イギリスで工事現場から121年前のウイスキーが出土、日本では海底熟成のウイスキーがお目見え
今回は久々にニュース紹介です。
イギリスはスコットランド、ハイランド地方。キンガスジーの近く、スペイ川にかかるラスベンロードブリッジ。
この橋の改装工事中に、シューズボックスほどの大きさの金属製の箱(タイムカプセル)が出土。
中には1894年9月の新聞と、ウイスキーのボトルが入っていたそうです。
121-year-old time capsule found at bridge near Kingussie(BBC 8/27)

ラスベン・ロードブリッジ。工事前の風景。
橋のどの部分から出土したのかはわかりませんが、ニュース本文からすると、橋脚付近の地中か、あるいは橋そのものの一部として組み込まれていたか。出土したボックスの錆、汚れ具合から見ると地中にあったと考えるのが妥当だと感じます。
1894年、約120年前のウイスキー。ブレンデットなのか、モルトなのかわかりませんが、なんともロマンを感じます。また、保存状態の良さもあってか当時のボトリング技術とガラス製造技術で100年経過しているとは思えないほど液面が高く、濁りも見られません。流石にコルク臭は免れないでしょうけど。
現存する蒸留所のモルトだとすると、このラスベンから15マイルほどのところにダルウィニーがあります。
ただダルウィニーは1897年操業なので1894年のタイムカプセルに入ることはなさそうです。
トマーティンは1807年操業で28マイルほどの場所。まぁもう少し離れるとグレンリベットもあります。
当時はフィロキセラによる葡萄壊滅に端を発した、スコッチウイスキーの繁栄期にあたります。その後生産過多となって多くの蒸留所が淘汰されることになりますが、今は知られていない蒸留所が稼働していたことを考えると、名前くらいしか記録にない閉鎖蒸留所のモルトである可能性もあります。
オールド好きとしてはワクワクしてしまいます。
さて、オールドボトルの魅力はこうして時にミステリアスな素性であり、または長い時を経た事で得られる独特な風味でもあります。
ウイスキーはボトリング後は熟成しないと言われていますが、ボトリング後も外的要因などの影響を受けながら、ゆっくりとした変化を続けています。瓶内熟成とも呼ばれる現象です。
しかし現在のウイスキーが瓶内で変化した味を知りたいと考えた時、タイムマシンを持たない我々は、その変化を1日1日待たなければなりません。
それを加速的に進める手段として、微細振動を機械的に当てる熟成方法、そして海に沈めて熟成させる海底熟成があります。
微細振動を用いた熟成方法は泡盛などでも使われており、ちょっとした装置として家庭向けに販売されています。自分は使ったことは無いですが、使って見ると確かにまろやかさが増すそうです。
そして海底熟成。沈没船からワインがサルベージされたとか、たまにニュースになるあの状況。海底の波と海流がもたらす小さく、時にゆったりとした振動が、人間の味覚で言う苦味にあたる要素を分解する手助けとなるのだとか。
実は原価BARで有名な株式会社ハイテンションが、この海底熟成に去年から挑戦しており、その第一弾が9月1日から原価BARで提供されるそうです。
実は原価BARで有名な株式会社ハイテンションが、この海底熟成に去年から挑戦しており、その第一弾が9月1日から原価BARで提供されるそうです。
日本初! 原価BARで「海底熟成ウイスキー」の試飲イベントを実施!(8/26産経新聞)
全てキャップをメーカーズマークの蝋で封した上で、7ヶ月間南伊豆の海底に沈めて熟成。
第二弾となる海底熟成が既に始まっているようで、関係者のFacebookでは準備風景の写真も公開されています。また、今回引き上げたボトルに関しては、塩っぽさ、海の要素を感じるというコメントもありました。
なるほど、普段行かない原価BARですが飲みに行きたくなってしまいます。
ただ・・・始まってもいない企画に水を差すようで気乗りはしませんが、その準備風景の写真ではボトルを横置きで海に沈めてるんですよね。実際に当人にも確認しました。
7ヶ月もコルクキャップのウイスキーを横置きしたら、流石にそれはコルクが溶けて変化が出ると思うのです。コルクの風味があまり気にならないケースもありますが、熟成感の比較をするための実験で、わざわざリスクを負う必要はありません。
(ちなみにコルクを落としてしまったウイスキーを放置して実験したら、1~2ヶ月ほどでコルク臭がついていました。)
ケースのサイズの関係で縦置き出来なかったようですが、次から背の低い500mlサイズのボトルにするとか、やり方はあるように思います。
まあ研究機関での分析は行われているようですし、後は飲んで確かめるしかないですね。
え、マジかよっていうツッコミどころはいくつかありましたが、本質的には素晴らしい試みだと思う海底熟成。
こちらは出土した120年前のウイスキーと違い飲みにいけるワケですから、折角なので足を運んでみようと思います。
え、マジかよっていうツッコミどころはいくつかありましたが、本質的には素晴らしい試みだと思う海底熟成。
こちらは出土した120年前のウイスキーと違い飲みにいけるワケですから、折角なので足を運んでみようと思います。