独占ハイレゾ配信 : 小林うてなの1stアルバムはドープなベースと幽玄な歌声がこだまするビート・アルバム
元“鬼の右腕”にして現在はソロ、そしてD.A.N.や蓮沼執太フィルなどの客演などでも知られる小林うてな。このたび1stアルバム『VATONSE』をリリースした。リリースはインターネット・ライヴ・ストリーミング・サイト、2.5Dが設立したレーベル〈2.5D PRODUCTION〉から。ポップ・エレクトロ・プロデューサー、tomgggの作品とともに本レーベルの第一弾アーティストとなる。スティール・パンやエレクトロニクス、さらにはヴォーカル / コーラスまでこなすマルチ・プレイヤーとして知られる彼女だが、1stソロのサウンドはこれまたぶっ飛びのダーク&ヘヴィーなエレクトロニック・ビーツ、そして彼女の幽玄な歌声を中心にしている。OTOTOYでは本作を独占のハイレゾ版で配信開始。美しい歌声と細やかな電子音の表現、野太いベースをぜひともハイレゾにてお楽しみください。
小林うてな / VATONSE
【Track List】
01. GONIA SE
02. ILA
03. EN
04. TON TO WAHAHI
05. REBINGA
06. PIABRO
07. MERA
08. ISAHO
【配信形態 / 価格】
【左パッケージ】24bit/44.1kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC
【右パッケージ】16bit/44.1kHz WAV / ALAC / FLAC / AAC / MP3
単曲 250円(税込) / アルバム 1,500円(税込)
INTERVIEW : 小林うてな
とにかくこのアルバムを支配するのはヘヴィーな低音だ。キックにしてもベースラインにしてもとにかくヒリヒリとした低音がスピーカーと床をブリブリと揺らす。そんな低音から湧き上がってくるかのような、幽玄な歌声が深い電子音の森へと誘う。鬼の右腕在籍時やD.A.N.のライヴなどの客演で見せている鮮やかなスティール・パンの音色を排し、あえてエレクトロニック・ビート、そして自身の歌声を中心に制作されている。その世界観はトリッキーの初期作あたりを彷彿とさせるダーク&ゴシックな感覚で迫ってくる。ミキシングには、D.A.N.や蓮沼執太作品で知られるエンジニア、葛西敏彦が、そしてマスタリングは先日、世界デビュー盤『Collapse』をリリースしたSeihoが手がけている。ソロ活動はもちろんのこと、さまざまな客演も含めて大忙しの彼女にメールにてインタヴューを行った。
インタヴュー : 稲田真央子
文・構成 : 河村祐介
やっぱりラムシュタインかな
──現在はソロ活動がメインになりました。今は客演や自身の多くのプロジェクト(UTENA DESTROY NAOMI、小林うてなと急げヘリコプター、UTENO間などなど)で音楽を制作されていますが、鬼の右腕以前に、そもそも音楽表現をはじめたきっかけや時期、形はどのようなものでしたか?
小学生時代にリコーダー / ピアノ / 合唱、中学から打楽器、大学は中退しましたが打楽器を学んでいました。大学時代はガムランにはまっていて、中退するタイミングでスティール・パンを勉強しはじめました。最初に曲をつくったのも大学時代で、ピアノで数10秒の曲を。そのあとシンセで弾き語りみたいな曲をつくってみたり、それをスティール・パン用にアレンジしたり(その頃の曲もうほとんど憶えてませんが……)。それからGarageBandをいじるようになって、簡単なトラックつくるところから、鬼の右腕の作曲をするようになりました。そのあたりから「自分は曲をつくるのが好きなんだな」と感じるようになりました、うむ。
──鬼の右腕からソロ活動メインになったときはやはり音楽表現をする上で転機でしたか?
それが転機だったかどうかはわからない、いつだって転機だと思ってやってます! 意識の方向がいろいろシフトしていったのは自分のなかで大きいかなぁ。
──いまたくさんあるプロジェクトはどういう風にはじまったものなんですか?
「こんな感じでやってみたいなー!」とか「あ、こんなのやってみるかぁ!」「こんなのやらない!?」など、さまざまです。
──ご自身の嗜好が多様で、中高生の頃はMTV系のアーティスト、その後は宗教曲やワールドミュージック(OTOTOYでの鬼の右腕のインタヴューから)、〈2.5D PRODUCTION〉のローンチ・パーティでのインタビューではラムシュタインというヘビーメタルのバンドをあげていてます。嗜好の変遷や、最近の気分にフィットしているアーティストはどのような方々なのか、聞きたいです。本質的に共通した何かがあってそれらに惹かれていたりしますか?
やっぱりラムシュタインかなぁ~、共通しているものはある。「ある気持ち」になるかどうか!
──作曲は鬼の右腕のときもうてなさんが担当されていて、楽曲制作はラップトップでされるとのことでした。例えば具体的な音を作るにはエンジニアの人と練っていくというアーティストもいらっしゃいますが、うてなさんの場合はどこまで詰めていきますか? 自身でかなりの部分まで作り込んでほぼ個人で完結という感じなのでしょうか?
自分の作品作りに限って言えば、将来的にはミックス、マスタリングまでできるようになりたい。今回のアルバムに関しては自分の限界までミックスを詰めて、技術的にできない部分をエンジニアの葛西さんにお願いしました。曲をつくってミックスして、という作業が好きみたいです。映像に音あててく作業してる時間なんて幸せタイムですね……。
ミキシングに葛西敏彦、Seihoがマスタリングで参加
──今回ミックスを担当されている葛西さんとは以前から親交があるようですが、葛西さんとの出会いや意気投合した経緯はどのようなものでしたか?
蓮沼執太フィルへの参加がきっかけです。
──サウンドの面で、本作はベースというのがひとつキーになっていると思うのですが、そのあたりはやはりこだわりましたか?
低音ってきもちいい! 低音ありがとう!
──Seihoさんはどういう経緯でマスタリングを担当することになったのですか?
「ミックスやマスタリングをエンジニアではなくトラックメイカーに頼んだらどんなんなるんだろー!」と思いまして、〈2.5D PRODUCTION〉の中田さんからお声がけさせて頂いた次第です。
──制作期間はどのくらいでしたか?
3ヶ月だったかな!
──アルバム全体に明確なコンセプトはないけれど、「VATONSE」は船の名前で、1曲1曲にはストーリーがあるとのことでした。曲を作る時はこの曲ごとのストーリーのようなインスピレーションが先に生まれるんでしょうか?
それが先にあるときもあれば、つくりながら「あ、こういうやつかしら」とくっつくときもあります。なんの意味のない曲もありますな。
──またそのストーリーについて、1曲でいいので例を聞きたいです。
「ISAHO」はもともと明るい葬式の曲。なにも無い土地で、晴れていて、土が乾いてて、みんなが棺を担いで行進している曲。「EN」はバラードです。
──昨年MVが公開された「HABI」や、ライヴで度々披露されているGOLLIRA3部作は今回のアルバムには収録されていません。アルバム収録曲の選曲はどういう基準で行われましたか?
「HABI」は以前自主で出したE.P.に入れたのと、「GORILLA3部作」は『VATONSE』を作った後にできた曲なので収録されてません。今回のアルバムは、いろいろな拍子があったら面白いかなって思いながら選曲してみました。
「小麦粉」「ブレイン」「ポテト」の3部作を作ってます
──うてなさんは音楽作家としても魅力的ですが、パフォーマーとしてもとても素敵で存在感は独特です。最近はライヴが楽しいとおっしゃっていましたが、単純に作曲ということだけではなくライヴで「パフォーマンスをする」ということについてはどういう風な考えを持っていますか?
音楽を上手に伝えようというよりも、気持ちが大事だと思うので気合いでライヴしてます!
──収録したときからもうバージョンが変わっている曲もあって、曲作りに終わりはないとのことでした。これからやってみたいと思っていること、作ってみたい作品はどういうものか、構想や希望やすでに生まれていたりしますか?
いまは「GORILLA」シリーズに続いて、「小麦粉」「ブレイン」「ポテト」の3部作を作ってます!!
──アート集団、カオスラウンジへの楽曲提供やFAIFAI参加などアートの分野でも参加作品が多いですが、そういったシーンについてはどういう風に考えていますか? 自身もアートとしての表現にもっと乗り出す可能性はありますか?
曲をつくることが好きなので、誰かのアートに対して曲を添えたり、音楽でそれにちょっとでも参加できることは幸せです。どうもありがとうございました!
RECOMMEND
D.A.N. / D.A.N.(24bit/88.2kHz)
1stリリース後、数ヶ月ですでにフジロックや各種フェスなどへの出演を決めたD.A.N.。エレクトロニクスとバンド・サウンドを高次元で融合させたサウンドは唯一無二。ライヴやレコーディング作品において、スティールパンやパーカッションなどで、小林うてなはもはや第4のメンバーとも言える活躍を見せている。
蓮沼執太 / Spiral Ambient(5.6MHz dsd)
「HIGH RESOLUTION FESTIVAL at SPIRAL」の初日となる2016年3月11日に、サウンド&レコーディング・マガジン編集部プロデュースのもと行われた蓮沼執太の公開録音、〈Spiral Ambient〉。バイノーラルマイクによって、音楽だけではなく、当日の現場の空気感や気配までもがパッケージ化された作品。こちらは5.6MHz DSDだが、24bit/96kHzのPCM音源も配信中。
LIVE INFORMATION
小林うてな ゲストにD.A.N. / yahyelを迎えた、初のソロ・アルバム「VATONSE」リリース・イベント開催決定
VATONSE Release Live
2016年6月11日(土)@CIRCUS Tokyo
出演 : 小林うてな,D.A.N.,yahyel
PROFILE
小林うてな
長野県原村出身。東京を拠点に活動するソロ・アーティスト。ラップトップ、ラップ/オペラ/メタルなどから影響を受けた歌唱、スティール・パン、マリンバ、シンセサイザー、パッドなどの機材を多様に用い、演奏手段を選ばない独創的な作曲スタイルを持つ。現在ソロ活動と平行して、「D.A.N.」のライヴにサポートで参加する他、映画の劇中曲製作、楽曲アレンジ、音源制作等も手がける。これまで、バンド「鬼の右腕」を結成、2013年FUJI ROCK FESTIVAL ROOKIE STAGEに出演し同年解散。また、蓮沼執太フィル、トクマルシューゴ+、坂本美雨、Ackky、鈴木博文、ダニエル・クオンなどのライブ/レコーディングに参加。ミックスに葛西敏彦/マスタリングにseihoを迎え、2016年5月に初のソロ・アルバムを2.5D PRODUCTIONよりリリース。