先はまるで異空間だ。
 最初に見たのは「明善寺鐘楼門(明善寺郷土館)」。全国でも珍しい茅葺の合掌造りの寺院。本堂は総檜造で、本堂・鐘楼門・庫裡の配置が美しい。鐘楼門は寄棟造2階建で、屋根は茅葺き。1階に板庇をつけた珍しい建物で、延べ1,425人を要して建てたと伝えられる。2階に吊り下げられる梵鐘は第二次大戦中に供出されたため、戦後に鋳造された鋳金工芸作家の中村義一(高岡市)の作とのこと。
 歩いているだけで次々と現れる合掌造りの建物には圧倒される。

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(駐車場から「であい橋」を渡って合掌造り集落へ)

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(明善寺鐘楼門)

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(歩いているだけで合掌造りの建物が次々に現れる)

 「長瀬家」。5階建ての合掌造り家屋で、白川郷でも最大級のもの。1階には500年前の作と伝わる荘厳な仏壇のほか、美術品・什器等を、また、3、4階には昔からの生活用具を展示しているという。
 「神田家」。完成までに約10年かかったという民家で、床下には焔硝をつくっていた場所があるらしい
 葺き替え中の民家があった。前に立っていたその家のおばさんと少し話すが、萱はだいたい30年で葺き替えが必要になるという。それは大変だし、たいそう金もかかりそうだ。
 「和田家」。荻町合掌集落の代表的家屋で、広い田んぼに囲まれている、江戸時代末期建造の桁行22.3m、梁間12.8mの最大級の合掌造り民家だ。江戸期には名主や番所役人を務める、白川郷の重要な現金収入源だった焔硝の取引によって栄えた家だという。

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(長瀬家)

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(神田家)

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(葺き替え中の民家)

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(和田家)

 集落を離れ、坂道を歩いて「城山天守閣展望台」へ。歩いて行ったのは失敗で、この道がけっこう長くてきつい。そのわりには見えた景色は集落から遠く、超望遠のレンズがなければあまり絵にならないのだった。
 集落から駐車場へと戻る途中、五平餅を買って食べてみた。うーむ、これが250円か。コンビニのアメリカンドック108円のほうがずっと価値があると思うぞ。
 駐車場戻りは14時半。

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(「城山天守閣展望台」から集落全体を眺める)

 白川郷から45km、1時間20分ほど走り、飛騨市古川町の「瀬戸川と白壁土蔵街」を見に行く。
 R360は、わが車旅には付き物の車線なしのくねくね山岳道路だ。急勾配のヘアピンカーブばかり多いのが特徴だが、この程度の幅があれば対向車があっても徐行で十分なので困ることはない。
 飛騨古川駅北口の公共無料駐車場に、16時到着。南口に出て、駅前から南西方向に進んで、壱之町界隈へと歩いて向かう。

 「起し太鼓の里飛騨古川まつり会館」。古川祭のハイビジョン4K映像、祭屋台の実物展示・からくり人形の実演があるらしく興味を惹くが、閉館間近だしここも入館料が高いので、外観のみにとどめる。
 「飛騨の匠文化館」。ここは建物だけ見ればいいだろう。飛騨の匠の業績と足跡、匠の技術、道具を展示。地元の大工たちの力を結集して造られた建物は釘やボルトを使用していない。外観は古川町の顔である瀬戸川べりの白壁土蔵街に合わせたよろい壁の蔵造り風で、屋根には大行燈が置かれている。

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(飛騨古川駅の自由通路からは、列車が入線するのが見えた)

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(起し太鼓の里飛騨古川まつり会館)

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(飛騨の匠文化館)

 天正年間につくられた町筋は、殿町、壱之町、弐之町、三之町と碁盤の目のように区画され、広い間口や太い柱、出格子の民家が多く、老舗の看板も目につく。情緒のある町並み。
 「渡辺酒造店」の建物がよさげ。岐阜県飛騨地方のNO.1の酒造メーカーで、銘柄は「蓬莱」。建物の角には司馬遼太郎書の歌碑と杜氏のブロンズ像。
 その十字路には趣のある洋風建築物もあった。

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(飛騨古川市街の一角にて)

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(渡辺酒造店)

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(杜氏のブロンズ像)

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(文化財でもなさそうだが、味がある)

 「瀬戸川と白壁土蔵街」。延長400mの白壁土蔵の町並みが、コイの泳ぐ瀬戸川に映え美しい。夜に灯籠に灯がともされ、素朴な町並が情緒を感じさせるという。


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(瀬戸川と白壁土蔵街)

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(水路がある通りっていいな)

 さて、17時近くになってきたし、この日の見て歩きは少し早いが終わりにしよう。
 この日の入浴は、R156から少し山手に入ったところにある「四十八湯温泉 しぶきの湯 湯遊館」にて。
 旅の最中は毎日の入浴が大きな楽しみの一つとなっている。ずっと運転して凝ってしまった身体や、寺社仏閣の階段上りや古い町並みの散歩などで疲れた足腰をほぐし、汗を流してさっぱりとした肌になって夜を迎えるのがいいのだ。
 大きな浴室でお互い文字どおり裸の付き合いをしているのに、遠い旅の空の下では知り合いなどいるはずもなく、自分を知る者も一人としていない。そんな大勢の中で、誰にも気を使うことなく体を伸ばすことができるのだから、そこはもう天国ではないか。
 前日に続いてここもとてもいい風呂だった。JAF割が効いて安いし、風呂の泡がぶくぶくで浴槽内にゴミらしきものは見かけないし、そもそも湯がぬるくないのがとてもよい。
 昨日の施設では置いていなかった瓶入り牛乳の販売機があったので、コーヒー牛乳を買って飲む。風呂上りは瓶じゃなきゃダメなのだ。ましてやカフェオレなんて。
 この日は合掌造りの里を3か所と、飛騨古川の町並み散策をして、けっこう歩いた。日頃あまり歩いていないので脚に来る。踵が痛い。
 18時過ぎまで寛いで、道の駅へと向かう。

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(四十八湯温泉 しぶきの湯 湯遊館)

 この日の泊地となる「道の駅アルプ飛騨古川」には、とっぷりと日が落ちた18時40分着。
 デイリーヤマザキが併設されているとの事前情報だったが、たどり着いてみると店はなく、古川方面に食料品を買いに戻る手間があったが、今夜は上がりが早い。
 コンビニコロッケで缶チューハイを飲み、締めに東海地域限定だという「玉子増量濃厚ナポリタン」を食べる。
 飲んだ後はテレビやラジオを点けて休み、そのうち眠くなってきたので、少し早いが疲れが溜まらないようにと21時前には就寝する。

 9月30日の走行距離は138km。