キリン 陸 LAND DISCOVERY 50% 2022年ロット

KIRIN WHIKEY
RIKU
LAND DISCOVERY
Release 2022~
500ml 50%
評価:★★★★★(4ー5)
香り:ピリッと鼻を刺すアルコールの刺激と合わせて、グレーンの甘さ、リフィルチャーオークあたりの樽感。ペットボトル販売の紅茶飲料を思わせる甘く、ほのかな苦味を連想するアロマが感じられる。
味:口当たりはメローでコクがあり、ウォッカを口に含んだ時のようなプレーンなアルコールの含み香と甘さを感じた後で、グレーン由来の穀物感、じわじわとほろ苦いタンニン、微かに柑橘のフレーバー。余韻はほろ苦く、品が良くすっきりとしている。
グレーンベース、アメリカンウイスキータイプのブレンデッド。香味とも単調というかクリーンで、アルコール感が混じるがフレーバーに強さもある。元々ストレートではなく、ハイボールや水割り等で割って飲むことを想定している原液のようなウイスキーなので、割り切った作りなのかもしれない。
一方で、ハイボールにするとほんのりとバーボン風味のフレーバーを残し、プレーンな味わいとなる。単体だと面白みにかけるものの、食中酒では不思議と2杯、3杯と飲めてしまう。個性を強化したい場合は、富士山麓シグネチャーブレンドや、バーボンウイスキーをフロートするのがオススメ。

キリンが調達した輸入原酒と自社蒸留の国産原酒を使って作るワールドウイスキー。この商品は「KIRIN WHISK“E”Y」表記なのが特徴で、2020年5月にリリースされ、2022年4月にリニューアル。今回のレビューアイテムは、リニューアル後の1本です。
キリンは2019年に富士山麓のスタンダードグレード(樽熟原酒50° 700ml 50%)を生産終了とし、構成原酒のうちグレードの高い原酒は富士山麓シグネチャーブレンドや富士シングルグレーン等に。それ以外の若い原酒はハイボールなどで手軽に飲むことを割り切った構成とするブレンド(陸)に、ブランド再編というか、ある種のチーム再編を行なっています。
富士、陸ともコロナ禍真っ只中でのリリースとなりましたが、キリングループ全体としてのウイスキーの売上は好調だった一方で、陸については商品認知度が2割と非常に低く、テコ入れが行われたというのが今回のリニューアルの経緯とされています。
まあ…パワポで作ったような地味なラベルに加え、PRも積極にはおこなわれていなかった。そもそもウイスキーにあまり関心がない層が飲むだろう価格帯の商品ですから、この結果は必然だったのかもしれません。

で、リニューアル後は白黒カラーからゴールドをあしらって、ちょっと垢抜けた感じのデザインを採用。合わせてパウチ容器で試供品を50万人分配ったりとか、今までにない取り組みもありました。
また、中身もリニューアルされており、「ほのかな甘い香りと澄んだ口当たり」「何層にも感じる香味豊かなおいしさ」を強化したとのこと。
リニューアル前はブレンデッドというよりはグレーンウイスキーとして優秀で、自前でブレンドを作るなど使いやすい1本だとして評価していましたが、リニューアル後の陸は構成原酒の傾向は大きく変わってないと思うものの、ブレンド比率や作りの傾向の変化で純粋にバーボンタイプのハイボーラーになったなという感じです。
強化ポイントの後者は評価が分かれると思うものの、前者については間違いなく。リニューアル前に比べてバーボン(グレーン)系の甘さ、アクのような要素が抑えられて、品良くプレーンでピュアな感じにまとまっています。
ゆえに、購入して口開けの印象は「薄いな…」と。ウイスキーそのものの飲みごたえはあるのですが、香味の主張がプレーンで面白みに欠けると感じていました。同じ時期にリリースされた富士シングルブレンデッドも軽めの仕上がりだったので、キリンのブレンドコンセプトはライト系にシフトしてるのかとすら思ったところ。
ただ陸に関しては食中酒用ハイボールで使っていくなら強みとなる構成で、何よりこの香味系統の商品は他社にないので、日本人が潜在的に持っている甘く飲みやすいお酒、という需要にもマッチする戦略だと評価できます。

なお、キリンがブランドを整理した結果、輸入原酒を使って作っている陸と富士山麓。国産原酒のみを使って作る富士シリーズ。と、大きな2本柱が出来上がりました。
この中で、富士山麓が広報戦略的に浮いているため今後どうなるかわかりませんが、これはこれで面白い商品なのと(下手なハイプルーフバーボン飲むより美味い)、裏ラベルの表記をこっそりリニューアルしていたりしているので、後日最新版をレビューしてみたいと思います。
