OTOTOY EDITOR'S CHOICE Vol.216
OTOTOY編集者の週替わりプレイリスト&コラム(毎週金曜日更新)
UKサウンドシステム・カルチャーの系譜
去る4月12日、UKレゲエ / ダブにおけるサウンドシステム・カルチャーの中心的存在、ジャー・シャカがこの世を去った。幼い頃にジャマイカからイギリスへと渡り、1960年代末からサウンドシステムをスタートさせ、以来、急逝する直前までルーツ・レゲエ / ダブのシーンにおいて自身のサウンドシステムを操り、また海外でもプレイしていた。自前の巨大なスピーカーを積み上げ、ワン・ターンテーブル、レコードをかけ、そしてラスタファリアニズムを説くMCも自らこなすそのスタイル、トランシーなサイレン・マシーン、そして轟音で鳴らされるダブの重低音は、レゲエ~ダブのシーン以外にも影響を与え続けてきた。まさにUKアンダーグラウンドのミュージック・シーンの要とも言える存在である。その存在は先日はじめて日本でも公開された映画『Babylon』にて、本人の役として出演していることでも知られている。
1980年代、本国ジャマイカで廃れつつあったルーツ・レゲエのスタイルを自ら貫き通すことでUKニュー・ルーツと呼ばれるスタイルを作り出し、サウンドシステム・カルチャーとセットで世界中にフォロワーを生んだ。
そして1980年代後半以降、ダンス・ミュージックの大きな波=レイヴ・カルチャーの勃興の後にも、多くのアーティストたちにそのプレイは、新たな低音の霊感を宿し、その進化にひとつの道を示していったと言えるだろう。イギリスの批評家、サイモン・レイノルズの言う「ハードコア連続体」と呼ばれる一連の音楽達、ジャングル / ドラムンベース、UKガラージ、グライム、ダブステップ……いわゆるUKのベース・ミュージックの系譜、そのルーツとしてジャー・シャカの存在は揺るぎないものではないだろうか。こうしたサウンドは、彼が貫き通したダブのスタイルがなければ幾分違ったものになっていた可能性すらある。
ジャー・シャカがプレイしたモダンなニュー・ルーツ / ダブのトラックなどは、残念ながらアンダーグラウンドなシーンで、OTOTOYには配信がないので、今回はまさにこうしたサウンドシステム・カルチャーの系譜たる楽曲を10曲選曲した。またシャカのファンデーションな楽曲たちは『Jah Shaka Presents The Positive Message』というコンピにもまとめられていて、OTOTOYでも配信されているので、そちらを参照されたし。